October 25, 2012

TONOFON presents SOLO 2012
@ グローリアチャペル キリスト品川教会

 初見の2人のソロ演奏。楽しみに足を運んだ。開演前、撮影大丈夫そうなのでぱちり。プロテスタントらしい簡素な内装。pewに並んで腰掛けて聴く。

 素敵な照明設備。写真判りづらいけれど、ペンダントライト風に幾つか豆電球が吊られていて、曲によって星の明滅のように瞬く。あと十字架の後ろの壁、上下に照明が隠されていて、赤青黄金色になれる。
 ただ肝心の音、教会でリバーブがかかり過ぎて細部が曇っていた気はする。途中トクマルさんの弾いたパイプオルガンの独壇場。
 それでも楽しくて刺激的なひと時だった。ソロにも色んな形がある。

■高木正勝
 ピアノと一緒に産まれてきたんじゃないかと思う。己とピアノとの継ぎ目が見えなくて、正に天衣無縫。ピアノを手懐けたり、服従させているのはよく見る(それだって極めれば素晴らしい)けれど、1:1の関係は初めて見た。奇跡のよう。
 体を大きく使った演奏。上半身は鍵盤を0度とすれば120度くらいまで思うがまま動き、時に鍵盤を圧する反動で腰を浮かせるどころか立ち上がったり、曲間では準備運動みたいにぴょんと飛んでみたり。大袈裟とか力任せとかではなく、全て自然。ピアノのタッチはとても丁寧。どうなっているんだろう!
 「Girls」「Yubi Piano」が聴けて嬉しい。最後は映画の主題歌「おかあさんの唄」高木さんボーカルでとても良かった。女の人が歌うより、直截な歌詞とワンクッション距離があって個人的には好み。教会だからか、曲が天へ昇って、また降り注いでくるようだった。おかあさん=マリア様の連想をするとふるえる。
 ピアノを弾くのはこの人の一面でしかないというのがまた。天賦の才という言葉がよぎる。これからどんな音や映像を生み出すのか、まだまだ楽しみ。

■トクマルシューゴ
 音数多くカラフルなイメージがあったけれど、この日はソロ。それでもギター(+サンプラー)、ピアノ、オルガン、ウクレレ、客の声と、手持ちの楽器と会場をフル活用しての演奏。音に好奇心が強くて、遊び心のある人だなあと思う。サンプラーで音を重ねる中でエレクトリカルパレードのフレーズを挟んだり、オルガンで最初に容赦なく鳴らしたのがトッカータとフーガニ短調の頭だったり(笑)。楽しかった! Rum Heeはギター一本でもカラフルな響き。

 アンコール、2人で演奏するGirlsがこの日のハイライト。多分それほど細かな詰めはしておらず即興で、お互いの出方を窺いながら音が折り重なっていくのがとても面白かった。どちらかがためらったり誘ったりすると、すぐに相手が反応して打ち返していく、音のダイアローグ。
 前々日(!)にtwitterで高木さんが持ちかけていて、今日のトクマルさん曰く「(準備大変だったという流れで)更に高木さんに首を絞められました(笑)。でも、その絞められるのは悪くないっていう」。面白いコンビ。またどこかで。

October 15, 2012

J-WAVE「THE KINGS PLACE」LIVE vol.1 @ LIQUIDROOM

 ラジオ番組「THE KINGS PLACE」をナビゲートするバンドが集結してのライブ。
 LIQUID良いハコ。音良いし照明映えるし後方段差があるのは優しい。レモネードあって嬉しいし、立地も良い。開演前の寿司詰め待機さえ乗り切れば素敵な空間。


▲フライヤ、ハロウィン仕様!


■People In The Box
 昨日に続いてピープル。対バンだと格好良さ3割増。演奏キレあり、LIQUID自体の良さも相俟って素晴らしかった! 「市民」半端ない! 「天使の胃袋」ボーカル入る前のピィー!!!って容赦ないギターの音で飛ぶ。あれ大好き。エレクトリックで聴いたのは久々で嬉しい。
 新曲とんでもない。手の付けられない魔物のよう。真っ赤な照明が映える。ウィスパー(ピープル初?)で《水の音がしてる 耳を澄ませ》からの忍び寄るベース、水面が足元から盛り上がってきてぞくぞく。どうしたらあんな曲が、演奏ができるんだろう。最後《清潔な流し台を血液が走る》ボーカルだけで終わると、場内1000人ほどが水を打ったように静まり返る。堪らない空気。訳が解らないけれど圧倒的な何かを観た後の、言葉も行動も奪われた感。キンプレブログによると「市場」らしい。しじょう? いちば? 何を取り引きしているんだろう? 愛すべき魔物。新譜が益々楽しみ。
 続く「ダンス、ダンス、ダンス」の4拍子に安堵。したのも束の間、詞が迫る。ラジオで音源流れてからライブは初めてなのに、もうすっかり好きになってることに気付く。福井さんのコーラスが映える。終盤《森を突き抜けて》で3人同じリズムで音出すところ(わかりづらい……シンバルだとジャーン、ジャン、ジャーン!てところ)が好きなんだけど、割と抑え目の出し方。最後《荒れ果てた庭でひとり仲良く踊りましょう》ずんと来る。いつか軽やかに踊りながら受け止められるようになるだろうか。
 PA卓付近の段差上にいて、遠目だけど遮るものなくステージを見渡せた。久しぶりに見えた福井さん、縁の下の力持ちタイプだと思っていたら、全然クリエイティブかつパフォーマティブでびっくり。今更。特に新曲2つ、目を奪われる。
 恒例のMC、アウェイ気味の場でこそ本来の持ち味を発揮。照明を乱反射するドラム要塞に守られつつ、斜め75度上向いて声にエコーかけまくるダイゴマン・オン・ステージ。極めつけに「今日も全力でぶっ殺していくんで、マジでよろしく!!(ビシッと指差し!!)」堪らない。指から何か飛んできたマジで。PA卓までマジで。

……じっと座ってものを考えているだけじゃ駄目なんだ。そんなことしてたって何処にもいけないんだ。わかるかい?」
「わかるよ」と僕は言った。「それで僕はいったいどうすればいいんだろう?」
「踊るんだよ」羊男は言った。「音楽の鳴っている間はとにかく踊り続けるんだ。おいらの言ってることはわかるかい? 踊るんだ踊り続けるんだ。……
 - 村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス』より
 ※下線部、原文では傍点

 3人が演奏していることを変わりなく貴く感じる。かけがえのない、生の溢れる景色。あの場をつくってくれて、そこにいさせてくれて、本当にありがとう。

●セットリスト
1. 親愛なるニュートン街の 2. 市民 3. ニムロッド 4. 市場 5. ダンス、ダンス、ダンス 6. 天使の胃袋 7. 旧市街


 転換中、今回はツアーで来られなかったらしいandropからのメッセージとライブ映像が流れる。誠実な演出。LIQUID下手側の壁がスクリーンになるのを初めて見た。
 つくりものみたいにきれいなイメージを持っていたら、ライブ映像で一面客の腕が上がっていて壮観。思い込みよりずっとインタラクティブな音楽なんだなと思う。

■Nothing's Carved In Stone
 2010年のクリスマスにピープルと、同じLIQUIDで対バンして以来。ボーカルが金髪になって、それと関係あるのかないのか、記憶していたより一層攻めの色が強いステージだった。久しぶりに見る変化は嬉しい。

■クリープハイプ
 初見。割と楽しみにしていて、割と好きだと思った。曲も詞も演奏も。ストレートに向かってくる音を嫌いになれるはずもない。トリとは予想していなかったけれど、盛り上げまくって締めていた。肩車連立→ダイブの波を久々に見る。同じ音楽好きでも本当に色んな人達がいる。

October 14, 2012

ART-SCHOOL「BABY ACID BABY」TOUR 2012 @ 金沢AZ

 ARTの新譜ツアーにピープルがジョイント。
 ずっと来たかった金沢、観光して(21世紀美術館! 泉鏡花記念館!)ライブ観られてすごく楽しかった。昼間遊び過ぎてART終盤で体力が尽きかける始末。きっとまた。


▲ペットボトル、AZの粋な計らい!

■People In The Box
 波多野さんのギターが変わっていた! きっとこれなんだろう。素人が開き直って勝手なことを書くと、栗の渋皮煮みたいだと思った。ブランデーの深く染みてる渋さを基調にしつつ、全体に甘みが残っていて豊か(秋のせいにしておく。とても好きな甘味)。今の位置から少し先にある、けれどそのことで進む道を示してくれそうな、良い予感のする音。しばらくはギターが楽しみになりそう。バンドに馴染む過程を見ていたい。
 「球体」聴けば聴くほど良い曲! 暗めの黄緑色の照明。輪唱がダイゴマンから福井さんにチェンジ。人が密集するライブハウスで聴いていると球充填問題を連想する。ピープルの音が充填された球体達の隙間に満ちていくイメージ。
 ギターばかり気になっていたけれど、久々に近くで見たダイゴマンの演奏はやっぱりしなやかで力強くてうつくしい。「金曜日 / 集中治療室」嬉しかった! ホイッスル! 残響祭とは違って、テンション上がる曲に戻っていた。全曲演奏は特別。
 もうひとつ新曲、初めて聴いた。《ある日君は動くのをやめた》で始まる物語調の詞。新譜は物語が主張に消されていくのかと勝手に危惧していたから安心する。ボーカルに挟まるシンバルの音が妙にツボ。また好きな音が増えてしまった。しかも間奏3人ともやたら格好良い。新譜好きかもしれない、どうしよう。
 ラジオで声にエコーかけることを学んだダイゴマン、いつものMCがレベルアップ。「『Cut Two』買った人手挙げてー、少なっ!(なっ!(なっ!(なっ!)」普通にウケていた。エコーの魔力!
 「ニムロッド」→「旧市街」、最早定番の流れで締め。終盤はギターとドラムお疲れ気味だった気はする。福井さんの安定感はさすが。今更だけど旧市街の《メメント・モリ》コーラス他の音に負け気味で勿体ない。もう少し大きくても良さそう。
 ピープル久しぶりに観たという人が「球体格好良かった!」って言ってくれて嬉しかった。そうそう、すごく格好良いアンサンブルなんだ。対バンで見ると改めてそう思う。金沢で観られて本当に良かった。楽しい時間をありがとう。

●セットリスト
1. 沈黙 2. 笛吹き男 3. レテビーチ 4. 球体 5. 新曲(ある日君は) 6. 金曜日 / 集中治療室 7. ニムロッド 8. 旧市街


■ART-SCHOOL
 初見。ロック然としていた。演奏格好良かった。一方で、真面目にロックしている様は不器用に映る。後ろに向かって全力疾走しているような。心配になる突き進み方。
 有名どころで「左ききのキキ」「MISS WORLD」は知っていて、さすが格好良かった。だけど本編最後の曲がとても気になった。繰り返される《光のほうへ》は祈りにも叫びにも似ていた。多分引きずられてはいけないのに覗き込みたくなる、その感覚を久々に思い出す。曲名は「We're So Beautiful」というのだと教えてもらって鳥肌。
 そんな不安定な心持ちにさせる曲や詞に中尾さんの逞しいベースはアンバランスで、逆に似合う。珍しく俯瞰的なギタリストを見たと思った戸高さんは、途中束ねていた髪を解いた途端に主張が強くなって唖然。あの髪ゴム何か封印してたんだろうか。
 ARTにはARTの色があるんだって当たり前のことを感じた。それでも、戸高さんのギターは五十嵐みたいだって時々思ったり、犬が吠えるの光とはまた違うとか、五十嵐何してるんだろうとか、散々に勝手なことを考えていた。もう少し距離を置きたい。

 木下さんがちょうど誕生日らしく、MCでアピールしていた。祝われたい人なのか。
 アンコールで、戸高さんのギターに誘われて会場が歌う。ハッピバースデーディアリッキー、ハッピバースデートゥユー♪
 歌い終わったタイミングでピープルの3人登場。波多野さんがケーキ渡してハグした、らしい。なぜか見逃した。気付いたら皆すごい笑顔だった。おめでとう、ほんとハッピーであればいい。光のなかにいられるといい。

October 9, 2012

DIRTY PROJECTORS JAPAN TOUR 2012
@ Shibuya O-EAST

■DUSTIN WONG
 初見。ひとりでギターを抱えて、何重にもサンプリング→ループつくって組み立てていく。他の同じタイプの人達と比べて、出来上がる曲のスケールが大きい。居心地の良い家とか小さな城とかを超えて、世界とか宇宙に触れるような曲。10曲弱くらい全てその組み立ての繰り返しである意味パターン化してしまっていたから、俯瞰で見てしまうと40分は長く感じた。けれどひとつひとつアプローチが違っていて、丁寧に聴いていけばとても面白かった。

■DIRTY PROJECTORS
 初見。アンコール含め一時間強、新譜の曲中心のセットリスト。新譜はものすごく好きなんだけど、ライブは旧譜の曲の方が迫力あって良かった。何よりBEAUTIFUL MOTHER! 声という楽器の掛け合い、ライブだと凄まじい。複雑な数え切れないほどのピースがだだだだっとすごいスピードで組み上がって完成していくような。うつくしい立体構造物。素晴らしかった。
 自由なボーカルが安定したリズム隊とコーラスに乗って生きている。幸福な土壌あっての自由。だけど両者がうまくまとまるのは難しいのかもしれない。Daveが歌わないBEAUTIFUL MOTHERや、AmberのTHE SOCIALITES、全員の熱が入るUSEFUL CHAMBERが良かったから、そんなことを考えた。どこか分離していたような。
 Angelがいない?と思ったら、今はOlgaに替わったらしい。基本クールな演奏で、大人びた微笑みがきれいな人。だけど何かの曲(NO INTENTIONだったかな)でゆったりヘドバンする勢いでキーボードにのめり込みだして驚く。ギャップ素敵。
 USEFUL CHAMBERはさすが。噛み含めるように歌われる"Bitte orca, orca bitte"、意味を成さない語の連なりは呪文のよう。祈りのよう。あの「解剖台の上のミシンと蝙蝠傘の偶然の出会い」みたいに、意味(笑!)とか越えたところにしかないものを見せてくれる。その辺り通過した上で紡がれているからDaveの詞は好きだ。Bitte orcaの時、そのフレーズを肯定するように照明が明るくなったのもすごく良かった。
 アンコール一曲目がDANCE FOR YOUで嬉しい。UNTO CAESARも聴きたかったな。最後IMPREGNABLE QUESTIONは、そう来たか、と割と冷静に受け止めた。"You are always in my mind"、You=オーディエンスだよ!みたいに歌う。安易かなあと思いつつ、1時間ライブ聴いた後だと沁みる。
 ライブは不完全燃焼気味だったけど、追っていたいバンド。次の動きが楽しみ。

●セットリスト
01. SWING LO MAGELLAN
02. OFFSPRING ARE BLANK
03. THE SOCIALITES
04. CANNIBAL RESOURCE
05. BEAUTIFUL MOTHER
06. SEE WHAT SHE SEEING
07. NO INTENTION
08. ABOUT TO DIE
09. JUST FROM CHEVRON
10. MAYBE THAT WAS IT
11. GUN HAS NO TRIGGER
12. USEFUL CHAMBER

EN
01. DANCE FOR YOU
02. STILLNESS IS THE MOVE
03. IMPREGNABLE QUESTION

October 6, 2012

MEGA☆ROCKS 2012

 気付いたら仙台にいた。そんなはずはないのだけど、そう表すのがしっくりくる。ちょうど何かのお祭りだったらしい。はっぴ姿の人達と、首にタオルをかけたお馴染みフェススタイルの人達が混ざって、二度目の仙台はとても賑わっていた。
 何組か観たんだけど、ひとまずひとつだけ書きます。後で追加するかもしれない。書き過ぎたから削るかもしれない。


▲遅くに行ったら逆に1DayPassをいただいた


■波多野裕文(People In The Box) @ retro Back Page
 会場、雰囲気の良いダイニングバー。キャパ100くらい。弾き語る氏の奥にはモダンな壁掛け絵、傍らに1959年製のスタインウェイ。よくあるピアノブラックではなく、ウォルナット艶消しでやわらかな印象。小さなカフェバーで聴きたいって願いが早くも叶うことになった上、素敵なピアノのある空間! それはそれはやさしいひと時だった。
 音が浸透圧ゼロで流れ込んでくる。音と聴き手には多少なりとも距離があるはずなのに、ゼロだと感じるくらい傍に在る。という魔法がかかっていた。あるいは30分間の夢をみていた。あれほどやさしい侵犯を他に知らない。

 「放っておくといつまででもやるから、アラームをセットしました。時間になると、電話のベルの音が鳴ります(笑)」と譜面台にiPhoneを置いてスタート。

1. タイトル不詳《中国に行ってみたい》
(冒頭ワンフレーズ歌って)「という歌があるんですけど。あんなことになって。島を巡って争うことになって、違う意味が付けられてしまう……まあそれも面白いかなと」→歌再開
◇右足を左膝に乗っけてリラックスした風に、けれどとても丁寧に、音を繋いでいた。
 元々の意味を消してしまわないように聴きたいと構えつつ、始まってみればあの胡蝶の夢感にただ呑まれるのみ。

2. タイトル不詳《ドレスリハーサルの途中》
《昼と夜をやり過ごし》
◇街を眺める視線があまりにもやさしい。《眠る都会に毛布を掛ける》とか。ギターの音のやさしさに揺さぶられたのは初めてだった。ひとつひとつ弦がはじかれる度、ダイレクトに胸にきた。何度か聴いてきた中でも、今日は特別良かった。
 また詞が着せ替えられていた。終わらないドレリハの次を楽しみにしている。
 固定のフレーズ《街は未だにドレスリハーサルの途中》が繰り返され、最後「♪街はー未だーにードレスリ、ありがとうございました」でおしまい。客ぽかん。突然スイッチをOFFにされたような。一瞬の間の後、拍手。じわじわ広がる拍手。

3. タイトル不詳(初披露?)
《戦場だよ》《メランコリー》《おやすみ》《まばたきの間に星を見ろよ》
◇《戦場だよ》という歌い出しのようなシビアさと、メランコリー、メランコリー♪のゆらゆら感が交互にやって来る。「平坦な戦場で僕らが生き延びること」を思い出す。《星を見ろよ》命令形、珍しい。見えたものが星だったのか、まだ判らない。

4. タイトル不詳(ニコラとテスラと卵)
◇卵が食べられようとしていることにようやく慣れてきた。
 最後に登場する男の丸く膨らんだポケットには、残ったひとつの卵が入っているんだろうか。割れてしまわないだろうか。やっぱり食べるのはやめて育ててみるんじゃないだろうか。とか、考え始めるときりがない楽しい。

5. タナトス3号(仮)
《暗い光に今日も誘惑されてる》《ヤコブ片隅に閉じ込めてくれないか》
◇時間がない!ということで、QUIET ROOM 2012に続き最後の《とんてんたんとんてんたんとん》BPM爆上げで終了。小人たちが大急ぎで建設作業しているみたいな。「旧市街」の塔を建てているんだって空想すると楽しい。欠陥工事にならないことを祈る。
 冒頭《目を凝らすと》だと思っていたら、今日は《目を逸らすと》に聞こえた。意味真逆じゃないか。どっちだろう。
 ひとりごと。全くそういう意図ではないだろうけど、ヤコブと大工が出てくると某宗教を連想する。ヤコブ閉じ込める=反イスラエル的。《大工はみんな知っている》=ナザレのヨセフは全知=神とか。こわい。何とか結び付けないで楽しみたい……。

6. タイトル不詳(あなたは誰にも愛されないから)
《いつも いつでも いつも 頭の中の空洞には誰もいないのさ》
◇始めて少しして「もう一回やっていい? アラームを止めます」と中断。アラームのタイミング難しそうだ。夢が終わらなくて済むことに安堵する。「2分押します!」との宣言でリスタート。自己パロディとはさすがである。
 せつない声。初めて聞いたと思う。取り残されたインナーチャイルド。海を目の前に、大きな分岐点に立っているような絵が浮かぶ。掠れ気味の「ばーかばーか」、片想いしてる思春期の子かと。
 ざっくり曲構成を【Aメロ→Bメロ→Cサビ→A'→B'→C'→C''】とすると、A~Cまでギター、A'~C'がピアノ(!)、C''でギターに戻る。
 即興のピアノ、ラジオの弾き語りコーナーみたいにコードを探しながら弾いていた。探り当ててアルペジオ。その器用でない紡ぎ方が曲に似合う。このまま、うまくならなくていいんじゃないかな。
 1959年製のスタインウェイ、現在と距離を空けるようにどこか俯瞰的な、けれど透明な音色。インナーチャイルドを包んでいくような、堪らなくやさしい響きだった。


 即興で決められる曲目、今回実はQUIET ROOM 2012に「戦場だよ」と「ニコラとテスラと卵」が追加された他は同じ。響き方は全然違ったけれど。何となく流れができている。この調子で音源化されるといい。
 会場を出ると、ぽつりぽつり雨粒が皮膚に当たった。波多野さんのライブはどうも雨に恵まれる。夜風に冬の気配が滲んで、どうして音楽を聴きに来ているのか解らなくなる。からだの半分に魔法が残り、もう半分が冬になる。それでも来月また東北に来るだろうと思った。なぜだか解らないまま、もっと冷たい風が吹くだろう11月に。

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Maira Gall