September 23, 2012

Penguinmarket Records × 晴れたら空に豆まいて presents 『OTONOOTO』
@ 晴れたら空に豆まいて

 繋がりの解らない3組。ライブは端々に共通項が見えるのが面白かった。
 久しぶりの晴れ豆は初めてのスタンディング。とはいえ和風な内装とやわらかい照明のお陰でのんびり。8割くらいの入りで、パーソナルスペース広めなのも良かった。


■ハイスイノナサ
 広くない舞台に密集する機材、メンバー。フロアとの段差が小さく、距離が近い。そんな晴れ豆空間で聴く音に体温を感じた。今までは都市の無機質さとそれを鳴らす人との隔たりが面白かったのだけど、何度か観たせいもあるのか、音と人が結び付いてアナログな響き。逆に都市感が薄い。どちらも好きだ。色んな面を見せてくれるといい。
 twitterでセットリスト流れてきて、色々曲名が判った。手拍子の曲は「平熱の街」という名前。いいね、あの熱さと落ち着きの振れ幅が街の平熱。「ある夜の呼吸」は晴れ豆にとても似合っていた。最後「動物の身体」でニュートラルな締め。残響祭とはまた違って、ふわりとしていて心地良い。浅い眠りに就くような終わり。
 次の世武さんがこうコメントしていた:「ニューヨークの現代アートみたいな、でもヨーロッパの映画みたいな感じもあり」。前者はよく解る。後者はあまりぴんと来ないけれど面白い。モノクロの8mmフィルムのような? そんな風に聴いてみようかな。
 しばらく東京でのライブはないとのこと。是非また。次までにCD聴いて、ゆっくり付き合っていこうと思う。きっと恒常的に好きな音だ。

●セットリスト(twitterより)
1. mass 2. 都市の記憶 3. ハッピーエンド 4. 地下鉄の動態 5. ある夜の呼吸 6. ensemble 1 7. 少年の掌 8. 平熱の街 9. 動物の身体


■世武裕子
 初見。ピアニスト+作曲家+最近シンガーソングライターさんらしい。
 ジャズとポップスが幸せに結び付いたカラフルな日向の音。一方、ハイスイと似た都市感もあり。「Hello Hello」が前者、名前解らないピアノ曲や「ニューヨークと呼ばれた場所」が後者、「75002」は中庸かな。中庸~後者に惹かれる。
 「現代音楽ってよく言われるんですけど、自分では未来音楽やと思ってる。未来って言うても100年後とかじゃなく、3日後くらいやねんけど(笑)」と話されていたのが印象的。「現代」「未来」と対比すると遠いが実際は逆で、現音よりもずっと日常に近い、手の届くところにある音。現代より未来の方が近い。そこに何か新しい鍵がある気がする。とか、ぼんやり考える。
 声は初期SalyuやUAに少し似ていて、そのエーテルや神秘性を薄めて日常に近付けたような。隣に居てくれる声。シンガーソングライターをやろうと思ったのは現音より解りやすいことをするため、という話だった。矢野顕子さんのライブが印象深かったとのこと。日常に近付き過ぎない方が個人的には好きかな。まだ方向が定まっていなくて、これからも面白そうな人。
 プロフィールを調べると「天性の才能」「あの○○が絶賛」と紹介されている。どんな孤高の女性かと思ったら、気のいい関西のお姉ちゃん! 笑いを取ることはマナーである、というような喋りっぱなしのMC(大阪人だと思い込んでいたら、滋賀生まれの京都育ちさん)。親しみやすさが曲のカラフルさと通じていて、人と音が一致しているのは幸福だなと思う。
 出会えて嬉しい! とても惹かれる曲を見つけた。やっぱりカラフル。



■egoistic 4 Leaves
 初見。男性6人組(ツインドラム・パーカッション・ベース・ギター・キーボード)の名古屋のバンド。名古屋熱いインストバンド多いな。イベント名のPenguinmarket Recordsは彼らの所属するレーベル。
 衝動をぶつけるだけぶつけたような音。それだけではないけれど、とにかく熱い。暑い。厚い。6人の音がフォルティシッシッシッシッシモくらいまでクレッシェンドして終わる。若いなあと思っていたら、メンバーの多くが32歳超えみたいな話をしていた。しかし若い。egoisticという名の通り自覚的にやっているんだろう。
 ハイスイと印象や音色は随分違うのに、少し似ている。変拍子? 構成には共通項があるのかもしれないけれど、ハイスイの視点はずっと醒めたところに置かれている。自分にはその方が近しく思える。
 「色んな人の靴を舐めて東京来たんで」とか自虐的なMC泣ける。名古屋から来ました!と言いつつ岐阜出身のパターン笑った。

September 16, 2012

残響祭 8th ANNIVERSARY
@ Shibuya O-EAST & duo MUSIC EXCHANGE

 昨年に続いて参加。この1年で沢山の残響バンドを知って、ライブを観て、ずっと好きになったなあとしみじみ。
 タイムテーブルは当日現地で発表するスタンス。選り好みせず観てほしいのだろうけれど、事前に発表されると予定組みやすくて助かる。私用こなしてからの参加だったので余計にそう思った。omni観られなくて残念。
 お祭騒ぎはとても楽しかった。最後に河野さんが「来年もやりましょう!」って言ってくれて嬉しい。きっと!


■SPANK PAGE
 初見。どこかで和製シガロスと紹介されていた。ああいう宇宙見える系ではなくて、自分の前に立ちはだかる壁を壊すくらいのシューゲ寄りな音、という印象。もっとぶっ壊してくれ、と思ったけれど、あの繊細さが彼らの味で魅力なのかも。


■ハイスイノナサ
 すごく良かった。この日一番のめり込んだアクト。
 初めてドラムの手元が見えた。それでも何が起きているのか解らないけれど、確かに秩序があるからあんなに美しいんだと思った。数学のよう。あの音はドラムの人が出しているんだ!って驚きも沢山あった。仕組みの氷山の一角が解って嬉しい。ともすれば機械みたいになりかねない精確さが、他の音との関わりの中で温度を持つところに人間を見る。もう少し考えたいところでもある。
 初めて一緒に手拍子できたのも嬉しかった。次のライブでCD買おうかな。「ハッピーエンド」のうわあああ感(としか今のところ言いようがない)も健在。最後「動物の身体」で澱みが全部流されたような気がした。ピアノと電子音の組合せだけでも堪らないのに、ギタードラムベースに人の声、皆混ざり合っても濁らず清冽な音に触れられる幸せといったら。
 あまりに良くて、26日のイベントのチケット予約した。とても楽しみ。


 ハイスイ(duo)早めに切り上げて移動しようと思っていたのに最後まで釘付け。ピープル(EAST)間に合いはしたものの、着いたら大混雑でステージ見えず。


■People In The Box
 MCなしで『Ghost Apple』全曲演奏。再現とか反復ではなく、今の彼らの声だった。ガートルード・スタインの言葉を思い出した - 「繰り返しなんてものはない。あるのは声(insistance)だけ」。
 思い入れのあり過ぎるGAの、初めて出会う面が幾つもあって高揚する。「金曜日 / 集中治療室」の痛みが際立って聴こえたのはびっくり。駆け抜けるようなリズムにホイッスルも登場して、ライブではテンション上がるばかりの曲だったはずが。モナリザのくだりは愉快だと思っていたらかなしかったし、《翌朝 報いの雨に濡れて》以降のくるしさは何なのか。「僕」と「君」の双生児のような近さVS結局は他者であるという絶対の溝の、どうしようもない抗いがいっぱいに詰まったGAのひとつの頂点だと思った。ここで幕を引けば崩壊して終わりだったのに、一週間はまだ続く。
 月曜日から土曜日の重みが伸し掛かった「日曜日 / 浴室」は鳥肌。あの帰結《わたしのいのちを、君にあげる / パンケーキみたいに切り分けて、あげる》のために一週間があって、あの帰結があるからまた一週間が始まる。初めて「再生」の曲だと思った。終わらない抗いの中で生き続けるために鳴らされている音楽だった。
 同時に弔いのようでもあった。記憶をなぞって大勢の前で解放するプロセスに立ち会っている気がしていた。古い日記を取り出して、順に読み上げては炎にくべて、ひと山の灰を積もらせる。彼らが去った後、燃え残った林檎の赤が目に染みた。

●セットリスト
1. 月曜日 / 無菌室 2. 火曜日 / 空室 3. 水曜日 / 密室 4. 木曜日 / 寝室 5. 金曜日 / 集中治療室 6. 土曜日 / 待合室 7. 日曜日 / 浴室


■9mm Parabellum Ballet
 照明の赤がGAの赤だなあとか、前の人達の余韻でぼんやりしていた。そんな中でも二度目の9mmはやはり圧倒的。2階も踊る人いっぱいでフロア揺れていた。「Black Market Blues」「The Revolutionary」「Vampire Girl」「新しい光」とか知っている曲沢山聴けて楽しい。いつの間に曲名と曲が一致するようになったのか。
 ボーカルの人柄通りなのだろう詞の真っ直ぐさを、まだうまく受け止められずにいる。ちょっと違うけれどBJCに近い。嵌まると癖になるんだろうな。なりつつある。


■te'
 te'も二度目。リハから凄かった。パフォーマンスさながらのドラムソロ。そんなに長時間やって大丈夫?と心配になるほど叩いていたけれど、杞憂に過ぎなかったことは本番で思い知らされた。他メンバーが入ってからも凄かった。
 9mmと血が繋がっているんだと思った。躊躇いなく向かってくる音が体に届いた瞬間の皮膚感覚(みたいなもの)が同じ。何もかも吹き飛ばす、気持ちの良い暴風のよう。


 te'のアンコールに出演者が十数人割って入ってのエンディング! 一度ハーメルンの行列みたいにぞろぞろと一列で通り過ぎて肩透かしを食らっていたら、二度目はまあひっちゃかめっちゃかな乱入になった。ダイゴマン、ホイッスル咥えて交通整理みたいな動きしつつ客をアジってたの笑った。ある意味笛吹き男。
 来年はどんなお祭りになるだろう。今から楽しみにしている。


September 4, 2012

デイジーワールドの集い @ 青山Cay

 細野晴臣さん主催の集い。事前予約なし、先着順入場。長い列に並んで何とか入れたものの、場内は更にすごい人人人でステージ見えず。もっとゆったり観られたら良かったし、後方にスピーカーなくて距離があったけれど、音楽はとても素敵だった。


■青葉市子
 「物語を、歌います」との挨拶でスタート。人の多さとレストランという環境で、小さなざわめきのなか演奏。「IMPERIAL SMOKE TOWN」はもう少し張り詰めた空気の方が似合うかな。しかし「機械仕掛乃宇宙」の孕むエナジーは圧倒的。物語と音楽の力が青葉さんを中心に渦となって聴衆を飲み込む。メルクリウス、ウェヌス……の響きは祈りのよう。音が消え、渦の内側から湧き上がる拍手はとてもあたたかかった。
 からの、打って変わって「イソフラ区ボンソワール物語」! 初めて聴いて、イソフラボンボンイソフラボン♪が頭から離れなくなった。街の女の人はみんな巨乳ー♪とか、可愛らしくて楽しくて少し奇妙。かと思えば最後、いざ炎の中へー♪みたいなシビアな結び。このバランスの取り方が好きだなあと思う。
 宣言通りの豊かな物語世界、ありがとう。またね。


■吉田省念 (くるり)
 ギターと声と言葉で真正面から向き合ってくる。誠実な人なのだろうと思った。くるり的な誠実さとやっぱり似ていた。普段あまり触れない感覚が新鮮。くるりでもボーカルを取られているらしい。気になる、聴いてみようかな。


■中沢新一
 まさかの河内音頭 with 木津茂理さん! びっくり。聴けて良かった。懐かしい。色々あって一番テンション上がったかもしれない。細野さんの手拍子に乗せて木津さんの三味線とお唄、そして中沢さんのお唄もとても幸せだった。ノーリーズンで幸せで、それでいいやと思えるのは久しぶりだった。


■細野晴臣グループ+Salyu
 鳴っているだけで楽しくなる音は自分にとっては多くなくて、だから細野さんの音は貴重。何なんだろうか。齢を重ねた人が楽しく生きている様に救われる感覚はある。ご機嫌で楽しい音だった。面子に関わらず、また機会があれば集いたい。
 SalyuとのコラボはU-NITEの時と同じ「Smile」「I Love How You Love Me」。男性ボーカルに合わせて歌う時のSalyuのやわらかい声音が好きだ。そして声量すごい。後方にもしっかり届いて嬉しい。細野さんから音源化の話が出ていた、是非とも!
 3歳の時に公開された映画「風の谷のナウシカ」のテーマ(細野さん作曲)が歌の原体験だというSalyu。ずっと気に入って歌っていたそうな。その話を聞いた細野さん「鳥でいうと親みたいなもんだな」笑った。

●セットリスト(twitterより拝借)
1. Cow Cow Boogie 2. Song Is Ended(ゲスト木津茂理) 3. Tutti Frutti 4. Smile(ゲストSalyu) 5. I Love How You Love Me

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Maira Gall