live / 波多野裕文(People In The Box)
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June 30, 2015

AN INCIDENT AT A STREET CORNER Vol,26 @ カフェアリエ

 本日の会場は、外壁一面に蔦の這う古民家風の一軒家カフェ。入った1階の左手がキッチン、その上が演者控え室。右手は1階から2階まで吹き抜けになっていて本日はキャパ30人のライブスペースと化している。歌舞伎町と新大久保の狭間でひと息つけるこの空間、磯崎新設計だという。色々と昨今のお洒落カフェとは一線を画している。
 そんな場所で聴いてきた。コーヒー片手にのんびり、かと思いきや小キャパとノーマイクの緊張感も薄ら漂っていた。

■かとうみほ
 オープニングアクトとして演奏。他2人の間に立って連絡役をされた方だそう。
 ウクレレをぽろぽろと爪弾きながら歌う。ハワイアンとかリゾート風ではなく、深夜に隣のひとり暮らしの女の子の部屋から聴こえてくるような、ゆったりと密やかな演奏。盗み聞きみたいですみません、と言いたくなるくらいプライベートだった。やわらかい拍手に包まれて終演。

■山崎怠雅
 長髪に柘榴色のハットを被ったギタリスト、といえば1月に灰野さんの傍らで弾いていたその人だった。ソロの弾き語り、とても良かった。豊かなフレーズに満ちたギターは安心して聴いていられるし、声も詞も好きだった。迷いなく通るクリアな声が、解釈の余地を残した屈折気味の詞を真っ直ぐに導いていく。重力が四方八方に向いている道を歩いているのに、どう進めば良いかは明瞭に示されているような、不思議な感覚。この人にしかできない表現だった。そう思えるのは稀なことで嬉しい。黒髪ストレートの男性ミュージシャン一般への信頼度が更に高まった。

■波多野裕文
 柔らかい雨の日、サイドの髪の毛先が三日月みたいな弧を描いていた。
 この日の会場に馴染むバクダッドカフェの挿入歌に始まり、最近お馴染みのオリジナル曲達に加えてカバー数曲が光る全13曲。七尾さんやPeter Gabrielは原曲知らなかったけれど、とても良かった。前者は曲そのものが素晴らしく、後者は波多野さんの「この曲大好き」感が溢れ返っていて(曲からは反逆の色を強く感じたけれど)楽しかった。繊細な色で何重にも何重にも塗り重ねられたような七尾さんの景色から、マティスみたいな原色で世界を塗り潰される移り変わりも気まぐれなソロの面白さのひとつ。
 ソロオリジナルやピープルのセルフカバーは聴き慣れているものも多かったけれど、いつもと違った響きに耳を澄ませていた。吹き抜けの天井に、この日の夜に、雨に、飾りのない音が溶けていく。ギターを持ち上げるようにして弾いていて、なぜなのかと思っていたら、Tumblrで謎が解けた。《夜をかきわけて》で始まる昔作ったという曲、久しぶりに聴けて嬉しかった。Bird Hotel以前の匂いが確かにして、それが今目の前で息をしていることが、なぜだか堪らなく嬉しい。二度聴いただけなのに古い友人に会ったような気持ちになる。また会えるといい。
 アンコールは、ソロでは久しぶりの《新市街》。百人町によく似合う。いつか笑いながら諦めていたTu tulu tululu...のハミング、がんばって歌いきっていた。和やかに見守って終演。

 外に出ても夜の雨に先程までの音が溶けているような気がして、濡れてもいやな気はしなかった。重たい頭の奥で演奏を反芻しながら、音に包まれたまま家に着いて、余計な思考に邪魔をされないようにそのまま眠った。



01. Calling You (Jevetta Steeleカバー)
02. 《追放された王様》
03. ダンス、ダンス、ダンス
04. 気球
05. 旅行へ
06. Open (Rhyeカバー)
07. 線路沿い花吹雪(七尾旅人カバー)
08. Shock The Monkey (Peter Gabrielカバー)
09. 《夜はやさしい》
10. 風が吹いたら
11. 《夜をかきわけて》
12. ニムロッド

EN. 新市街

January 24, 2015

新春!!三つ巴ライブ2015〜アコースティックの夕べ〜 @ 新宿LOFT

 旧知の3組でリラックスした空間に、歌舞伎町の際どさとロフトのロックンロール感が適度な緊張を漂わせる。その奇妙な均衡が面白い。新春!!というタイトルだけがめでたい。

■成山内(sleepy.ab)
 久しぶり。まだ北海道に住んでいて、今週は東京に来ているらしかった。雪で搭乗が遅れ、搭乗後も除雪のため機内で1時間ほど待ったという話をされていて、申し訳ない気持ちになったりした。
 そんなバックグラウンドの刷り込みのせいだけではないと思うのだけど、彼らの演奏は冬の匂いがした。白と白藍、新雪と淡く晴れた空の色がずっと見えていた。ボーカルが冴えた冬の空気みたいに響く。同じ澄んだ声でも波多野さんのとはまた違う。そこに山内さんがギターやアンデスや名前の解らない楽器で色を重ねていく。曲名で覚えているのは「夢の花」「さかなになって」。最後は「ねむろ」という曲。ずっと冬の色でいっぱいだった。

■小林祐介(THE NOVEMBERS)
 こちらも久しぶり。かつて森の妖精のようだった人は、ゴールデンレトリバーみたいになっていた。ふわふわの金髪で大きな演奏をしていた。スケールの大きな。
 Misstopiaで懐かしくなったり(なんと5年前に発表された曲である)、ノーミスで進んだmeltのサンプリングに上達を見たり。人の親になったのだからそれはもう変わるだろうと思っていた程には変わらず、安定して良かった。それでも数年前のイメージとは少し変わっていた。どこへ向かうのか、今でも気になる人ではある。
 自分の出番について「ラスボスに挟まれているよう」だと言っていた。その笑い方が相変わらず好きだった。

■波多野裕文(People In The Box)
 旧知の2組との共演については「光栄です」とコメント。終始リラックスモードで楽しそう。歌も演奏も気の向くままにできているようで良かった。緊張し過ぎるのでもゆる過ぎるのでもない、今日くらいのテンションが彼の最大値を引き出せるように思う。時間に急かされていたようなのが少し惜しい。
 曲目は9日とほぼ同じ。最近一曲目の定番である《追放された王様》の時点で演奏する歓びが見える。歌いたくて堪らないような、エネルギーを秘めた感じ。長く続くアウトロのスキャットがうつくしかった。二曲目「旅行へ」は昨日できたという新曲。「できるところまでやります。できなかったら……丸坊主にします。アンコールで」と笑いを取りつつ始まった。ぼくは旅行へ出かけた、酷く暑い日だった、お腹は壊さなかった、みたいに短い描写が3拍子に乗って進んでいく小品。まぬけな顔で、まぬけな顔で、と何度も繰り返すサビ。サビ?というか短い描写の行き着く広場的なフレーズ。最後まで演奏しきって「坊主は免れた」と呟きつつ、旅行が好きだけど行くとまぬけな自分を客観視する、という話をしていた。それからまずいラーメン屋に行った話でもきっちりと笑いを取り、「ぼく今日何なんでしょうね」と自分も笑っていた。微熱のようなテンション。
 「砂漠」最後に付け足された詞の歌い方が9日と少し変わっていた。《見渡す限りに拡がる砂漠で》を何度か繰り返し、最後に《手に入れたのさ》で一突き。いいね。
 今日は特にピープル曲率が高く、どれもとても良かった。ツアー後の「風が吹いたら」沁み入る。皆で手拍子するのも良いけれど、ひとりで《みんなここへおいで》と歌う波多野さんを小さなハコで見守るのも良い。バンドよりも詞のひとつひとつが噛み含めるように歌われて、浸透していく感覚。《誰も嘘つきなんかじゃないよ》と《どんな美しいひともじぶんの嘘に気づいていない》のせめぎ合い、ひりひりする。前者が既に勝っているのだけど、続けて聴くと揺り戻される。
 アンコール、こちらもお馴染みになった《蛇口を捻って》。この曲も今までの色々な詞と繋がっている。今日は《あなたは誰にも愛されないから》という嘘をつく自分と言った先の相手と、双方への《ばーか》に聞こえて、それが急に腑に落ちた。しばらくそんな解釈で聴くかもしれない。

 新しい聴き方と、「歌舞伎町、久しぶりに来たらパンチのある街ですね。気を付けて帰ってください」との言葉に送られて地上へ出る。来る時には気付かなかった「I LOVE 歌舞伎町」という大きなピンクのネオンを光らせたビルが目に飛び込んで、歌舞伎町 WOULD LOVE YOU TOOだよ、と思った。

●1. 《追放された王様》 2. 旅行へ 3. 砂漠 4. Calling You (Jevetta Steeleカバー) 5. 風が吹いたら 6. ダンス、ダンス、ダンス 7. ニムロッド EN. 《蛇口を捻って》

January 30, 2013

Slow Sound ~下北沢にて~ @ 下北沢440

 渋谷駅構内を全力疾走して電車を乗り換え、下北へ。
 440(four forty)は細長い造りのカフェバー。グラスの氷が溶ける音、煙草の匂い、まあるい水槽みたいな照明なんかに囲まれて、ゆったり過ごせる。キャパ100弱でも後方だと舞台は見づらいけれど、モニターに映像を出してくれる。
 三組目の途中で飛び込んだ。寒さも緩んだ晩冬の夜。


■FLOWER FLOWER
 女性ソロでギター弾き語り。下北っぽいカジュアルな金髪ショートの可愛い人。
 数曲でも聴けて幸運だった。透明感に僅かなハスキーさの混ざった声を聴いていると、ひとつの円が浮かぶ。感情も主張も願いも皆、その円の内に収まっている。不思議と小さくまとまった物足りなさはなく、ただ円がきれいだし心地良い。
 期待の新人さんかなあと調べたら"Good-bye days"の人みたいでびっくり、納得。とうにメジャーだった。外見も歌も随分印象が違って、今日とても惹かれた。次の人も「誰なのか全然知らなかったんだけど、すごくいいよね。俺結構……ガチで好きです」なんて言っていた。こんなキャパはもうないかもしれないけど、また会えるといい。


■波多野裕文(People In The Box)
 男性ソロでギター弾き語り。華奢なカーディガン男子といえばありがちだけど、くるんとおだんごに結わえた髪と、シンプルなシリンダーハットが特徴的。
 ……今更ながら描写。癖のないきれいな黒髪がいつも羨ましい。

1. 中国に行ってみたい
2. ドレスリハーサルの途中(街路樹が増えていく)
3. 8つの卵
4. 君が人を殺した
5. タナトス3号(仮)
6. あなたは誰にも愛されないから

 #1最早定番のアカペラ、と思いきや、途中からiPhoneのボイスメモ?投入。《中国に行ってみたい》を録って、自らも歌いつつ再生して、リアルな声と録音された声のポリフォニーを織り上げる。詞が珍しくモノフォニックなところ、声が多重化されることで世界の複数性に立ち戻る。幾つもの中国が生まれる場の居心地の良いこと。
 基本ポリフォニックな詞の中でも、特に#6はうつくしいオーケストレーション。蛇口から流れる水と泡と、それらが川になって海と出会う、客観描写のクレッシェンドがあればこそ、不意に人が現れて歌い掛ける《あなたは誰にも愛されないから》のインパクトが強くなる。#4やピープルでもこのパターンはあって、意識的なのか判らないけれど巧い。《5月の空は海の色》本当に素敵なアクセント。
 慣れると分析し始める奇癖がある。まとめるなら、好きです。ありがとう。

 いつもより客層が多様で、MCで触れられていたように、聴き方の差異が面白かった。眠ってる?と思いきや曲が終わると熱い拍手を送る人とか、ひたすら首を捻って連れに「わからん」アピールする人とか(#6は集中してた)、微動だにせず見つめる人とか。受容もポリフォニック。対立せず共生する。だから居心地が良い。
 自分の受容もいつも違う。今日は反抗期(笑)だったのか、何とか言葉に侵入されないようガードを固めて、守りきったと思ってハコを出た。けれど街のざわめきのなかひとりになったら、あの言葉や音や場のやさしさが、逆にガードになってくれた。どうしたって作用する。諦めて、安心する。

 #3が好きだった。《流れて 伝わり 悼まれながら 溶けていった》静かでやさしい眼差し。#4《誤って》がなくなっていた。誤らなくても? 久々の#5冒頭はやっぱり《目を凝らすと》のよう。BPM爆上げはなく、ゆったり締め。
 #6《たったふたつでおなかを満たして シンプルなものさ》響く。iPhoneのアラームが鳴って時間切れ。アンコールがないことは最初に告げられていたのに、演者が舞台から下りても皆なかなか席を立たなかったのが印象深い。集団で夢の終わりに気付いていないみたいだった。

わたしたちの現実の人生は、四分の三以上も、想像と虚構から成り立っている。善や悪と本当に接触するなどということは、稀れにしかない。
 - シモーヌ・ヴェイユ『重力と恩寵』より

 3/4と1/4の境界に触れる歌。また、いつか。

November 4, 2012

『陋劣の残滓を啜り聖を排出する正義という呪縛。狂躁する資本主義の末期衝動。罪は通奏低音の如く聖に平衡し、赫奕たる旋律を奏でる。』
@ 郡山#9

 鈍行列車を乗り継いで、ゆるゆると北へ。
 東北本線、ドアが「車内温度維持のため」ボタン式の手動。乗り換えた列車は二両編成で、発車の合図は時折掠れる笛の音。車内に2歳くらいの男の子とお母さんがいて、周りの人がにこにこ話しかける。
 時々東京を出ないとだめだと思った。何かが致命的に麻痺している、気がする。


■波多野裕文
 どれも曲名が判らないので、詞の一部を。

1. 中国に行ってみたい
2. ドレスリハーサルの途中(ミニチュアのデパート)
3. 君が人を殺した
4. 8つの卵
5. あなたは誰にも愛されないから

 #3初めて聴いた。
 最初しばらく「今日彼女は来なかった、仕事かなあ」なんて小さな恋の物語かと思いきや、その流れのまま《君が人を殺した》。空気にノイズのような異物がざあっと混じって、うわあ来た、と思う。あの違和感と困惑。と、少しの愉快な気持ち。
 冷静なギターは異物が聴衆の体に沈むのを見届ける。そこからもう一度《君が人を殺した》。そして《でも、僕は君の味方だよ》と続く。2つのフレーズが何度も繰り返され、後者の伝え方がどんどん濃くなる。はっきりと一音ずつ、確かめるように。

 ……とりあえず聴いてほしい!(これ、ずっと言いたかった!)

 一度だけ《君が誤って人を殺した》と歌っていた。誤って。今更効いてくる。

 言葉が触覚に作用する。皮膚に、身体に、内蔵の隙間に、否応なしに触れてくる。堪らない違和感の陰で、あるべきものが戻ってきた安堵がこっそりと息をつく。そのことがおかしくて笑う。ほんの少し愉快でもある。そんなめちゃめちゃな状態で聴いていることもある。ただ心地良さに浸っているだけのこともある。
 結局どうしてなのか全然解っていない。ふらりと200km移動してくるくらいに引かれているのは確からしい。

 iPhoneのアラームが鳴って、魔法が終わる。今年もありがとう。良いお年を。


■the cabs
 この日の客入りは半分くらいで、舞台がクリアに見渡せた。下北沢は満員電車並の混雑でほぼ見えなかったから、彼らを「見た」のは初めてに近い。上手からギターボーカル(絶叫)、ベースボーカル(メロディー)、ドラムス(爆撃機)の配置。
 爆撃機、本当に爆撃機だった。決してパワーで押すマシンガンタイプではないのに、手数がどうなっているんだろうあれ? あの音の連鎖のどこで息継ぎして、どうやって呼吸しているんだろう。最初に爆撃機と評した人のセンスすごい。
 そのドラムスに乗るメロディーと、乗らずにひた走るような印象のギター。まとまっているようで、まとまりがない気もして、何が展開されているのか解らないままとりあえず突き進んでいる様が面白い。これからどうなっていくのかさっぱり見えないバンド。年明けのアルバムが相当楽しみ。

■te'
 こちらもやはりドラムス。残響と書いて「ドラムス」と読んでもいいと思った。冷静に考えるとだめだけど、それくらい気になるドラマーが多い。何だろう。
 人とぶつからずに見たのは初めてで、何だか違和感があった。モッシュしろってことでは全然なく、誰かと/何かと衝突するところで生まれている音なんだと思った。あらゆる音がそうだと言えばそうだけど、何だか「衝突」がひとつのキーワードのような気がする。ツアータイトルだってそうだ。画数多く読みづらい漢字からして衝突しまくっている。内容もそう。
 見る度にそんなことを考える。まだまだ未知数のバンド。いつかまた。

ノート:
【陋劣】ろうれつ。いやしく劣っている・こと(さま)。下劣。
【赫奕】かくやく。かくえき。光り輝くさま。 - 大辞林より

October 6, 2012

MEGA☆ROCKS 2012

 気付いたら仙台にいた。そんなはずはないのだけど、そう表すのがしっくりくる。ちょうど何かのお祭りだったらしい。はっぴ姿の人達と、首にタオルをかけたお馴染みフェススタイルの人達が混ざって、二度目の仙台はとても賑わっていた。
 何組か観たんだけど、ひとまずひとつだけ書きます。後で追加するかもしれない。書き過ぎたから削るかもしれない。


▲遅くに行ったら逆に1DayPassをいただいた


■波多野裕文(People In The Box) @ retro Back Page
 会場、雰囲気の良いダイニングバー。キャパ100くらい。弾き語る氏の奥にはモダンな壁掛け絵、傍らに1959年製のスタインウェイ。よくあるピアノブラックではなく、ウォルナット艶消しでやわらかな印象。小さなカフェバーで聴きたいって願いが早くも叶うことになった上、素敵なピアノのある空間! それはそれはやさしいひと時だった。
 音が浸透圧ゼロで流れ込んでくる。音と聴き手には多少なりとも距離があるはずなのに、ゼロだと感じるくらい傍に在る。という魔法がかかっていた。あるいは30分間の夢をみていた。あれほどやさしい侵犯を他に知らない。

 「放っておくといつまででもやるから、アラームをセットしました。時間になると、電話のベルの音が鳴ります(笑)」と譜面台にiPhoneを置いてスタート。

1. タイトル不詳《中国に行ってみたい》
(冒頭ワンフレーズ歌って)「という歌があるんですけど。あんなことになって。島を巡って争うことになって、違う意味が付けられてしまう……まあそれも面白いかなと」→歌再開
◇右足を左膝に乗っけてリラックスした風に、けれどとても丁寧に、音を繋いでいた。
 元々の意味を消してしまわないように聴きたいと構えつつ、始まってみればあの胡蝶の夢感にただ呑まれるのみ。

2. タイトル不詳《ドレスリハーサルの途中》
《昼と夜をやり過ごし》
◇街を眺める視線があまりにもやさしい。《眠る都会に毛布を掛ける》とか。ギターの音のやさしさに揺さぶられたのは初めてだった。ひとつひとつ弦がはじかれる度、ダイレクトに胸にきた。何度か聴いてきた中でも、今日は特別良かった。
 また詞が着せ替えられていた。終わらないドレリハの次を楽しみにしている。
 固定のフレーズ《街は未だにドレスリハーサルの途中》が繰り返され、最後「♪街はー未だーにードレスリ、ありがとうございました」でおしまい。客ぽかん。突然スイッチをOFFにされたような。一瞬の間の後、拍手。じわじわ広がる拍手。

3. タイトル不詳(初披露?)
《戦場だよ》《メランコリー》《おやすみ》《まばたきの間に星を見ろよ》
◇《戦場だよ》という歌い出しのようなシビアさと、メランコリー、メランコリー♪のゆらゆら感が交互にやって来る。「平坦な戦場で僕らが生き延びること」を思い出す。《星を見ろよ》命令形、珍しい。見えたものが星だったのか、まだ判らない。

4. タイトル不詳(ニコラとテスラと卵)
◇卵が食べられようとしていることにようやく慣れてきた。
 最後に登場する男の丸く膨らんだポケットには、残ったひとつの卵が入っているんだろうか。割れてしまわないだろうか。やっぱり食べるのはやめて育ててみるんじゃないだろうか。とか、考え始めるときりがない楽しい。

5. タナトス3号(仮)
《暗い光に今日も誘惑されてる》《ヤコブ片隅に閉じ込めてくれないか》
◇時間がない!ということで、QUIET ROOM 2012に続き最後の《とんてんたんとんてんたんとん》BPM爆上げで終了。小人たちが大急ぎで建設作業しているみたいな。「旧市街」の塔を建てているんだって空想すると楽しい。欠陥工事にならないことを祈る。
 冒頭《目を凝らすと》だと思っていたら、今日は《目を逸らすと》に聞こえた。意味真逆じゃないか。どっちだろう。
 ひとりごと。全くそういう意図ではないだろうけど、ヤコブと大工が出てくると某宗教を連想する。ヤコブ閉じ込める=反イスラエル的。《大工はみんな知っている》=ナザレのヨセフは全知=神とか。こわい。何とか結び付けないで楽しみたい……。

6. タイトル不詳(あなたは誰にも愛されないから)
《いつも いつでも いつも 頭の中の空洞には誰もいないのさ》
◇始めて少しして「もう一回やっていい? アラームを止めます」と中断。アラームのタイミング難しそうだ。夢が終わらなくて済むことに安堵する。「2分押します!」との宣言でリスタート。自己パロディとはさすがである。
 せつない声。初めて聞いたと思う。取り残されたインナーチャイルド。海を目の前に、大きな分岐点に立っているような絵が浮かぶ。掠れ気味の「ばーかばーか」、片想いしてる思春期の子かと。
 ざっくり曲構成を【Aメロ→Bメロ→Cサビ→A'→B'→C'→C''】とすると、A~Cまでギター、A'~C'がピアノ(!)、C''でギターに戻る。
 即興のピアノ、ラジオの弾き語りコーナーみたいにコードを探しながら弾いていた。探り当ててアルペジオ。その器用でない紡ぎ方が曲に似合う。このまま、うまくならなくていいんじゃないかな。
 1959年製のスタインウェイ、現在と距離を空けるようにどこか俯瞰的な、けれど透明な音色。インナーチャイルドを包んでいくような、堪らなくやさしい響きだった。


 即興で決められる曲目、今回実はQUIET ROOM 2012に「戦場だよ」と「ニコラとテスラと卵」が追加された他は同じ。響き方は全然違ったけれど。何となく流れができている。この調子で音源化されるといい。
 会場を出ると、ぽつりぽつり雨粒が皮膚に当たった。波多野さんのライブはどうも雨に恵まれる。夜風に冬の気配が滲んで、どうして音楽を聴きに来ているのか解らなくなる。からだの半分に魔法が残り、もう半分が冬になる。それでも来月また東北に来るだろうと思った。なぜだか解らないまま、もっと冷たい風が吹くだろう11月に。

August 30, 2012

QUIET ROOM 2012 -晩夏の鐘-
@ ル テアトル銀座 by PARCO

 「袖から舞台まで歩いてくる時吐きそうになった」(堕落安部さん)
 「この空気、あれを思い出しますね。お通夜」(尾崎さん)

 ということで今回も出演者にとってやりづらそうな、客がQUIETなイベント。うまくレスポンス返せなくて申し訳ない。どうしたらいいんだ。
 多くのアーティスト(今回は6組!)の弾き語りを見られるのは貴重で、本当に面白い。誰もが音と居て誠実だった。あんな風に生きたい。
 テアトル銀座、初めて行った。来年5月末でなくなるとのこと。舞台見やすいし席は座りやすいし、何より響き方がまあるいところが好きだと思った。立地も良い。なくなっても、今日のことはずっと覚えていられるといい。


■EG
 初見。カフェオレに追加する粉砂糖みたいなあまい声。高音もよく出るんだけど、話すのと同じかやや低いくらいの声がびっくりするくらいあまくて、こちらを推してほしい、と勝手なことを考えた。
 (更に勝手な感想)記号みたいな名前が面白い。exempli gratiaであり、JAAであり、カタカナ読みならeasyと同音。気になって公式サイトに行ったら「本名でないのも意味は特になし」とあった。名前と曲の印象がうまく一致しないのも面白い。


■堕落モーションFOLK2
 出演順のせいか、前回より少し大人しい印象。でもやっぱり気のいい兄ちゃん達。MCの人柄そのまま馴染みやすい曲、と思いきや引っ掛かるところが幾つもあって面白い。中でも「不潔なメロディー」という曲が引っ掛かっている。不潔を気にする潔癖さが際立って聴こえた。
 物販で「堕落」の二文字が刻まれたピンク色のTシャツ売ってて震えた。某16gの変態Tを思い出す。


■波多野裕文 (People In The Box)
 いつもの飄々とした空気で登場。曲目を即興で決めているからか、持ち時間を気にしてiPhoneのアラームをセット。そういえば前回は、時間が判らなくてスタッフに時計持ってきてもらっていた。進歩!
 4曲、どれも今まで披露したもの。王道的な曲が選ばれたように思う。

1. タイトル不詳《中国に行ってみたい》
壱日の孤独vol.2の一曲目。アカペラ。悠々とした、まあるい豊かな声。混じり気のない水の粒のよう。

2. タイトル不詳《ドレスリハーサルの途中》
《夏の都会にバグが発生する》
◇詞が夏仕様に着せ替えられていた! MC「最近本当に暑いですね。いつもは雨が降ってちょっと涼しくなったりするのに、全然降らない」から、さらりと《夏の都会に~》の歌い出し。リアルな時空間と曲がリンクするのはふしぎな感覚。同じ季節を、地平を、過ごしていることを実感するのもふしぎだ。

3. タナトス3号(仮)
《空を黒く塗り潰せ いつまでも同じではないと知った》
◇聴けば聴くほど好きになる。ぜひ音源化を!
 「時間がどんどんなくなる! 次の曲はBPMを上げます」との宣言で始まるも、いつも通りBPM70くらいのゆったり演奏。と思いきや終盤の《とんてんたんとん》で200超えるくらい爆上げして笑った。最後はゆっくりに戻って終了。

 チューニング中、びーん!と弦が切れるハプニング。ハタノさん「は……!」と動きが止まる。会場とりあえず笑う。笑うしかない。
 予備ギターを差し出すスタッフに「こういう状況の方が燃えるんです。あの、お気持ちは本当にありがとうございます」と断った後、「あーこれ、一本ないと結構狂いますね、調子」と言い出したので、どっちやねん!がんばれ!と念じる。
 そのまま「アラームが鳴るまで頑張ります」とスタート。そうだった時間が限られているんだった。

4. タイトル不詳《あなたは誰にも愛されないから 自分で愛してあげなさい ばーか》
◇壱日の孤独vol.2本編最後の、詞が印象深い曲。↑このくだりも勿論だけど、《5月の空は海の色》が堪らなく好きだ。メロディーと併せて、世界がぐわっと広がって解放されたような感覚になる。ハタノさんが歌う青空はいつも手を伸ばしたくなる。
 最後の「ばーかばーか」が終わってアウトロに入ろうとする時、ジリリリリリ!!!とiPhoneアラームが鳴り響く。演奏止み「お時間です、ありがとうございました」。ええー!?
 びっくりしつつ、会場笑って拍手。最大級の拍手。

 秒針のSEで始まるピープル("And I'm Singing" Jim O'Rourke)と対になるような終わり方。夢から覚めるような、世界が切り替わるような。もっと聴いていたかったし、あちらの世界に居たかった。そんな風に自分を変えればいいんだろうと思う。最近よく考える。じわじわ効いてくる。
 次のソロはいつだろう。帰ってこられなくなるくらいどっぷり浸りたい。病気か。


■斎藤宏介 (UNISON SQUARE GARDEN)
 サポートにドラマー海老原諒さん(今日はパーカッションでジャンベ、ウィンドチャイム、スプラッシュシンバル)を迎えての演奏。斎藤さんが海老原さんを「すごく好きなドラマー」と紹介していたのは納得。バランスの良い人で、相性の良い組合せ。
 「オリオンをなぞる」は知っていた! バンド形式よりも夜空に似合いそうなアレンジ、好きだった。


■Laika Came Back
 初見。今日の面子で唯一立っての演奏。一人で5重くらいにギターをサンプリングして重ねて、弾いて歌っていた。ギターって色んな音が出るんだなあ、というところから興味を惹かれる。そしてどの曲も質感が違って、奥深い音の世界を持っている人だと感じる。すごく面白く聴いていた。調べてベテランさんと知り納得!


■尾崎世界観(クリープハイプ)
 初見。ふしぎな惹かれ方をした。ゴッホのひまわりみたいな声だと思った。枯れたように掠れているのに、生命力に満ち満ちている。聴いている人に訴えかける力の強さを、耳だけでなく全身で感じた。演奏と同じくらい詞が気になることが多いのに、どちらも吹っ飛んで圧倒されていた。すごい。どうしてだか解らない。
 詞だけに集中すると、感受性の強い青年の日常、と括ってしまうのは失礼かもしれないけれど、特別だとは感じないのに、音とあの声に乗ると特別になる。
 クリープハイプ聴いてみようと思う。楽しみ!

May 23, 2012

波多野裕文「壱日の孤独」vol.2 @ 北沢タウンホール

 前回の公演名から「壱」と大字に変わり、「vol.2」が付いた。
 新しい試みがふんだんに:ライブペインティング、ギター二本使い分け、1曲アカペラ、バンジョー・オルゴール・カリンバ登場。今回のオリジナル曲は全て1年~1年半以内に書かれたそうだ。
 前回とはだいぶ雰囲気が違った。前回は「和やかで、温かく満たされた空間と時間」、今回は独自色がより濃くて聴き入る・見入るパフォーマンス。ピープルの曲なし、リクエストコーナーなし、カバー1曲、他全てオリジナル、と内容の相違も大きいし、会場も気楽な晴れ豆から全席指定の古い区民ホールへ。
 ソロで今やりたいことをやれるだけやったという印象。「ピープルのギタボの人のソロ」の域を抜けて「波多野裕文」という個性が育っている。次にどこへ行くのか解らなくてぞくぞくする。本当に楽しみな人だ。

 以下、個々のメモ。7曲目の衝撃で色々吹っ飛んでおりすみません。そして長い。


◆一部:弾き語り

1. タイトル不詳(初披露)
◇アカペラ。いきなりチャレンジング。ギターがないためか足が終始ゆらゆら。
 《中国に行ってみたい》というフレーズが悠々と繰り返される。中国に行って知らない人に会ってみたい、というような詞。まどろみの中をたゆたうような心地良い声。

2. タイトル不詳(初披露)
《言葉はとても大切なものだ》《ゴリラはバナナを全然理解できない バナナはゴリラを全然理解できない》《僕は君を全然理解できない 君は僕を全然理解できない》《僕にお金をちょうだい ちょうだい ちょうだい》《言葉はどうでもいい》《言葉はとても大切なものだ》
「雑誌とかでアーティストが、こういうメッセージを伝えたいから書きました、とか言うでしょう。あれは嘘です。(会場笑) あれは、訊かれるからそう言うんであって。僕何でこんな曲書くのか全然解んないです」
◇突如切り込む♪ゴリラはーバナナをー全然理解できなーい、のインパクトよ。突き抜けたバランス感覚最高。
 個人的に仮題「メルロ=ポンティ」とした。《理解できない》その先に興味がある、けれど哲学に偏ると面白くなさそうだし(音楽と哲学の相容れなさについて考え続けてる)、いや彼ならうまく取り込むと思うが《哲学は銃殺刑だ》そうなので静観。

3. タナトス3号(仮)
《ヤコブを片隅に置いて 空白はあるか》
◇もはや定番、また聞けて嬉しい。最初のメロディーで持っていかれる。

4. 鍵穴だらけ(初披露)
《鍵穴の形の目》《鍵穴の形のドア》《鍵穴の形の鍵》
「鍵穴だらけ、という曲です。鍵穴だらけとしか言いようがない」
◇さすがとしか言いようがない。《鍵穴の形の 鍵》で丸呑みされた感覚に目眩。自己と対象が突如反転する恐怖は快楽に変わり得るな、とか。是非みんなのうたに選ばれて皆さんにトラウマを植え付けてもらえないか。

5. コンコルド
◇タナトス3号に続き定番か。良いなあ、と感じつつ鍵穴の形の思考回路。

6. タイトル不詳「雪の街」
《ただの名前に過ぎない》《街は未だにドレスリハーサルの途中》
◇QUIET ROOMでの一曲目。

7. Untitled 4 / The Nothing Song(Sigur Rosカバー)
「いいですか、伝家の宝刀を抜きますよ?」→ケースから取り出して「バンジョーっていう楽器です(ドヤァ)」
「あの、最初にカバーやらないって言ったけど、やります(笑)。シガーロスの、名前のないアルバムの名前のない曲をやります。でも、途中でやめるかも。何でかっていうと……弾けないから、ははは」
「(中盤で)もーだめだー……」→おしまい
(終わった後)「バンジョー見せたかっただけっていうね! 今度は1日25時間練習してきます。ふふっ」
◇波多野さんがシガロス波多野さんがシガロス波多野さんがシガロスが波多野さん
 ↑終演後最初のツイート。脳がショート。楽しむ余裕とかまるでなかった。もう一度聴きたい! 『Hopelandic Hatano』ってミニアルバムとか出せばいい! いいね! ありそうー!!
 少し冷静に考えると、シガロスのカバー自体レアだから衝撃がより大きい(前回のビョークはここまで驚かなかった)。「Untitled#4」は良い選曲。鎮静作用のあるやさしい声、「土曜日 / 待合室」に近い。ヨンシーのほとんど天啓みたいな遠さに対して、手の届くところにいてくれる薬箱のよう。バンジョーも良いね。凡庸にならない。
 気になった人は是非原曲も。シガロスファン増えるといい。そして今夏サマソニと空からvol.4がかぶったことで共に悩もう!!
 『Valtari』日本先行発売日に因んでやってくれたなら粋だな。偶然か。どっちだっていいや、ありがとう。

8. タイトル不詳(初披露)
◇引き続きバンジョーで演奏。銀行強盗がどうのという詞。前の曲で頭がいっぱいでよく覚えていない。残念。《からだもこころも売れるものなら売ってみたい》《籠は上に向けておいて》《経済が降ってくる》がこの曲?


◆休憩(5分) 周りからゴリラゴリラ聞こえてきて笑った。


◆二部前半:ライブペインティング(30分)

 ゲスト加藤隆さん登場! 紹介もそこそこに「やろっか。説明のしようがないもんね」とスタート。舞台にセッティングされた160×350cmくらいの模造紙に下絵なしで、加藤さんが筆で墨を淡いものから濃いものへと少しずつ乗せていく。波多野さんは舞台下手に移動、制作の様子を見て即興演奏。
 ギターとヴォカリーズ、加藤さんの身体感覚に自分の身体を委ねて音を創り出す試みのように感じた。「手が、筆を持って描いている手なのか、ギターを鳴らす手なのか判らないような、交差する感じがやりたかった。できたかは解らないけど」とは対談での言。身体と芸術ってところもメルロ=ポンティ的。ちょっと時間をかけて考えたい。
 加藤さんの筆は最初慎重だったけれど、音に乗って徐々に解放されていく、その過程が見て取れてぞわりとする。どんどん自由になる。すらっとした体躯なので舞台に映える、動線がうつくしいのはそれだけでなく、そこに生命を視るからだろう。
 出来上がった絵のダイナミズムは圧巻。ツイートで腑に落ちた。

今日は自分の人生の中でも例がない位、音楽的に、獣のように絵が描けた日でした。「起きていながら夢の中にいる」という感覚を始めて味わいました。

— 加藤隆 (@ryukatoo) May 23, 2012

波多野裕文の出す音の後ろで絵を描くのは、めちゃ気持ちよく、また贅沢な時間でした。お客さんは、彼が闘牛士で、自分が牛のように見えたんではないでしょうか。常に次の一歩を踏み出す彼に、尊敬と感謝の意を抱いています。

— 加藤隆 (@ryukatoo) May 23, 2012


 描き終わると加藤さんさらりと退場。
 「やべー。やべーよ加藤さん」「こわ!」「普段の彼の、素朴な感じを知ってるから。余計に解らないんですよね。どうしてああいう人からこんな絵が出てくるのか」「はー魂抜けたわ」とは波多野さん談。
 終演後、絵は舞台に残され、鑑賞可・撮影可だった。間近で見ると圧倒される。
 来られなかった人も観られるよう、どこかで公開されるといい。モノクロームだからこその迫力。本当に凄いよ。


◆二部後半:弾き語り
 波多野さん中央に戻り、絵を背景に弾き語り再開。ただならぬ空気。

9. タイトル不詳「ニコラとテスラと卵」
◇QUIET ROOMで披露された曲。やっぱり卵食べた、聞き間違いじゃなかった。二度目でもショック。

10. タイトル不詳(初披露)
《5月の空は海の色》
《あなたは誰にも愛されないから 自分で愛してあげなさい ばーか ばーか ばーか》
◇「自分で愛してあげなさい」まで聞いて、らしくないな、と思ったらすぐさま「ばーか!」と続いて安心した。それから愉快な気持ちになった。「あなた=自分=ばか」という自虐、「あなた=他者=ばか」への哀れみ、「『あなた~あげなさい』の台詞の話者=ばか」への嘲笑、どれだろう。最後かと思ったけれどどれもありそう。ばーか!で本編終了。すっきりしたような、何か毒が回ったような、混ぜこぜの余韻。


◆アンコール

 2人が登場、おもむろに対談。仲良し。既に書いた絵の話の他、他愛もない話(後述)など。
 加藤さんはける時、波多野さんが後ろからじゃれついてぎゅっとしていた。三十路の男にときめく日が来ようとは。人生色んなことが起きる。

EN. タイトル不詳(初披露)
「吉祥寺でオルゴールを買ったんです。『Moon River』って曲で。『ティファニーで朝食を』の。でも間隔がね、一定じゃないんです。(手で回して)……ほら、速くなった! 間隔は一定じゃないとだめだと思う!」(会場笑)
「でも速くなるってことはどういうことかというと、人間ってことですよ(ドヤァ)」
「オルゴール回しながら歌います。全然違う曲を(笑)。辛くなったら楽器を取ります」
《仕事に戻ろう》《僕はその正体を忘れてしまうよ》
◇《仕事に戻ろう》でがっくり落ちる。はい……。
 オルゴールを手放すと、カリンバに持ち替えて演奏。色々持ってる。好きなんだな。
 《忘れてしまうよ》が繰り返されてかなしくなる。普段なら「そうだね仕方ない」って言うけど、とても抵抗したかった。忘れないよ。いつか忘れるだろうけれど。忘れない。忘れたくない。
 デクレッシェンドで音が消えていく。巻き上がる拍手の中で、終わってしまった、と思いきや、動かないからもう一曲?と期待し始めたところで立ち上がる。弄ばれて終演。ありがとうございました。
 「おやすみなさーい」と和やかに退場。おやすみなさい、have a sweet nightmare。




以下おまけのような。


■MC備忘

・チケット
「チケットがねーすぐ売れるんですよ。壱日の孤独っていうのは。そんな、我先に!って取るようなものじゃないって、皆さんそろそろ気付いた方がいいんじゃないですか? 今日初めての人がどれくらいいるか解らないけど」
◇キャパ少ないからだろ!!と内心多くの人がつっこんだに違いない。需要が大きいことに気付いた方がいいんじゃないですか!
 けれど意図は解る気がした。もっとのんびりと、小さなカフェバーとかで、平凡なマジシャンの手品を笑いながら見ている内いつしか大きな奇術に呑まれていくみたいに、いつか観てみたい。ああただの夢だよ。

・トラック
(今日は危険という話の後)
「トラックが突っ込んできます」
客(?)
「注射器のいっぱい付いたトラックです。中身の色はあえての透明です。ははっ」
客(?????)
◇本日のハイライト。彼の発言を理解不能だと思ったのは初めてでした。何これ。元ネタとかあるんですか。誰か助けて……。

・ホテルにて
(バンジョーチューニングに苦戦。その間にイギリスの話)
「ロンドンって移民の街なんですね。イギリス人は実はあんまりいない。で、何かねーロンドンは人が、思いやりがないんですよ。……『日本人がシャウトしてる』って言われました。いやいやこれはシャウトじゃないでしょ。『私はあなたの奴隷じゃない』とか言われて。いやいや奴隷とは思ってないですよ。僕はただホテルの従業員としての責務を果たしてほしかった。
 だっておかしいでしょう?
 僕と健ちゃんがダブル(ベッド)なんて!!!」(客爆笑)

・歌詞
「(ソロだと)歌詞が全然違うんですよ、バンドで書くのと。バンドは音が先っていうのもあるんでしょうけど」

・批判
「雑誌とかでこきおろされたいですね(笑)。僕最近何やっても批判されないんです」
◇批判には理解が必要。批判がないのは確かにこわい。だけど音を楽しむのに理解は必要条件ではないのでは? なんて本人が一番よく考えているだろう。受け手としては理解できているんだか判断つかないから色々言えない、なんてこんな勝手な文を公開している人間が書くのはちゃんちゃらおかしいが。
 とりあえず惜しみない拍手を送ったので信じてもらえるといい。
 そんなものだ。

■アンコール対談
・は:30歳 か:31歳
 は「何で敬語なの?」 か「いや、……まあ」(会場笑)
・は「(絵を見ながら)消化できない。どうにか消化しないと」
 か「消化しなくていいんだよ」
 は「(客に)そう。消化しなくていいんですよ」
・か「波多野くんから電話来たの1週間前だからね」
 は「で、すぐイギリス行ったっていう(笑)」
 か「そう、聞きたいことあって電話しようとしたら、イギリスで連絡付かない」
 は「でも隆ちゃんにやろうよって電話した時、いいねいいねーみたいな」
 か「うん。最初、2時間かけて絵を描くんだと思ってたの」
 は「あー」
 か「だってそうでしょ?! そしたら30分でやって下さいって言われて。え!って」(会場笑)
・か:絵を描き始めたのは小学校の頃から。ドラゴンボールとか。「普通(笑)」
 は:ドラゴンボールの絵を描いていた。(会場ざわざわ)
・は「全っ然関係ないんだけど、お風呂が詰まって! パイプユニッシュしてもだめで……」
 か「うんうん」
◇加藤さん優しいな。ダイゴマンだったら爆笑してそうだ。

January 20, 2012

QUIET ROOM 2012
@ Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

 イベント名の通り、皆アコースティック。
 このハコは映画館を改装して造られたそうで、座席が長時間座っても疲れないゆったり仕様、ドリンク置きあり、傾斜ありどこからでも舞台が見える、とじっくり観るには持って来い。客がQUIETすぎて「皆さん楽屋で評判悪いですよ(笑)」とperidotsに言われる始末。皆それぞれにきっと楽しんでいたよ。
 最前で観た。2012年の運を使い果たしたやも知れん。

■成山内(from sleepy.ab)
 初見。良い声。春の新芽のような、若さと生命力と訴求力のある声。
 最後の「Lost」がすごく良かった。《春は遠い記憶の中》のような歌詞があって、春が特別好きな自分の涙腺が緩む。MCで彼らが北海道出身だと聞いていたので、余計に春待ちの気持ちが煽られた。

■peridots
 初見。今日の4組の中で唯一立ってのパフォーマンス。フラジャイルな名とは裏腹に力強い演奏。 「ティーンエイジャー」という曲が面白かった。次のツアーはバンドスタイルで回るらしく、THE弾き語りな人かと思っていたので驚いた。どう変わるんだろう。

■波多野裕文(from People In The Box)
 「いつもはバンドでやってるんですけど、今日は小さな音でやるから。よーく、耳を澄まして聴いて、……わっ!
 いたずらっ子のキュートな笑みでスタート☆というか人が狙い通りに引っ掛かる様を見て楽しそうだった。
 今日ギター男子を4組観て、この人の言葉と音楽が圧倒的に、異様に、好きだと再認。ブラボーミスターハターノ!(テンションがおかしい) とにかく紡がれる言葉ひとつひとつが心に引っ掛かる。次はどうなるんだろうって紙芝居を見せてもらっている子供みたいにわくわくして聴いていた。M1-5まで未発表曲。
 以下歌詞(の断片)は拙い記憶に拠るので、誤りが多いと思います。すみません。そして未発表曲ってどこまで書いて良いのか判断付かない。コメントは常に歓迎です。

1. タイトル不詳(初披露?)
《雪の降る街》《青空》《裏切りは下水道に流れた》《大したことじゃなかったかもね》《わたしは何も気にしてないよ》
◇東京はうっすらと雪の日。こういう楽しませ方好きだ。衛星が落ちた日の「市民」始まりを思い出す。

2. タイトル不詳(初披露?)
《8つの卵のうち4つはただ壊れた 2つは朝を待たずに消えた》
《ニコラが1つくすねて》 ※後にこのメロディー再登場、「ニコラ」→「テスラ」
《残った卵はただ1つ どうやって食べようか(?)》
「ニコラとテスラっていう言葉が出てくるんですけど。(新譜の)『ニコラとテスラ』とは全く関係ないです。笑」
◇食べるんだ!?って驚いた。てっきり育てて何か産まれるのかと。ストーリー性の高い詞。「みんなのうた」風に映像付いても良さそう。という発想になるのは、割れる卵→ハンプティダンプティが連想されるからか。

3. タイトル不詳(初披露)
「昨日つくった曲をやります。だから、多分間違えるとおもいます。……でもそれは仕方ないよね。ははっ」
《??夜 安らかに眠れと光合成が始まった》《青い馬》《アルファベットになった》
◇『Citizen Soul』の歌詞を見て、今後はこういう方向?と思っていたら、この曲はそうではなかった。シティズンが特異なのか。

4. タナトス3号(仮)
《目を凝らすと あのサイコロのひとつはおかしな動きをしてる》《ヤコブを片隅に》
晴れ豆での一曲目。覚えていた《飛び魚~》のフレーズで、来たあああ!って嬉しくなる。リズミカルなので揺れながら聴いていたら《とんてんたんとん》を区切りながら歌われたり、テンポが徐々に速くなったりして、ただゆらゆらさせてはもらえなかった。曲名に言及されず、このままなのかは不明。

5. 風が笑う
《冬の朝》《溶けた絵の具に混ざり合いたいな》《死に囚われるまで 死に囚われるまでは》《新聞紙》《風が吹いて 全ての文字が飛ばされていった》
◇晴れ豆で聴いた曲。風のように通り抜ける、のに痕跡をしっかりと残していく曲。

6. JFK空港
《ひとりの愚かな、愚かな人間だった》
◇待ってた。ありがとう。
 アレンジは基本晴れ豆と同じで、端々は多分気の向くままに変えていた。優しい《荒れ放題の庭で~》で緊張が解け、呆然としたまま終わりに導かれていく。何が起きたのかよく解らない。ひとりでよくここまで壮大な世界を表せるなあ。
 また会えるといい。

■堕落モーションFOLK 2
初見。気のいい兄ちゃん達。歌を、演奏を、すごく楽しむ人達。というのは伝わってきたが、前の人の余韻で頭がいっぱいでまともに聞けなかった。拍手が一番大きかったので、彼らのファンが多いイベントだったらしい。余裕のある時にいつかまた。

October 30, 2011

波多野裕文「一日の孤独」
@ 晴れたら空に豆まいて

 波多野氏は豚に乗って登場、場内に豚を放ち、巧みに火を操る斬新なステージング。
 ギター一本と己の声で、プリンセステンコーも震え上がる異空間を創り上げたのでした。すげえええ!

 なんてね。

 とても和やかで、温かく満たされた空間と時間だった。ずっと記憶に残しておきたいので、覚えていることをできる限り書きつける。
 前日の公式ブログで「小音かつかなり渋い世界」と書かれていて、カバー多めかと思っていたが、未発表曲が沢山披露されて新しい手探りの世界だった。
 以下時系列で。歌詞、違っていたり混ざっていたりするかも。ご指摘歓迎します。

■登場
 楽しそう。挨拶の端々に笑みが混じって、客もつられて笑う。「何しよっかな」って既にゆるうい空気。
「Steve Jobsに黙祷しようか、30分間(笑)。やりたい人は後で一緒にやりましょう」

01. タナトス3号(仮)
《飛び魚跳ねるビルの街》《とんてんたんとんてんたんとん 大工は全部知っている》
「タナトス3号っていう仮タイトルで。あまりに酷いから、明日変えます(笑)」
◇未発表曲。『Lovely Taboos』に近い、中世ヨーロッパのような空気。「一度だけ」みたいなやわらかい手触り。《とんてんたんとんてんたんとん》が繰り返され、耳に残る。しっかり出来上がっていたので新アルバムの曲来た!と思いきや、仮タイトルというので違ったらしい。

02. かえるの王女さま
「何でだか『かえるの王女さま』ってすごく言いたい時期があって。かえるの王女さま。何でだか、解らないんだけど(笑)。で、アルバムのタイトルになってるんですけど。あんまり歌詞に多過ぎて、一部変えましたもん。そんな時に作った曲です」
《かえるの王女さま 君の心臓は楽器みたいだね》
◇未発表曲。これ? 王女を慕う臣下からのラブソングみたいだった。甘い。

03. やまいとオレンジ(長谷川健一カバー)
「何がいいってね、とにかくいい。何もかもいい。(きっぱり)」
「長谷川さんとは変な縁があって。僕の働いてた職場の同僚が、長谷川さんの親友っていう。そこから交流が始まったんですね。その共通の知人が面白い人で。部屋に、Sonic Youthのポスターが貼ってあるんですね。でも『俺はSonic Youthは聴いたことがない』と(笑)。ただ『格好いいから』って。ああ、全然ありだなあと思って」
「長谷川健一さんの沢山ある好きな曲の中でも『やまいとオレンジ』は自分にとって特別な曲で。聴いた時、本当に自分が書いたんじゃないかと思うくらいで。それを長谷川さんに言ったら……『何でなん』って」(会場爆笑)
◇裏声がずっと続くサビが新鮮。ギターと波多野さんの声で奏でられると、当たり前だけど印象が違った。原曲は重たくて冬の鈍い匂いがするけれど、波多野バージョンは浮遊感が心地良くて夢の中のよう。どちらも、とても良い。

04. 「すごい昔に作った曲」タイトル不詳
《穢れた体を拭い去るには 血を全て抜かねばならぬ》《この世界は美しい そして愚かで》《煙の街を旅しよう》《いつかは許されると思っていた 僕も 君も》
◇未発表曲。確かに詞が若い。でも世界観は変わらずで心地良かった。

05. コンコルド
《暗い闇の中から》《国際電話通じない》
◇未発表曲。「子供たち」の冒頭を思わせる、空がさっと引き裂かれるイメージ。この辺りで、未発表曲がどれほどあるのかと問い詰めたくなる。ブラックホールを覗いている気分。期待と畏怖と。

06. Little Sister(Rufus Wainwrightカバー)
◇あの声でなぞられる"And remember that your brother is a boy"がツボった。ルーファスといい長谷川さんといい、渋い男性ボーカリストが好みなのだろうか。

07. 笛吹き男
「僕、People In The Boxっていうバンドをやってるんですけど、(会場笑)……知ってるよね(笑)。それで、新しいシングルを出しました。『Lovely Taboos』っていう……知ってるよねえ?(笑) そうだよね」
「『Lovely Taboos』結構売れてます。あまり大きな声じゃ言えないんですけど。(客拍手)……大きな声じゃ言えないってことは、解ってるな? ツイートするなってことだ(会場爆笑)」
「何でああいう売り方なのかって、みんな疑問に思うと思うんですけど。USTで聞いてみてください」
「(終わった後)僕、笛吹き男、結構好きですよ。今まで書いた曲の中でも。自分で言うなってね(笑)。でも、ああいう曲はもう書かないと思います」
◇アコースティックだと一層切ない苦しい優しい。沁みた。自分もピープルの中でかなり好き。ツイートするなと言われたのでブログに書いてやる!けれど、大きな声で言えばいいのに。本当に本当におめでとう。もっともっと多くの人に聴かれるといい。愛されるといいよ。最後の「ああいう曲はもう書かない」がとても気になる。

08. 新市街
◇間奏のギターソロをtutulutululu tululululu...ハミングして、半分位で「つかれた……」会場爆笑。続きも頑張ってた。「ぱぁん!」(風船が空中高くで割れるようなふわっとした感じ)の後もハミングが始まり再び笑い。その後も《踊ろう朝まで》が何度も繰り返されて長く続いた。楽しい。

09. "One day I'll swallow your soul" (タイトル不詳)
「あ、そうだ。さっき作ったばかりの曲やろうかな」
◇未発表曲。歌詞は英語のワンセンテンスのみ繰り返し。フレーズも同じものが何度も繰り返され、最後の方で数回転調。飲み込まれる飲み込まれる。渦に吸い込まれていくような。弾き語りならではの感じだったけど、だからこそピープルで聴いてみたい。

10. 風が笑う
《新聞紙》《絵の具に溶けてしまいたいな》《死にとらわれるまで 死にとらわれるまでは》
◇未発表曲。いつの曲か言ってなかったけど、詞の質感は初期寄りだと感じた。「死にとらわれるまで」が何度も繰り返されていた。ふっと消えてしまいそうな、孤独な。

■リクエストタイム
 ワンフレーズだけのもの多し。沢山やったので解ったものだけ。
 リクエスト却下する理由にいちいち笑った:「知っている人は、歌詞を間違えると失礼だから……。歌詞問題がね」「それ、弾き語りできる?!」

・誰かの願いが叶う頃 - 宇多田ヒカル
 《あの子が泣いてるよ》 声がきれいだなあと改めて。
・きらきら星
 「きらきら星? 何それ? (客「ええー」) あっ、ああ、きらきらひかる~か」
 チューニングしまくって壊れたレコードみたくなっていた。斬新なきらきら星。「き、きー、き、き、きー、きー、きーらーきーら、きーらーきーらー、きーら、きーらーきーらーひーか、ひーかー、ひーかーるーおそらのほしよー……何だっけ。この後解んなくない?」終了。自分も解らなかったので調べたら、意外な出自で驚いた。
・Misstopia - THE NOVEMBERS
 「ノベンバはねー……あの4人じゃないとできないと思うよ」
 と言いつつ頭から少し。サビ《ああ君の小さな手》が飛んで、ふんふふふん♪ハミングになって終了。終演後小林さん来ているの気付いた。聴いていただろうか。
・Hyperballad - Bjork
 !!! リクエストした人に角砂糖を献上せよ!
 「久しぶりに新譜というものを買って(Biophilia)すごく良かった。全部ツボだった」
・The Stone - 小谷美紗子
 ワンフレーズだったけど「ギリシアの神殿」の一言が聴けて嬉しい。

11. 一度だけ
「一度だけって、いかにもやりそうじゃない?」
◇リクエストタイムからの派生。そう言いながら、フルでとても丁寧に歌ってくれた。

12. 土曜日 / 待合室
客「金曜日!」
「金曜日はねー、あのごきげんな2人がいないとね」
客「犬猫!」「6月!」「ブリキの夜明け!」「ヨーロッパ!」「月曜日 / 無菌室!」
「じゃあ、土曜日やろっか(笑)。何で訊いたんだってね、ふふ」
◇土曜日大歓迎。ちょうど雨の日。バンドとはまた違うところでぞわぞわした。

13. JFK空港
「JFK空港という曲があって。歌うのが大変なんです。……あの、歌うことって、すごく大変なんですね、僕にとって。自分が何者かっていうのがよく解っていないんですよ。自覚的じゃない。……何が大変かって言うと……(長い沈黙)あの、うまく言えないことは言うもんじゃないね! 区役所の何とかセミナーに言ってくる。『自分の気持ちをうまく伝える』、縮める術を学んできます(笑)。JFK空港という曲も、すごく大変で。何が大変かって、喋り出すと一時間くらいかかるな。でも僕、一生歌うって決めたんです。……決めたから(会場拍手)や、そんな、もったいない」
◇MCずしんと来た。「一生歌うって決めたんです」の覚悟。圧倒的な未来。それはきっと「生き続ける」ってことと同義。置き去りにされたような気持ちもある。
◇アレンジにやられた。朗読パートから、伴奏のギターがインプロビゼーション。不穏で狂っていてめちゃくちゃなフレーズ。それに淡々と早口の歌詞が乗る。この時点で鳥肌。そして、不意にギターが止まり《でもどうか諦めないで だって僕たちはまだこの世界に産まれてはいない》! 再びやさしいギターに戻り《荒れ放題の庭で~》。ギターに乗せてスキャットが長く続いて、あの賛美歌的フレーズで終わり。やられた……。

■アンコール
「恐縮です(笑)。そうだよね、有り得るよね。何も考えてなかった。どうしようかな」
 リクエスト募るも、「歌詞問題」ゆえに長く続かず。
「(客「ユリイカ!」)じゃあユリイカやろう。ユリイカ、でも歌詞がね……出てくるまで時間がかかる」
 危惧していた通り「明け方の僕らと~」以降が飛んでハミングになり、「これはひどすぎるな!(笑)」と終了。
「自分の曲でよくあるんですけど、歌ってると、作ってた時の第二候補、第三候補が浮かんできて、こう(片手ずつ詞を浮かべる振り→近付けて衝突)、事故」(会場爆笑)
「じゃあ月曜日やる! 何か妥協案みたいだな、じゃあ月曜日(笑)。何かリクエストありますか。や、待って、締めくらいちゃんと自分で考える。窮地に立たされているな」
 ぐだぐだいいよいいよ。

EN. 犬猫芝居
◇うまいこと締めた。公演名「一日の孤独」だからね。


 書き過ぎた気がするし、書き忘れた気もするので、後で推敲します。取り急ぎ。

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Maira Gall