March 23, 2012

the cabs 2nd mini album release tour 「rasen no hotori」
@ 下北沢SHELTER

 霧雨の下北沢、ソールドアウトしておりぎゅうぎゅう詰めのシェルター。音源をひとつも持っていない3バンドのライブ、全て初見。小さなハコのためもあってか、どのバンドもエネルギッシュで音が迫ってくる感覚が強く、良いテンション。だからか共通して若い印象。どう若いのかはそれぞれ少しずつ違っていた。

■dry as dust
 dryでもdustでもなかった、何だろう……young as yacht。適当でしたすみません。ドライというにはエネルギーに溢れていたし、ダストというならスターダスト。Dという音のこもった暗い感じは全然なく、明るい若さを感じた。最後の曲のアウトロが会場をどこかへ引っ張っていくような力強さを放っていて良かった。

■Qomolangma Tomato
 3バンドの中で一番攻撃的でありつつ演奏が安定していて完成度高い。ボーカルが台詞言い続けながら次の曲に移る繋ぎ方の息をつかせない感が良かったり、ベースが面白いフレーズ弾いてたり、とても楽しめた。ボーカルの決壊した堤防みたいに溢れて止まらない怒涛の言葉攻めが若い。
 ボーカルは大人しめの会場に「金払ってこんな地下に集まってさー、楽しまないと意味ねえぞ」みたいに何度も呼び掛けていた。楽しかった、けれど個人的には共感して暴れようとは思えなかった。

■the cabs
 気になっていた彼らをみたくて、今夜足を運んだ。出会って以来耳から離れない「二月の兵隊」が聴けて嬉しかったし、Wアンコールのチャールズ・ブロンソンのために」ものすごく格好良かった! 一曲目終わったところで機材トラブル(弦切れた?)がありつつも、テンション高く駆け抜けていた印象。勢いあって若い。
 勢いがあり過ぎるのか演奏がまとまっていないように聞こえる。まとまりのなさが一周回って「チャールズ・ブロンソンのために」では逆に功を奏したような。凝っていて面白いドラム、YouTubeで聴くとクリアなスネアがとても好きなのだが、ライブではうまく生きていないような。観た位置のせいか。
 きれいに伸びる若い声、秋の始まりのような、繊細で少し影があるのも心地良い。もっと大きな会場でも大丈夫。個人的に好き嫌いがはっきり分かれる絶叫、キャブスのは好きだ。きれいな曲に割り込んでくる暴力性堪らない。
 ライブが終わってからずっと「二月の兵隊」の絶叫が頭の中に住み着いている。詞も気になるのでアルバムを買ってみることにした(同じ残響歌もののピープルの詞が日常から少し遊離しているのとはまた違って、キャブスは想像上の別世界を描いている印象)。時間を開けてまた観に行きたい。

●セットリスト(twitterより拝借)
1. skor 2. 二月の兵隊 3. カッコーの巣の上で 4. アンシェルス 5. 僕たちに明日はない 6. 解毒される樹海 7. camn aven 8. 第八病棟 9. キェルツェの螺旋 EN. 1. すべて叫んだ 2. チャールズ・ブロンソンのために


March 20, 2012

People In The Box 『Citizen Soul』 release tour
@ 名古屋CLUB QUATTRO

 熊谷、横浜、仙台に続き、ツアー4公演目。直前でこの日の予定が飛び、仙台の心配な後味から抜け切れておらず。突発的にチケットと交通手段確保。
 今夜ものすごく良かった。心配なんてすぐ吹き飛んで思いきり楽しめた。3人の状態がとても良く、音響良く、舞台見やすく、客のテンション高く、MC面白く、諸々の条件きれいに揃い踏み。波多野さん最後のMCで「ありがとうございました。すごく楽しかったです」と言ったり、ダイゴマンもツイートしたり、本人達も楽しそう。いやあ本当に楽しかった!!

 ポエトリーリーディング、何度耳を澄ませても聞き取れない箇所があってもどかしい。《魂というのはユビキタスの別名であり バタフライエフェクトを頼りにする心許ないXXXXXXである》何だろう?
 《そして君は発見するかもしれない》というのはとても優しい。する/しないどちらの可能性もあり、それは君次第だよ、ということ。続くフレーズ《食べろ、食べろ、食べろ、食べろ》は明らかに発見へ導こうとしているけれど、肝心の「何を」発見するのかは示されない。汽笛《あげるよ 帰りの切符を でも、きみはひとりでいきなさい》と同じく、ひとりで行く、生きる、逝く、ことができるように突き放す。こんな優しさを与えてくれる人は多くない。とても貴重。

 セットリスト、本編は仙台と一曲交代、「ユリイカ」→「昏睡クラブ」。この「昏睡クラブ」が半端なく格好良かった! ベースのみのイントロにギターとドラムスが合流していく。3人とも攻撃的でテンション高く、CDとは違った印象。特にガリガリゴリゴリしたベースが効いていた。サビが波多野+福井ダブルで歌われて強力に(これ新しいと思った、ありだ!)。赤い照明が似合う。「昏睡クラブ」はアコースティックだとやわらかいブランケットのようで心地良いし、今回の破壊衝動ぶちまけるのと眠り続ける君を見守るのとが交互に来て振り回されるのもおかしくなりそうで良い。前者は昏睡(させる)クラブ、後者は昏睡(させない)クラブみたいな二面性面白い。
 波多野さん「僕の好きな曲をやります」という紹介で「どこでもないところ」。どこでもない=ゼロ地点の曲はこのツアーによく似合う。けれども音源のフェードアウトするアウトロに慣れているので、3人のジャーン!で断ち切られるとあれ?ってなる。?のまま「ニコラとテスラ」に入る感じは好き。
 このツアー初めてダイゴマンのドラミングが見えた……! しなやかさは変わらず、力強さが増した印象。理想的。仙台で話していた、去年病気してから煙草止めて6kg増えた、ことが影響しているのか。見た目変わりないが。「沈黙」のシンバルの鳴らし方格好良い、とか言い出したらきりがないな。
 大きな会場だと照明に凝れるのか、「月曜日 / 無菌室」「汽笛」でミラーボールが点いていたり(使い方多様だなあ)、「旧市街」最後のサビ前のギタージャーン!で真っ赤になるのも復活。
 アンコールは「マルタ」→「日曜日 / 浴室」→「鍵盤のない、」。仙台では静かだった「マルタ」、今夜はいつも通り水圧で息苦しくなる感じがした。続いて仙台の「天使の胃袋」が「日曜日 / 浴室」に。これも最後に救われる曲で、「マルタ」から水繋がりなのも好き。海の匂いのする「鍵盤のない、」アウトロの最後の最後、終わるのが惜しいみたいに何度も確かめるように音を鳴らして、鳴らしきって終演。
 ギター置いた波多野さん、本編最後もそうだったように、大きな拍手に両腕広げて応えてお辞儀していた。ショウを終えた奇術師にも、拍手に感謝する演奏家にも、共鳴したことが嬉しいひとりの人間にも見える。感無量、にはまだ早い。ファイナルの中野が本当に楽しみだ。


■セットリスト
01. 沈黙
02. 笛吹き男
03. 市民
04. 親愛なるニュートン街の
05. 昏睡クラブ
06. ペーパートリップ
07. 技法
08. 犬猫芝居
09. 冷血と作法
10. どこでもないところ
11. ニコラとテスラ
12. 月曜日 / 無菌室
13. はじまりの国
14. スルツェイ
15. ニムロッド
16. 旧市街
17. 汽笛

EN.
01. マルタ
02. 日曜日 / 浴室
03. 鍵盤のない、


■MC備忘
・春分の日
ハ「今日は何の日? そうそう、春分の日だ。(ちょっとチューニング)
  春分の日を私達のために割いていただき、ありがとうございます」

・ポーチ紹介 ※やっぱり全部ドヤ顔
ダ「これ! 知ってるかなー? ポーチ!と言います! 使い方は色々あってですね、
  僕はドラムスティック入れたりね。このバスドラも入りますね。
  波多野くんは味噌カツ、とか入れますか?」
ハ「味噌煮込みうどん」
ダ「味噌煮込みうどん(笑)。あのうまいやつでしょ」
ハ「ポーチに入れると美味しくなる」
ダ「味噌煮込みうどん、このポーチに入れていただくと3倍美味しくなりますんでよろしくお願いしますね!」

・ホワイトハウス
ダ「住んでたんでしょ? 名古屋」
フ「うん。住んでたところの名前がね、ホワイトハウス」
ダ「ホワイトハウス!? オバマ! オバマー!」
フ(右腕上げて応える)(客爆笑)
ダ「やっぱオートロックなの?」
フ「いや、じゃなかった」
ダ「ガード緩いんだ。狙い放題なんだ!」
ハ「その名前決め手でしょ、そこにしたの」
フ「うん。笑」

・告知
(アンコール前、この日の来場者限定でとある告知がなされる)
ダ「twitterとかに書かないでくださいね!」
ハ「皆さんのことスナイパーが狙ってますので。こうやって(ライフル構える振り)。
  ちょっとでも書こうもんなら、もう画面パリーンですよ」
フ「そしたらホワイトハウスに来ればいいよ」
(客爆笑、拍手)
ハ「あの今日は本当に、どうもありがとうございます」
→からの「マルタ」、ギャップすごい

March 15, 2012

People In The Box 『Citizen Soul』 release tour
@ 仙台CLUB JUNK BOX

 熊谷、横浜から3週間空いて仙台。
 ライブは生き物なのだと思った。奏者の状態がダイレクトに音に出る。生き物だから強いところも弱いところもあって、今夜は後者が目立っていた。その分前者も際立って感じられはした。弱さから立ち直ろうとする様が今夜の見所、魅力と映る。何度も聴いているからその感じも楽しめたけれど、初見の人がいたら、あんなもんじゃない、って言いたい。
 後方で観ていて、全体的に音圧低く感じられたせいかもしれない。アンコール前ボーカルの音調整していたし、やっぱり音響的なものか。特に前半、体調良くないんだろうかって心配になるほど声とギターの気迫が感じられなかった。ドラムスも時折同調してしまったようによろけたり音抜けたり。そんな中、ベースの安定感にほっとする。演奏がよろめいても早く立ち直れるのは福井さんあってこそだった。
 珍しくちょっと辛口。だけど、それに負けないくらい良いところも沢山沢山あった。

 ポエトリーリーディング、だいぶ馴染みのフレーズが増えた。
 《氷河期はまだだ》という一節から、生物学《氷河期は始まったばかりだ》、沈黙《氷河期だ 踏みしめて歩け》が想起される。『Citizen Soul』よりも前の世界、引いては人間社会が成立する前の状態を描こうとしているのか。と思いきや《スーパーマーケットはひとつのフラクタル構造を描いている》《今 僕達の体はぶるぶると震えている 3万年前の地球のように》というフレーズもあるので、昔に戻ろうってことではなくて、本来性を現在に取り戻そうとしているような。ラストの汽笛《それで全ては元通りさ》にもそんな志向がみられる。
 とか考えている。個人の感想です!

 セットリスト、本編は横浜から二曲交代。「見えない警察のための」が「ユリイカ」に、「ブリキの夜明け」が「どこでもないところ」に。
 あちこちでイントロのギターの遊びが面白い。「どこでもないところ」冒頭に「天使の胃袋」みたいな高周波な音を弱めに長く差し込んでいたり。音を楽しんでる感じが伝わってくるようで、すごくテンション上がる!
 「技法」《「わたしもだまされているのかしら」》でベースがうねうねするの堪らない。新譜のベースは全部良くて、好きなフレーズを挙げるときりがない。奏者が変わったことを差し引いても、ピープルで一番変化しているのはベースだと思う。
 「汽笛」順調に進化していて嬉しい。聴く度にエネルギーが増えている。ここに来て波多野さんの声が力強く迫ってきた。「透明感のある少年声」と言われる声で、それもすごく好きだけど、この曲には力強さが似合う。
 アンコールはまたがらりと変わって「マルタ」→「天使の胃袋」→「鍵盤のない、」。津波を連想させる「マルタ」を仙台で演奏することに驚いた。音圧が本編より更に下がって大人しく、丁寧に、撫でるように聞こえたのは意図的なものだろうか。色々考えている内に「天使の胃袋」が始まって、そういうことか、と鳥肌。《もうすぐトンネルを抜けるよ 光り溢れ》で「マルタ」の回収を試みたと読む。その流れで聞いた「鍵盤のない、」の救済感すごい。歌詞は死の匂いが濃いのに、このまま生きていていいんだな、とか思う。アウトロの切実さにぶっ殺されて終わった。


■セットリスト
01. 沈黙
02. 笛吹き男
03. 市民
04. 親愛なるニュートン街の
05. ユリイカ
06. ペーパートリップ
07. 技法
08. 犬猫芝居
09. 冷血と作法
10. どこでもないところ
11. ニコラとテスラ
12. 月曜日 / 無菌室
13. はじまりの国
14. スルツェイ
15. ニムロッド
16. 旧市街
17. 汽笛

EN.
01. マルタ
02. 天使の胃袋
03. 鍵盤のない、


■グッズ紹介MC ※全部ドヤ顔
ダ「この商品名、皆さん初めて聞くかもしれません。ポーチ、と言います!(会場笑)
  僕はドラムスティックを入れて使ってます。波多野くん、MacBook入れたりね」
ハ「牛タンが入ります」
ダ「牛タン!笑」
ハ「伊達政宗も愛用していたという」
ダ「掘り出し物だな!」

March 3, 2012

ent "Entish TOUR" @ 代官山UNIT

 超満員のUNIT。開演ぎりぎりに入ったらステージほとんど見えず。生音を楽しみながらモニター観たり、時々舞台に目をやったり。
 何より、照明と映像のビジュアルエフェクトが素晴らしかった。個人的にはこれまで観たライブで一番。照明がすごい凝りようで、一曲一曲、フレーズ、音毎に丁寧に考えられていた。映像はストライプ模様が下から上へ動き続けたり、空と雲をイメージしたような抽象的な形が流れていったり、シンプルかつセンス良い。
 ソロプロジェクトent、どういう構成でライブするのかと思ったら、こんな。
 ギター&ボーカル:ent、ギター:大山純、ドラムス&マニピュレーター:菅井正剛(、映像:小嶋貴之)
 音とても良かった。打ち込みや既成の音が多く使われつつ、そこに乗る生きたギターと声は時に温かく時にエモーショナル。違和感ないバランスはさすがレコーディングエンジニア菅井さんの技か。そこにあの照明と映像! ビジュアルはサウンドを引き立て、サウンドはビジュアルを引き立てていた。完璧。完璧である。後はステージが見えれば、言うことは、ない……。

 『Entish』を基調に、『Welcome Stranger』からも沢山聴けて嬉しい。基本はentの穏やかかつ冷静なあの音源の空気そのままなんだけど、それらが立体的に広がる快感といったらない。脳に直接作用してくる音達。
 Do Not Adjust Your Set飛び抜けてエモくなっていた。ライブ映えすごい。
 「言葉で何かを伝えることはとても難しい。人によって言葉の指す意味が違うし。なんてことを思っちゃいます。笑 けど、それでもありがとうとか、好きだよとか、言葉で伝えるってことは必要なんじゃないかなあと思って。それを日本語で詞にした曲をやります」という、ソシュールもウィトゲンシュタインもとりあえずどうでもいい、みたいなMCの後にLens。きっとやってくれると思っていたし、聴きたかった曲。音源よりもっとやさしく、ずっと力強く鳴っていた。ありがとうありがとう好きです。
 アンコールにサプライズゲスト、野田洋次郎。音源Lensのドラムスは彼だという(クレジットには Drums"Lens" by DARMAN とある)。ツアーには間に合わなかったので、とent、OJ、DARMANのセッションが5分ほど。ちょっと不器用な、けれども同じ場所を目指していくような、温かい音だった。
 DARMAN退場、菅井さんが戻って最後の曲、Sleeping Ghost! 最後に来るとは。《We'll fly again / Stars all remain》(と聞こえる)の繰り返し気持ち良い。ふわあっと軽くゴーストになっていく。半分夢のように終演。そして熱が上がり直帰して爆睡。

 また何度でも観たい、ずっと包まれていたい空間だった。次はゆったり聴きたいけど、あの映像と照明がありつつ余裕あるハコってどこだ。ううん。や、でも、同じハコでもステージ見えなくてもきっと行くだろう。それくらい心地良い夜でした。


■セットリスト
(入場SE: No Tone)
01. 9646
02. Farewell Dear Stranger
03. pure river
04. Zoe
05. Water Screen
06. Do Not Adjust Your Set
07. Frozen Flowers
08. Airwalker
09. Dragon Fruit
10. Silver Moment
11. Lens
12. At The End Of The Blue Sky

EN.
01. セッション w/野田洋次郎
02. Sleeping Ghost

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Maira Gall