February 24, 2013

『Ave Materia』release tour @ 松江canova

 島根へ飛んだ。川と大きな湖と気分屋の空、ジャパニーズな様式美、気さくな人達。大阪と京都を混ぜて冷まして雲で覆って、すごくマイルドにしたような街。(わかりづらい) とにかく素敵だった! 足立美術館、また何度だって来たい。

 旅先で観るライブは不思議だった。非日常に入り込む日常。いつの間にかピープルは日常に組み込まれてしまったんだろうか。とか考える。
 水の街松江とピープル、親和性高い。「ブリキの夜明け」今日はより特別に聞こえた。canovaは国道9号線を隔ててすぐに、波多野さん曰く「海がある!と思ったら湖だった。ふふ」という宍道湖と接する。昼間体に取り込んだ空気とよく馴染んだ。
 どんなに満たされてもほとんどが薄れてしまう中で、強烈に記憶に焼き付く演奏というのがある。その時の気分に合うとそうなる。運みたいなものだ。丈夫なリズム隊と、やわらかい照井さんのギターと、そこに乗る風のようなファルセットのスキャット。が、ふっと途切れて、ブーンというアンプの小さなノイズが満ちる。幸せだった。

 セトリ大枠は変えず、一部入れ替えていた。さらっと「She Hates December」が聴けて、島根ありがとう!!と思う。来て良かった。照明が夕暮れみたいで、リリイ・シュシュ「飛べない翼」とリンクしてしまったり、した。リリイが生まれたのも青猫が死んだのも、そういえば12月だ。
 「みんな春を売った」→「物質的胎児」→「ブリキの夜明け」→「八月」の流れ、鳥肌。春を売って胎児がつくられ、夜が明けたら息をしていることを告げられる。最初の二曲で既に持っていかれたのに、「ブリキの夜明け」は先述の通り特別だったし、畳み掛けるように「八月」が来た。
 「八月」の後も本編ずっと照井さんがいて、波多野さんとツインギター。高崎では途中抜けていたと思ったけれど、もう自分の記憶に自信がない。SHD間奏のギターソロは波多野さんがいつものように穏やかに弾いていて、いつものように寄せては返す波をぼんやり眺める気持ちになったのを覚えている。

 AMは途方もなく重たいアルバムだと、改めて思う。死に臨み、生を歩む。
 重たい原因の筆頭、個人的な超トラウマソング(笑)(開き直った)「みんな春を売った」は、AMに不可欠だと思うようになった。少し受け入れられるようになったんだろうか。ファイナルまでに向き合えるかな。今のところイントロが流れると体が固まる。鏡を見たメデューサのごとく。

 MCの話。ダイゴマンの“ばーちゃん”が島根の方で、自身も昔喘息だった頃に1年ほど滞在したらしく、「島根は無条件で好きだね!」と言っていた。松江を歩いていたら覚えている風景にも出会ったそうだ。思い入れのある、やさしい話し方だった。
 後は、波多野さんと福井さんが時間差でそれぞれ松江城に行っていたという話、ピープルらしいなあと思う。個々に独立していても芯が似ているような印象。

 ツアー全21公演中、6公演目の松江。まだ半分にも達していないのにこれだけ変化して、これから一体どうなってしまうのか。おそろしく楽しみだ。


■セットリスト
01. 時計回りの人々
02. 市場
03. 球体
04. 割礼
05. ダンス、ダンス、ダンス
06. みんな春を売った
07. 物質的胎児
08. ブリキの夜明け
09. 八月
10. 沈黙
11. はじまりの国
12. She Hates December
13. 序
14. 金曜日 / 集中治療室
15. ニムロッド
16. さようなら、こんにちは

EN.
01. スルツェイ
02. 市民
03. 完璧な庭
04. 旧市街

February 15, 2013

『Ave Materia』release tour @ 高崎club FLEEZ

 雨の降った跡を空気と地面に残しつつ、着いた高崎は晴れていた。
 ライブ前の冴えた三日月、撮っておけば良かったな。

 代わりに、ということでもないけれど、ツアーグッズ!
 今までで一番好きだ。みどりむし! 多分あんぜん。


▲緑:Tシャツ、青:コットンバッグ

 街、時計、太陽、地球儀、ダンス! AMのモチーフが沢山。
 Tシャツとバッグで原画のアレンジが違うところにこだわりを見る。色が、AMジャケと合わせると光の三原色のよう。
 バッグ、マチはないものの、しっかりしたキャンバス地。A4の薄いファイルなら幾つか余裕をもって納めてくれる。実用性◎
 物販混み合っていたのに、残響の某さんがにっこり応対してくださり和む。

 ライブとても楽しかった。照井ギターが振り切れ始めた! 丁寧な演奏は変わらず、出るところは出るよう腹を決めた感じ。馴染むまでもう少し。成長途中の今のバランス、見事に毎回変化があって楽しい。
 割と序盤で波多野さんの「やべー、すげえ楽しい!」が聞けた。と思ったら、後半「楽しいだけじゃ物足りない」という名言が出て笑った。その通りだ。
 曲目は初日とほぼ同じで、順番を変えてきた。初日は初日でとても良かったけれど、AMの曲が本編に収まる今日のセトリ好きだ。
 波多野さんは10曲目「八月」の歌詞終わりまでボーカルのみ。アウトロでこの日初めてギターを手にした時、またひとつ何かが動き出すような気がした。戻ってきた気もした。その構造自体がAMの主張をなぞっているようでもある。11から13曲目まで3人になり、14曲目「序」で照井さん再ジョイン。アンコールは3人。





 言葉でこのライブのこころに触れようとすると、やっぱりいつも以上に個人的なことを書きそうで、ストッパーがかかる。
 確かだと思うのは、ライブが楽しいこと。居心地が良いこと。ピープルが目の前で演奏していること。シンプルなひとつひとつを確かめて積み上げていく。
 アンコール最後の「Alice」、あの本編の後だと、まっさかさまでも大丈夫だなあと思った。《「君は誰の子だい?」》を振り切るように落ちる。心地良くさえある。そうして変わっていくこともある。変わらないこともある。
 魔法みたいだった、というとほうきに乗って空飛びそうだけどそうではないし、薬のようだった、というと何だか怪しげである。どう言おうか。気付かず欲していたものを与えてくれる感じ。……やっぱり魔法かもしれない。

 センス良い開場時BGMは福井氏セレクトだろう説を唱えて、今日はここまでにします。Fleet Foxes"Ragged Wood"、Sam Prekop"C + F"嬉しかった!


■セットリスト
01. 時計回りの人々
02. 市場
03. 球体
04. 割礼
05. ダンス、ダンス、ダンス
06. みんな春を売った
07. ブリキの夜明け
08. ニコラとテスラ
09. 物質的胎児
10. 八月
11. 市民
12. 完璧な庭
13. 旧市街
14. 序
15. 金曜日 / 集中治療室
16. ニムロッド
17. さようなら、こんにちは

EN.
01. ベルリン
02. 笛吹き男
03. Alice

February 14, 2013

VALENTINE ROCK Vol.6 —愛のロックを鳴らそう— @ LIQUIDROOM

 雑誌MUSICA企画。ごみ箱に大量のみかんの皮を見て何事かと思ったら、主催者が配っていたらしい。なぜみかん。芥川の「蜜柑」ならロック。「私はこの時始めて、云ひやうのない疲労と倦怠とを、さうして又不可解な、下等な、退屈な人生を僅に忘れる事が出来たのである」!


■クガツハズカム
 初見。きのこ帝国ボーカルのギター弾き語り、途中から観た。
 初期Salyuに霞をかけたようなアンビエントな歌声の中から、小谷美紗子みたいな真っ直ぐな主張が立ち上がる。やわらかな耳触りでありつつ、芯が強く凛としている。
 跳ねのけたくなるような重たさだった。あの重みが好きな人はきっとすごく好きなんだろう。9月、夏が闘って戦って殺されていく感覚を確かに思い出した。


■People In The Box
 アコースティックセット! 3人編成。劇場編みたいにゆるいMC挟みつつの全5曲。
 MUSICA有泉さんの紹介「魂持っていかれる系のバンド」を、ダイゴマンがネタっぽく連呼していたの笑った。個人的には最近は「魂取り戻してくれる系のバンド」みたいな気がしている。どちらにしたって魂に働きかけるのだからとんでもない。

1. 土曜日 / 待合室
 しばらく聴けないと思っていたから嬉しい。一音一音が心地良い雨粒のよう。
 ひとつひとつ地に沈んで染みていくようなアウトロが好き過ぎる。
2. 天使の胃袋
 LosTバージョン。ボーカルの高音がしっかり伸びて、リキッドいっぱいに満ちた。
 《電池が切れてしまった僕ら / だから次の世界で息をするよ》沁みる。
3. 木曜日 / 寝室
 出たー! バンジョーだ!(心の叫び)
 今日は木曜日。5曲の中でピープルの振れ幅が存分に表れていて楽しい。
4. ダンス、ダンス、ダンス
 「『Ave Materia』は僕らにとって大切な1枚」というMCに続いてこの曲。
 ひとつの生命がみえた。生まれたばかりの小さな生きものの、血流や脈拍や呼吸のようなアンサンブル。みんなが自由に踊るエレクトリックに対して、アコースティックは演奏のいのちを見守るような。ピープルを貴いと思うのはこういうところだ。
5. 球体
 最後に伏兵がいた! まさかのアコースティック球体。
 冒頭、雲か煙に一面覆われていくような不穏なアレンジに乗せての《球体に守られて だれもが痣だらけ》ぞわりとする。何度も繰り返されて徐々に浸透してくる。エレクトリック版よりじわじわ攻める様はほとんど老獪。逃げ出したくなるところで《空を返せ》の澄んだ主張ときれいな福井コーラスに救われる。巧いなあ。

 曲と彼ら自身のしっかりした骨格と柔軟さ、アンサンブルの妙、そしてダイゴマン曰くエレガントなMC(笑)の楽しさが存分に溢れるライブだった。またいつでもぜひ、アコースティックで。


 転換中は鹿野さんのDJタイム。Syrup16g"My Song"が流れた。何の確信もないまま並々ならぬ期待をしていたら本当にかけてくれて、嬉しくなる。Syrupの音が、五十嵐の声がリキッドに広がっていく。来て良かった。ありがとう。


■日高央
 初見。一昨日twitterのDMで依頼、昨日追加発表、今日演奏となったらしい。前半がソロ、後半は彼の今のバンドらしいTHE STARBEMSのメンバーと演奏。この面子だと浮くかと勝手に思っていたら、ベテランの風情はありつつ、音の楽しさは同じだった。


■川上洋平&庄村聡泰
 初見。有泉さんによるとユニット名は「座パンプキンズ」で「ザがTHEじゃなく座るの座なのがポイントらしい」。[champagne]のギタボとドラムに、サポートキーボードの3人編成。要所要所キーボードが素敵な仕事してた。
 一曲目に痺れる。Waitress, Waitress!という曲だと教えてもらった。"Absalom, Absalom!"にウェイトレス出てきたっけ?と思ったが多分関係ない。ともかく格好良かった! シャンパーニュだと思ってて申し訳ない、シャンペイン覚えた!

February 11, 2013

『Ave Materia』release tour @ 宇都宮HEAVEN'S ROCK VJ-2

 いよいよツアー初日。当日券出してるのが謎なくらい、箱の中は満員。やあみんなどこから(略)。
 舞台あまり見えなくて、レポらしいことは書けそうにない。時々福井さんが見えたのは嬉しかった。何度でも言っておこう、最近どんどんアグレッシブになるベースプレイ観るのが楽しくて仕方ない!
 ピープルで一番体が動いたライブだった。周りもかなり自由に揺れたり踊ったり。宇都宮の人がノリ良いのか、これまでほど変拍子の嵐じゃないからか、バンドの自由さのリフレクションか。曲間の沈黙との対比が面白い(時雨と似てる)。

 オープニングのポエトリーリーディング、CSツアーに近い音。不穏な電子音に揺さぶられ、柔らかいギターに宥められ、の繰り返し。最後の台詞はもったいなくて、まだ書けない。あの言葉にあれだけの強度を持たせられる人、他にいるだろうか?
 開始から数分と経たず心の根っこを掴まれてしまって、来たことを少し後悔した。生きるつもりじゃなかった。
 けれど水中みたいな青い照明の中、いつもの時計の音 - Jim O'Rourke "And I'm Singing"(今を見越していたかのようなタイトル!) - が空間いっぱいに満ちると、帰ってきたような気持ちになる。居心地の良い場所。
 冒頭、波多野さんの「『Ave Materia』ツアーへようこそ」にはっとする。CSの時は録音された声にそう告げられたところ、今回は目の前で。また前に出て距離を詰めてきた。WWWでの「またツアーで会いましょう」とひと続きになってもいた。

 ……この調子で本編行くと余計なことばかり書きそうなので、切り上げる。

 ざっくり言うと、意外だったり(アンコール)、やられた!と思ったり(本編ラストの衝撃!)、感慨深かったり(笛吹き男とAlice、新しい意味を与えられて成長していくようでとても嬉しかった)。
 アンコール終わっても、ダブルを求める拍手が止まなかった。個人的にはあの後だと何を聴いても余分になる気がして(実際聴けたら違うのかもしれない)、ひと足早く会場を出た。あの後どうなったんだろう?

 あと何箇所か行くつもりだけど、怖い。でもやっぱり見てみたい。どないやねん。
 つらつらとiPhoneに打ち込んでいたら、東京に着いた。鉛筆でざかざか下描きしたみたいな文の連なり、たまにはそのまま上げてみます。


●セットリスト(多分)
01. 時計回りの人々
02. 市場
03. 球体
04. 割礼
05. ダンス、ダンス、ダンス
06. みんな春を売った
07. ベルリン
08. 笛吹き男
09. Alice
10. ニコラとテスラ
11. 物質的胎児
12. 八月
13. ブリキの夜明け
14. 市民
15. 完璧な庭
16. 旧市街
17. バースデイ

EN.
01. 序
02. 金曜日 / 集中治療室
03. ニムロッド
04. さようなら、こんにちは

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Maira Gall