December 21, 2011

TOMOE @ 渋谷CLUB QUATTRO

 2011年最後のライブ、最高の締めだった。
 同志バンドによる3マンツアー、追加公演ファイナル。

■tacica
 TOMOE@岡山ぶり二度目。
 一曲目《夜が怖いなら泣けばいい 朝が来たなら笑えばいい》みたいな歌詞があって、ぐっと惹かれた。夜が怖いものだと指摘してくれる人はあまりいない。「newsong」という新曲らしい。それから歌詞に耳を傾けて聴いていたら、やっぱり所々救われるフレーズがあった。ありがとう。
 何となくsuzumokuと印象が被ってる。どちらもまだよく知らないからだろうな。


■People In The Box
 今年観た沢山のピープルの中でも、一番エネルギーが大きかった。クアトロが東京の彼らにしてはキャパ小さめ、自分がスピーカーに近かった、というのもあるだろうが、それらを差し引いてもとてもテンション高く、持てる全てをぶちまけるような演奏だったと思う。今回は波多野さんばかり見ていた(あの柱に阻まれ波多野さんしか見えなかった)。いつもダイゴマンに目を奪われがちなので珍しい見方。
 「アメリカ」始まりが新鮮。MARQUEE vol.88で「(『Family Record』の)オーバーチュア的な意思表明の曲」と語られていてなるほどと思い、今夜ライブの頭に持って来られて再びなるほどと思った。『Family Record』の主張は今も続いている。
 そのアメリカを起点に、「市民」→「笛吹き男」。笛吹き男、《消えてしまいたいよ》の後のギターリフが狂ったようにめちゃくちゃに絶叫していて痺れた。続くイントロと同じ穏やかなリフとのギャップに完全に呑まれる。そして《謎だらけの目覚めは君を生かす》という帰結! 未だにライブで聴く度に新しい魅力が見えてくる末恐ろしい曲。そして今年出会った中で一番愛おしい曲。

 は「尊敬できるバンドと一緒にやれて、本当に幸せだなあと思います」
 だ「(マイク通さず)かっこいいよ!」
 は「かっこいいって、僕のこと? 後でねー……お菓子をあげる」(会場笑)

 「ニムロッド」ベースとドラムがすごく見たかったけれど柱に阻まれる。終盤《あの子は木に登って》と《何か言った》の間はボーカルの沈黙が欲しかったけれど、ほぼレガート。とかあれこれ気になるくらいには聴き込んでいる。
 (MV「アメリカのつくったフィクションを塗り潰して新しい絵を描く」という浅い解釈しかできず好きになれずにいる。罪の無い言葉が虐げられているようでつらい。)
 「ブリキの夜明け」→久々にテンションたっかいダイゴマンMC→「ユリイカ」で濃厚なピープルワールドに沈む。ユリイカは昨年秋の野音以来? ちゃんと音源聴いてから初めてのライブだったから嬉しい。《ユリイカ 光を》で照り付けるストロボをまともに浴びてからの盛り上がり半端ない。どうしたってゲーテが連想されて(Mehr Licht!)、いきなり世界観がぐわっと広がるようで、切迫したあと8小節にぶっ殺された。
 最初は圧倒されるばかりだったのに、今やすっかり馴染みの「旧市街」で締め。
 People In The Box、今年も本当に本当にありがとう!!

●セットリスト
1. アメリカ 2. 市民 3. 笛吹き男 4. ニムロッド 5. ブリキの夜明け 6. ユリイカ 7. 旧市街


■THE NOVEMBERS
 ピープルに全力でぶっ殺されて立っているのが辛くなり、本編まともに観られず。先日のワンマンもだめだった、ついてないな……。彼らもまた圧倒的なテンションでそこにいるのは解った。
 アンコール「holy」はちゃんと観た。圧巻の演奏。小林さんブログで「トリのバンドはその夜を引き受ける」というような話をしていたけれど、この夜を、ツアーの最後を、見事に引き受けたと思う。そしてholy、足元を見詰めながらも明日が広がっていくようなこの曲が素晴らしいと改めて。未来へと押し出されて、TOMOEは幕を閉じた。
 小林さんのMCは優しい。「ライブに来てくれて嬉しいです。別に僕らのためとかじゃなくて、自分が楽しむために来てくれてすごく嬉しい。ありがとう」とか。「ピープルに全力でぶっ殺された皆さん、僕らが全力で……生き返しますよ」、自分の場合本当にそうだった。最高のトリをありがとう。

December 17, 2011

鬼束ちひろ CONCERT TOUR 2011 「HOTEL MURDERESS OF ARIZONA ACOUSTIC SHOW」
@ 東京国際フォーラム ホールA

 コアなファンではないのだが、彼女のライブは貴重なのでチケットを確保。行くはずだった前回のツアーが中止になったので、ようやくライブ初見。

 いつ朽ちて崩れ落ちても不思議ではないかなしさと、それゆえのうつくしさを見た。
 1曲目のSweet Rosemary、音程がたがたで緊張しているのかと思っていたら、3曲目everyhomeのサビで吹っ切れたように声が伸び、徐々にエンジンがかかっていった。終わると「……何か言ってよ」と突然ツンデレ気味のMC(女の「大好き!」には「あたしもよ」、男の「愛してる!」には「お前は知らん」と返したのはさすが)。全編通じて高音やサビの張る声はさすがの力強さだったけれど、低音は不安定なまま。思い通りにならない歌を振り切るように、エメラルドグリーンのドレスの裾を摘んでくるりと舞う。ピアノのみのシンプルな伴奏がその危うさを一層引き立てていた。
 中盤「月光」のイントロが始まると会場から自然と拍手が起きる。さすがの代表曲。その次の「蛍」がとても良かった。何しろ今夜の彼女の儚さによく似合っている。そして「嵐ヶ丘」! 歌詞飛ぶわ、ピアノと合ってないわ、音程ずれるわ、散々だったのにすばらしかった。何度も書くけれど、今夜の崩壊数秒前のようなうつくしさがここで極まっていたと思う。巧拙で言えば明らかに拙いのにこれだけ心を動かされる。そんな流れから『私とワルツを』で鳥肌。とても冷静に組まれたセットリスト。
 アンコールはやりたい放題。新境地なNEW AGE STRANGER、本人がギターを鳴らすBeautiful Fighter。客の問い「次のライブの予定は?」を「ないっ!」と斬り捨てていたけれど、新しい方向性が見える終わり方だったと思う。このまま崩れてしまうのか、新しく生まれ変わるのか、先が見えない不安定さも彼女らしい。

■セットリスト
01. Sweet Rosemary
02. 青い鳥
03. everyhome
04. 琥珀の雪
05. Time after Time(Cyndi Lauperカバー)
06. The Rose(Bette Midlerカバー)
07. 月光
08. 蛍
09. 嵐ヶ丘
10. EVER AFTER
11. 私とワルツを
12. ストーリーテラー

EN.
01. NEW AGE STRANGER
02. Beautiful Fighter

December 6, 2011

TOWER RECORDS presents 「Candle Light」
@ 渋谷WWW

 とても温かいひと時で、これで明日も生きていけると思った。
 さあタワレコに角砂糖を献上せよ!(この二組のライブ企画、本当にありがとう!)


■Akira Kosemura
 菊地慎さんによる映像演出に乗せたピアノ演奏。
 映像は、こういう解釈、風景、色の付け方もあるのか、というのを楽しんだ。音と鑑賞者のイマジネーションが合わさって出来上がり得る幾つもの可能世界がある程度制限され、同じ色を喚起させられる。けれども抽象的だったりぼやかしてあったりして、想像の余地を程良く残してもあった。

 いくつかの曲はバイオリン白澤美佳さんとのデュオ。
 ピアノとバイオリンのデュオなんて、もう鳴っているだけで幸福。白澤さん美しくて眼福。ありがとうございました。
 低音が二胡のように聴こえたバイオリンは初めて。まだまだまだ奥が深そう。

 小瀬村さんは、MCによれば「緊張で足ががくがくしてる」という状態だったからか、100%の演奏ではなかったと思う。指がうまく分離しておらず音に斑がある。その舌っ足らずな音が曲によく作用していることも時々はあった。
 けれども、静かな湖の水面を辿るような旋律は美しく、浄水装置みたいに感情の澱みをきれいにしてくれた。座ってゆっくり聴ける機会があれば、またあの音に浄化されに行きたい。


■People In The Box
 劇場編以来のアコースティックセット。ほぼ一曲ごとにMC挟んでゆるい雰囲気。
 「僕ら、同じ演奏は二度としないですよ。リハと本番でノリ変えてくる人もいるし(笑)」とは波多野さんのアンコールMC。LAGITAGIDAとも小瀬村さんとも同じ舞台に立つピープルの柔軟さを改めて思い知った。ただ気持ち良い音を三人で奏でるというシンプルゆえに強靭な核が柔軟さに繋がる。

 劇場編で演奏された曲も多かった。とはいえどれもこれも更に惹き込まれる気持ち良い音になっていて、ゆらゆら揺れながら聴くと音に飲み込まれそう。ほとんどにっこにこして聴いている変な人だった。
 ピープルのことだから一曲目は攻めてくるだろうと構えていたら、あまくて優しい「レテビーチ」。ルビー色の夜が君のおなかから溢れだしても、水の無いプールへと飛び込んでも、全部気持ち良い。非常に危険なレテビーチ。印象が違ったのは福井さんがギターだったからか(ギターとベースを曲によって使い分けていた)。
 アコースティック「昏睡クラブ」、ひょっとするとエレクトリックよりも好き。あのゆらゆら感、今宵も健在。聴きながら眠りに落ちていきたい。(と思い続けていたら『Cut One』に劇場編のが収録されるらしく歓喜!)
 好き好き言っているといつまでも感想が終わらないけれども、「一度だけ」嬉しかった。単純に自分の誕生日が近いから。
 「笛吹き男」アコースティックだと切な過ぎる。「愛してるよ」の魔法(これだけ抜き出すとえらくメルヘンチックだな)も効かないような不安が付き纏いつつ《いいんだよ》《君を生かす》がすごく沁みた。一方でダイゴマンの安定感に救われる。彼の動きは今夜も冴えに冴えていた。どうやってシンバル8枚とか使い分けるんだろう。
 火曜日も土曜日も好きだしアコースティックまた聴きたいなあ、とほのぼのしていたら、ドラムスティックがゆっくり4度打ち鳴らされてから正体不明のイントロ。何だろう新曲?と思いきや、波多野氏「ドーベルマンドーベルマン」! えええまさか。まさかの「天使の胃袋」それはない、と思った自分の浅はかさを打ち砕く見事なアレンジだった。久々にピープルにしてやられた感満載。嬉しいんだけど何かちょっと悔しいけれども好きです。《光り溢れ》で終わるのも好きです大好きですありがとう。

 あっという間に感じたけれど全11曲、今夜も音の楽しさに溢れていた。
 「People In The Boxは時々アコースティックセットでやるんですよ。本当に時々だけどね。また、声がかかったら」。期待!

●セットリスト(☆=劇場編@東京でもアコースティックで演奏された曲)
1. レテビーチ
2. 月曜日 / 無菌室
3. 夜の人々 ☆
4. ベルリン ☆
5. 昏睡クラブ ☆
6. リマ
7. 一度だけ ☆
8. 笛吹き男
9. 火曜日 / 空室 ☆

EN.
1. 土曜日 / 待合室 ☆
2. 天使の胃袋

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Maira Gall