October 31, 2011

ジ・アート・オブ・アルド・チッコリーニ 第2夜:リサイタル
@ すみだトリフォニーホール

 世界にはお前の矮小な想像力を遥かに凌ぐ美しさがある、と教えてくれたのがこの人の弾くドビュッシーだった。今でもそう思いたくなると聴き直す。という、自分にとって特別なピアニストであるチッコリーニの生演奏を聴くことが遂に叶った。
 ゆっくりとした足取りで舞台に現れ、拍手が終わってから着座するまでもゆっくりゆっくり。大丈夫?と束の間危惧したが、紡ぎ出される音は衰えを微塵も感じさせなかった。それどころか、高齢のピアニスト特有のあの悟りを開いたような世界が集中を少しも切らせることなく展開された。全ての音が確かな存在感を持って鳴らされる。有り体に言えば非常に丁寧な演奏で、それが最早博愛の域。ベートーヴェンピアノソナタ#31とか出だしの数秒で涙。アンコールで「愛の挨拶」始まった時の歓喜ときたら!
 アンコール後、スタンディングオベーション。ピアノのコンサートでは初めて遭遇した。確かに立ち上がって拍手を送らずにはいられない、本当に素晴らしい演奏だった。長生きして、またきっと来日してほしい。

■プログラム
クレメンティ:ピアノ・ソナタ ト短調 作品34-2
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 作品110
リスト:「神前の踊りと終幕の二重唱」S.436~ヴェルディ/歌劇《アイーダ》による
リスト:「イゾルデの愛の死」S.447~ワーグナー:楽劇《トリスタンとイゾルデ》による
リスト:「眠りから覚めた御子への賛歌」~《詩的で宗教的な調べ》S.173 第6曲
リスト:「パレストリーナによるミゼレーレ」~《詩的で宗教的な調べ》S.173 第8曲
リスト:「祈り」~《詩的で宗教的な調べ》S.173 第1曲

■アンコール
リスト:メフィスト・ポルカ
エルガー:愛の挨拶
グラナドス:スペイン舞曲第5番アンダルーサ(祈り)

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