December 21, 2011

TOMOE @ 渋谷CLUB QUATTRO

 2011年最後のライブ、最高の締めだった。
 同志バンドによる3マンツアー、追加公演ファイナル。

■tacica
 TOMOE@岡山ぶり二度目。
 一曲目《夜が怖いなら泣けばいい 朝が来たなら笑えばいい》みたいな歌詞があって、ぐっと惹かれた。夜が怖いものだと指摘してくれる人はあまりいない。「newsong」という新曲らしい。それから歌詞に耳を傾けて聴いていたら、やっぱり所々救われるフレーズがあった。ありがとう。
 何となくsuzumokuと印象が被ってる。どちらもまだよく知らないからだろうな。


■People In The Box
 今年観た沢山のピープルの中でも、一番エネルギーが大きかった。クアトロが東京の彼らにしてはキャパ小さめ、自分がスピーカーに近かった、というのもあるだろうが、それらを差し引いてもとてもテンション高く、持てる全てをぶちまけるような演奏だったと思う。今回は波多野さんばかり見ていた(あの柱に阻まれ波多野さんしか見えなかった)。いつもダイゴマンに目を奪われがちなので珍しい見方。
 「アメリカ」始まりが新鮮。MARQUEE vol.88で「(『Family Record』の)オーバーチュア的な意思表明の曲」と語られていてなるほどと思い、今夜ライブの頭に持って来られて再びなるほどと思った。『Family Record』の主張は今も続いている。
 そのアメリカを起点に、「市民」→「笛吹き男」。笛吹き男、《消えてしまいたいよ》の後のギターリフが狂ったようにめちゃくちゃに絶叫していて痺れた。続くイントロと同じ穏やかなリフとのギャップに完全に呑まれる。そして《謎だらけの目覚めは君を生かす》という帰結! 未だにライブで聴く度に新しい魅力が見えてくる末恐ろしい曲。そして今年出会った中で一番愛おしい曲。

 は「尊敬できるバンドと一緒にやれて、本当に幸せだなあと思います」
 だ「(マイク通さず)かっこいいよ!」
 は「かっこいいって、僕のこと? 後でねー……お菓子をあげる」(会場笑)

 「ニムロッド」ベースとドラムがすごく見たかったけれど柱に阻まれる。終盤《あの子は木に登って》と《何か言った》の間はボーカルの沈黙が欲しかったけれど、ほぼレガート。とかあれこれ気になるくらいには聴き込んでいる。
 (MV「アメリカのつくったフィクションを塗り潰して新しい絵を描く」という浅い解釈しかできず好きになれずにいる。罪の無い言葉が虐げられているようでつらい。)
 「ブリキの夜明け」→久々にテンションたっかいダイゴマンMC→「ユリイカ」で濃厚なピープルワールドに沈む。ユリイカは昨年秋の野音以来? ちゃんと音源聴いてから初めてのライブだったから嬉しい。《ユリイカ 光を》で照り付けるストロボをまともに浴びてからの盛り上がり半端ない。どうしたってゲーテが連想されて(Mehr Licht!)、いきなり世界観がぐわっと広がるようで、切迫したあと8小節にぶっ殺された。
 最初は圧倒されるばかりだったのに、今やすっかり馴染みの「旧市街」で締め。
 People In The Box、今年も本当に本当にありがとう!!

●セットリスト
1. アメリカ 2. 市民 3. 笛吹き男 4. ニムロッド 5. ブリキの夜明け 6. ユリイカ 7. 旧市街


■THE NOVEMBERS
 ピープルに全力でぶっ殺されて立っているのが辛くなり、本編まともに観られず。先日のワンマンもだめだった、ついてないな……。彼らもまた圧倒的なテンションでそこにいるのは解った。
 アンコール「holy」はちゃんと観た。圧巻の演奏。小林さんブログで「トリのバンドはその夜を引き受ける」というような話をしていたけれど、この夜を、ツアーの最後を、見事に引き受けたと思う。そしてholy、足元を見詰めながらも明日が広がっていくようなこの曲が素晴らしいと改めて。未来へと押し出されて、TOMOEは幕を閉じた。
 小林さんのMCは優しい。「ライブに来てくれて嬉しいです。別に僕らのためとかじゃなくて、自分が楽しむために来てくれてすごく嬉しい。ありがとう」とか。「ピープルに全力でぶっ殺された皆さん、僕らが全力で……生き返しますよ」、自分の場合本当にそうだった。最高のトリをありがとう。

December 17, 2011

鬼束ちひろ CONCERT TOUR 2011 「HOTEL MURDERESS OF ARIZONA ACOUSTIC SHOW」
@ 東京国際フォーラム ホールA

 コアなファンではないのだが、彼女のライブは貴重なのでチケットを確保。行くはずだった前回のツアーが中止になったので、ようやくライブ初見。

 いつ朽ちて崩れ落ちても不思議ではないかなしさと、それゆえのうつくしさを見た。
 1曲目のSweet Rosemary、音程がたがたで緊張しているのかと思っていたら、3曲目everyhomeのサビで吹っ切れたように声が伸び、徐々にエンジンがかかっていった。終わると「……何か言ってよ」と突然ツンデレ気味のMC(女の「大好き!」には「あたしもよ」、男の「愛してる!」には「お前は知らん」と返したのはさすが)。全編通じて高音やサビの張る声はさすがの力強さだったけれど、低音は不安定なまま。思い通りにならない歌を振り切るように、エメラルドグリーンのドレスの裾を摘んでくるりと舞う。ピアノのみのシンプルな伴奏がその危うさを一層引き立てていた。
 中盤「月光」のイントロが始まると会場から自然と拍手が起きる。さすがの代表曲。その次の「蛍」がとても良かった。何しろ今夜の彼女の儚さによく似合っている。そして「嵐ヶ丘」! 歌詞飛ぶわ、ピアノと合ってないわ、音程ずれるわ、散々だったのにすばらしかった。何度も書くけれど、今夜の崩壊数秒前のようなうつくしさがここで極まっていたと思う。巧拙で言えば明らかに拙いのにこれだけ心を動かされる。そんな流れから『私とワルツを』で鳥肌。とても冷静に組まれたセットリスト。
 アンコールはやりたい放題。新境地なNEW AGE STRANGER、本人がギターを鳴らすBeautiful Fighter。客の問い「次のライブの予定は?」を「ないっ!」と斬り捨てていたけれど、新しい方向性が見える終わり方だったと思う。このまま崩れてしまうのか、新しく生まれ変わるのか、先が見えない不安定さも彼女らしい。

■セットリスト
01. Sweet Rosemary
02. 青い鳥
03. everyhome
04. 琥珀の雪
05. Time after Time(Cyndi Lauperカバー)
06. The Rose(Bette Midlerカバー)
07. 月光
08. 蛍
09. 嵐ヶ丘
10. EVER AFTER
11. 私とワルツを
12. ストーリーテラー

EN.
01. NEW AGE STRANGER
02. Beautiful Fighter

December 6, 2011

TOWER RECORDS presents 「Candle Light」
@ 渋谷WWW

 とても温かいひと時で、これで明日も生きていけると思った。
 さあタワレコに角砂糖を献上せよ!(この二組のライブ企画、本当にありがとう!)


■Akira Kosemura
 菊地慎さんによる映像演出に乗せたピアノ演奏。
 映像は、こういう解釈、風景、色の付け方もあるのか、というのを楽しんだ。音と鑑賞者のイマジネーションが合わさって出来上がり得る幾つもの可能世界がある程度制限され、同じ色を喚起させられる。けれども抽象的だったりぼやかしてあったりして、想像の余地を程良く残してもあった。

 いくつかの曲はバイオリン白澤美佳さんとのデュオ。
 ピアノとバイオリンのデュオなんて、もう鳴っているだけで幸福。白澤さん美しくて眼福。ありがとうございました。
 低音が二胡のように聴こえたバイオリンは初めて。まだまだまだ奥が深そう。

 小瀬村さんは、MCによれば「緊張で足ががくがくしてる」という状態だったからか、100%の演奏ではなかったと思う。指がうまく分離しておらず音に斑がある。その舌っ足らずな音が曲によく作用していることも時々はあった。
 けれども、静かな湖の水面を辿るような旋律は美しく、浄水装置みたいに感情の澱みをきれいにしてくれた。座ってゆっくり聴ける機会があれば、またあの音に浄化されに行きたい。


■People In The Box
 劇場編以来のアコースティックセット。ほぼ一曲ごとにMC挟んでゆるい雰囲気。
 「僕ら、同じ演奏は二度としないですよ。リハと本番でノリ変えてくる人もいるし(笑)」とは波多野さんのアンコールMC。LAGITAGIDAとも小瀬村さんとも同じ舞台に立つピープルの柔軟さを改めて思い知った。ただ気持ち良い音を三人で奏でるというシンプルゆえに強靭な核が柔軟さに繋がる。

 劇場編で演奏された曲も多かった。とはいえどれもこれも更に惹き込まれる気持ち良い音になっていて、ゆらゆら揺れながら聴くと音に飲み込まれそう。ほとんどにっこにこして聴いている変な人だった。
 ピープルのことだから一曲目は攻めてくるだろうと構えていたら、あまくて優しい「レテビーチ」。ルビー色の夜が君のおなかから溢れだしても、水の無いプールへと飛び込んでも、全部気持ち良い。非常に危険なレテビーチ。印象が違ったのは福井さんがギターだったからか(ギターとベースを曲によって使い分けていた)。
 アコースティック「昏睡クラブ」、ひょっとするとエレクトリックよりも好き。あのゆらゆら感、今宵も健在。聴きながら眠りに落ちていきたい。(と思い続けていたら『Cut One』に劇場編のが収録されるらしく歓喜!)
 好き好き言っているといつまでも感想が終わらないけれども、「一度だけ」嬉しかった。単純に自分の誕生日が近いから。
 「笛吹き男」アコースティックだと切な過ぎる。「愛してるよ」の魔法(これだけ抜き出すとえらくメルヘンチックだな)も効かないような不安が付き纏いつつ《いいんだよ》《君を生かす》がすごく沁みた。一方でダイゴマンの安定感に救われる。彼の動きは今夜も冴えに冴えていた。どうやってシンバル8枚とか使い分けるんだろう。
 火曜日も土曜日も好きだしアコースティックまた聴きたいなあ、とほのぼのしていたら、ドラムスティックがゆっくり4度打ち鳴らされてから正体不明のイントロ。何だろう新曲?と思いきや、波多野氏「ドーベルマンドーベルマン」! えええまさか。まさかの「天使の胃袋」それはない、と思った自分の浅はかさを打ち砕く見事なアレンジだった。久々にピープルにしてやられた感満載。嬉しいんだけど何かちょっと悔しいけれども好きです。《光り溢れ》で終わるのも好きです大好きですありがとう。

 あっという間に感じたけれど全11曲、今夜も音の楽しさに溢れていた。
 「People In The Boxは時々アコースティックセットでやるんですよ。本当に時々だけどね。また、声がかかったら」。期待!

●セットリスト(☆=劇場編@東京でもアコースティックで演奏された曲)
1. レテビーチ
2. 月曜日 / 無菌室
3. 夜の人々 ☆
4. ベルリン ☆
5. 昏睡クラブ ☆
6. リマ
7. 一度だけ ☆
8. 笛吹き男
9. 火曜日 / 空室 ☆

EN.
1. 土曜日 / 待合室 ☆
2. 天使の胃袋

November 11, 2011

People In The Box "Lovely Taboos release party"
@ Shibuya O-EAST

 「東京で、これだけ長いライブをやるのは久しぶりですね」。波多野MCの通り劇場編以来、全編エレクトリックだとファミレコリリースツアー以来か。待ちに待った(ほぼ)ワンマン。
 最高に楽しいライブだった!
 序盤のMCでハタノ氏「すごい楽しいっすよ」、Wアンコール前に「僕ら、演奏するのが好きなんです(少年みたいな笑い)」と言ってたように、3人の楽しさがそのままフロアに伝播してきたようだった。やたら楽しい。何なんだ。
 どこかのインタビューでライブについて「毒を擦り込む」という表現をしていたけれど、毒がこんなに楽しい自分が、皆が、おかしいのか。ピープル中毒の皆さんこんにちは。最高ですよね。

 オープニングアクトLAGITAGIDA、めちゃめちゃ格好良かった。記事分けて書く。
 いつものSE - Jim O'Rourke"And I'm Singing"が流れ出すと、期待と緊張の混じったあの独特の時間。幕が開き、海の底みたいな青いステージに3人が登場。「笛吹き男」で始まって、ああリリパだったなと思い出す。

 終始ダイゴマンから目が離せない。この人の鳴らすドラムは、今まで聴いてきたのとは別の楽器のよう。曲への関わり方が有機的。生命を「支える」のではなく「与える」「創る」感じがする。
 単純に叩いてる姿も格好良い。身体の全ての動きが音に変わる。とにかく音への色の付け方が細かくて、気付きと驚きと楽しさに満ち満ちていた。ドラムの勉強したい。今のセット(上手側横向き)で手元、あわよくば足元も見えるうちに。
 「旧市街」で音が抜けて、ん?と思っていたら、攣っていたのだそうだ。いたたたた。お大事に。
 旧市街、最後のサビ前でギターがブィーンと鳴るところ(音源では5分30秒過ぎ)だけ真っ赤な照明に変わったのがぞくぞくした。その後青系の照明に戻って《青空少しだけおかしくなったよ》! 痺れる。切り傷を撫でられているような気持ち悪さと気持ち良さが同居していた。とても良い意味で。

 いつもセットリストの予想が付かないピープル、今回は「見えない警察のための」が音源を聴いてから初だったので嬉しかった。笑い出したくなる躁の気持ち良さ。
 今夜は霧雨。それでなのか、こんな波多野MC「皆さん雨は好きですか? ……あんまり、な人が多いよね。でも、雨が好きな人もきっといると思うんですよ。次の曲をその人達のために捧げます」に続いて「土曜日 / 待合室」、そして「マルタ」→「ブリキの夜明け」! この水浸しな流れ秀逸。雨の日は今夜を思い出せばきっと持ち直せる。
 本編最後は「子供たち」。劇場編以来、ようやく聴けた。あの時は「市民」が衝撃過ぎて印象が薄かったけれど、合唱パート堪らなく良い。スリーピースなのにオーケストラの全員が揃って音を出した時みたいな、大きな一体感のまま一緒に音楽の高みへ行くような感覚。それがぷつりと途切れる音源は辿り着けないよう、わざと未完成のまま残されていて、観客が立ち会って音が最後まで鳴らしきられた時に初めて完成する曲のように感じた。充足感。

 アンコールで新曲! 「ニムロッド」初披露。リズミカルで楽しげな曲なのに、繰り返される歌詞《あの太陽が偽物だってどうして誰も気付かないんだろう》が引っ掛かる。結果、「市民」に似た攻撃的な印象。『Citizen Soul』きっとものすごく好みだ。
 そして「スルツェイ」。スルツェイ終わりが好きではない理由に気付く。《僕は悲しい口を閉じた》って悲しい終わり方だからだ。《「まだまだ君は生きなさい」って》というストレートな台詞が含まれているとはいえ括弧書き=距離があるし、全体に救いがない(盤では続く「JFK空港」で救われる)。iTunesの再生回数トップに近い曲だけどライブの締めにはきつい。ポジティブさばかり期待している訳ではないけれども。
 演奏は期待以上に素晴らしかった。

 追い出しのSEが流れ出してももやもやしたまま拍手を続けていると、ステージの照明が点いてほっとした。周りも同じく帰る素振りすら見せなかったのは、似たようなもやもやを抱えていたから?というのは自己投影のし過ぎか。
 ギターのハーモニクスが始まると静かなどよめき……「鍵盤のない、」! 昨年3月の渋谷AXからピープルのライブに行き出した自分は初めて聴いた。もう嬉しくてテンション上がり過ぎてよく覚えていないレベル。何度も支えてもらった曲が目の前で生命を持って奏でられる恍惚と幸福といったら!
 ふと疑問、なぜ《僕は悲しい口を閉じた》がだめで《君の心は鍵盤のようにバラバラになってしまったからね》は良いのか。だってあのアウトロ最高じゃないか、「スルツェイ」はすっと終わるし……とひとまず言い訳をしておく。

 最高に満ち足りたライブだった。以前は何だか物足りなさを抱えて帰ることが多かったのだけれど、何が変わったのだろう。彼らか自分か両方か。ともかく。改めて、People In The Boxに惹き込まれた夜。ありがとうありがとう。


■セットリスト
01. 笛吹き男
02. 完璧な庭
03. 水曜日 / 密室
04. レテビーチ
05. 見えない警察のための
06. 火曜日 / 空室
07. ストックホルム
08. 土曜日 / 待合室
09. マルタ
10. ブリキの夜明け
11. 市民
12. 天使の胃袋
13. 旧市街
14. 子供たち

EN. 1
01. ニムロッド(初披露)
02. スルツェイ

EN. 2
鍵盤のない、

November 8, 2011

凛として時雨 TOUR2011 "αβ+1"
@ 川崎CLUB CITTA'

 あっという間の90分、何もかも忘れて没頭した。時雨は相変わらずサディスティックで、刹那的で、集中力高くて、プロフェッショナル。最高のバンド。
 ライブのknife vacation、CDより遥かに好きだ。♪空中線に~の静けさ、間奏のドラムス、♪誰かが~からの345パートの盛り上がり、最後辺りでTKのシャウトもある。何気に時雨の好きな要素が詰め込まれてるな。moment A rhythm(short ver.)が聴けてとても嬉しい。この曲をライブでやってくれることが嬉しい。時雨自身が時雨の静の部分を大切にしているんだと思う。
 新曲は動→静→動な構成で《汚されてしまった》《i miss you》みたいに聴こえた。音源と次のライブに期待。
 「傍観」のラスト、TK繰り返し「消えたい」絶叫してギターめちゃくちゃに弾いてた。何度観ても観慣れない。舞台から去って残響が止まるまで呆然としてる。言葉が奪われてゼロになる。

 ライブに行く度に周りのノリに違和感を覚える。ただ暴れている人、ただ盛り上がりたい人が増えている気がする。静と動の両方を楽しむバンドだと思うのだけど。バンドの変化に自分が付いて行っていないだけなのか。
 書きたくなかったけど、TKにペットボトル投げ付けとかあまりにも酷かったので。

■セットリスト
01. Telecastic Fake Show
02. 想像のSecurity
03. COOL J
04. DISCO FLIGHT
05. I was music
06. knife vacation
07. a symmetry
08. ラストダンスレボリューション
09. ハカイヨノユメ
10. テレキャスターの真実
11. 新曲(i miss you)
12. moment A rhythm(short ver.)
13. illusion is mine
14. JPOP XFlile
15. nakano kill you
16. 感覚UFO
17. 傍観

November 3, 2011

D-FES★秋の大三角形
@ 大東文化大学 板橋キャンパス 体育館アリーナ

 体育館でのライブ、音響設備色々入ってすごくしっかりしていた。前方中央辺りだとライブハウスに劣らず。天井が高いからか響き方も面白かった。ちょうど中央上部にバスケットゴールがあり、ライブ中時々はっとした。学校だ!

■People In The Box
 開始と同時にまさかの圧縮、対バンならではで楽しい。ちょっと驚いたような波多野さん「あんまり押さないでね。怪我しないように」優しい。
 いつもセットリストが読めないピープル、今回は「6月の空を照らす」を入れてきた。聴いたのは2010年3月の渋谷AXぶりか。間奏の波多野さんに釘付け。手元から目が離せなくなる。何だあの動き何だあの音。何が起きているのか解らない。「市民」もすごかった。ライブだとダイゴマンに注目しがちだけど、ギターボーカルも言わずもがな素晴らしいのだ、と今更ながら実感。
 ダイゴマンMCで「シティズンソウル」という言葉を初めて生で聞いた。言い慣れてない感あり。1月なんてきっとすぐだね、楽しみ。

●セットリスト
1. 完璧な庭 2. She Hates December 3. ベルリン 4. 笛吹き男 5. 6月の空を照らす 6. 市民 7. 旧市街

■UNISON SQUARE GARDEN
 初見。格好良いバンド。それ以上でも以下でもなく。
 ベースの人の我が道を行く感すごい。自由過ぎる動きは鎖から解き放たれた中型犬のようで笑ってしまった。アンコールのMCも独特で「僕は教師ではなくましてや友達でも恋人でもない君達に教えられることなんて何ひとつない、でもステージに立っている僕が教えられることがひとつだけある。音楽って楽しいだろ!!」ライブで聞くと諸手を挙げて応えずにはいられないね。

October 31, 2011

ジ・アート・オブ・アルド・チッコリーニ 第2夜:リサイタル
@ すみだトリフォニーホール

 世界にはお前の矮小な想像力を遥かに凌ぐ美しさがある、と教えてくれたのがこの人の弾くドビュッシーだった。今でもそう思いたくなると聴き直す。という、自分にとって特別なピアニストであるチッコリーニの生演奏を聴くことが遂に叶った。
 ゆっくりとした足取りで舞台に現れ、拍手が終わってから着座するまでもゆっくりゆっくり。大丈夫?と束の間危惧したが、紡ぎ出される音は衰えを微塵も感じさせなかった。それどころか、高齢のピアニスト特有のあの悟りを開いたような世界が集中を少しも切らせることなく展開された。全ての音が確かな存在感を持って鳴らされる。有り体に言えば非常に丁寧な演奏で、それが最早博愛の域。ベートーヴェンピアノソナタ#31とか出だしの数秒で涙。アンコールで「愛の挨拶」始まった時の歓喜ときたら!
 アンコール後、スタンディングオベーション。ピアノのコンサートでは初めて遭遇した。確かに立ち上がって拍手を送らずにはいられない、本当に素晴らしい演奏だった。長生きして、またきっと来日してほしい。

■プログラム
クレメンティ:ピアノ・ソナタ ト短調 作品34-2
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 作品110
リスト:「神前の踊りと終幕の二重唱」S.436~ヴェルディ/歌劇《アイーダ》による
リスト:「イゾルデの愛の死」S.447~ワーグナー:楽劇《トリスタンとイゾルデ》による
リスト:「眠りから覚めた御子への賛歌」~《詩的で宗教的な調べ》S.173 第6曲
リスト:「パレストリーナによるミゼレーレ」~《詩的で宗教的な調べ》S.173 第8曲
リスト:「祈り」~《詩的で宗教的な調べ》S.173 第1曲

■アンコール
リスト:メフィスト・ポルカ
エルガー:愛の挨拶
グラナドス:スペイン舞曲第5番アンダルーサ(祈り)

October 30, 2011

波多野裕文「一日の孤独」
@ 晴れたら空に豆まいて

 波多野氏は豚に乗って登場、場内に豚を放ち、巧みに火を操る斬新なステージング。
 ギター一本と己の声で、プリンセステンコーも震え上がる異空間を創り上げたのでした。すげえええ!

 なんてね。

 とても和やかで、温かく満たされた空間と時間だった。ずっと記憶に残しておきたいので、覚えていることをできる限り書きつける。
 前日の公式ブログで「小音かつかなり渋い世界」と書かれていて、カバー多めかと思っていたが、未発表曲が沢山披露されて新しい手探りの世界だった。
 以下時系列で。歌詞、違っていたり混ざっていたりするかも。ご指摘歓迎します。

■登場
 楽しそう。挨拶の端々に笑みが混じって、客もつられて笑う。「何しよっかな」って既にゆるうい空気。
「Steve Jobsに黙祷しようか、30分間(笑)。やりたい人は後で一緒にやりましょう」

01. タナトス3号(仮)
《飛び魚跳ねるビルの街》《とんてんたんとんてんたんとん 大工は全部知っている》
「タナトス3号っていう仮タイトルで。あまりに酷いから、明日変えます(笑)」
◇未発表曲。『Lovely Taboos』に近い、中世ヨーロッパのような空気。「一度だけ」みたいなやわらかい手触り。《とんてんたんとんてんたんとん》が繰り返され、耳に残る。しっかり出来上がっていたので新アルバムの曲来た!と思いきや、仮タイトルというので違ったらしい。

02. かえるの王女さま
「何でだか『かえるの王女さま』ってすごく言いたい時期があって。かえるの王女さま。何でだか、解らないんだけど(笑)。で、アルバムのタイトルになってるんですけど。あんまり歌詞に多過ぎて、一部変えましたもん。そんな時に作った曲です」
《かえるの王女さま 君の心臓は楽器みたいだね》
◇未発表曲。これ? 王女を慕う臣下からのラブソングみたいだった。甘い。

03. やまいとオレンジ(長谷川健一カバー)
「何がいいってね、とにかくいい。何もかもいい。(きっぱり)」
「長谷川さんとは変な縁があって。僕の働いてた職場の同僚が、長谷川さんの親友っていう。そこから交流が始まったんですね。その共通の知人が面白い人で。部屋に、Sonic Youthのポスターが貼ってあるんですね。でも『俺はSonic Youthは聴いたことがない』と(笑)。ただ『格好いいから』って。ああ、全然ありだなあと思って」
「長谷川健一さんの沢山ある好きな曲の中でも『やまいとオレンジ』は自分にとって特別な曲で。聴いた時、本当に自分が書いたんじゃないかと思うくらいで。それを長谷川さんに言ったら……『何でなん』って」(会場爆笑)
◇裏声がずっと続くサビが新鮮。ギターと波多野さんの声で奏でられると、当たり前だけど印象が違った。原曲は重たくて冬の鈍い匂いがするけれど、波多野バージョンは浮遊感が心地良くて夢の中のよう。どちらも、とても良い。

04. 「すごい昔に作った曲」タイトル不詳
《穢れた体を拭い去るには 血を全て抜かねばならぬ》《この世界は美しい そして愚かで》《煙の街を旅しよう》《いつかは許されると思っていた 僕も 君も》
◇未発表曲。確かに詞が若い。でも世界観は変わらずで心地良かった。

05. コンコルド
《暗い闇の中から》《国際電話通じない》
◇未発表曲。「子供たち」の冒頭を思わせる、空がさっと引き裂かれるイメージ。この辺りで、未発表曲がどれほどあるのかと問い詰めたくなる。ブラックホールを覗いている気分。期待と畏怖と。

06. Little Sister(Rufus Wainwrightカバー)
◇あの声でなぞられる"And remember that your brother is a boy"がツボった。ルーファスといい長谷川さんといい、渋い男性ボーカリストが好みなのだろうか。

07. 笛吹き男
「僕、People In The Boxっていうバンドをやってるんですけど、(会場笑)……知ってるよね(笑)。それで、新しいシングルを出しました。『Lovely Taboos』っていう……知ってるよねえ?(笑) そうだよね」
「『Lovely Taboos』結構売れてます。あまり大きな声じゃ言えないんですけど。(客拍手)……大きな声じゃ言えないってことは、解ってるな? ツイートするなってことだ(会場爆笑)」
「何でああいう売り方なのかって、みんな疑問に思うと思うんですけど。USTで聞いてみてください」
「(終わった後)僕、笛吹き男、結構好きですよ。今まで書いた曲の中でも。自分で言うなってね(笑)。でも、ああいう曲はもう書かないと思います」
◇アコースティックだと一層切ない苦しい優しい。沁みた。自分もピープルの中でかなり好き。ツイートするなと言われたのでブログに書いてやる!けれど、大きな声で言えばいいのに。本当に本当におめでとう。もっともっと多くの人に聴かれるといい。愛されるといいよ。最後の「ああいう曲はもう書かない」がとても気になる。

08. 新市街
◇間奏のギターソロをtutulutululu tululululu...ハミングして、半分位で「つかれた……」会場爆笑。続きも頑張ってた。「ぱぁん!」(風船が空中高くで割れるようなふわっとした感じ)の後もハミングが始まり再び笑い。その後も《踊ろう朝まで》が何度も繰り返されて長く続いた。楽しい。

09. "One day I'll swallow your soul" (タイトル不詳)
「あ、そうだ。さっき作ったばかりの曲やろうかな」
◇未発表曲。歌詞は英語のワンセンテンスのみ繰り返し。フレーズも同じものが何度も繰り返され、最後の方で数回転調。飲み込まれる飲み込まれる。渦に吸い込まれていくような。弾き語りならではの感じだったけど、だからこそピープルで聴いてみたい。

10. 風が笑う
《新聞紙》《絵の具に溶けてしまいたいな》《死にとらわれるまで 死にとらわれるまでは》
◇未発表曲。いつの曲か言ってなかったけど、詞の質感は初期寄りだと感じた。「死にとらわれるまで」が何度も繰り返されていた。ふっと消えてしまいそうな、孤独な。

■リクエストタイム
 ワンフレーズだけのもの多し。沢山やったので解ったものだけ。
 リクエスト却下する理由にいちいち笑った:「知っている人は、歌詞を間違えると失礼だから……。歌詞問題がね」「それ、弾き語りできる?!」

・誰かの願いが叶う頃 - 宇多田ヒカル
 《あの子が泣いてるよ》 声がきれいだなあと改めて。
・きらきら星
 「きらきら星? 何それ? (客「ええー」) あっ、ああ、きらきらひかる~か」
 チューニングしまくって壊れたレコードみたくなっていた。斬新なきらきら星。「き、きー、き、き、きー、きー、きーらーきーら、きーらーきーらー、きーら、きーらーきーらーひーか、ひーかー、ひーかーるーおそらのほしよー……何だっけ。この後解んなくない?」終了。自分も解らなかったので調べたら、意外な出自で驚いた。
・Misstopia - THE NOVEMBERS
 「ノベンバはねー……あの4人じゃないとできないと思うよ」
 と言いつつ頭から少し。サビ《ああ君の小さな手》が飛んで、ふんふふふん♪ハミングになって終了。終演後小林さん来ているの気付いた。聴いていただろうか。
・Hyperballad - Bjork
 !!! リクエストした人に角砂糖を献上せよ!
 「久しぶりに新譜というものを買って(Biophilia)すごく良かった。全部ツボだった」
・The Stone - 小谷美紗子
 ワンフレーズだったけど「ギリシアの神殿」の一言が聴けて嬉しい。

11. 一度だけ
「一度だけって、いかにもやりそうじゃない?」
◇リクエストタイムからの派生。そう言いながら、フルでとても丁寧に歌ってくれた。

12. 土曜日 / 待合室
客「金曜日!」
「金曜日はねー、あのごきげんな2人がいないとね」
客「犬猫!」「6月!」「ブリキの夜明け!」「ヨーロッパ!」「月曜日 / 無菌室!」
「じゃあ、土曜日やろっか(笑)。何で訊いたんだってね、ふふ」
◇土曜日大歓迎。ちょうど雨の日。バンドとはまた違うところでぞわぞわした。

13. JFK空港
「JFK空港という曲があって。歌うのが大変なんです。……あの、歌うことって、すごく大変なんですね、僕にとって。自分が何者かっていうのがよく解っていないんですよ。自覚的じゃない。……何が大変かって言うと……(長い沈黙)あの、うまく言えないことは言うもんじゃないね! 区役所の何とかセミナーに言ってくる。『自分の気持ちをうまく伝える』、縮める術を学んできます(笑)。JFK空港という曲も、すごく大変で。何が大変かって、喋り出すと一時間くらいかかるな。でも僕、一生歌うって決めたんです。……決めたから(会場拍手)や、そんな、もったいない」
◇MCずしんと来た。「一生歌うって決めたんです」の覚悟。圧倒的な未来。それはきっと「生き続ける」ってことと同義。置き去りにされたような気持ちもある。
◇アレンジにやられた。朗読パートから、伴奏のギターがインプロビゼーション。不穏で狂っていてめちゃくちゃなフレーズ。それに淡々と早口の歌詞が乗る。この時点で鳥肌。そして、不意にギターが止まり《でもどうか諦めないで だって僕たちはまだこの世界に産まれてはいない》! 再びやさしいギターに戻り《荒れ放題の庭で~》。ギターに乗せてスキャットが長く続いて、あの賛美歌的フレーズで終わり。やられた……。

■アンコール
「恐縮です(笑)。そうだよね、有り得るよね。何も考えてなかった。どうしようかな」
 リクエスト募るも、「歌詞問題」ゆえに長く続かず。
「(客「ユリイカ!」)じゃあユリイカやろう。ユリイカ、でも歌詞がね……出てくるまで時間がかかる」
 危惧していた通り「明け方の僕らと~」以降が飛んでハミングになり、「これはひどすぎるな!(笑)」と終了。
「自分の曲でよくあるんですけど、歌ってると、作ってた時の第二候補、第三候補が浮かんできて、こう(片手ずつ詞を浮かべる振り→近付けて衝突)、事故」(会場爆笑)
「じゃあ月曜日やる! 何か妥協案みたいだな、じゃあ月曜日(笑)。何かリクエストありますか。や、待って、締めくらいちゃんと自分で考える。窮地に立たされているな」
 ぐだぐだいいよいいよ。

EN. 犬猫芝居
◇うまいこと締めた。公演名「一日の孤独」だからね。


 書き過ぎた気がするし、書き忘れた気もするので、後で推敲します。取り急ぎ。

October 25, 2011

salyu×salyu -話したいあなたと- @ Zepp Tokyo

 salyu×salyuの企画。Zeppが8割方埋まっているのがすごい。

■青葉市子
 初見。ひとりで弾き語り。この後の二組にも掻き消されず、強い印象が残っている。
 透明感ある声と独特の詞。きれいな声、メロディーに乗ったフレーズ《あなたの秘密を暴いてあげましょう / 仮面の下は恐ろしい顔 皆に見せてあげて》など、ぞくり。
 小さな女の子がひとりAXの舞台に現れ、ギターを抱えて歌う。大丈夫か、という心配はいつの間にか消えていた。緊張も物怖じもせずただ弾いて、歌っているようだった。21歳らしい。とても気になる人。
 終演後CD買おうと思ったら売り切れ。惹かれた人が沢山いたんだね。

■EGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXX
 初見。とにかく楽しかった! 魅せるショウ。ハロウィンパーティーに迷い込んだみたい。曲全然知らないのに、テンション上がりまくって終わる。時々こういうの観られるとすごくいいな。
 Salyuが「私の恋する女の子、よっちゃん!」と紹介していた。これが女子が惚れる系女子か。納得の格好良さだった。

■salyu×salyu
 初見。小山田さんとドラムス大野由美子さんが参加して、アレンジが面白かった。salyu×salyuシスターズの生コーラスもすごかった。ここまで再現するか、というのと、目の前で声が重なっていく迫力。というところはありつつ、CDのあの作り込まれた音のクオリティを超えるのは難しいのかなと感じる。最近のSalyuソロよりもsalyu×salyuは個人的にとても好きだけれど。
 「奴隷」はすごく良かった。テンションの上がる曲はライブに合うのかもしれない。Zepp Tokyoでスタンディングだったせいかも。いつか座ってのんびり聴いてみたい。

October 22, 2011

GARDEN Re-Boot!! Anniversary event Premium Acoustic & Electric Night
@ 下北沢GARDEN

 ガーデンのリニューアルオープンを記念した一連のイベントのひとつ。
 初ガーデン、煉瓦を模した壁が洒落た印象。音は期待したほど良くはなく、気になって苛立つようなこともなく。ともあれガーデンという単語が楽園のような響きで昔から好きなこともあり("The Secret Garden"の影響に違いない)、好きな方のハコ。


■小谷美紗子
 数年前Salyuとの2マン、トリオ構成で観て以来2度目。ソロピアノでは初。
 初期Coccoを意識したのか女の情念系の曲が多い。何か(ひょっとすると真実に似た)大きな塊を口に押し込められ、飲み下すことを強制されるような時間。嫌悪感ではなく、苦しくはあるが、その苦しみを与えてくれる人をずっと待っていたような気持ち。比喩が過ぎる?
 この人が歌っている、そのことにこそ何より励まされる。そんな歌い手さん。「消えろ」爽快で良かった。

●セットリスト
1. 街灯の下で 2. アイシテイルノニ 3. 雨音呟く 4. こんな風にして終わるもの 5. 生けどりの花 6. 消えろ 7. 3月のこと


■suzumoku
 初見。ドラムとベースを引き連れての演奏。
 森ガールみたいな名に反して熱い男だった。pe'zmokuの群像劇ぽさがなく、世の中への反感をバネに壁をぶっ壊していくような、ギターを武器に闘ってるような印象。


■Cocco+長田進
 ものすごく良かった。セットリスト素晴らしい。ベスト盤ツアーを補完したB面集的な曲群、まさにこれらが聴きたかった。ツアーとこの公演を合わせてようやく歌うたいCoccoの現在の全体像が見える。情念系の筆頭に挙げられる人だろうけど、昔から穏やかな幸福や世の平和を探す歌を幾つも歌っている人、優しい人、他者の痛みを自分のものとして感受する人、だ。
 カバーを2曲やったのは驚き。「なごり雪」はCoccoの真っ直ぐな声の良さがぐんと際立っていたし、「渚のバルコニー」は何より可愛らしく楽しそうで良かった。
 ツアーでも演奏された「Rainbow」、今のCoccoにとってまた特別な意味を持つのだろう。「風邪引くなよー」って心配そうな声音で言ってくれたが、あなたの健康こそ心配だ。出会って10年くらいになるけど、まだまだCoccoを聴いていたい。

●セットリスト
1. Heaven's Hell
2. 強く儚い者たち
3. ジュゴンの見える丘
4. なごり雪(アリスカバー)
5. 渚のバルコニー(松田聖子カバー)
6. 絹ずれ~OKINAWA~
7. 鳥の歌
8. Rainbow

●MC
「あっという間に、冬です。今年は春がいつ来たか判らん内に終わってしまって、クリーニングに出しそびれた服を、また……着ることになるな。笑」
「訪れる冬がみんなにとって、私達にとって、改善と進歩のある冬だといいなあと思う。風邪引くなよー。こーの腹巻きには、カイロ入ってます」

猟銃 @ PARCO劇場


 井上靖『猟銃』をそのまま、足し引きもリライトもせず、中谷美紀が滔々と語る。
 黒い背景に彩度の低い乳白色で映し出されたのは3人の女それぞれの手紙の冒頭。その奥、舞台より2メートルほどの段でロドリーグ・プロトーがパントマイムを行う。それらを背負って一人舞台に立つ中谷美紀。完成された美……! 大袈裟でなく、彼女の存在そのものが美である。マーベラス。
 90分一人語りは飽きるか?と予想した自分笑止。ぐいぐい引き込まれて、惹き込まれて、終わってしまうのが本当に惜しかった。(追記:千秋楽行く予定だったのだが、諸事情で断念)
 最前センターという幸運に恵まれて観劇。中谷美紀がたった1メートル向こうに!

■薔子
 原作では一番好き。「母さんの悲しいお顔を見詰めた儘、『そう。』唯それだけお返事しました」!
 終始早口でたたたたっと進む。みどりと対比させるためか感情抑えめで淡々と運ぶ、ように見えつつも常に爆発寸前の緊迫感。薔子は日記を焼いたから、穣介への憎しみも、興味も、恋心も、明確な形を持たないまま終わっていく。感情のクレッシェンドとデクレッシェンド(ピアノ→メゾフォルテ→ピアノくらい)が慎重に表現されていた。
 そんな中で、恋心が控えめに強調されていたと思う。「おじさま、穣介おじさま」でロドリーグ・プロトーの方をじっと見る演出好きだ。
 一度だけ出てくる祖母の台詞「彩子もいっこくもんで、出来た事は仕方がなかったのに」、中谷美紀がしっかりと30歳老けたのには驚いた。完全に老人の声。口調。そしてすぐに40歳若返り薔子に戻る。女優すごい。

■みどり
 度肝を抜かれた冒頭。薔子の女学生のような服を脱ぎ落とし、真っ赤なドレスの女が現れる。三つ編みは大胆に解かれ、出来上がった無造作パーマで一気に自堕落な女へ。そいつがくるっと客席に振り向き両腕を広げ、
 「みすぎ!! じょーすけ様ァァァ!!!!!」
高らかに自己主張しつつ、嘲笑すら浮かべて言い放つ。はい、やられた。
 薔子→みどりへの変化も、みどり→彩子への変化も、舞台上で行われる。一度退場するという選択をしなかったことで3人の女の共通性を炙り出しているのだろうか。
 原作=手紙では感情を殺しつつ皮肉を交えつつ平静を装った風なのに、舞台=生身のみどりはメゾフォルテ~フォルティシッシモ。常に燃えている。愛情に、憎悪に、寂しさに。激情の女。この解釈すごく好きだ。薔子、彩子との対比も映える。書簡体小説の舞台化ってこんな面白さがあるんだな。
 「少しなりとも貴方を揺すぶることが出来ましたか、どうか」でみどりにじいっと見詰めていただいた。最前センターの恩恵! 吸い込まれないよう踏ん張った。同じだけ真摯に、少し皮肉に見返すことができただろうか。
 最後、「お気に召しますか、どうかァァァ……」が切ない。ただの皮肉としか読めていなかったけれど、憎悪、未練、愛情、全部が叫びの尽きるのと共に消えてゆく様は圧巻。この舞台ではみどりに一番惹かれた。どうしたって惹かれずにはいられない。

■彩子
 中谷美紀本人に一番近そうな、品のある女性像。洗練された所作に見とれるばかり。みどりのゆるゆるパーマをきちんと櫛で整え、一筋も崩れないように結わえる(スプレーなしで)仕草に始まり、赤いドレスを脱いだ肌着の状態から死出の着物を自身で(鏡なしで、喋り続けながら)着付けていく様はさすが。無駄なく美しい。
 薔子ともみどりとも違い、悟り落ち着いた調子で進んでいく。常にメゾピアノ。
 「時雨に洗われた山崎の天王山の紅葉の美しさは今も私の目にあります」こんな文章を滑らかに口にできる女優は、自分の狭い了見では中谷美紀しか思い付かない。船のくだりも蛇のくだりも、ただただ美しい。

 中谷美紀は完璧。不完全さを含めて完璧。
 カーテンコールの「皆様の大きな拍手に感無量の女優」姿まで完璧。
 ほんとうにすごいものをみた。

October 8, 2011

TOMOE @ 岡山IMAGE

 遠征してみた。土曜、岡山観光、TOMOE埼玉行けない、などにより。でも色々あり遅刻、更に出演順がランダムなTOMOEでよりによってピープル一番手という運のなさ……。それでもすごく楽しかった!(大原美術館がものすごく素敵でした、岡山!)

■People In The Box
 着く前にちょうど「泥の中の生活」が終わったらしい……残念すぎる。
 小さなハコよりも解放的なハコが似合うと思った。曲にもより、泥の中の生活なんてどちらでも違う表情を見せてくれるだろうし、「火曜日 / 空室」とか「一度だけ」とかも閉鎖的な場所にきっと似合う。だけど特にファミレコ以降の曲はスケールが大きいから、小さなハコだと窮屈そう。野音が最高だったのもある。
 演奏はすごく良かった。「天使の胃袋」で、ああ終わるなあと思いきや「スルツェイ」に突入してびっくり。テンション上がりきった状態で聴くスルツェイもまた新鮮で、詞の切なさより音の楽しさが圧倒的に迫ってきた。拍手喝采!
 MCは波多野氏が岡山後楽園で民族楽器の演奏を聴いた爽やかな話と、いつも通りダイゴマンの物販紹介とシモネタなど。ははは。

●セットリスト(前半はtwitterより拝借)
1. 市民 2. 泥の中の生活 3. 旧市街 4. 笛吹き男 5. どこでもないところ 6. 天使の胃袋 7. スルツェイ


■THE NOVEMBERS
 バンドでは初見。ライブやばい格好いい。音源よりずっと激しいノイズがライブハウスに充満して、赤い照明が危機感や逼迫感を煽る。最初から最後まで隙間なく「THE NOVEMBERS」の音で満ちていた。ラスト「彼岸に散る青」がこの日のベストアクト! 熱量凄まじかった。
 対して小林さんのMCはまったり。「ピープルとtacicaの物販コーナーは最早お家芸」「僕が(ダイゴマンみたく)テンション高く喋り始めたらどうしますか? それキャラ的にどうなんだろう。高松君とか。でも高松君なら何やっても格好いいよね(笑)」。結局グッズ紹介はなかった。


■tacica
 初見。盛り上がったのはトリだからだけではなくて、tacicaのファンが多かったらしい。よく知らないのだけど、希望を歌っているように聴こえた。明るくてノリが良い。ピープルの毒気やノベンバの危機感みたいな負の面は少なくて、この三組にいてくれて良かったと思う。

October 7, 2011

ボリス・ベレゾフスキー ピアノ・リサイタル
@ 東京オペラシティ コンサートホール

 目を疑った。ピアノの演奏というより、ピアノを使ったサーカスのよう。この人ならサーカス・ギャロップも何とかしてくれるんじゃないかと束の間本気で考えた。
 シフラが「余裕♪」な感じに対してベレゾフスキーは「熱中!」に見えた。熱を入れてとにかく弾く弾く弾く。と思いきや超絶技巧#3などではゆったりと丁寧な音を聞かせたり。シフラもベレゾフスキーも技巧を備え、かつ品を失わないところに惹かれる。
 音の端々がジャズっぽいなと思っていたら、アンコールでガーシュウィン! ブギウギ! とても自由で楽しそうで、最高にテンション上がった。繊細で泣きたくなるようなピアノも良いけれど、スポーツみたいなピアノも大好きだ。


■プログラム
メトネル: おとぎ話
   ホ短調 op.34-2
   ヘ短調 op.42-1
   ホ短調 op.14-2 「騎士の行進」
   ヘ短調 op.14-1 「オフィーリアの歌」
   変ホ長調 op.26-2
   ロ短調 op.20-2 「鐘」

ラフマニノフ: 10の前奏曲 op.23

リスト: 超絶技巧練習曲集 S.139(全曲)
   01. ハ長調 「前奏曲」
   02. イ短調
   03. ヘ長調 「風景」
   04. ニ短調 「マゼッパ」
   05. 変ロ長調 「鬼火」
   06. ト短調 「幻影」
   07. 変ホ長調 「英雄」
   08. ハ短調 「狩り」
   09. 変イ長調 「回想」
   10. ヘ短調
   11. 変ニ長調 「夕べの調べ」
   12. 変ロ短調 「雪かき」

■アンコール
ガーシュウイン: 3つの前奏曲
モートン・グールド: ブギウギ・エチュード

October 5, 2011

ウラディーミル&ヴォフカ・アシュケナージ ピアノ・デュオ
@ サントリーホール 大ホール

 ピット最前、目の前にアシュケナージ(父)という特等席で拝聴。子が主旋律、父はサポートの役割を主に果たしていたけれど、まだまだ父が圧倒的に偉大! ピアノが彼を信頼した上で素直に服従しているかのように、個々の音も、それが集まってできる全体も、全てが理想的に紡がれていた。あるべきものがあるべき場所にある安心感。
 お互いを尊重しているのが伝わってくる演奏。遠慮しているのではなく、我を主張し過ぎるものでもなく、ちょうど良いバランス。子の音がやや若くて後者よりなのを、父がうまく包んでいたと思う。呼吸がぴったり合った時の父はきゅっと口角を上げて笑い、とても楽しそうだった。
 演奏後、大きな拍手の中で子が父に握手を求めると、父は子の肩を抱いて応えていた。あたたかい一夜をありがとう。

■プログラム
プーランク: 2台のピアノのためのソナタ
ラフマニノフ: 組曲第1番「幻想的絵画」 op.5
ムソルグスキー(ヴォフカ・アシュケナージ編曲): 禿山の一夜
ラヴェル: マ・メール・ロワ
ラヴェル: ラ・ヴァルス

■アンコール
シューマン/ドビュッシー:カノン形式による6つの練習曲より 第4曲

September 26, 2011

Cocco ザ・ベスト盤ライブ5本〆 @ Zepp Tokyo


 個人の感想です。と前置きして書きます。

 前半、活動休止前の曲の不完全燃焼さが物足りず。気迫が充分ではなかった。昔のCoccoを今のCoccoがなぞる、頑張って歌っていますという感じ。
 とか言っても思春期にどっぷり浸っていた名曲達のオンパレードは感慨深い。ひとつひとつが目の前で歌われる度、その曲とリンクしている思い出やら感情やらが、Coccoを媒介して昇華していくような感覚。一曲終わる毎に暗転して、流れが途切れたのも影響したように思う。昔「ライブはお葬式」と言っていたのを思い出す。ユタの血を信じずにはいられない。ほとんど宗教的な体験。
 風化風葬が飛ばされたのは残念、なぜだ……。いつか聴きたい。
 中盤、「Rainbow」→「焼け野が原」の流れは切な過ぎる。いつかまたネギと同じステージで歌ってくれるだろうか。
 SINGER SONGERから2曲。未発表の「花柄」はまだしも、個人的には「初花凛々」はあのメンバーだからこそ成り立つと思っていて、ソロで聴くと違和感がある(堀江さんはいるが)。違う意味で切ない。
 遥かに良かったのが後半「音速パンチ」から。エメラルドツアーの気迫と集中力が戻り、「絹ずれ」→「ニライカナイ」→「玻璃の花」は圧巻! 前半は曲に乗ったり口ずさんだりして観ていたけれど、後半は立ち尽くすしかなかった。ただただ圧倒的。いつもCoccoの今リアルな曲を歌ってほしいと思う。
 最後の新曲は、明日と向かい合って書かれたような真っ直ぐな曲。写真の金銀テープが大量に放たれ、会場がきらきらきれい。こんな風に明日が来たらいいなあ、という風景を歌でも演出でも見せてくれた。
 全体的に演出、照明がすごく良かった。曲への愛情をこれほど感じた照明は初めて。

 ライブの感想を書いたけれど、何よりCoccoの健康を願っている。あの気迫に惹かれているとはいえ、命を削っているようで心配にもなる。健やかな明日が来ますように。


■セットリスト
01. カウントダウン
02. 強く儚い者たち
03. Raining
04. 雲路の果て
05. 樹海の糸
06. ポロメリア
07. けもの道
08. 星に願いを
09. 羽根
10. Rainbow
11. 焼け野が原
12. blue bird
13. ガーネット
14. 初花凛々
15. 花柄
16. 音速パンチ
17. 流星群
18. 甘い香り
19. 絹ずれ
20. ニライカナイ
21. 玻璃の花
22. 新曲「Say hello」日本語と英語入り混じり


■MC備忘
(玻璃の花の後)
「MCするの忘れてた(笑)。今リエ(堀江)と相談して、どうしようかって……」
「小さい頃からよ、何でこんなんなのか解らんけど、明日が来るってことをあまり信じていない子供で。保育園とかで『みなさんさようなら、またあした』とかやるさ。でも、本当に明日会えるんかな?とか思ってた。その、性分っていうものは大人になっても変わらなくて、こんなことをツアー初日で言うのも、あれなんだけど。明日が来るかなんて誰にも解らない。……でも、実は明日やりたいこともいっぱいある」
客「何ー?」
「洗濯とかよ(笑)。今日はできんかった」(客爆笑)
「そんなんだから、今日できることは今日のうちにって思って……ありがとございます」

September 25, 2011

凛として時雨 Presents "トキニ雨#13~Tornado Edition~"
@ TOKYO DOME CITY HALL

 ゲストChara、本当に良い組合せだった。

■Chara
 初見。イメージ通り、エネルギッシュで鮮やかで、感性のかたまりみたいな人。「歌が好きな人とかいるじゃないですか。(中略)そういう人にすごく憧れてたんですよ」というのはJAPAN10月号でのTKの発言で、そのままCharaに当てはまるんじゃないか。
 「Junior Sweet」「スワロウテイル・バタフライ」「やさしい気持ち」が聴けて嬉しい。それ以外は解らず、新曲が多かったようだけど、気にならず楽しめた。感覚がそのまま声になり、フレーズになり、曲になる。その過程がそのまま目の前で展開されているようで、少しも飽きない。20年のキャリアすごい。

■凛として時雨
 「音出して演奏するのが純粋に楽しいとか、そういう人間になりたいなと思って」
 同じくJAPAN10月号のインタビューでのTKの言。ライブは苦しくもある、とも言っていた彼が今日「楽しいですね」ってぽつりと呟いたのは感慨深かった。嬉しかった。時雨はアルバムを作る度に曲のストックを出し尽くすと聞いて、いつか突然途切れるんじゃないかと思っていたけれど、まだまだ続きそうで安心。良い変化。大きな変化。変化したTKからどんな曲が生まれてくるのか楽しみだ。
 定番曲中心のところ、この時期に「秋の気配のアルペジオ」聴けたのは嬉しい。
 久しぶりの「傍観」、やっぱりびりびり来た。今日は345がテンション高く(高校生の頃からChara好きと言っていたから、それでかな)ベースも声もとても調子良い。傍観では膝付いてベース掻き鳴らして振り切れていた。
 ピエールが最後左足けんけんで退場していて、攣ったのかと思ったら、元々痛めていたらしい。早く良くなって、根本的な解決策も見つかって、末永く時雨のドラマーでいてくれますように。

 あのCharaの後のこんなTK、時雨だから、余計に「音楽の楽しさとは何ぞや」みたいなことを考えながら観ていた。自分が音楽を聴いているのはなぜ、ライブに来るのはなぜ、とか、何となく通り過ぎてきたことを今も考えている。時雨×Charaでないと生まれなかった余韻。本当に良い組合せだったと思う。もう少し考え続けたい。

■セットリスト
01. a symmetry
02. テレキャスターの真実
03. COOL J
04. I was music
05. DISCO FLIGHT
06. 秋の気配のアルペジオ
07. illusion is mine
08. Can you kill a secret?
09. Telecastic fake show
10. 感覚UFO
11. 傍観

September 24, 2011

残響祭 7th ANNIVERSARY
@ Shibuya O-EAST / duo music exchange


 前日まで、気が向いたら行こうかな、程度だったところ、リアルに人工衛星が落ちてくるというニュースを聞いて即断。そんな日にピープルを聴かないでどうするんだ。
 2008年の924を見逃した過ちを繰り返さないためにも。

 体が弱っていたので観たのはピープルと3組だけ。以下順に。

■SCANDAL
 ピープルの場所取りのつもりで二組前から入ったら「THE ガールズロック」が眼前に。生演奏だけど別の平面での出来事のような距離感。プリンセスプリンセスとかホワイトベリーとか、いつの世代も一定の需要がある型の人達。という安定感もあった。

■Takeshi Nishimoto [I'm not a gun](from GE)
 ギターソロ。音に導かれるように弾いていて、聴いているこちらも自然と惹き込まれる。不協和音の不自然さが心地良く聴こえる辺り、残響ぽい。名前格好いいな。

■People In The Box
 会場で新譜買って、歌詞カード読んで臨んだ。
 客のテンションがワンマンより高いからか、更に熱をはらんでいてとても良かった!
0. ベルリン(リハーサル)
 人工衛星来るか、と早まって期待したけどそこまで行かず。
 波多野さん「リハだから、そんなに見ないで。見なかったことにしてくれ」
1. 市民
 昨年秋の野音(一曲目に「旧市街」)の衝撃を思い出した。やっぱり最初から勝負賭けてくる。そして第一声で《衛星墜ちて》! 来た来た来た。歌詞カードを入手して初めて聴いた今日はまた違ったぞくぞく感がある。受容の変化面白い。
2. 旧市街
 最初サイトで発表された時の「生演奏できるのか?」というくだらない杞憂に反して、聴く度に良くなってる。今回ものすごく完成度高かった。《軌道を外れた人工衛星の物憂い視線》!
3. レテビーチ
 楽しくなる魔法かかってる。周りみんなゆらゆら揺れていて心地良かった。
4. 笛吹き男
 胸が苦しくなる上に思考回路がぐちゃぐちゃになるような、激しい感情が押し込まれた詞。まだまだ消化できていないけれど、それでも目の前で演奏されると泣きそうだった。これからきっとものすごく好きになる。
5. 夜の人々
 劇場編のアコースティックで再発見された魅力が大きくて、エレクトリックは普通に思えてしまった。ベースちゃんと見たかったのだが福井さん死角……。ダイゴマンの手元見て、よく聴いていたら、やっぱり好きな音で安心した。
6. 天使の胃袋
 いつもどこかしら不安定で、でもレベル高過ぎる演奏が些細な瑕疵は軽く吹っ飛ばしてしまう。今回もそんな。

 (帰宅して『Lovely Taboos』聴いてる。歌詞が一段と深化していてまだまだ追い切れない。新譜出る度に思っているけれど、今回は輪をかけてどこまで好きになるのか全く底が見えない、恐ろしいポテンシャル持った盤。一言で言えば、本当最高です。)

■cinema staff
 初見。「シネマスタッフ」って軟体動物みたいな響きに反して、いかにも残響な激しいパフォーマンスにびっくり。ピープルと9mm辺りを掛け合わせたらこうなる?
 duoのトリで、アンコールがひっちゃかめっちゃかな大騒ぎ。物珍しくて最後まで見てしまった。

September 1, 2011

KT Tunstall @ Shibuya O-EAST

 見た目小柄でキュートなKT、歌い出すととにかくパワフル。Tiger Suitに納得。
 魔笛の夜の女王的な他者を張り倒すパワーではなく、ビョーク的な大地揺るがすようなのでもなく、自己ががっしりしているなあ、という強さ。かと思いきや時々センチメンタル女子になり、これはもう惚れるしかない。生で観たことないけどアヴリルに近いような。あちらよりもお姉さんな分、ガールズ・ロックというには渋く、生きてきた年月がそのまま音に乗り力強さを与えている。

 Other Side of The Worldのアレンジにやられた。ソロでギターも使わず、サンプリングした音に乗せて歌う。CDのような空飛んでそうな解放感ではなく、部屋の片隅で誰かを思って歌うしっとり感に貫かれ、まさにother side (of this song)。
 Black Horse and Cherry Treeは期待以上。サンプリングとループペダルで曲が作られていく過程が目の前で! 後半バンドが加わり、テンション上がる一方だった。
 新譜からはDifficulty、あの葛藤が生音で迫ってきたことに感激。"The Entertainer"以外全てやって退屈な曲がひとつもない。完成度すごい。もっと聴き込みたくなった。

 バンドメンバー含め、MCも楽しかった。

 KT (客に背を向けて)「Can anybody call me KT?」 誰かKTって呼んでみて?
 客 「「「「「KT!!」」」」」
 KT (振り向いて)「モシモーシ?」

 そう来たか。

■セットリスト
01. Glamour Puss
02. Come On Get In
03. Uummannaq Song
04. Hold On
05. False Alarm
06. Little Favours
07. Other Side of The World
08. Black Horse and Cherry Tree
09. Difficulty
10. Lost
11. Golden Frames
12. If Only
13. Madame Trudeaux
14. Saving My Face
15. Push That Knot Away
16. Fade Like a Shadow

EN.
01. Scarlet Tulip
02. (Still A) Weirdo
03. Suddenly I See

August 27, 2011

THE NOVEMBERS 小林祐介 ソロアコースティックミニライブ
@ タワーレコード新宿店

 何となくタワー新宿に立ち寄ったら、見覚えある森の妖精みたいな金髪ボブの人がリハーサル中だった。あまりに唐突なファーストエンカウンターその距離3メートル(リハ始まったばかりらしく客は遠巻きに1人2人のみ)に驚いて思わず一度立ち去ってしまった。なんでやねん。
 本番が始まった頃に戻ると人いっぱい。少しの余裕に潜り込む。

 「僕の印象って皆の中でどうなんだろうって想像すると愉快な気持ちになる」。
 MCでそんなことを言っていたのでこっそり回答しておくと、アー写・ブログ・twitter・音楽から受けるのと同じ印象(斜に構えたシニカルさと、それを覆うユーモアと、優しさ素直さが同居している人)で、そのことに安堵させられた。
 THE NOVEMBERSは華々しい魅力あるバンド、ではないけれど個人的にはとても好き。というのが、このフロントマンの波長が合うからだと再認。

 松任谷由実は意外。原曲の影響なのか、この日一番声がきれいに聴こえた。
 meltでギターやコーラスサンプリング→ループしていて面白い。
 アコースティックだからか、CDよりも優しさ素直さが際立っているように聴こえた。丁寧な弾き語りで、とても落ち着く空間。偶然にもあの場にいられて本当に嬉しく思った。ありがとう。

■セットリスト
1. 再生の朝 2. 37.2° 3. アルケミスト 4. 水の影(松任谷由実カバー) 5. melt

July 10, 2011

film A moment~TK×Luckand
@ Luckand -shop and gallery-


 fAmギャラリーショップ、最終日に行ってきた。様子はLuckandブログに詳しい。

 TKの写真はいつまでもぼうっと眺めていたくなる。観ていると、その風景を写した時のTKと同化しているような感覚に陥る。なぜか泣きそうにもなる。焼かれたものは、複製されたものよりずっと生々しい。そのせいかもしれない。
 均衡の取れた構図を何かが崩している、という写真が多い。無意識だろうか。その「何か」を探すのが面白い。他にも柔らかな色合いとか、景色の切り取り方とか、フィルムカメラ独特の残像感とか、本当にいつまで観ても飽きない。個人的に写真という媒体が好きなこともある。(映像は苦手なので、実はDVD未見)

 写真は、fAmTシャツ、アンケート回答者へのLuckandピンバッジとカード。
 カードに印字されているのはアンケート答えた順ぽい。無料イベントなのにオリジナル感があって嬉しい。345番の人テンション上がっただろうな。

July 6, 2011

凛として時雨 "VIRGIN KILLER SUICIDE"
@ 東京国際フォーラム ホールA

 切実な、生に直結した音だった。鳴らさないと生きていけないみたいな。
 時雨はこれまでもずっとそうだったけれど、今夜一番そう思った。

 Re:automationライブでは初聴。DISCO FLIGHTからの流れでみんな踊りまくるものだと思っていたら、全然静かだったのは不慣れだからか。ぜひ定番曲に。
 seacret cm→Tremolo+A→シークレットGのアコースティックパートが、いつもより落ち着いた会場をうまく支配していてすごく良かった。何と言っても、シークレットG! 傍観に近いぞくぞく具合。TKが珍しく喋り出して(初めて使うガットギターで、フォーラム公演が(震災の影響で)遅れたので何か特別なことをしようと思って)、弾き語り。アコギには感情的すぎる曲だし、静と動を併せ持つ歌詞だし、ナイス組合せ。いつもの破壊衝動より、それが生まれる手前のさみしさや孤独が突き刺さった。終盤(背中を僕に向けて~)、345とピエールが加わって破壊衝動に転化し始めたところで終わり。ものすごい余韻が、今も残っている。
 ラストはmib126。照明で真っ赤に染まったTKが叫ぶ《オマエタチガツクッタセカイニ》、原発が喚起されてぞわっとした。

 いつも傍観締めというのもつまらないけれど、傍観じゃないと物足りないと思ってしまう。傍観に匹敵する何かを身勝手に期待している。
 時雨はどうしても「動→静→動」で、セットリストにあまり斬新さがない。終演後はものすごく満たされるし、余韻も数日は続くけれど、何か目新しさが欲しいなと思う。まあ身勝手な。(対照的に、ピープルはいつも斬新で面白いのに満たされない)
 ライブハウスよりも音は良かった。エコーやディレイがかかりすぎて時々もわもわしていたのは惜しい。それでも必要以上の爆音ではなかったので落ち着いて聴けた。
 終演後に配布されたフライヤーで、Charaと対バンだの、次のツアーが小さい会場ばかりだのが発表されて、フォーラムのざわめきが面白かった。……面白がっている場合ではなくて、どちらも全力でチケット取りたい。


■セットリスト
01. illusion is mine
02. I was music
03. DISCO FLIGHT
04. Re:automation
05. a 7days wonder
06. this is is this?
07. Sadistic Summer
08. 想像のSecurity
09. 鮮やかな殺人
10. seacret cm
11. Tremolo+A
12. シークレットG(アコースティック)
13. JPOP Xfile
14. Telecastic fake show
15. nakano kill you
16. a symmetry
17. 24REVERSE
18. mib126

June 8, 2011

People In The Box 「空から降ってくるvol.3 ~劇場編~」
@ PARCO劇場 2日目

 2日間行って本当に良かった。終わったばかりなのにもうピープルが切れてつらい、次のワンマンはいつだろう?

 まずは昨日と曲目を一部変えてきたピープルのエンターテイナー精神に惜しみない拍手と角砂糖を! アレンジ考えるの手間かかるだろうし昨日と同じだろうな……と思っていた自分、笑止。そんな生温い人達ではなかったことに安心。信頼。

 一部(アコースティック)は、昨日同様ゆるい空間。演奏された曲は馴染みの友達のように、初めての曲は新しい友達のように、終始親しみを感じた。波多野氏も途中「あー、ずっとこうやってだらだらやってたい」と呟いた通り。MCは波多野氏曰く「昨日健ちゃんに『あれ喋りすぎやろ』って言われた」そうで昨日より控えめだったけれど、メンバーにも更に親しみが湧いた。
 昨日やらなかった「月曜日消失」「昏睡クラブ」が印象深い。目覚める少し前のまどろみの感覚。元々歌詞が前者は夢の中のよう、後者はそれを眺めている夢のようで、アコースティックの和やかな音が一層現実と夢の境を淡くする。
 二部(エレクトリック)では新曲を二日続けて聴いて結構メロディーを覚えた。変拍子や凝ったコード進行でありながら全体ではポップな響きを保つピープルが、新曲2を書いたことに改めて驚かされる。「冷血と作法」を初めて聴いた時に近い感覚。それよりもっと顕にされた「怒り」を感じた。照明も赤や緑を使って攻撃的。
 「新曲の発売は、15月1358日」(波多野氏)、「まあ、まだ何も決まってないんですけどね」(ダイゴマン)。乞うご期待。

 席がダイゴマンの前だったので、ドラム解らないなりに彼の手元、足元を見ていた。あんな繊細な音がピープルを支えてることに驚きつつも納得。アコースティックとエレクトリックでの音の表情の変化も一番印象的。ドラム中心にピープルを聴き直したい。
 「完璧な庭」の入りでダイゴマンが手拍子を促したのは別の意味で驚いた。ピープルで手拍子。変拍子に負けてすぐに立ち消えてしまったけれど、何だか楽しかった。何より「完璧な庭」のドラム大好きなので、間近で見られて本当に楽しかった!

 新しい表情をいくつも見た2日間、ピープルにずぶずぶずぶ蝕まれている。


■セットリスト(曖昧)
◆一部:アコースティック
01. 夜の人々
02. 土曜日/待合室
03. 月曜日消失
04. ベルリン
05. 1000 Knives(YMOカバー)
06. All Apologies(Nirvanaカバー)
07. 失業クイーン ※客席のリクエストを募って、ワンコーラスのみ
08. 一度だけ
09. 昏睡クラブ
◆転換ムービー:ダイゴマンが行く!
◆二部:エレクトリック
10. 天使の胃袋
11. アメリカ
12. レテビーチ
13. 新曲1「私は流し台の手紙 遂には投函されなかった」
14. 新曲2「七色の歴史が濡れる」「まただ 血の味だ」「隣人は何を見ていた」
15. 新曲3「黒い鳥埋め尽くす空 君のスカートの一振りでその青さ取り戻した」
16. 完璧な庭
17. 旧市街
18. ストックホルム
19. 月曜日 / 無菌室


■MC備忘
・YMO
は「カバーやります。1000 Knives。皆さんYMO好きですか?」(会場無反応)
だ「はたのおにいさん、優しく訊いてるんだよー?」(会場笑)
は「僕は好きですよ、YMO。『BGM』とかね。健ちゃんは何が一番好き?」
ふ「『増殖』」
は「ああ、増殖。あれ、以心電信ってどのアルバムに入ってたっけ? BGM? 増殖?」
(思い出せず悔しそう、会場笑) ※答えは『サーヴィス』
は「まあ1000 KnivesはBGMってアルバムに入ってますね」

・Nirvana
だ「Nirvanaはいつ頃から聴いてるの?」
は「結構遅くて、えーと……15?くらい。その時もう死んでた、のかなあ」
だ「カートね」
は「カート。で、結構いいじゃんって思って」
だ「結構いいじゃん、結構いいじゃん(笑)」
は「うん、結構。しかも何か上から目線っていう(笑)。今聴いてもやっぱり、あ、結構いいじゃんって」
だ「僕は借りましたね。輸入盤のCDが苦手で。あと、当時のCD屋って何か怖い雰囲気があって」
は「あー。当時って、レンタルって発売から1年経たないとだめじゃなかった? 輸入盤。今もかな?」
だ「そうだっけ?」
は「あの、僕は手榴弾が最近流行ってる北九州の出身なんですけど」
だ「手榴弾がね!」(会場爆笑)
は「よく行くCD屋があって。普通のレンタル屋なんだけど」
だ「うん」
は「馴染みになると裏からCDを出してくれるんだよね。1年経ってないやつとか」
だ「危ねえ! 裏から(笑)」
は「僕が行くと『いいの、入りましたよ』とか言ってさ」
だ「『波多野さん、』って(CD出す真似)」
は「そうそう」

・リクエストコーナー
は「リクエストありますか? 何でもいいよ。3人の内で一番得意な人がやります」
客「Creep! RadioheadのCreep!」
は「あー、Creep。Creepかー。僕、Radioheadは新しいアルバムになればなるほど好きなんですよね。Creepが好きって気持ちも解るんだけど」
客「ハイスタ!」
は「ハイスタ!?」
だ「ハイスタ!? 無理! それは無理だね……。AIR JAM行く人いるー?(数人、挙手)
  何人かいるね。しかし、(リクエストもらっても)全部俺らがだめだったね」
(波多野さん、Creepをハミングで弾き語り)
は「よく解んない、英語が(笑)。他にありますか? ピープルでもいいよ」
客「失業クイー「スルツェイ!」「いぬね「「ユリイ「6月!」」」」
は「失業……スルツェイ?」(会場爆笑)
→「失業クイーン」を3人で演奏

June 7, 2011

People In The Box 「空から降ってくるvol.3 ~劇場編~」
@ PARCO劇場 1日目

 新奇で、しかし/そして円熟した、とても良いライブだった。まだまだ底知れない。

 円熟していたのは演奏の安定感と、自分がピープル4回目で見慣れてきたのと。
 新奇なのはこんなところ。

 ・ハコ(舞台と客席近くて客びっくり、メンバーもびっくり)
 ・二部形式
 ・転換中にネタムービー「ダイゴマンが行く!」寝起きドッキリもあるよ☆
 ・一部はアコースティックで座って演奏、座って聴く、ゆるい雰囲気で雑談多し
 ・立ち位置(上手から山口、福井、波多野)
 ・カバー(バンドとしては初?)
 ・インスト(カバーだけど初?)
 ・新曲3曲(うち2曲初披露)

 とりわけ目新しいのはアコースティック。「悪くないでしょ?」とは波多野氏談、悪くないどころか、曲としても表現者としてもピープルの柔軟さにしてやられたり。ダイゴマンと福井さんの器用さがこれでもかと活きていたし、波多野さんは丁寧に歌うから澄んだ声が伸びて心地良かった。是非とも音源が欲しい。
 「火曜日 / 空室」が一層好きになった。エレクトリックよりも「空室」っぽさ、空っぽな、置き去りにされた感が強い。他の曲も、ピープルのポップな全体像のあちこちに潜んでる寂しさが際立っていた。是非とも音源を!

 一部はゆるい雰囲気で、波多野氏とダイゴマンのボケVSボケのスパイラルに腹筋が鍛えられる。サンドウィッチ伯爵ボケの秀逸さに感動(後述)。
 ダイゴマンが行く!も会場爆笑。棒立ちで聴く人が多く、盛り上がってるのか解りづらいピープルライブで、適度に空気がほぐれてとても楽しかった。
 二部の目玉は何と言っても新曲。二曲目で会場がぽかんとしている様が愉快。そして自分もぽっかーん。歌詞はひたすら捲し立ててきてさっぱり聞き取れなかったけれど、サウンドは反政治的な印象。あのサウンドに乗せて何を歌っているのか気になるところ。こちらも音源化に期待。

 明日はもっと良い席で観られる幸せ。今日よりもっともっと音を楽しんでこよう。

 2日目はこちら


■セットリスト(曖昧)
◆一部:アコースティック
01. 夜の人々
02. 木曜日 / 寝室
03. ベルリン
04. 土曜日 / 待合室
05. 1000 Knives(YMOカバー)
06. All Apologies(Nirvanaカバー)
07. 一度だけ
08. 火曜日 / 空室
◆転換ムービー:ダイゴマンが行く!
◆二部:エレクトリック
10. 日曜日/浴室
11. レントゲン
12. スルツェイ
13. 新曲1(Family Recordツアーで披露された「私は流し台の手紙」)
14. 新曲2(激しい、ボーカルがずっと何か繰り返してる)
15. 新曲3(穏やかめ、「いつもありがとうって言ってくれるかな」)
13. 天使の胃袋
14. 旧市街
15. ストックホルム
19. 月曜日 / 無菌室

■MC備忘
・PARCO
は「PARCOって、パルコさん(が由来)じゃない?」
だ「サンドウィッチ伯爵的な?」
は「そうそうそう。トランプしながら何か食べられないかなって、手軽に食べられるものないかなって思って」
だ「えっ、誰それ」
は「えっ、サンドウィッチ伯爵」(会場笑)
だ「あーサンドウィッチ伯爵」
は「カードしたいけど食事もしたい、ってことでサンドウィッチが発明されたんだよ」
だ「ふんふん」
は「だからパルコさんも、ショッピングできる店がたくさん入った複合施設が欲しいなと思って。でもそれはデパートじゃないか!既にありますよ!とか言われて。(会場爆笑) いいやそんなはずはないとか言って」

・ダイゴマン機材トラブル
だ「すみませんね、もうちょっとお待たせしちゃうと思うんですよね」
は「あー、もうちょっと」
だ「はい」
は「あの……僕、こういう状況が一番燃えるんですよね」(会場爆笑)
 「何かリクエストとかありますか? あればやります」
だ「言っといた方がいいよー?」
客「ローゼズ! ストーンローゼズ!」
("I Wanna Be Adored"の触りを弾き語り!)
は「ローゼズってこんなんだっけ、知ったかぶったかも(笑)。他には?」
客「スミス!」
は「おっ、スミス。いいねぇ。実は楽屋で、スミスの良さは何かっていう話になって。僕はよく解らないんだよね、すごく好きなんだけど」
("Panic"弾き語り! 会場手拍子)

スミス!って叫んでくれたお兄さん、グッジョブ!!

June 5, 2011

レイ・チェン J・S・バッハ無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全曲演奏会
@ トッパンホール

 初見。無伴奏全曲演奏会の2日目、シャコンヌ目当てに。
 聴き始めて日が浅いので、ソロのヴァイオリンがあれだけ豊かで多層的な音色を出せることに驚いた。時々3台に聞こえたほど。 
 シャコンヌはやはり圧巻。溢れる気迫が全てヴァイオリンに注がれ、音として昇華されていた。あの圧倒的なテンションを他のプログラムでも観てみたい。
 アンコールは"for tsunami victims"として演奏された「ガヴォットとロンド」。とても優しく丁寧な演奏に、慰められているようで思わず涙が出た。

 パンフレットによると、次の来日も決定! 2012年4月、チャイコのヴァイオリン協奏曲を予定とのこと。

■プログラム
無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ト短調 BWV. 1001
無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第1番 ロ短調 BWV. 1002
無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第2番 ニ短調 BWV. 1004

■アンコール
ガヴォットとロンド(無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第3番 ハ長調 BWV. 1005より)

April 20, 2011

People In The Box "Family Record release tour"
@ 中野サンプラザ

 日常から少し遊離した彼らの音と言葉は、3.11以後のもやもやに一区切り付けてくれた。ライブ後はすごく充実して、同じだけからっぽでもある状態。明日からも生きていくためのちょうど良いバランスに戻してくれてありがとう。
 シュールレアリスティックな世界観が彼らの何よりの魅力だと思っていて、それより何より目の前の現実に向き合わなければならなかったこのひと月、ピープルをまた楽しめるかどうか、開始前は不安だった。嬉しいことにそれは杞憂で、彼らのパフォーマンスに「現実」を見出したのが今回一番大きな収穫だった。
 誰かがピープルを「選ばれた子供の悪戯」「箱庭的な世界」と表現していて、CD音源を聴いているとそうなんだけど、ライブでの印象は違う。不条理なファンタジー(のふりをした現実)に立ち向かう人間の葛藤を見せ付けられて息苦しいくらい。こんな状況だから余計だろうか。
 《気を失うほど楽しいのがいいね》《もうすぐトンネルを抜けるよ 光り溢れ》《虫の息になることもある でもそれも今夜までさ》みたいな解りやすく前向きなフレーズにぐっと来た。これも今の状況だからこそ。
 ひとつひとつの音がCDよりずっと胸に迫るのもライブならでは。
 波多野MC「(震災を受けて)これまでの良いとか悪いとかの基準が全部なくなった今、トライアンドエラーしてみるしかない。だったらみんな、楽しもうぜ」。ざっくりまとめてしまうとこんな。時間をかけて言葉を選びながら、とても丁寧に伝えてた。やっぱりこの人の話し方好き。
 彼らのライブを観たのは三度目で、毎回すごく良いんだけど満足しきることがなくて、もっとできるんじゃないか?とも思う。今回は、スルツェイがアンコールの締めに来たことに違和感があった。大好きだけどスルツェイ、君は終わりの方で登場すべきだけどスルツェイ、でも締めじゃない。(どういうこだわりなのか自分でも解らない)
 ひっくり返せば、これからもっともっと良くなると確信しているということ。本当に楽しみなバンドだ。

■セットリスト
01. 東京
02. アメリカ
03. ベルリン
04. レテビーチ
05. 新市街
06. 泥の中の生活
07. 火曜日 / 空室
08. ストックホルム
09. マルタ
10. どこでもないところ
11. リマ
12. 犬猫芝居
13. 月曜日 / 無菌室
14. 天使の胃袋
15. はじまりの国
16. 旧市街
17. JFK空港

EN. 1
01. 新曲
02. She Hates December
03. スルツェイ

EN. 2
ヨーロッパ

March 6, 2011

ネマニャ☆プレゼンツ≪悪魔のトリル≫
@ 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール

 3/2の東京公演を聴いた後、速攻でチケットを手配。二度目のLes trilles du diableは底の見えない渦に呑み込まれていく感覚が心地良く、囚われた、と思った。
 良い音楽を聴くと何が起きているのか解らなくなる。

 公演名に☆が入ってマジシャンみたくなってるけど、なるほどあれは一種のマジックであったと思う。


■プログラム
クライスラー:プニャーニの様式による前奏曲とアレグロ
ヴィエニャフスキ:伝説曲 ト短調 作品17
ヴィターリ:シャコンヌ ト短調
シューベルト:ロンド イ長調 D.438
チャイコフスキー:なつかしい土地の思い出「メロディ」「スケルツォ」「瞑想曲」
タルティーニ:「悪魔のトリル」ソナタ ト短調 作品1-4

■アンコール
ヴィヴァルディ:四季より 「夏」第3楽章
セルヴィア伝統舞曲
サラサーテ:アンダルシアのロマンス

March 2, 2011

ネマニャ・ラドゥロヴィチ presents 《悪魔のトリル》
@ 東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル

 悪魔のトリル初来日! スタオベも起こり、鳴り止まない熱狂の拍手がホールを満たしていた。本当に素晴らしかった。
 LFJ2009で聴いた「四季」以来2年ぶりに音の衝撃が戻ってきた。音を楽しむとはこのこと。体躯の隅々まで表現に満ち、人から音が溢れてくるようだ。聴覚を超え、視覚でもなく、神経をダイレクトに揺さぶってくる。
 悪魔のトリル、あれは何事。むしろ魔王のトリル! 唖然としてただただ音を受け止めていた。凄まじいのに一方的でなく、迸る全てを聴き手に収めていくような圧巻の表現。
 メンバーの音もよく調和していた。ネマニャを遮らず、霞ませず、端正なだけでもなく、彼ら自身がアンサンブルを楽しんでいる。「楽しむ」ことに尽きる演奏だった。
 公演パンフレットによると、悪魔のトリル次の来日が早くも決定。2011/11/23三鷹市芸術文化センター、同11/25王子ホール。今から楽しみで仕方ない。

■プログラム
クライスラー:プニャーニの様式による前奏曲とアレグロ
ヴィエニャフスキ:伝説曲ト短調op.17
ヴィターリ:シャコンヌ ト短調
シューベルト:ロンド イ長調D.438
チャイコフスキー:なつかしい土地の思い出op.42「メロディ」「スケルツォ」「瞑想曲」
タルティーニ:ソナタト短調「悪魔のトリル」

■アンコール
ヴィヴァルディ:「四季」より夏
セルヴィア民謡より
映画「シンドラーのリスト」より

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Maira Gall