March 29, 2013

『Ave Materia』release tour @ 大阪BIG CAT

 7分咲きほどの桜を京都や大阪城で楽しんだり、たこ焼きつついたりグリコさんひやかしたりと、一泊二日の旅でベタな観光客と化す。地元やのに。
 地元で初めて観る好きなバンドのライブは、ほんまにすばらしかった! マイベストNGO劇場編を上回るくらい最高やった。色々な要素があってそう感じたんやけど、何よりも、ピープルの音楽は自分の根幹に絡み付いて、それをダイレクトに揺るがし得るものなんやって再認した。びっくりするわ。ありがとう!!!


▲右については後述

 東京言葉に戻してみる。

 一昨々日その素晴らしさに打ちのめされたダイゴマンを観たい!と思い上手側へ。今ツアー初めてドラムの近くで体験して、AMにまだまだ知らない表情があることを思い知る。今日は本当に楽しかった。前回の盛岡であれだけ落ちたのに。ピープルは聴く時々で受け止め方がすっかり変わってしまう。
 「みんな春を売った」さえ体が揺れるほど。今までのように怖くなかったのはドラムの音がすぐ近くにあったからだろうと思う。華奢な人だけど、放たれる音は寄り掛かれる大樹のように思えることがある。
 「さよならさ」って一緒に唇に乗せてみると、ふっと体が軽くなった。「さようなら、こんにちは」に繋がっているんだと今更思う。多分個人的にはトラウマ的な曲であり続けるけれど、今日初めて目を合わせることができた気がした。これからだ。
 ドラムに話を戻すと、「ストックホルム」こんなに格好良いパターン叩いてたんだ!とか、これも今更。ピープルの曲は何度聴いても新しい発見があって楽しい。

 ずっと楽しくて、本編でほとんど燃え尽きていたのに、アンコールの最後に「汽笛」が来た。照井さんも一緒に、AMを経ての汽笛! 歌詞の一言一句がダイレクトに入ってくる感覚、CSツアーを超えていた。波多野ソロくらい言葉が強かった。AMがあるからCSや過去作のメッセージも強くなったんだと感じる。ピープルの詞はすごく好きだけど、最初から最後まで言葉のひとつひとつに揺らされるなんて体験は初めてだ。こんなにも素晴らしいライブの最後に《欠けたこころにつかまって / わずかな君を取り留めたよ》とか、泣くしかない。
 そんなこんなで、詞に根底をぐらぐら揺らされていて、折角の照井さんとのツインギターにあまり耳が傾かなかった。それでもあの声だけになるパート、4人のコーラスが一層うつくしかったのは覚えている。色々な意味でまた聴きたい。
 何となくやってくれる気がしていたダブルアンコール、曲は「ヨーロッパ」、3人で演奏。汽笛で散々揺らされた後の《君の胸騒ぎが本当になるといいな》しんだ。少し大人びて変質しても、ヨーロッパの強度は変わらない。
 終演直後の自分のツイートが生々しい。120分の魔法だった。少しずつ薄れていくんだろうけれど、消えることはない気がする。傷跡みたいな残り方をしている。

 「気合い入っとるけん!」という波多野さんの宣言で始まったこの日、彼らにとっては昨年12月の胞子拡散祭@梅田のリベンジのようだった(後述)。自分にとっては、FRツアーBIG CAT公演のリベンジだった。震災の混乱に揉まれて中止になったあの日、2011年3月12日のことを思い出したりした。そんな諸々が重なった「ヨーロッパ」のアウトロがとどめになった。しんだり生きたいと思ったりいそがしい。


爆弾の音が聞こえたとき
きみはもうひとりではない

辺りにはもう誰もいないけれど
きみはもうひとりではない

『Ave Materia』の演奏旅行が街にやってくる
きみだけはもう、ひとりではない


- オープニングの詞より



■セットリスト
01. 時計回りの人々
02. 市場
03. 球体
04. 割礼
05. ダンス、ダンス、ダンス
06. みんな春を売った
07. 物質的胎児
08. ブリキの夜明け
09. 八月
10. 失業クイーン
11. ストックホルム
12. 旧市街
13. 序
14. 金曜日 / 集中治療室
15. ニムロッド
16. さようなら、こんにちは

EN.
01. 市民
02. 完璧な庭
03. 汽笛

EN-2.
ヨーロッパ


■MC
・序
だ「健太がスネアを練習しました!」
ふ(ドラムスティック掲げる)
(会場拍手!)
だ「この日のためと言っても過言ではございません!」
ふ「過言ではないですね~」
だ「『序』のため、いや大阪のためと言っても! 過言ではございません!」
ふ「過言ではないですね~!」
(客爆笑)
ふ「だから、皆さんもウォウウォウ言ってくださいね」
は「いけるかー!って(笑)」※9mm定番の煽り
だ「何か聞いたことあるなあ(笑)」
は「いけるのか大阪ー!」
客「「…………おおー!」」
は「この空気ね、嫌いじゃない(笑)」

・グッズ紹介
だ「さあ、このエコバッグに何を入れていますか?!」
は「あのー、名前が出てこない、眼鏡かけた人……」
だ「?」
は「太鼓持った、」
だ「俺ですかぁ?!」
(会場爆笑)
客「くいだおれ太郎?」
は「ああ、そう、くいだおれ!」
だ「ああー! 俺かと思いましたね! 眼鏡で太鼓持って。俺普段眼鏡だから(笑)」
(会場笑)
だ「(客に)あれくいだおれ太郎っていうの?」
(客頷く)
だ「ふうん。くいだおれ太郎か山口大吾か! みたいなね!」

・胞子拡散祭
ふ「大阪は、前回のライブが、ね。ちょっと」
は「そうだね……あの伝説のライブ(笑)。あの時来てた人、いますか?」
(フロア、7割ほど手が挙がる)
ふ&だ「おおー」
は「あ、良かったー。嬉しい。本当に嬉しいです、ありがとうございます!」
(客拍手)
は「来てなかった人のために説明すると、俺の声が出なかったんだよね。風邪で。……アノコハッ」※ニムロッド冒頭、ひそひそ声で再現
ふ「僕のコーラスがメインボーカルみたいな(笑)」
は「[対バンの]THE NOVEMBERSの小林くんがアンコールで『はじまりの国』を歌ってくれてね」
だ「あのライブは忘れられないね」
は「ほんとに。多分俺、大阪来る度に思い出すと思う(笑)」

March 26, 2013

J-WAVE「THE KINGS PLACE」LIVE vol.2 @ 新木場STUDIO COAST

 KPナビゲーターが集まってのライブ第二弾。COAST好きだ。

■androp
 初見。あくまでも個人的に、プラスチックみたいだと思った。予め用意された台本に則って進行する、額縁の向こうの劇のような。フロアで跳ねている人達にはきっと全然違う風に受け取られているんだろう。という意味で新鮮だった。


■People In The Box
 照井さんを加えたAM編成。4人では今までで一番大きなハコ? とはいえ、配置もメンバー間の距離も変わりなし。違ったのは、客層と、照明がより映えていたことと、ドラムセットが(多分転換の都合で)高さ50cmくらいの台に乗せられていたこと。
 何よりも、山口大吾のうつくしさ! これに尽きた。散々書いているし、ライブの度に思っているけれど、改めてはっとした。生命そのもの。しなやかさで躍動感溢れるドラミングに両性併せ持つ音。比類なきアーティスト。ピープル以外にも、もっと色々な人とシチュエーションで観てみたい。
 客層がいかにも邦楽ロック的で新鮮。一曲目「旧市街」のイントロから最前辺りの一部でいくつも腕が上がっていて、この人達はどうなるのかと眺めていたら、時々棒立ちになりつつも基本的にサビでは腕を上げて乗り続けていた。バンドへの親愛の意思表示なんだろうと思うといとおしい。《空をかえせ》デモのようだった。
 攻めの6曲。「ニムロッド」締めで波多野さんがドラムの台に乗って、一拍ブレイクの後にダイゴマンと音を放つ、その光景が本当にきれいだった。締め方にバリエーションがあると良いなといつも思うけれど、時々こういう瞬間が見られるのは嬉しい。
 ダイゴマンMC、客のノリの良さがうまく作用して、一際輝いていた。楽しかった!

●1. 旧市街 2. 球体 3. ダンス、ダンス、ダンス 4. 市民 5. 完璧な庭 6. ニムロッド


■クリープハイプ
 やっぱりボーカルが素晴らしい。生まれたばかりのみどり児のような、人に訴えて惹き寄せる声。苦しみにも悲しみにも喜びにも嘘がなくて、直球でぐさぐさ刺さる。かと思えば演じ方も巧い。演じる=嘘ではなく、本当を伝えるための演技なのだろうとこの人については思う。何かの曲の最後、音が徐々にディミニュエンドしていって遂に途切れた時、ちいさく「ありがと」と呟いたのには痺れた。やるな。
 バンドの演奏がそのボーカルから剥がれていないのはきっとすごいことなんだろう。巻き上がる風に自ら乗って音が舞い踊るイメージ。風が進み続けるのを後押ししたりもするし、時にボーカルを包む緩衝材のようでもある。
 結構好きなんだけど、どう聴くべきかまだ解っていない。ダイバー多いから前方は厳しいし、ワンマンもためらわれる。またいつかの対バンを楽しみにしていようかな。


■Nothing's Carved In Stone
 3度目のナッシングス、今日が一番楽しかった! こうして数組の対バンで聴くと彼らの音の重厚さが際立つ。ボーカルのMCが正直合わないと思っていたけど、今日は少しやさしく感じたり。耳馴染みのある曲が少しずつ増えてきたり。
 Everything's carved in our memory! と言い切るにはあまりにも記憶力が頼りないけれど、そう思いたいくらい楽しいライブだった。また、きっと。

March 20, 2013

『Ave Materia』release tour @ 盛岡Club Change

 ふらりと当日券で盛岡へ。去年も春分の日はこんなだった。
 岩手県美に「アートフェスタいわて2012」を観に行った。素朴な花の絵も、避難所の写真も、様々な海の表現も、ひとつひとつ体に響いた。アートから溢れる沢山の主張を取り込んで、余韻の渦に巻き込まれたまま、ぼんやり駅から40分歩いてハコに着く。


▲券面手書き!

 会場の形が何だか歪で面白い。フロアを上から見ると )) ←こんな?なのか、右上と左中程にスピーカーがあり、上がステージ、右下にドリンクカウンター。キャパ小さくてステージが近い上にスピーカーも近くて、音がいつもより傍にあった。

 照井さん加入してはどうか?くらいの感じになってきた。だけどそうなるとハイスイも聞きたいので困る。勝手なシミュレーションで困る。
 メンバーとはまた違うダイナミズム。彼のいない「物質的胎児」や「八月」などなど、を考える方が難しくなっている。AM以外でも「市民」とか「金曜日 / 集中治療室」とか、ツインギターいいな、と思うことも多い。MCを徐々に侵食してきている感じもとてもいい(後述)。
 そして、これほど変化してもピープルはピープルのままだ。雪の結晶を連想した。街のあちこちで溶け残った白を見たからかもしれない。




 個人の感想を連ねます。と、前置きして書きます。

 AMは半端なく重たいアルバムで、それは聴き始めた時からずっとそうだったけれど、どんどん度合いを増してきて、今日が一番重たかった。ほとんど苦行。なのに聴かずにはいられない。
 《空がおちてきたところで / 指くわえ みているだけさ》と言われたら、空に潰されるならいいなあと思い、《土足厳禁の庭で息をとめるのかい?》と問われたら、そうだよと答える。そういう反応をしたのが今日だった。
 「みんな春を売った」今までより更につらかった(つらい、という言葉をとても久しぶりに使う)。「物質的胎児」で生まれようとするいのちを前に、聴きに来てごめんなさい、と思う。このうつくしい空間に立ち会うことをひどく場違いだと感じた。
 「火曜日 / 空室」くらいから持ち直して、「序」の楽しさを通って、「ニムロッド」も重たい曲だと思うけれど、《あなたの絶望で空が晴れ渡るよ》に辿り着くと少しほっとした。バタイユ。

 AMで飛び抜けて再生回数の多い「物質的胎児」は、期待値が高いこともあってか、ライブだと一番難しい曲。それでも「みんな春を売った」という衝撃のクッションになり得る曲は他に浮かばない。
 《あんぜんなみどりむし》と並んで《いるか すべりこんだ》が好きだ。ドルフィン=デルフォイ→音楽の神アポロンの連想と、イルカは自殺する動物だという昔聞いた話とが、曲とないまぜになる。胎児に音楽と死がもたらされた一節。そこで生が始まる。生も物質だと個人的には思う。"Ave Materia"は、発売前の勝手な予想とは全然違ったけれど、変わらず祝福のように響く。
 AMは、ピープルは、「生きろ」とか「死ぬな」とかいう直球を投げない。そのすれすれのところを進んでいるんだろうとライブでは思う。選択を、あるいは選択のための熟考を、オーディエンスに促す。だから死を選ぶ余地も残されてはいる。その僅かなスペースで息をするように、観ていた。ステージのうつくしさが遠かった。



絶望のさなかにあってぼくは幸福だった。

- ジョルジュ・バタイユ『青空』天沢退二郎訳より



 混乱したまま書いたらひどいことになった気がする。正気に戻ったら消そうかな。
 彼らのパフォーマンスはいつもながらに素晴らしかったことを強調して、締めます。MCが冴えていたので下に。


■セットリスト
01. 時計回りの人々
02. 市場
03. 球体
04. 割礼
05. ダンス、ダンス、ダンス
06. みんな春を売った
07. 物質的胎児
08. ブリキの夜明け
09. 八月
10. 完璧な庭
11. 火曜日 / 空室
12. ストックホルム
13. 序
14. 金曜日 / 集中治療室
15. ニムロッド
16. さようなら、こんにちは

EN.
01. 市民
02. はじまりの国
03. 旧市街


■MC
・グレイ
だ「サポートギター、ハイスイノナサ照井順政!」
客(拍手!)
ふ(照井さんの左腕を高く掲げる)
客(拍手!)
は(照井さんの右腕を高く掲げる)
だ「ははは! グレイみたい、連れ去られた(笑)」

・UMA
だ「よっちゃんUMAとか詳しいんでしょ?」
て「UMAね、うん」
は「(客に)UMAっていうのは、未確認……生物」
て「(頷く)未確認生物。モンゴリアンデスワームってのがいて」
だ「ほう」
て「敵を見つけるとぴゅって毒を飛ばすの。で、毒が避けられると、電撃を出す」
だ「すげえな!(笑)」
客(笑)
て「こいつがね、一番いる可能性が高いって言われてる」
だ「はははは! えー、そんなモンゴリア……」
て「モンゴリアン、デスワーム」
だ「モンゴリアンデスワーム、を倒すために! 僕たち次の曲を作りました!!」
客(爆笑)
だ「モンゴリアンデスワームを倒すために、健太がスネアを練習しました!!」
客(笑&拍手!)
ふ「『序』のためじゃなく(笑)」
だ「『序』のためじゃなく! あくまでも、モンゴリアンデスワームを倒すために! 俺がスネアを教えました!!」
客(爆笑)

・アンコール
(拍手の中、メンバー再登場)
ふ「今日はやらないの」
は(福井さんの視線に少し応えて、俯いて、笑顔でフロアに向き直る)
は「……アンコールワット、ありがとうございます」
客(笑&拍手)
は「いつからかこうなったんですけど、なんかねー、ひっこみがつかなくて(笑)」
だ「バリエーションがあるといいね」
ふ「そうだね。バリエーション増やせば?」
は「バリエーション……」
だ「うん……」
は「っていっても、アンコール……ワットくらいしかないでしょう?! ははは!」

March 14, 2013

『Ave Materia』release tour @ 金沢AZ

 金沢、変わらずとても居心地の良い街だった。「金沢に来ると、戻ってきたような気持ちになります。ただいま」との波多野MCに、訪問2度目ながら共感を覚える。そのせいなのか、何なのか、和やかなライブだった。


▲AZボトル!(剥がした)

 4回聞いてもポエトリーリーディングの3番目と6番目の文が聞き取れず、もどかしい。波に消されていく砂浜の文字のよう。波に負けずくっきりと記憶に残るあの結句の後、いつものSE("And I'm Singing" by Jim O'Rourke)に繋がっていくの好きだ。何度体験しても、四方八方から色々な形の時計や音に囲まれる立体感堪らない。
 セットリスト、1~9曲目と13~16曲目がほぼ固定になったのかも。間の3曲とアンコールがシャッフル対象。「火曜日 / 空室」のアウトロ、轟音の中から立ち上がる「ストックホルム」が久々に聴けて嬉しい。こういう繋ぎもっと聞いてみたい。

 3曲目が終わった後、最初のMC。「『Ave Materia』というアルバムは……すごい名盤なんだよねー。ほんとこんな名盤ですみません(笑)」波多野さんが楽しそうに語り始める。「どうして名盤かっていうと、これは各地で何でだろう?ってMCしてて気付いたんですけど、すごく踊れるんですよ。踊るっていうのは、今皆さんの心臓がどくんどくんいってるでしょう? あー、この話やめとこうかな? ……皆さんの心臓がどくどく動いてる、それが、踊りです」CSツアーファイナルに通じるダンス話。こういう話が聞けるのはとても嬉しい。
 21世紀美術館で観たばかりのラファエル・ロサノ=ヘメル「パルス・ルーム」と結び付く。心拍が電球の明滅に変換されて、約300個がそれぞれのリズムで瞬く作品。明滅そのものも、壁に映るシルエットも、しゃらしゃら鳴っている音もうつくしく、不思議と居心地の良い部屋。金沢でこのMC聞けて良かった。ありがとう。

 個人的な鬼門「みんな春を売った」さえ、少し優しかった。最後の《いつか君も おとなになるよ》(余談だけどここだけ「君」が漢字なのは意図的なんだろうか)を歌う波多野さんがしゃがんで、それだけでフロアと距離が縮まる。客に言葉を突き刺すような前半の歌い方から変わって、舞台上手、遠くを見ながら歌うような姿も優しく感じた。
 「ブリキの夜明け」ではアンプに乗って歌い始めて驚く。高い。海の果てまで、空の彼方まで、どこでもないところまで、届くといい。《警笛がひとつ鳴り渡る》照井さんの警笛ギターの主張が強くなっていた。いいね。
 「八月」最後の繰り返しの何度目かで、テンポ急上昇。勿論仕掛け人はフレーズを先導するダイゴマンである。「シャン! シャン! シャン!」と速く鳴らされるシンバルを聞いた他のメンバーが、一斉に楽器構え直して姿勢正していて笑う。終わった後、波多野さんが「速え(笑)」と呟く。楽しかった!

 「序」冒頭の素敵なアレンジ、リズム隊がようやく見渡せた。ダイゴマン先導でワンフレーズ叩いた後、ドラムスティックでびしっと指された福井さんのスネア。昨夏劇場編のタンバリンを思い出す。器用で柔軟な人。ダイゴマンと福井さんのスネアダイアローグが何度か続く。びしっと決めて一拍ブレイクを挟み、波多野さんのボーカルとタンバリン、照井さんと客のボーカルと手拍子が加わる。
 盛り上がりが頂点に達したところで「金曜日 / 集中治療室」になだれ込むのいいね。照井ギターが加わって音の渦が更に大きくなっている。踊れ踊れと音が煽る。楽しく聴いていたら、間奏の途中、いつもホイッスルが鳴るところで不意に演奏が途切れた。

 ……
 ♪ パフ!(バラエティ番組のラッパの音)
 客「!?」
 ダ「この続き、いつやるのか……今でしょ!!!」
 客「!!!!!」
 ♪ Aは花を散らーしてー♪

 びっくりした! 最近流行ってるCMらしい。めちゃくちゃな集中治療室では何だって起きる。
 「ニムロッド」から「さようなら、こんにちは」へ繋いで、本編おしまい。"Ave Materia"の意味を、彩りを、何度も考える。
 アンコール、攻めの三曲もキレキレで良かった。「完璧な庭」何度聴いてもどこか新しい。今日は演奏の最後、一拍溜めてジャーンジャカジャカジャカ……ってなるところの溜めがぴしっと決まり、一瞬の残響が深い空洞に響いているようでぞわりとした。1秒にもみたない瞬間が忘れられないこともある。

 3週間ぶりくらいに観たピープルは、照井さんがすっかり馴染んでいた。MC含め(後述)。着実な変化の跡を辿ることができて面白い。
 CS以降のピープルを観ると、生きることは美しいのだと思う。AMが出てからその感覚が一層強くなった。雨も血液も夜の闇も、鳥も空も人の足跡も皆ひっくるめた美しさ。なので混乱する。どうしてそんなことが可能なんだろう。

 3月半ばの金沢は、もう積もってはいないけれど、時折雪のかけらがちらちら舞っていた。冬にさよならを告げて東京へ戻る。夏でもあまり晴れる日は多くないのだと聞いた。それでも、金沢にはまたきっと来たい。


■セットリスト
01. 時計回りの人々
02. 市場
03. 球体
04. 割礼
05. ダンス、ダンス、ダンス
06. みんな春を売った
07. 物質的胎児
08. ブリキの夜明け
09. 八月
10. 火曜日 / 空室
11. ストックホルム
12. ペーパートリップ
13. 序
14. 金曜日 / 集中治療室
15. ニムロッド
16. さようなら、こんにちは

EN.
01. 市民
02. 完璧な庭
03. 旧市街


■MC
・アンコール
は「アンコール……ありがとうございます」
客(拍手)
だ「あれ? 今日はないの」
は「……アンコールワット、ありがとうございます」
客(笑)
は「忘れてください。記憶を遠くの、カンボジアの遺跡に埋めてください(笑)」

・SANAA
は「どやった? 21世紀美術館」
て「素晴らしかったです! あんな場所が近くにある皆さんが羨ましいです」
だ「よっちゃん、建築とか好きなんやろ?」
て「そうだね。一番好きなSANAAって建築家が設計してて。本当に素晴らしい」
だ「俺こないだSANAAに会ったよ!」
て「ははははは! 会ったんだ?」
は「俺もよく会うよ。CD貸したり」
て「CD(笑)」
ふ「何のCD? B'zやろ(笑)」

・スネア
だ「すごいねさっき、こういうの(だらららら……とロール?実演)やってたね!」
ふ「うん」
は「それ結構難しいよね」
だ「難しいかなあ?」
 (だらららら! だだ! だらららららら!とさすがのスネア捌き)
 「ま、こんなもんですけどね!」
客(拍手)
ふ「折角褒めてくれたのに、だいなし(笑)」

・金沢
は「金沢マテーリア!」
だ「言いたいだけやろ!(笑)」

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Maira Gall