June 30, 2012

理性は秩序を紡ぐが、混沌はこれを誘惑する。涅槃原則の衝動が理性を越境し、集合的無意識を惹起する時、秩序は分断から解放され全一となる。恍惚の源泉は混沌に有り、万物は混沌に帰する。
@ 下北沢GARDEN

 どう見てもte'の企画です。イベント名でそれと解るってすごいな。独自の言語。

■People In The Box
 間に英国フェスや弾き語りがあったとはいえ、エイプリルフールぶりの3人の音。とにかく嬉しかった! そして、やっぱり特別に好きだと思った。余計な思考が入らず音に集中できる。集中できるのは幸せなことだ。
 最近のピープルの色んな面が詰め込まれたバランス良いセトリ。故意か偶然か「ニ」ムロッド→「し」みん→「に」ちようびよくしつ→「し」んあいなる「ニ」ュートン街の、って言葉遊びみたいで面白い。
 久しぶりだからか、湧き出るエネルギーよりも出来上がる形を大事にした演奏に聴こえた。やや固め。「日曜日 / 浴室」が3曲目に来ると思っていなくて(終盤で登場する大物のイメージ)、「市民」からの攻めの感じが新鮮で、とても良かった。いよいよ「親愛なるニュートン街の」を夏に聴けるのが嬉しい。夏の匂いの濃い『Citizen Soul』が1月に出てからずっと待ち望んでいた。他の曲も8月の劇場編で聴けるといい。「レテビーチ」の突き破って溢れてくるような快感もすごく良かった。
 ダイゴマンMCでラジオの告知、劇場編の告知、そして『Lost Tapes』告知! Candle Lightで披露されたアコースティックドーベルマンの音源化歓迎! 更に気になったのがこれ:「『天使の胃袋』アコースティックバージョンが収録されます! あと、悪魔の……あ、これはいいや」。何だ! 悪魔の、何なんだ! 新曲に期待。

●セットリスト
1. ニムロッド 2. 市民 3. 日曜日 / 浴室 4. 親愛なるニュートン街の 5. レテビーチ 6. ユリイカ 7. 旧市街

●MC備忘
は「どもども、ピープルインザボッk?s%&#」
客「?(拍手)」「しっかり!」「しっかりー!」
は「っせえ(笑)」


■クリプトシティ
 事前情報なく初見。オルタナ? ハードロック?というのか、低音が重厚なスリーピースの演奏+デモニッシュなボーカルの4人。開始後数分と経たずピープルのイノセンスが彼らの色に塗り替えられて圧倒された。ベースが凄かった。思いも寄らないフレーズが次から次へと展開されて釘付け。気になって調べたら、ナンバーガールのベーシストなのか。伝説の一端を目の当たりにしていたみたいだ。
 ボーカルは西洋の人? たぶん全英詩。あまり聞き取れず、でも「お前の大事な冷蔵庫の中身を全部食っちまうぞ」とか言ってそうな気迫(違ったらすみません)。客席を巻き込むパフォーマンスが上手い。MCではヘヴィなオルタナ色から一転、「クリプトシティと申しますー」「タノシイナ!」ってかわいい感じ。そんなギャップずるい。
 こういう音はライブで時々聴くとすごく楽しい。頭の中が嵐の去った後の街みたいになる。諸々吹き飛んで、残骸はぽつりぽつりあるんだけど、すっきりした気持ち。晴天のすっきりとは違っている。また聴けるといい。


■te'
 初見。バタイユの語る戦争のような演奏。つまり?と思い、訳書を引っ張り出す。

 戦争は組織化された暴力なのである。禁止の侵犯は動物的な暴力ではない。たしかに暴力ではあるのだが、理性を行使しうる存在(場合によっては暴力のために知恵を使う存在)によって実施された暴力なのである。
 - ジョルジュ・バタイユ『エロティシズム』より

 そんな演奏だった。要はドラムス。少しもよろめいたり迷ったりしない理性で、暴力的なくらいに大きなエネルギーを行使しているのが不思議。ギターやベースは割と思うがままに暴れているんだけど、全体としてはドラムスに組織されていて理性的。このバランスが成立し得るんだなあ、というのを思い知らされていた。イベント名は混沌寄りだけど、どちらかといえば理性が勝っている印象。何だか頭を使って聴いてしまったが、そんなことは放っておいてもすごく楽しかった。
 あの長い曲名、イベント名のペダンティックな雰囲気に気後れしてあまり聴いていなかったのに、感想を書いたらそれこそペダンティック? 付けられた名前と音は実は結構一致しているのかもしれない。
 アンコールでダイゴマン乱入! 「乱入」って言葉がぴったり。やりたい放題ドラム叩きまくって締めの音まで鳴らして去っていった。te'のドラマーはハンドマイクで客席に身を乗り出してアジテーターと化し、こちらもすごく楽しそうだった!

June 28, 2012

青葉市子 独奏会 @ 原宿VACANT

 VACANTで半年続けてきた独奏会はこれで一区切りだそうで、満員御礼。
 会場の使い方が縦長→横長となり、青葉さんとの距離が全体的に近くなる。友達の家に来たような、それでいてふしぎな集会に参加しているような雰囲気は変わらず。
 夏の少女的な出で立ちで登場。チャコールグレイのワンピースに足元はショートブーツ、ギターの栗色がよく映える。腰に水色花柄のスカーフがおしゃれさん。ストローハット(と呼ぶべきおしゃれ感)を脱いで傍らの机にディスプレイ。机には青いラインの入った白のテーブルクロスが掛けられ、ガラスの瓶に向日葵が数本飾られている。

 忙しない東京での毎日で、置き忘れたものをひとつひとつ手繰るように耳を澄ましていた。そんな感覚をくれる稀有な人。東京で歌っていてくれて本当にありがとう。

 始まりは「不和リン」「腸髪のサーカス」、salyu×salyuのイベントで一気に引き込まれた曲達が立て続けに。「日時計」の相変わらずのぐるぐる感や大貫妙子「夏色の服」のカバーもすごく良い。大貫さんと青葉さんが合わないはずもなく。そして季節を大切にした諸々の演出のお陰でとても居心地良い。
 15分くらいの休憩を挟み、二部開始。これがすごかった。
 「おもいでカフェ」はもう大好きな曲。小さなグラスの水面がひたひたになるくらいの幸せ感。
 続く「ソウル」がすごい。「小池アミイゴさんの個展に行ったんです。アミイゴさんのお子さんの、ソウルくんって子がいて。色々喋りかけてくれるんですね。でも、ソウルくんはまだ2歳なんです。だからまだ言葉になっていない、音の粒たち。それを、なになに?って聞いて、メモして、持って帰って、曲を付けました」。詞と音の絡み方が面白い。「パーパ、マーマ」「いやいや」なんて聞こえるところもありつつ、基本は意味を持たない音の繋がりで、だけど音に乗るとめまぐるしく一瞬一瞬生きているこどもの様子が見えてきてすごく楽しい。最後「ダッ!」で終わり、ギターかき鳴らして締めた後「ふふっ」て思わず笑みを零した青葉さん可愛い。何て自由に曲をつくる人なんだろうかと改めて思い、次に生まれる曲がまた楽しみになった。
 1年と3ヵ月過ぎても予断を許さない状況下、「原子力発電所が主人公の歌です」との紹介で演奏される「IMPERIAL SMOKE TOWN」は何も終わっていないと訴えているようで、会場が緊張に満ちる。本当なら、いつかこの曲が歌われなくなる日が来ると良い。けれどそれは途方もなく先だろうから、やっぱりずっと歌っていてほしいと思う。
 その緊張感からの次がもの凄かった。「ちょっと封印していた曲をやります。『機械仕掛乃宇宙』という曲です。わたしが弾き語りを始めるきっかけになった曲で、またやろうって思わせてくれたのは、この独奏会です。この曲をつくられた山田庵巳さんに、尊敬と、感謝を」。太陽のない街というディストピアで生きる「僕」の、ひとつの物語。10分くらいであれだけ物語る曲自体の凄さ。その独特な世界観を持つ曲を取り込んで演奏し切る青葉さんの凄さ。堪らなく濃密な時間で、客の拍手も一際大きく、長く続いた。これは封印もするだろうってくらい大きな曲。凄いひと時に立ち会った。やっぱり青葉さんの歌を聴くと、ひとつの物語を読み終えたような気持ちになる。
 本編終わりは「奇跡はいつでも」、アンコールで「ひかりのふるさと」。きらきらとひかりを残して幕を閉じた。

 MCで「独奏会を続けてきて、打ちのめされたことも、褒められたこともありました。……何だか、卒業式みたいだな。ふふ」と話していた。迷いなく進んでいるように見える彼女にも打ちのめされるようなことがあるんだなと思う。満員のVACANTで皆が聴き入っている、あのあたたかさを信じてみてほしいと願う。見守るよ。
 終演後、11月の独奏会ファイナル@自由学園のチケットがいち早く販売されていて、長蛇の列に思わず笑った。5ヵ月も先なのに脅威のリピート率。またこの日になくしたものは取り返せるから、それまで生きてみてもいいんじゃないか、なんてチケットを手にしておもった。ありがとう。


■セットリスト
01. 不和リン
02. 腸髪のサーカス
03. レースのむこう
04. 日時計
05. 夏色の服(大貫妙子カバー)
06. 路標
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07. おもいでカフェ
08. ソウル
09. パッチワーク
10. IMPERIAL SMOKE TOWN
11. 機械仕掛乃宇宙(山田庵巳カバー)
12. 奇跡はいつでも
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EN. ひかりのふるさと

♪「レースのむこう」

June 17, 2012

MAGNE4 @ 下北沢ERA

 初見のバンドツーマン。WOZNIAKの企画。初ERA、煙草の匂いがきつかった。

■ハイスイノナサ
 ピアノ(キーボード)の絡み方、鳴り方が好きなバンド。それはライブでも変わらなかった。むしろ更に好きになった! 今年2月にキーボード担当が脱退したそうでヘルプを入れての演奏だったけれど、初見だからか気にならず。あとは、音源よりもずっと残響ぽい、エモいな、とか。照井弟さんのコーラスワークはすごくきれいだとか。
 それより何より印象深いのは、都市と、海と、雲の動きの音がして、それを鳴らしているのが人だということ。基本は人が、休日のオフィス街みたいながらんとしたフィクションを滑っていくような都市感。そこに穏やかな海をたゆたうような気持ち良さがあったり、見上げた雲の動きに自分の意思が一切関係しない次元をみる冷静さがあったりする。聴覚だけではなくて、感覚全体を揺り動かされるライブ。そんなところはフランス印象派のピアノと似ているかもしれない。けれど都市の醒めた空気をまざまざと感じるライブは初めてで、戸惑いすら覚える。
 まだよく知らなくてセットリストは解らない。「ハッピーエンド」と紹介された曲、途中で手拍子の入る曲(覚えたい!)、新譜から「ある夜の呼吸」「波の始まり」はやったかな。音源集めよう。8月のワンマンがすごく楽しみ!




■WOZNIAK
 アルコールと共にゆらゆらくねくねしたくなるクラブミュージック。こういう、反復と少しの変化を繰り返していく系の脳内麻薬出そうな音は久々で楽しかった。けれど1時間以上切れ目なく、ひたすら立ちっ放しなのはちょっと辛い。ソファで休憩しながら、好きなフレーズが来たら踊ったりしたい。
 最後のMCが印象に残っている。音楽性の変化(以前はロックバンド寄りだったらしい)、これからも変化していくということ。とても純粋だと思った。ゆえに、この先どうなるんだろうかとも思った。

●セットリスト

6/17WOZNIAKセットリスト1.ATTACK2.BEAMS3.SEVEN4.ASURA5.ACID6.元7.ハウシー8.ドラム叩く(ゲスト:照井順政/鎌野愛fromハイスイノナサ)続く。

— WOZNIAK_BAND (@WOZNIAKBAND) June 18, 2012
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Maira Gall