本日の会場は、外壁一面に蔦の這う古民家風の一軒家カフェ。入った1階の左手がキッチン、その上が演者控え室。右手は1階から2階まで吹き抜けになっていて本日はキャパ30人のライブスペースと化している。歌舞伎町と新大久保の狭間でひと息つけるこの空間、磯崎新設計だという。色々と昨今のお洒落カフェとは一線を画している。
そんな場所で聴いてきた。コーヒー片手にのんびり、かと思いきや小キャパとノーマイクの緊張感も薄ら漂っていた。
■かとうみほ
オープニングアクトとして演奏。他2人の間に立って連絡役をされた方だそう。
ウクレレをぽろぽろと爪弾きながら歌う。ハワイアンとかリゾート風ではなく、深夜に隣のひとり暮らしの女の子の部屋から聴こえてくるような、ゆったりと密やかな演奏。盗み聞きみたいですみません、と言いたくなるくらいプライベートだった。やわらかい拍手に包まれて終演。
■山崎怠雅
長髪に柘榴色のハットを被ったギタリスト、といえば1月に灰野さんの傍らで弾いていたその人だった。ソロの弾き語り、とても良かった。豊かなフレーズに満ちたギターは安心して聴いていられるし、声も詞も好きだった。迷いなく通るクリアな声が、解釈の余地を残した屈折気味の詞を真っ直ぐに導いていく。重力が四方八方に向いている道を歩いているのに、どう進めば良いかは明瞭に示されているような、不思議な感覚。この人にしかできない表現だった。そう思えるのは稀なことで嬉しい。黒髪ストレートの男性ミュージシャン一般への信頼度が更に高まった。
■波多野裕文
柔らかい雨の日、サイドの髪の毛先が三日月みたいな弧を描いていた。
この日の会場に馴染むバクダッドカフェの挿入歌に始まり、最近お馴染みのオリジナル曲達に加えてカバー数曲が光る全13曲。七尾さんやPeter Gabrielは原曲知らなかったけれど、とても良かった。前者は曲そのものが素晴らしく、後者は波多野さんの「この曲大好き」感が溢れ返っていて(曲からは反逆の色を強く感じたけれど)楽しかった。繊細な色で何重にも何重にも塗り重ねられたような七尾さんの景色から、マティスみたいな原色で世界を塗り潰される移り変わりも気まぐれなソロの面白さのひとつ。
ソロオリジナルやピープルのセルフカバーは聴き慣れているものも多かったけれど、いつもと違った響きに耳を澄ませていた。吹き抜けの天井に、この日の夜に、雨に、飾りのない音が溶けていく。ギターを持ち上げるようにして弾いていて、なぜなのかと思っていたら、Tumblrで謎が解けた。《夜をかきわけて》で始まる昔作ったという曲、久しぶりに聴けて嬉しかった。Bird Hotel以前の匂いが確かにして、それが今目の前で息をしていることが、なぜだか堪らなく嬉しい。二度聴いただけなのに古い友人に会ったような気持ちになる。また会えるといい。
アンコールは、ソロでは久しぶりの《新市街》。百人町によく似合う。いつか笑いながら諦めていたTu tulu tululu...のハミング、がんばって歌いきっていた。和やかに見守って終演。
外に出ても夜の雨に先程までの音が溶けているような気がして、濡れてもいやな気はしなかった。重たい頭の奥で演奏を反芻しながら、音に包まれたまま家に着いて、余計な思考に邪魔をされないようにそのまま眠った。
●
01. Calling You (Jevetta Steeleカバー)
02. 《追放された王様》
03. ダンス、ダンス、ダンス
04. 気球
05. 旅行へ
06. Open (Rhyeカバー)
07. 線路沿い花吹雪(七尾旅人カバー)
08. Shock The Monkey (Peter Gabrielカバー)
09. 《夜はやさしい》
10. 風が吹いたら
11. 《夜をかきわけて》
12. ニムロッド
EN. 新市街
June 30, 2015
AN INCIDENT AT A STREET CORNER Vol,26 @ カフェアリエ
January 24, 2015
新春!!三つ巴ライブ2015〜アコースティックの夕べ〜 @ 新宿LOFT
旧知の3組でリラックスした空間に、歌舞伎町の際どさとロフトのロックンロール感が適度な緊張を漂わせる。その奇妙な均衡が面白い。新春!!というタイトルだけがめでたい。
■成山内(sleepy.ab)
久しぶり。まだ北海道に住んでいて、今週は東京に来ているらしかった。雪で搭乗が遅れ、搭乗後も除雪のため機内で1時間ほど待ったという話をされていて、申し訳ない気持ちになったりした。
そんなバックグラウンドの刷り込みのせいだけではないと思うのだけど、彼らの演奏は冬の匂いがした。白と白藍、新雪と淡く晴れた空の色がずっと見えていた。ボーカルが冴えた冬の空気みたいに響く。同じ澄んだ声でも波多野さんのとはまた違う。そこに山内さんがギターやアンデスや名前の解らない楽器で色を重ねていく。曲名で覚えているのは「夢の花」「さかなになって」。最後は「ねむろ」という曲。ずっと冬の色でいっぱいだった。
■小林祐介(THE NOVEMBERS)
こちらも久しぶり。かつて森の妖精のようだった人は、ゴールデンレトリバーみたいになっていた。ふわふわの金髪で大きな演奏をしていた。スケールの大きな。
Misstopiaで懐かしくなったり(なんと5年前に発表された曲である)、ノーミスで進んだmeltのサンプリングに上達を見たり。人の親になったのだからそれはもう変わるだろうと思っていた程には変わらず、安定して良かった。それでも数年前のイメージとは少し変わっていた。どこへ向かうのか、今でも気になる人ではある。
自分の出番について「ラスボスに挟まれているよう」だと言っていた。その笑い方が相変わらず好きだった。
■波多野裕文(People In The Box)
旧知の2組との共演については「光栄です」とコメント。終始リラックスモードで楽しそう。歌も演奏も気の向くままにできているようで良かった。緊張し過ぎるのでもゆる過ぎるのでもない、今日くらいのテンションが彼の最大値を引き出せるように思う。時間に急かされていたようなのが少し惜しい。
曲目は9日とほぼ同じ。最近一曲目の定番である《追放された王様》の時点で演奏する歓びが見える。歌いたくて堪らないような、エネルギーを秘めた感じ。長く続くアウトロのスキャットがうつくしかった。二曲目「旅行へ」は昨日できたという新曲。「できるところまでやります。できなかったら……丸坊主にします。アンコールで」と笑いを取りつつ始まった。ぼくは旅行へ出かけた、酷く暑い日だった、お腹は壊さなかった、みたいに短い描写が3拍子に乗って進んでいく小品。まぬけな顔で、まぬけな顔で、と何度も繰り返すサビ。サビ?というか短い描写の行き着く広場的なフレーズ。最後まで演奏しきって「坊主は免れた」と呟きつつ、旅行が好きだけど行くとまぬけな自分を客観視する、という話をしていた。それからまずいラーメン屋に行った話でもきっちりと笑いを取り、「ぼく今日何なんでしょうね」と自分も笑っていた。微熱のようなテンション。
「砂漠」最後に付け足された詞の歌い方が9日と少し変わっていた。《見渡す限りに拡がる砂漠で》を何度か繰り返し、最後に《手に入れたのさ》で一突き。いいね。
今日は特にピープル曲率が高く、どれもとても良かった。ツアー後の「風が吹いたら」沁み入る。皆で手拍子するのも良いけれど、ひとりで《みんなここへおいで》と歌う波多野さんを小さなハコで見守るのも良い。バンドよりも詞のひとつひとつが噛み含めるように歌われて、浸透していく感覚。《誰も嘘つきなんかじゃないよ》と《どんな美しいひともじぶんの嘘に気づいていない》のせめぎ合い、ひりひりする。前者が既に勝っているのだけど、続けて聴くと揺り戻される。
アンコール、こちらもお馴染みになった《蛇口を捻って》。この曲も今までの色々な詞と繋がっている。今日は《あなたは誰にも愛されないから》という嘘をつく自分と言った先の相手と、双方への《ばーか》に聞こえて、それが急に腑に落ちた。しばらくそんな解釈で聴くかもしれない。
新しい聴き方と、「歌舞伎町、久しぶりに来たらパンチのある街ですね。気を付けて帰ってください」との言葉に送られて地上へ出る。来る時には気付かなかった「I LOVE 歌舞伎町」という大きなピンクのネオンを光らせたビルが目に飛び込んで、歌舞伎町 WOULD LOVE YOU TOOだよ、と思った。
●1. 《追放された王様》 2. 旅行へ 3. 砂漠 4. Calling You (Jevetta Steeleカバー) 5. 風が吹いたら 6. ダンス、ダンス、ダンス 7. ニムロッド EN. 《蛇口を捻って》
March 26, 2013
J-WAVE「THE KINGS PLACE」LIVE vol.2 @ 新木場STUDIO COAST
KPナビゲーターが集まってのライブ第二弾。COAST好きだ。
■androp
初見。あくまでも個人的に、プラスチックみたいだと思った。予め用意された台本に則って進行する、額縁の向こうの劇のような。フロアで跳ねている人達にはきっと全然違う風に受け取られているんだろう。という意味で新鮮だった。
■People In The Box
照井さんを加えたAM編成。4人では今までで一番大きなハコ? とはいえ、配置もメンバー間の距離も変わりなし。違ったのは、客層と、照明がより映えていたことと、ドラムセットが(多分転換の都合で)高さ50cmくらいの台に乗せられていたこと。
何よりも、山口大吾のうつくしさ! これに尽きた。散々書いているし、ライブの度に思っているけれど、改めてはっとした。生命そのもの。しなやかさで躍動感溢れるドラミングに両性併せ持つ音。比類なきアーティスト。ピープル以外にも、もっと色々な人とシチュエーションで観てみたい。
客層がいかにも邦楽ロック的で新鮮。一曲目「旧市街」のイントロから最前辺りの一部でいくつも腕が上がっていて、この人達はどうなるのかと眺めていたら、時々棒立ちになりつつも基本的にサビでは腕を上げて乗り続けていた。バンドへの親愛の意思表示なんだろうと思うといとおしい。《空をかえせ》デモのようだった。
攻めの6曲。「ニムロッド」締めで波多野さんがドラムの台に乗って、一拍ブレイクの後にダイゴマンと音を放つ、その光景が本当にきれいだった。締め方にバリエーションがあると良いなといつも思うけれど、時々こういう瞬間が見られるのは嬉しい。
ダイゴマンMC、客のノリの良さがうまく作用して、一際輝いていた。楽しかった!
●1. 旧市街 2. 球体 3. ダンス、ダンス、ダンス 4. 市民 5. 完璧な庭 6. ニムロッド
■クリープハイプ
やっぱりボーカルが素晴らしい。生まれたばかりのみどり児のような、人に訴えて惹き寄せる声。苦しみにも悲しみにも喜びにも嘘がなくて、直球でぐさぐさ刺さる。かと思えば演じ方も巧い。演じる=嘘ではなく、本当を伝えるための演技なのだろうとこの人については思う。何かの曲の最後、音が徐々にディミニュエンドしていって遂に途切れた時、ちいさく「ありがと」と呟いたのには痺れた。やるな。
バンドの演奏がそのボーカルから剥がれていないのはきっとすごいことなんだろう。巻き上がる風に自ら乗って音が舞い踊るイメージ。風が進み続けるのを後押ししたりもするし、時にボーカルを包む緩衝材のようでもある。
結構好きなんだけど、どう聴くべきかまだ解っていない。ダイバー多いから前方は厳しいし、ワンマンもためらわれる。またいつかの対バンを楽しみにしていようかな。
■Nothing's Carved In Stone
3度目のナッシングス、今日が一番楽しかった! こうして数組の対バンで聴くと彼らの音の重厚さが際立つ。ボーカルのMCが正直合わないと思っていたけど、今日は少しやさしく感じたり。耳馴染みのある曲が少しずつ増えてきたり。
Everything's carved in our memory! と言い切るにはあまりにも記憶力が頼りないけれど、そう思いたいくらい楽しいライブだった。また、きっと。
February 14, 2013
VALENTINE ROCK Vol.6 —愛のロックを鳴らそう— @ LIQUIDROOM
雑誌MUSICA企画。ごみ箱に大量のみかんの皮を見て何事かと思ったら、主催者が配っていたらしい。なぜみかん。芥川の「蜜柑」ならロック。「私はこの時始めて、云ひやうのない疲労と倦怠とを、さうして又不可解な、下等な、退屈な人生を僅に忘れる事が出来たのである」!
■クガツハズカム
初見。きのこ帝国ボーカルのギター弾き語り、途中から観た。
初期Salyuに霞をかけたようなアンビエントな歌声の中から、小谷美紗子みたいな真っ直ぐな主張が立ち上がる。やわらかな耳触りでありつつ、芯が強く凛としている。
跳ねのけたくなるような重たさだった。あの重みが好きな人はきっとすごく好きなんだろう。9月、夏が闘って戦って殺されていく感覚を確かに思い出した。
■People In The Box
アコースティックセット! 3人編成。劇場編みたいにゆるいMC挟みつつの全5曲。
MUSICA有泉さんの紹介「魂持っていかれる系のバンド」を、ダイゴマンがネタっぽく連呼していたの笑った。個人的には最近は「魂取り戻してくれる系のバンド」みたいな気がしている。どちらにしたって魂に働きかけるのだからとんでもない。
1. 土曜日 / 待合室
しばらく聴けないと思っていたから嬉しい。一音一音が心地良い雨粒のよう。
ひとつひとつ地に沈んで染みていくようなアウトロが好き過ぎる。
2. 天使の胃袋
LosTバージョン。ボーカルの高音がしっかり伸びて、リキッドいっぱいに満ちた。
《電池が切れてしまった僕ら / だから次の世界で息をするよ》沁みる。
3. 木曜日 / 寝室
出たー! バンジョーだ!(心の叫び)
今日は木曜日。5曲の中でピープルの振れ幅が存分に表れていて楽しい。
4. ダンス、ダンス、ダンス
「『Ave Materia』は僕らにとって大切な1枚」というMCに続いてこの曲。
ひとつの生命がみえた。生まれたばかりの小さな生きものの、血流や脈拍や呼吸のようなアンサンブル。みんなが自由に踊るエレクトリックに対して、アコースティックは演奏のいのちを見守るような。ピープルを貴いと思うのはこういうところだ。
5. 球体
最後に伏兵がいた! まさかのアコースティック球体。
冒頭、雲か煙に一面覆われていくような不穏なアレンジに乗せての《球体に守られて だれもが痣だらけ》ぞわりとする。何度も繰り返されて徐々に浸透してくる。エレクトリック版よりじわじわ攻める様はほとんど老獪。逃げ出したくなるところで《空を返せ》の澄んだ主張ときれいな福井コーラスに救われる。巧いなあ。
曲と彼ら自身のしっかりした骨格と柔軟さ、アンサンブルの妙、そしてダイゴマン曰くエレガントなMC(笑)の楽しさが存分に溢れるライブだった。またいつでもぜひ、アコースティックで。
転換中は鹿野さんのDJタイム。Syrup16g"My Song"が流れた。何の確信もないまま並々ならぬ期待をしていたら本当にかけてくれて、嬉しくなる。Syrupの音が、五十嵐の声がリキッドに広がっていく。来て良かった。ありがとう。
■日高央
初見。一昨日twitterのDMで依頼、昨日追加発表、今日演奏となったらしい。前半がソロ、後半は彼の今のバンドらしいTHE STARBEMSのメンバーと演奏。この面子だと浮くかと勝手に思っていたら、ベテランの風情はありつつ、音の楽しさは同じだった。
■川上洋平&庄村聡泰
初見。有泉さんによるとユニット名は「座パンプキンズ」で「ザがTHEじゃなく座るの座なのがポイントらしい」。[champagne]のギタボとドラムに、サポートキーボードの3人編成。要所要所キーボードが素敵な仕事してた。
一曲目に痺れる。Waitress, Waitress!という曲だと教えてもらった。"Absalom, Absalom!"にウェイトレス出てきたっけ?と思ったが多分関係ない。ともかく格好良かった! シャンパーニュだと思ってて申し訳ない、シャンペイン覚えた!
January 30, 2013
Slow Sound ~下北沢にて~ @ 下北沢440
渋谷駅構内を全力疾走して電車を乗り換え、下北へ。
440(four forty)は細長い造りのカフェバー。グラスの氷が溶ける音、煙草の匂い、まあるい水槽みたいな照明なんかに囲まれて、ゆったり過ごせる。キャパ100弱でも後方だと舞台は見づらいけれど、モニターに映像を出してくれる。
三組目の途中で飛び込んだ。寒さも緩んだ晩冬の夜。
■FLOWER FLOWER
女性ソロでギター弾き語り。下北っぽいカジュアルな金髪ショートの可愛い人。
数曲でも聴けて幸運だった。透明感に僅かなハスキーさの混ざった声を聴いていると、ひとつの円が浮かぶ。感情も主張も願いも皆、その円の内に収まっている。不思議と小さくまとまった物足りなさはなく、ただ円がきれいだし心地良い。
期待の新人さんかなあと調べたら"Good-bye days"の人みたいでびっくり、納得。とうにメジャーだった。外見も歌も随分印象が違って、今日とても惹かれた。次の人も「誰なのか全然知らなかったんだけど、すごくいいよね。俺結構……ガチで好きです」なんて言っていた。こんなキャパはもうないかもしれないけど、また会えるといい。
■波多野裕文(People In The Box)
男性ソロでギター弾き語り。華奢なカーディガン男子といえばありがちだけど、くるんとおだんごに結わえた髪と、シンプルなシリンダーハットが特徴的。
……今更ながら描写。癖のないきれいな黒髪がいつも羨ましい。
1. 中国に行ってみたい
2. ドレスリハーサルの途中(街路樹が増えていく)
3. 8つの卵
4. 君が人を殺した
5. タナトス3号(仮)
6. あなたは誰にも愛されないから
#1最早定番のアカペラ、と思いきや、途中からiPhoneのボイスメモ?投入。《中国に行ってみたい》を録って、自らも歌いつつ再生して、リアルな声と録音された声のポリフォニーを織り上げる。詞が珍しくモノフォニックなところ、声が多重化されることで世界の複数性に立ち戻る。幾つもの中国が生まれる場の居心地の良いこと。
基本ポリフォニックな詞の中でも、特に#6はうつくしいオーケストレーション。蛇口から流れる水と泡と、それらが川になって海と出会う、客観描写のクレッシェンドがあればこそ、不意に人が現れて歌い掛ける《あなたは誰にも愛されないから》のインパクトが強くなる。#4やピープルでもこのパターンはあって、意識的なのか判らないけれど巧い。《5月の空は海の色》本当に素敵なアクセント。
慣れると分析し始める奇癖がある。まとめるなら、好きです。ありがとう。
いつもより客層が多様で、MCで触れられていたように、聴き方の差異が面白かった。眠ってる?と思いきや曲が終わると熱い拍手を送る人とか、ひたすら首を捻って連れに「わからん」アピールする人とか(#6は集中してた)、微動だにせず見つめる人とか。受容もポリフォニック。対立せず共生する。だから居心地が良い。
自分の受容もいつも違う。今日は反抗期(笑)だったのか、何とか言葉に侵入されないようガードを固めて、守りきったと思ってハコを出た。けれど街のざわめきのなかひとりになったら、あの言葉や音や場のやさしさが、逆にガードになってくれた。どうしたって作用する。諦めて、安心する。
#3が好きだった。《流れて 伝わり 悼まれながら 溶けていった》静かでやさしい眼差し。#4《誤って》がなくなっていた。誤らなくても? 久々の#5冒頭はやっぱり《目を凝らすと》のよう。BPM爆上げはなく、ゆったり締め。
#6《たったふたつでおなかを満たして シンプルなものさ》響く。iPhoneのアラームが鳴って時間切れ。アンコールがないことは最初に告げられていたのに、演者が舞台から下りても皆なかなか席を立たなかったのが印象深い。集団で夢の終わりに気付いていないみたいだった。
わたしたちの現実の人生は、四分の三以上も、想像と虚構から成り立っている。善や悪と本当に接触するなどということは、稀れにしかない。
- シモーヌ・ヴェイユ『重力と恩寵』より
3/4と1/4の境界に触れる歌。また、いつか。
January 28, 2013
QUIET ROOM 2013 WINTER @ 渋谷WWW
リキッドしかりWWWしかり、好きなハコにはレモネードがある。飲んでる間は夏になる。ダウン着てても夏である。スタンディングかつライブ編成ありでQUIETではなかったから、WINTERじゃなくたって大丈夫だろう。
VINTAGE ROCK主催、不定期開催の素敵なイベント。また是非WWWで。
■KUDANZ
初見。なのにずっと前から知っているような、気がした。懐かしさと慕わしさ。舞台の上の人がここにいるのか過去にいるのか曖昧になる。足元から溶けて音になる。
遅れて行って、聴けたのは数曲。最後、夕陽みたいな照明の中「燃えたい」って繰り返し歌われていた。指先に炎が迫ってきた感覚を覚えている。燃やしたいでも灰になりたいでもなく燃えたいってすごいなあ、と思ったりする。好きな違和感。
ギターの音も懐かしかった。何だろう。探るには少し時間がかかりそう。
■peridots
稀にいる歌うために生まれてきたような人のひとりだと思った。前のQUIET ROOMで見た時と印象が違ったのは、フロアの空気のせいだろうか。フラジャイルではないけれど繊細で芯のある声、WWWいっぱいに広がるととても心地良かった。
■People In The Box
サポートギターとしてハイスイノナサの照井よっちゃんさんが加わり、4人で初ライブ。上手から、横向きのドラム、中央奥にベースの配置までは変わらず。そしてサポートギターを挟み、従来よりやや下手寄りにハンドボーカル。
……ハンド! ボーカル!! 装備はマイクと歌声と言葉。
「Ave Materiaバージョンです」と簡単な紹介がなされたその編成で、本編全て演奏。ボーカリストがギターを手にしたのは3人に戻ったアンコールの一曲のみ。
ボーカルに専念するのは必然だった。サポートが入ると聞いた時は、ギターが2台になると思い込んでうまく想像できずにいたけれど、始まってすぐに、なるほど! いいね!と思う。CS以降増す一方だったボーカルの力を、ギターを置くことで極大化させていた。時に客ひとりひとりの目の奥まで覗き込み、痕を残すように歌う。「言いたいことが沢山あるんです」そうして生まれたAMのライブでの、必然の変化と映る。
照井さんのギターはハイスイらしく端整。盛り上がっても冷静な眼差しが残る。とても好きだけど、ピープルに入ると曲によっては引っ込み気味。波多野さんとの違いが面白く、ツアーを経てどうなっていくのか楽しみ。
気になるMCは軽く「どうも、照井です」くらい。ダイゴマンと化学反応起こして爆発するんじゃないか?と心配していたら杞憂だった。振り切れる方向が違うから大丈夫、だといい。
「ダンス、ダンス、ダンス」4人で演奏している空気がよく似合う。より解放感があって、体が自由に動く感じ。《森を突き抜けて~》最初から遠慮ないフォルテになっていた。ようやくしっくり来る。
「物質的胎児」(初演?)音源では間奏のシンバルワークが大好きだけど、今日は黙していて驚き。なぜだ。胎児から「みんな春を売った」の流れ、個人的にテンションの落差半端ない。前者はAMで一番安心する曲、後者はトラウマ級に恐ろしい曲。闇夜のよう。《おかしくなってしまった》ボーカルが強いと一層怖い。しかしベースが格好良い。そして「割礼」(これも初演?)現物が見えなかったけれど、ダイゴマンの右手元でカウベルらしい音が鳴っていた。丁寧で主張を抑えた良いアクセント。
本編最後「時計回りの人々」は圧巻。イントロ、強い白金の逆光に4人のシルエットが浮かんだ時の、これはやばい!感が最後まで続いた。演奏のディテールを聴く余裕などなく、圧倒されるだけされて終わる。生まれてきて、ピープルを知って、ここまで満たされて、もう充分だなあと思う。さらりと言われた「Ave Materiaツアーでまた会いましょう」が沁みる。
帰り道、見上げた月は異様なくらいまるく冴えていた。2013年がようやく始まった。
●セットリスト
1. ダンス、ダンス、ダンス 2. 市場 3. 物質的胎児 4. みんな春を売った 5. 割礼 6. 球体 7. 時計回りの人々 EN. ニムロッド
December 27, 2012
DECEMBER'S CHILDREN @ 日本武道館
武道館へは寒い時期に足を運ぶことが多い。今日も冬の青空の下、葉の落ちた枝々のアーチを見上げながら進む。そして写真を撮ってしまう。

着込んで行ったお陰かそれほど寒くなく、コート脱いでおけるくらい。とはいえ着たままの人も多かった。やはり防寒を怠るべからず冬の武道館。
14時開演、21時終演の長丁場。16時頃着いたら客入り7割くらい。各バンド30~40分くらい演奏して転換を繰り返す、ちょっとしたフェスの様相。
どのバンドも容赦なくやりたい放題で、とても楽しかった。
■ドレスコーズ
初見。舞台で演じる虚飾の空と華、その境を酩酊するようにふらふら千鳥足なボーカルが印象的。彼なりの美学に依っているんだろうと思った。取り憑かれているようでもあった。楽しそうなのが幸い。昨今、しかも男性では珍しい路線。
凄まじい女のドラムに釘付けになっていて、今調べたら男だった。びっくり。動物が駆け回ってるみたいな勢いが面白かった。
《テレビなんかより戦争がしたい》って叫んでいたボーカルは、最後客席に投げチュー振りまいて去って行った。最初から最後まで演技派。目の前で観られて良かった。
転換中、緞帳の奥からリハ中のドラムがずっしり響いてくる。次、ピエールだ!
■ピエール中野
やりたいことをやりたいだけやって帰って行った!
セットリスト、ご本人のツイートより。
【ピエール中野武道館】攻殻機動隊OP→ドラムソロ→レーザービーム×即興ドラム→MUCCミヤさんセッション→MC「ライブハウス武道館へようこそ!ここは東京だぜ!」→DJ:Mステ→A・RA・SHI(歌入りに合わせて熱唱)→BABYMETALヘドバンギャー→Xジャンプ→エンドレスレイン
— ピエール中野 凛として時雨のドラム (@Pinakano) December 28, 2012
ドラム久々に聴いたら圧巻。音が重たいのに回る回る回る。当たり前みたいに享受していたピエールの演奏、すごく贅沢だったんだなと思う。
DJピエール初見。12/21初出演したMステテーマ曲に合わせて四方八方にお辞儀。既に会場爆笑! Perfumeのタオルで汗を拭う姿もブレない。そして武道館に響き渡るA・RA・SHI! A・RA・SHI! For Dreaaaaam! サビで手のフリご一緒に! 何のイベントだっけ?ってな疑問も吹っ飛ばす! 客席一面、仕込まれたかのように完璧だったのは今思えば何だったのか。最後のバラードぽいところ、ソロでしっとり歌い上げ……るはずが、本人耐え切れず噴いてて笑った。新たなるPierre's moment。
「今一番気になる人達」との呼び込みでBABYMETAL登場、1曲「ヘドバン! ヘドバン!」歌って踊って「See you☆ミ」って去って行った。ピエール、脇で踊ったりヘドバンしたり、ただのファンと化す。ドラム叩かんのかい! 割と大人しくなった会場に「びっくりした? びっくりした?」って話し掛けてきてまた笑った。気さくだな。
最後Xジャンプで武道館が揺れる! 楽しかった! また時雨でMC聞きたい。
■ギターウルフ
初見。バンド名の通りロックンロール然としていた。演奏しても水飲んでも水自分に浴びせてもロックンロール。
迫力あって格好良いのに、なぜかフロアと温度差があった。赤と青のポケモンフラッシュ的なストロボ、インパクトは強いけれど、時雨なら使わないだろうと思う。同じスリーピースの攻撃的なロックでも、これほど違った実を結び得ることを実感。
■TK from 凛として時雨
初見。上手からドラムスBOBO、キーボード、ギタボTK、バイオリン、ベースひなっちの布陣。TKが中央にいるのが新鮮。
始まって早々、体がざわりとした。TKの音は明らかに他と違う感覚をくれる。
NCISのひなっちは跳ねて煽って楽しさが溢れるようなスタイルだけど、今日はTK仕様で緊張感あり。BOBO氏とふたり、安定した強力なリズム隊。バイオリンとキーボードが音源の質を超えるのは、多分楽器の特性で、難しいのだろうと感じる。アコースティックセットで聴いてみたい。
何よりもfilm A moment、圧巻。《時間を止めて》とそれに続く数秒の無音のことは、これからもずっとフィルムされているだろうと思う。存在がなくなって、一番欲しいものを掴めそうになる。だから《手に入れた世界は》と続く。今まで見たライブパフォーマンスの中でも、特別印象に残っている。まだうまく言葉にできない。
時雨の照明チーム、相変わらずエクセレント! flowerの黄と紫、予想外だけどよく似合っていた。fAmは《時間を止めて》が青、ウィスパーの《手に入れた世界》が赤、《なにも感じないよ》の絶叫が白。最後は青に包まれて終わり。タイミング完璧。
終わって席に着いても余韻がすごかった。紫色の照明の中、ピアノ曲(新曲?)が流れて、スタッフがセットを片付けていく。解体もショウの一部。《kill the moment》だなあとぼんやり思いながら、バラバラになっていく様から目を離せずにいた。
●1. haze 2. flower 3. 12th laser 4. phase to phrase 5. Abnormal trick 6. 新曲(Fantastic magic) 7. film A moment
■9mm Parabellum Bullet
3度目の9mm、とても好きだった。アウェイ寄りの場だと闘う弾丸感がより際立つ。時雨と9mmのファンは被っていると思いきや、今日は半々くらいに見えた。
初めて見えたドラム、両手でスティック回しまくっていた。曲芸か! と思ったらギターも相変わらず檻から放たれた何か的な動きをしているし、ベースもギタボもやりたい放題だし、束の間ライブなのかサーカスなのか判らなくなる。無敵のパフォーマンス。
目を奪われるばかりで演奏をあまり覚えていない。何かの曲で彼らに初めて静を見たのが印象的。水中みたいな青い照明、きれいだった。
感覚的なギタボMC健在:「俗に言うTKばさみというポジションなので、生粋の人[TKファン]からしてみれば僕ら夢か?みたいになっちゃうので気合い入れてやります」。TKばさみになったのが9mmで良かった。とても楽しいブリッジだったよ。
■凛として時雨
待ちに待った1年ぶりの時雨。こちらも体をざわざわさせてくれる最高のライブ! やっぱり特別なバンド。けれど期待が大き過ぎて、7曲では物足りなかった。アナウンスされた6月のワンマンが楽しみ過ぎる。
容赦ない攻めのセットリスト。その中でillusion is mineから始まるのはさすが。一気に時雨の色になる。一番聴きたかったnakano kill you、最後にやってくれた! TK最後傍観かと思うくらいギター弾き狂って舞台を後にした。めちゃめちゃテンション上がり、そのまま最高潮で放り出されて終演。サディスティックなところも変わらず。
●1. illusion is mine 2. I was music 3. DISCO FLIGHT 4. abnormalize 5. JPOP Xfile 6. Telecastic fake show 7. nakano kill you
●MC
(TK、舞台袖を見たりメンバーを見たり、きょろきょろ)
客「?(笑)」
TK「ひとつ、ニュースがあります。6月、6月……(メンバーを見る)」
345・ピ「「にじゅうはち! にじゅうはち!」」
TK「6月28日に、ここでライブをやります」
客「「「うわあああああー!!!」」」
December 13, 2012
実施中!!!第一回胞子拡散祭 @ 渋谷CLUB QUATTRO
胞子まみれの体のレントゲン図 2/2!!!
■松本素生とOKEGAWA'S(GOING UNDER GROUND)
初見。懐の広い、優しいバンド。俯いた顔を覗き込んで前を向かせてくれるような。むしろgoing over the rainbowなテンション。松本さん登場した時点で安心できる人だなって直観があり、その通りの場になった。ライブで、しかも初見では珍しい感覚。
ピープル好きだって話が嬉しい。元々松本さんソロで出演予定→メンバーに話す→メンバー「ピープル好きだから観に行く!」「俺も!」→だったらバンドで出演しよう!となったとか。素敵。
長いキャリアの賜物か、安定感ある演奏。メロディーをシンガロングさせて客を巻き込んでいく手並みは鮮やか。そこに嫌味や外連味が少しもないから寄り掛かれる。新鮮な出会いが嬉しく、とても楽しいひと時だった。
■People In The Box
何度も言ってる気がするけれど、広い舞台で大勢の観客を前に演奏するピープルが好きだ。かけがえのない、とても美しい光景。何だろう。沢山の人に受け入れられていることが実感できて嬉しいのかな。他にはない感覚。
対バンツアーセミファイナル、すばらしかった。特にボーカル。「時計回りの人々」「サイレン」「月曜日消失」今日心を掴まれた曲はみんな、ボーカルの訴えが強く響いた。体調は万全ではなさそうだったけれど、気力で高音を出しているように感じた。その気迫に打たれる。ニムロッド辺りから(ということは多分3.11以後)、「透明感のある少年声」に明らかな気迫が加わり出した気がしていて、それはベースのアグレッシブさと互いに呼応しているようで、バンドの面白い変化のひとつだと感じる。
ギターはジャガーさんに戻って若い音が鳴っていた。今日は初期曲が多いからよく嵌っていた。《不服だ 死を叫ぼう》から《メメント モリ》を経て《きみの孤独が 世界を救うかもしれない》、同じ日に全部聴けて感慨深い。予定外で急遽演奏してくれたダブルアンコール「ダンス、ダンス、ダンス」これ以上ない選曲だったと思う。そして今後のピープルが本当に楽しみ。
GOING松本さん「ピープルを聴きに来るお客さんは素晴らしい」を受けて波多野さん「あれを聞いて一番嬉しかったのは僕です」、客としてはこれがまた嬉しかった。
対バンだとピープルが「何でないか」をよく考える。ワンマンが材料を重ねていく加点式だとしたら、対バンは彫刻みたいに削って浮き彫りになっていくのが面白い。胞子拡散くん、また気が向いたら街にパンデミック起こしに来てね!
そんな2012年ピープル納め。今年も本当に本当にありがとう。
もともと本人も不確か曖昧な内実だからなのか、音符やリズムという入れ物に入れて、それは外気から守るためなのか、はたまた鮮度を保つためなのか理由は解らないとしても、とにかく胞子のようなそれらをもってして他者に届ける。すると受け取ったその人の中で胞子が開く。開き方はその人なりの解釈によって様々。そんなイメージだ。People In The Boxの音楽によく似ていると個人的には思っています。
- MMMatsumoto「愛すべき開かれない音楽家たちへ」(MARQUEE Vol. 88, 9 Dec 2011)より
●セットリスト
01. ニムロッド
02. アメリカ
03. 火曜日 / 空室
04. みんな春を売った
05. 時計回りの人々
06. 球体
07. サイレン
08. 月曜日消失
09. 市民
10. スルツェイ
11. 鍵盤のない、
EN.
01. 東京
02. 旧市街
EN-2.
ダンス、ダンス、ダンス
December 6, 2012
実施中!!!第一回胞子拡散祭 @ 高崎 club FLEEZ
胞子まみれの体のレントゲン図 1/2!!!
■a flood of circle
初見。社会に反逆するスタンス取りつつ一体感大事にして盛り上がる、J-ROCKスタンダードな印象。チョモに近い気がした。それより少し泥くさく、最後ボーカルの「ロックンロオオオオル!!!」って叫びに巻き込まれて「YEEEEEEEAH!!!」と返したくなるfloodingness。バンド名大文字の方が似合いそう。
MC「選ばれし胞子、A flood of circleです!」笑った。aを強調するんだね。
■People In The Box
2ヵ月ぶり。半分は知っているピープル、もう半分は知らないピープルで目を見張る。代謝の良いバンド。健康だ。メンバーも健康であれ!
最近「強いメッセージを持ったバンド」と自己紹介しているようで、今日のライブはまさにそうだった。聴き手に響かせるよう、音のひとつひとつに魂が込められていた。変わったなと、たかだか2年前と比べてだけど、思う。以前は彼らの箱の中に入れてもらってそこで展開される物語を眺めていた。今は彼らの方からこちらに向かってきて同じ地平で訴える。言葉だけでなく楽器もそうだ。声もベースもドラムスもギターも、全ての音が強いメッセージだった。ひたむきな胞子たち。
変わらないのは何だろうと考えてみると、音の楽しさであり必要であり信頼であり、その諸々が同じ場に在る確かさに繋がることであり。つまりは好きってことだ!
ハタノMC、afocは拳で顔を殴る、ピープルは内側からウイルスのように攻める、との喩えが言い得て妙。「ウイルスのように攻撃を続けさせていただきます」からの「木曜日 / 寝室」は本日(木曜日!)の白眉。
攻撃の仕方が違えば受け止め方も違う。よくJ-ROCKのライブでは一体感が命!な空気を感じるけれど、ピープルを観に来る人はむしろ自分なりの受容を大切にしている気がする(そして個々の差異を尊重する)。人によってこんなに受容の違うポップスそうそうない。久しぶりに観るせいか、そんなことを考えたり。
不思議だったのは、今日諦めるか迷うくらい体調良くなかったのに、彼らの演奏中は何ともなかったこと。脳に作用するウイルスこわい。あるいは胞子パワーか。
以下セットリストとメモ。
01. アメリカ
意外な幕開け。FRと今は断絶している訳ではないと主張するような。
02. 完璧な庭
ライブ定番曲なのに初めて出会う気がした。ドラムの一打一打に込められた魂にふるえる。こんなバンドだったっけ?→新しいピープルだ!と思う。とても良い意味で。
03. 市民
相変わらず激烈に格好良い。観た位置のせいか、今日全体的にボーカルの音量が強い気はした。
04. ダンス、ダンス、ダンス
《森を突き抜けて~》の後、じわじわクレッシェンド。珍しく作為的に感じる。
05. 時計回りの人々
《きみは壊れていないのに》語尾少し高いキーにアレンジしていた。AMでいちばん解りやすくがつんと来た一節。堪らない気持ちになる。
06. 球体
ベースのアグレッシブさがどんどん増していく。大歓迎。
07. 木曜日 / 寝室
ギターのふわりとしたディストーション、夢の重たさに呑まれる。
08. 月曜日消失
スネアのロールで始まってギターが静かに忍び込むじわじわ感、「月曜日 / 無菌室」?と思いきや消失で、とても久しぶりで、二重にびっくり。いつも端々のイントロの遊びが楽しい人たち。アウトロのバリエーションも増えたらきっともっと楽しい。
09. スルツェイ
何もかも生命に溢れていて逃げ場がない。3人のバランスが黄金比な曲のひとつ。
10. 天使の胃袋
LosT以降、エレクトリック版もぐんと好きになった。疾走感!
11. 旧市街
CSツアーファイナル以後、いつも加藤さんのアニメーションを思い出しながら聴いている。《青空少しだけおかしくなったよ》でミラーボールが不穏な水玉模様をそこら中に散らして踊っていた。これも黄金比の曲。
EN.
01. 東京
久しぶり! FRツアー以来? 《恋に堕ちた》の後、音が弾けて世界にぶわっと色が付いて活動を始める感覚に鳥肌。アンコールでこんな、こんな……!
02. ニムロッド
ベースの熱量! みんなすばらしいけれど、最近特にベースが熱い。年明けのツアーが本当に楽しみだ。
October 25, 2012
TONOFON presents SOLO 2012
@ グローリアチャペル キリスト品川教会
初見の2人のソロ演奏。楽しみに足を運んだ。開演前、撮影大丈夫そうなのでぱちり。プロテスタントらしい簡素な内装。pewに並んで腰掛けて聴く。

素敵な照明設備。写真判りづらいけれど、ペンダントライト風に幾つか豆電球が吊られていて、曲によって星の明滅のように瞬く。あと十字架の後ろの壁、上下に照明が隠されていて、赤青黄金色になれる。
ただ肝心の音、教会でリバーブがかかり過ぎて細部が曇っていた気はする。途中トクマルさんの弾いたパイプオルガンの独壇場。
それでも楽しくて刺激的なひと時だった。ソロにも色んな形がある。
■高木正勝
ピアノと一緒に産まれてきたんじゃないかと思う。己とピアノとの継ぎ目が見えなくて、正に天衣無縫。ピアノを手懐けたり、服従させているのはよく見る(それだって極めれば素晴らしい)けれど、1:1の関係は初めて見た。奇跡のよう。
体を大きく使った演奏。上半身は鍵盤を0度とすれば120度くらいまで思うがまま動き、時に鍵盤を圧する反動で腰を浮かせるどころか立ち上がったり、曲間では準備運動みたいにぴょんと飛んでみたり。大袈裟とか力任せとかではなく、全て自然。ピアノのタッチはとても丁寧。どうなっているんだろう!
「Girls」や「Yubi Piano」が聴けて嬉しい。最後は映画の主題歌「おかあさんの唄」高木さんボーカルでとても良かった。女の人が歌うより、直截な歌詞とワンクッション距離があって個人的には好み。教会だからか、曲が天へ昇って、また降り注いでくるようだった。おかあさん=マリア様の連想をするとふるえる。
ピアノを弾くのはこの人の一面でしかないというのがまた。天賦の才という言葉がよぎる。これからどんな音や映像を生み出すのか、まだまだ楽しみ。
■トクマルシューゴ
音数多くカラフルなイメージがあったけれど、この日はソロ。それでもギター(+サンプラー)、ピアノ、オルガン、ウクレレ、客の声と、手持ちの楽器と会場をフル活用しての演奏。音に好奇心が強くて、遊び心のある人だなあと思う。サンプラーで音を重ねる中でエレクトリカルパレードのフレーズを挟んだり、オルガンで最初に容赦なく鳴らしたのがトッカータとフーガニ短調の頭だったり(笑)。楽しかった! Rum Heeはギター一本でもカラフルな響き。
アンコール、2人で演奏するGirlsがこの日のハイライト。多分それほど細かな詰めはしておらず即興で、お互いの出方を窺いながら音が折り重なっていくのがとても面白かった。どちらかがためらったり誘ったりすると、すぐに相手が反応して打ち返していく、音のダイアローグ。
前々日(!)にtwitterで高木さんが持ちかけていて、今日のトクマルさん曰く「(準備大変だったという流れで)更に高木さんに首を絞められました(笑)。でも、その絞められるのは悪くないっていう」。面白いコンビ。またどこかで。
October 15, 2012
J-WAVE「THE KINGS PLACE」LIVE vol.1 @ LIQUIDROOM
ラジオ番組「THE KINGS PLACE」をナビゲートするバンドが集結してのライブ。
LIQUID良いハコ。音良いし照明映えるし後方段差があるのは優しい。レモネードあって嬉しいし、立地も良い。開演前の寿司詰め待機さえ乗り切れば素敵な空間。

▲フライヤ、ハロウィン仕様!
■People In The Box
昨日に続いてピープル。対バンだと格好良さ3割増。演奏キレあり、LIQUID自体の良さも相俟って素晴らしかった! 「市民」半端ない! 「天使の胃袋」ボーカル入る前のピィー!!!って容赦ないギターの音で飛ぶ。あれ大好き。エレクトリックで聴いたのは久々で嬉しい。
新曲とんでもない。手の付けられない魔物のよう。真っ赤な照明が映える。ウィスパー(ピープル初?)で《水の音がしてる 耳を澄ませ》からの忍び寄るベース、水面が足元から盛り上がってきてぞくぞく。どうしたらあんな曲が、演奏ができるんだろう。最後《清潔な流し台を血液が走る》ボーカルだけで終わると、場内1000人ほどが水を打ったように静まり返る。堪らない空気。訳が解らないけれど圧倒的な何かを観た後の、言葉も行動も奪われた感。キンプレブログによると「市場」らしい。しじょう? いちば? 何を取り引きしているんだろう? 愛すべき魔物。新譜が益々楽しみ。
続く「ダンス、ダンス、ダンス」の4拍子に安堵。したのも束の間、詞が迫る。ラジオで音源流れてからライブは初めてなのに、もうすっかり好きになってることに気付く。福井さんのコーラスが映える。終盤《森を突き抜けて》で3人同じリズムで音出すところ(わかりづらい……シンバルだとジャーン、ジャン、ジャーン!てところ)が好きなんだけど、割と抑え目の出し方。最後《荒れ果てた庭でひとり仲良く踊りましょう》ずんと来る。いつか軽やかに踊りながら受け止められるようになるだろうか。
PA卓付近の段差上にいて、遠目だけど遮るものなくステージを見渡せた。久しぶりに見えた福井さん、縁の下の力持ちタイプだと思っていたら、全然クリエイティブかつパフォーマティブでびっくり。今更。特に新曲2つ、目を奪われる。
恒例のMC、アウェイ気味の場でこそ本来の持ち味を発揮。照明を乱反射するドラム要塞に守られつつ、斜め75度上向いて声にエコーかけまくるダイゴマン・オン・ステージ。極めつけに「今日も全力でぶっ殺していくんで、マジでよろしく!!(ビシッと指差し!!)」堪らない。指から何か飛んできたマジで。PA卓までマジで。
……じっと座ってものを考えているだけじゃ駄目なんだ。そんなことしてたって何処にもいけないんだ。わかるかい?」
「わかるよ」と僕は言った。「それで僕はいったいどうすればいいんだろう?」
「踊るんだよ」羊男は言った。「音楽の鳴っている間はとにかく踊り続けるんだ。おいらの言ってることはわかるかい? 踊るんだ。踊り続けるんだ。……
- 村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス』より
※下線部、原文では傍点
3人が演奏していることを変わりなく貴く感じる。かけがえのない、生の溢れる景色。あの場をつくってくれて、そこにいさせてくれて、本当にありがとう。
●セットリスト
1. 親愛なるニュートン街の 2. 市民 3. ニムロッド 4. 市場 5. ダンス、ダンス、ダンス 6. 天使の胃袋 7. 旧市街
転換中、今回はツアーで来られなかったらしいandropからのメッセージとライブ映像が流れる。誠実な演出。LIQUID下手側の壁がスクリーンになるのを初めて見た。
つくりものみたいにきれいなイメージを持っていたら、ライブ映像で一面客の腕が上がっていて壮観。思い込みよりずっとインタラクティブな音楽なんだなと思う。
■Nothing's Carved In Stone
2010年のクリスマスにピープルと、同じLIQUIDで対バンして以来。ボーカルが金髪になって、それと関係あるのかないのか、記憶していたより一層攻めの色が強いステージだった。久しぶりに見る変化は嬉しい。
■クリープハイプ
初見。割と楽しみにしていて、割と好きだと思った。曲も詞も演奏も。ストレートに向かってくる音を嫌いになれるはずもない。トリとは予想していなかったけれど、盛り上げまくって締めていた。肩車連立→ダイブの波を久々に見る。同じ音楽好きでも本当に色んな人達がいる。
October 14, 2012
ART-SCHOOL「BABY ACID BABY」TOUR 2012 @ 金沢AZ
ARTの新譜ツアーにピープルがジョイント。
ずっと来たかった金沢、観光して(21世紀美術館! 泉鏡花記念館!)ライブ観られてすごく楽しかった。昼間遊び過ぎてART終盤で体力が尽きかける始末。きっとまた。

▲ペットボトル、AZの粋な計らい!
■People In The Box
波多野さんのギターが変わっていた! きっとこれなんだろう。素人が開き直って勝手なことを書くと、栗の渋皮煮みたいだと思った。ブランデーの深く染みてる渋さを基調にしつつ、全体に甘みが残っていて豊か(秋のせいにしておく。とても好きな甘味)。今の位置から少し先にある、けれどそのことで進む道を示してくれそうな、良い予感のする音。しばらくはギターが楽しみになりそう。バンドに馴染む過程を見ていたい。
「球体」聴けば聴くほど良い曲! 暗めの黄緑色の照明。輪唱がダイゴマンから福井さんにチェンジ。人が密集するライブハウスで聴いていると球充填問題を連想する。ピープルの音が充填された球体達の隙間に満ちていくイメージ。
ギターばかり気になっていたけれど、久々に近くで見たダイゴマンの演奏はやっぱりしなやかで力強くてうつくしい。「金曜日 / 集中治療室」嬉しかった! ホイッスル! 残響祭とは違って、テンション上がる曲に戻っていた。全曲演奏は特別。
もうひとつ新曲、初めて聴いた。《ある日君は動くのをやめた》で始まる物語調の詞。新譜は物語が主張に消されていくのかと勝手に危惧していたから安心する。ボーカルに挟まるシンバルの音が妙にツボ。また好きな音が増えてしまった。しかも間奏3人ともやたら格好良い。新譜好きかもしれない、どうしよう。
ラジオで声にエコーかけることを学んだダイゴマン、いつものMCがレベルアップ。「『Cut Two』買った人手挙げてー、少なっ!(なっ!(なっ!(なっ!)」普通にウケていた。エコーの魔力!
「ニムロッド」→「旧市街」、最早定番の流れで締め。終盤はギターとドラムお疲れ気味だった気はする。福井さんの安定感はさすが。今更だけど旧市街の《メメント・モリ》コーラス他の音に負け気味で勿体ない。もう少し大きくても良さそう。
ピープル久しぶりに観たという人が「球体格好良かった!」って言ってくれて嬉しかった。そうそう、すごく格好良いアンサンブルなんだ。対バンで見ると改めてそう思う。金沢で観られて本当に良かった。楽しい時間をありがとう。
●セットリスト
1. 沈黙 2. 笛吹き男 3. レテビーチ 4. 球体 5. 新曲(ある日君は) 6. 金曜日 / 集中治療室 7. ニムロッド 8. 旧市街
■ART-SCHOOL
初見。ロック然としていた。演奏格好良かった。一方で、真面目にロックしている様は不器用に映る。後ろに向かって全力疾走しているような。心配になる突き進み方。
有名どころで「左ききのキキ」「MISS WORLD」は知っていて、さすが格好良かった。だけど本編最後の曲がとても気になった。繰り返される《光のほうへ》は祈りにも叫びにも似ていた。多分引きずられてはいけないのに覗き込みたくなる、その感覚を久々に思い出す。曲名は「We're So Beautiful」というのだと教えてもらって鳥肌。
そんな不安定な心持ちにさせる曲や詞に中尾さんの逞しいベースはアンバランスで、逆に似合う。珍しく俯瞰的なギタリストを見たと思った戸高さんは、途中束ねていた髪を解いた途端に主張が強くなって唖然。あの髪ゴム何か封印してたんだろうか。
ARTにはARTの色があるんだって当たり前のことを感じた。それでも、戸高さんのギターは五十嵐みたいだって時々思ったり、犬が吠えるの光とはまた違うとか、五十嵐何してるんだろうとか、散々に勝手なことを考えていた。もう少し距離を置きたい。
木下さんがちょうど誕生日らしく、MCでアピールしていた。祝われたい人なのか。
アンコールで、戸高さんのギターに誘われて会場が歌う。ハッピバースデーディアリッキー、ハッピバースデートゥユー♪
歌い終わったタイミングでピープルの3人登場。波多野さんがケーキ渡してハグした、らしい。なぜか見逃した。気付いたら皆すごい笑顔だった。おめでとう、ほんとハッピーであればいい。光のなかにいられるといい。
October 9, 2012
DIRTY PROJECTORS JAPAN TOUR 2012
@ Shibuya O-EAST
■DUSTIN WONG
初見。ひとりでギターを抱えて、何重にもサンプリング→ループつくって組み立てていく。他の同じタイプの人達と比べて、出来上がる曲のスケールが大きい。居心地の良い家とか小さな城とかを超えて、世界とか宇宙に触れるような曲。10曲弱くらい全てその組み立ての繰り返しである意味パターン化してしまっていたから、俯瞰で見てしまうと40分は長く感じた。けれどひとつひとつアプローチが違っていて、丁寧に聴いていけばとても面白かった。
■DIRTY PROJECTORS
初見。アンコール含め一時間強、新譜の曲中心のセットリスト。新譜はものすごく好きなんだけど、ライブは旧譜の曲の方が迫力あって良かった。何よりBEAUTIFUL MOTHER! 声という楽器の掛け合い、ライブだと凄まじい。複雑な数え切れないほどのピースがだだだだっとすごいスピードで組み上がって完成していくような。うつくしい立体構造物。素晴らしかった。
自由なボーカルが安定したリズム隊とコーラスに乗って生きている。幸福な土壌あっての自由。だけど両者がうまくまとまるのは難しいのかもしれない。Daveが歌わないBEAUTIFUL MOTHERや、AmberのTHE SOCIALITES、全員の熱が入るUSEFUL CHAMBERが良かったから、そんなことを考えた。どこか分離していたような。
Angelがいない?と思ったら、今はOlgaに替わったらしい。基本クールな演奏で、大人びた微笑みがきれいな人。だけど何かの曲(NO INTENTIONだったかな)でゆったりヘドバンする勢いでキーボードにのめり込みだして驚く。ギャップ素敵。
USEFUL CHAMBERはさすが。噛み含めるように歌われる"Bitte orca, orca bitte"、意味を成さない語の連なりは呪文のよう。祈りのよう。あの「解剖台の上のミシンと蝙蝠傘の偶然の出会い」みたいに、意味(笑!)とか越えたところにしかないものを見せてくれる。その辺り通過した上で紡がれているからDaveの詞は好きだ。Bitte orcaの時、そのフレーズを肯定するように照明が明るくなったのもすごく良かった。
アンコール一曲目がDANCE FOR YOUで嬉しい。UNTO CAESARも聴きたかったな。最後IMPREGNABLE QUESTIONは、そう来たか、と割と冷静に受け止めた。"You are always in my mind"、You=オーディエンスだよ!みたいに歌う。安易かなあと思いつつ、1時間ライブ聴いた後だと沁みる。
ライブは不完全燃焼気味だったけど、追っていたいバンド。次の動きが楽しみ。
●セットリスト
01. SWING LO MAGELLAN
02. OFFSPRING ARE BLANK
03. THE SOCIALITES
04. CANNIBAL RESOURCE
05. BEAUTIFUL MOTHER
06. SEE WHAT SHE SEEING
07. NO INTENTION
08. ABOUT TO DIE
09. JUST FROM CHEVRON
10. MAYBE THAT WAS IT
11. GUN HAS NO TRIGGER
12. USEFUL CHAMBER
EN
01. DANCE FOR YOU
02. STILLNESS IS THE MOVE
03. IMPREGNABLE QUESTION
September 23, 2012
Penguinmarket Records × 晴れたら空に豆まいて presents 『OTONOOTO』
@ 晴れたら空に豆まいて
繋がりの解らない3組。ライブは端々に共通項が見えるのが面白かった。
久しぶりの晴れ豆は初めてのスタンディング。とはいえ和風な内装とやわらかい照明のお陰でのんびり。8割くらいの入りで、パーソナルスペース広めなのも良かった。
■ハイスイノナサ
広くない舞台に密集する機材、メンバー。フロアとの段差が小さく、距離が近い。そんな晴れ豆空間で聴く音に体温を感じた。今までは都市の無機質さとそれを鳴らす人との隔たりが面白かったのだけど、何度か観たせいもあるのか、音と人が結び付いてアナログな響き。逆に都市感が薄い。どちらも好きだ。色んな面を見せてくれるといい。
twitterでセットリスト流れてきて、色々曲名が判った。手拍子の曲は「平熱の街」という名前。いいね、あの熱さと落ち着きの振れ幅が街の平熱。「ある夜の呼吸」は晴れ豆にとても似合っていた。最後「動物の身体」でニュートラルな締め。残響祭とはまた違って、ふわりとしていて心地良い。浅い眠りに就くような終わり。
次の世武さんがこうコメントしていた:「ニューヨークの現代アートみたいな、でもヨーロッパの映画みたいな感じもあり」。前者はよく解る。後者はあまりぴんと来ないけれど面白い。モノクロの8mmフィルムのような? そんな風に聴いてみようかな。
しばらく東京でのライブはないとのこと。是非また。次までにCD聴いて、ゆっくり付き合っていこうと思う。きっと恒常的に好きな音だ。
●セットリスト(twitterより)
1. mass 2. 都市の記憶 3. ハッピーエンド 4. 地下鉄の動態 5. ある夜の呼吸 6. ensemble 1 7. 少年の掌 8. 平熱の街 9. 動物の身体
■世武裕子
初見。ピアニスト+作曲家+最近シンガーソングライターさんらしい。
ジャズとポップスが幸せに結び付いたカラフルな日向の音。一方、ハイスイと似た都市感もあり。「Hello Hello」が前者、名前解らないピアノ曲や「ニューヨークと呼ばれた場所」が後者、「75002」は中庸かな。中庸~後者に惹かれる。
「現代音楽ってよく言われるんですけど、自分では未来音楽やと思ってる。未来って言うても100年後とかじゃなく、3日後くらいやねんけど(笑)」と話されていたのが印象的。「現代」「未来」と対比すると遠いが実際は逆で、現音よりもずっと日常に近い、手の届くところにある音。現代より未来の方が近い。そこに何か新しい鍵がある気がする。とか、ぼんやり考える。
声は初期SalyuやUAに少し似ていて、そのエーテルや神秘性を薄めて日常に近付けたような。隣に居てくれる声。シンガーソングライターをやろうと思ったのは現音より解りやすいことをするため、という話だった。矢野顕子さんのライブが印象深かったとのこと。日常に近付き過ぎない方が個人的には好きかな。まだ方向が定まっていなくて、これからも面白そうな人。
プロフィールを調べると「天性の才能」「あの○○が絶賛」と紹介されている。どんな孤高の女性かと思ったら、気のいい関西のお姉ちゃん! 笑いを取ることはマナーである、というような喋りっぱなしのMC(大阪人だと思い込んでいたら、滋賀生まれの京都育ちさん)。親しみやすさが曲のカラフルさと通じていて、人と音が一致しているのは幸福だなと思う。
出会えて嬉しい! とても惹かれる曲を見つけた。やっぱりカラフル。
■egoistic 4 Leaves
初見。男性6人組(ツインドラム・パーカッション・ベース・ギター・キーボード)の名古屋のバンド。名古屋熱いインストバンド多いな。イベント名のPenguinmarket Recordsは彼らの所属するレーベル。
衝動をぶつけるだけぶつけたような音。それだけではないけれど、とにかく熱い。暑い。厚い。6人の音がフォルティシッシッシッシッシモくらいまでクレッシェンドして終わる。若いなあと思っていたら、メンバーの多くが32歳超えみたいな話をしていた。しかし若い。egoisticという名の通り自覚的にやっているんだろう。
ハイスイと印象や音色は随分違うのに、少し似ている。変拍子? 構成には共通項があるのかもしれないけれど、ハイスイの視点はずっと醒めたところに置かれている。自分にはその方が近しく思える。
「色んな人の靴を舐めて東京来たんで」とか自虐的なMC泣ける。名古屋から来ました!と言いつつ岐阜出身のパターン笑った。
September 4, 2012
デイジーワールドの集い @ 青山Cay
細野晴臣さん主催の集い。事前予約なし、先着順入場。長い列に並んで何とか入れたものの、場内は更にすごい人人人でステージ見えず。もっとゆったり観られたら良かったし、後方にスピーカーなくて距離があったけれど、音楽はとても素敵だった。
■青葉市子
「物語を、歌います」との挨拶でスタート。人の多さとレストランという環境で、小さなざわめきのなか演奏。「IMPERIAL SMOKE TOWN」はもう少し張り詰めた空気の方が似合うかな。しかし「機械仕掛乃宇宙」の孕むエナジーは圧倒的。物語と音楽の力が青葉さんを中心に渦となって聴衆を飲み込む。メルクリウス、ウェヌス……の響きは祈りのよう。音が消え、渦の内側から湧き上がる拍手はとてもあたたかかった。
からの、打って変わって「イソフラ区ボンソワール物語」! 初めて聴いて、イソフラボンボンイソフラボン♪が頭から離れなくなった。街の女の人はみんな巨乳ー♪とか、可愛らしくて楽しくて少し奇妙。かと思えば最後、いざ炎の中へー♪みたいなシビアな結び。このバランスの取り方が好きだなあと思う。
宣言通りの豊かな物語世界、ありがとう。またね。
■吉田省念 (くるり)
ギターと声と言葉で真正面から向き合ってくる。誠実な人なのだろうと思った。くるり的な誠実さとやっぱり似ていた。普段あまり触れない感覚が新鮮。くるりでもボーカルを取られているらしい。気になる、聴いてみようかな。
■中沢新一
まさかの河内音頭 with 木津茂理さん! びっくり。聴けて良かった。懐かしい。色々あって一番テンション上がったかもしれない。細野さんの手拍子に乗せて木津さんの三味線とお唄、そして中沢さんのお唄もとても幸せだった。ノーリーズンで幸せで、それでいいやと思えるのは久しぶりだった。
■細野晴臣グループ+Salyu
鳴っているだけで楽しくなる音は自分にとっては多くなくて、だから細野さんの音は貴重。何なんだろうか。齢を重ねた人が楽しく生きている様に救われる感覚はある。ご機嫌で楽しい音だった。面子に関わらず、また機会があれば集いたい。
SalyuとのコラボはU-NITEの時と同じ「Smile」「I Love How You Love Me」。男性ボーカルに合わせて歌う時のSalyuのやわらかい声音が好きだ。そして声量すごい。後方にもしっかり届いて嬉しい。細野さんから音源化の話が出ていた、是非とも!
3歳の時に公開された映画「風の谷のナウシカ」のテーマ(細野さん作曲)が歌の原体験だというSalyu。ずっと気に入って歌っていたそうな。その話を聞いた細野さん「鳥でいうと親みたいなもんだな」笑った。
●セットリスト(twitterより拝借)
1. Cow Cow Boogie 2. Song Is Ended(ゲスト木津茂理) 3. Tutti Frutti 4. Smile(ゲストSalyu) 5. I Love How You Love Me
August 30, 2012
QUIET ROOM 2012 -晩夏の鐘-
@ ル テアトル銀座 by PARCO
「袖から舞台まで歩いてくる時吐きそうになった」(堕落安部さん)
「この空気、あれを思い出しますね。お通夜」(尾崎さん)
ということで今回も出演者にとってやりづらそうな、客がQUIETなイベント。うまくレスポンス返せなくて申し訳ない。どうしたらいいんだ。
多くのアーティスト(今回は6組!)の弾き語りを見られるのは貴重で、本当に面白い。誰もが音と居て誠実だった。あんな風に生きたい。
テアトル銀座、初めて行った。来年5月末でなくなるとのこと。舞台見やすいし席は座りやすいし、何より響き方がまあるいところが好きだと思った。立地も良い。なくなっても、今日のことはずっと覚えていられるといい。
■EG
初見。カフェオレに追加する粉砂糖みたいなあまい声。高音もよく出るんだけど、話すのと同じかやや低いくらいの声がびっくりするくらいあまくて、こちらを推してほしい、と勝手なことを考えた。
(更に勝手な感想)記号みたいな名前が面白い。exempli gratiaであり、JAAであり、カタカナ読みならeasyと同音。気になって公式サイトに行ったら「本名でないのも意味は特になし」とあった。名前と曲の印象がうまく一致しないのも面白い。
■堕落モーションFOLK2
出演順のせいか、前回より少し大人しい印象。でもやっぱり気のいい兄ちゃん達。MCの人柄そのまま馴染みやすい曲、と思いきや引っ掛かるところが幾つもあって面白い。中でも「不潔なメロディー」という曲が引っ掛かっている。不潔を気にする潔癖さが際立って聴こえた。
物販で「堕落」の二文字が刻まれたピンク色のTシャツ売ってて震えた。某16gの変態Tを思い出す。
■波多野裕文 (People In The Box)
いつもの飄々とした空気で登場。曲目を即興で決めているからか、持ち時間を気にしてiPhoneのアラームをセット。そういえば前回は、時間が判らなくてスタッフに時計持ってきてもらっていた。進歩!
4曲、どれも今まで披露したもの。王道的な曲が選ばれたように思う。
1. タイトル不詳《中国に行ってみたい》
◇壱日の孤独vol.2の一曲目。アカペラ。悠々とした、まあるい豊かな声。混じり気のない水の粒のよう。
2. タイトル不詳《ドレスリハーサルの途中》
《夏の都会にバグが発生する》
◇詞が夏仕様に着せ替えられていた! MC「最近本当に暑いですね。いつもは雨が降ってちょっと涼しくなったりするのに、全然降らない」から、さらりと《夏の都会に~》の歌い出し。リアルな時空間と曲がリンクするのはふしぎな感覚。同じ季節を、地平を、過ごしていることを実感するのもふしぎだ。
3. タナトス3号(仮)
《空を黒く塗り潰せ いつまでも同じではないと知った》
◇聴けば聴くほど好きになる。ぜひ音源化を!
「時間がどんどんなくなる! 次の曲はBPMを上げます」との宣言で始まるも、いつも通りBPM70くらいのゆったり演奏。と思いきや終盤の《とんてんたんとん》で200超えるくらい爆上げして笑った。最後はゆっくりに戻って終了。
チューニング中、びーん!と弦が切れるハプニング。ハタノさん「は……!」と動きが止まる。会場とりあえず笑う。笑うしかない。
予備ギターを差し出すスタッフに「こういう状況の方が燃えるんです。あの、お気持ちは本当にありがとうございます」と断った後、「あーこれ、一本ないと結構狂いますね、調子」と言い出したので、どっちやねん!がんばれ!と念じる。
そのまま「アラームが鳴るまで頑張ります」とスタート。そうだった時間が限られているんだった。
4. タイトル不詳《あなたは誰にも愛されないから 自分で愛してあげなさい ばーか》
◇壱日の孤独vol.2本編最後の、詞が印象深い曲。↑このくだりも勿論だけど、《5月の空は海の色》が堪らなく好きだ。メロディーと併せて、世界がぐわっと広がって解放されたような感覚になる。ハタノさんが歌う青空はいつも手を伸ばしたくなる。
最後の「ばーかばーか」が終わってアウトロに入ろうとする時、ジリリリリリ!!!とiPhoneアラームが鳴り響く。演奏止み「お時間です、ありがとうございました」。ええー!?
びっくりしつつ、会場笑って拍手。最大級の拍手。
秒針のSEで始まるピープル("And I'm Singing" Jim O'Rourke)と対になるような終わり方。夢から覚めるような、世界が切り替わるような。もっと聴いていたかったし、あちらの世界に居たかった。そんな風に自分を変えればいいんだろうと思う。最近よく考える。じわじわ効いてくる。
次のソロはいつだろう。帰ってこられなくなるくらいどっぷり浸りたい。病気か。
■斎藤宏介 (UNISON SQUARE GARDEN)
サポートにドラマー海老原諒さん(今日はパーカッションでジャンベ、ウィンドチャイム、スプラッシュシンバル)を迎えての演奏。斎藤さんが海老原さんを「すごく好きなドラマー」と紹介していたのは納得。バランスの良い人で、相性の良い組合せ。
「オリオンをなぞる」は知っていた! バンド形式よりも夜空に似合いそうなアレンジ、好きだった。
■Laika Came Back
初見。今日の面子で唯一立っての演奏。一人で5重くらいにギターをサンプリングして重ねて、弾いて歌っていた。ギターって色んな音が出るんだなあ、というところから興味を惹かれる。そしてどの曲も質感が違って、奥深い音の世界を持っている人だと感じる。すごく面白く聴いていた。調べてベテランさんと知り納得!
■尾崎世界観(クリープハイプ)
初見。ふしぎな惹かれ方をした。ゴッホのひまわりみたいな声だと思った。枯れたように掠れているのに、生命力に満ち満ちている。聴いている人に訴えかける力の強さを、耳だけでなく全身で感じた。演奏と同じくらい詞が気になることが多いのに、どちらも吹っ飛んで圧倒されていた。すごい。どうしてだか解らない。
詞だけに集中すると、感受性の強い青年の日常、と括ってしまうのは失礼かもしれないけれど、特別だとは感じないのに、音とあの声に乗ると特別になる。
クリープハイプ聴いてみようと思う。楽しみ!
August 1, 2012
maskz presents U-NITE @ 代官山UNIT
脱原発派がUNITでUNITEしようぜ的なイベント。
ミュージシャンもトークセッションの先生方も何とも豪華。仕事帰りに5時間立ちっ放し、しかも終電、だけどたまにはこういうのも楽しいよね!!ってスキップしながら帰途に着いた。楽しかった。
音楽の感想を書きます。
■小林武史×Salyu
同じ舞台にいる2人を見るのが何年ぶりだかで、それだけで来て良かったなんて考えるくらいには思い入れがある。小林さんのピアノも久しぶりで、やっぱりとても好きだと思った。迷ったところで背を押してくれる打鍵の頼もしさとめいっぱいの優しさ、そんな疑わしいはずのものが、心をダイレクトに揺さぶってくる。何だろうな。抑えきれない自己主張は欠点と呼ばれるのかもしれないが、ふと垣間見えるこの人のそれはいとしい。どうしようもない。恋(仮)か。
芯の通った濃密な選曲で、2人の今がよく伝わった。またね。
●1. VALON-1 2. 悲しみを越えていく色 3. to U
■細野晴臣 with 高田漣 & Salyu
細野さんも数年ぶり。声の渋みと甘みに呑まれてどろどろに溶ける感覚、に身を任せていられる安心感。掠れる声も手探りみたいなギターも、全てが音楽の旨みになる。すごく余裕がある。ほんとこんな老年になりたい。
さすがのSalyuにも緊張の色あり、控えめなコーラスワーク。張らない声を思わぬところで聴けてしんみり。Smileを低いキーにした理由「この曲はお話するくらいのキーで歌いたかったの」。うん、とても良かった。
●1. Smile (Nat King Coleカバー) 2. I Love How You Love Me (The Paris Sistersカバー) 3. 悲しみのラッキースター
■青葉市子 guest 小山田圭吾 + U-zhaan & Salyu
この心躍るラインナップ! 期待を超えてすばらしかった。
青葉さんソロの「ひかりのふるさと」でスタート。アンコール定番曲、冒頭に来たのは珍しい、と思っていたらここからだった。小山田さんギターで入って「日時計」、U-zhaanタブラで加わり、青葉さん「この場にふさわしいか判らないですが、原子力発電所が主人公の歌です」との紹介で「IMPERIAL SMOKE TOWN」! 特にIMPERIAL、エネルギーが倍加していてすごい。2人の音にやや押され気味な序盤から、逆に後押しされるようにして声が、音が、大きく広がって前に出てくる過程に鳥肌。遂には複数の音のうねりをまとめあげる統率者のように見えて、怒りに似た激しさを感じた。まだまだいけると思う。今後に期待。
更にSalyuが登場してsalyu×salyuの「Sailing Days」! IMPERIALとは打って変わって、ファンタジックな船に乗って本当に航海しているような爽やかさ。やわらかな風みたいなSalyuのコーラスをまとって主旋律を担う青葉さんの声は、涼やかに白波の上を滑っていく。そんな声を擁する船を造る楽器達のリズムの気持ち良さったらない。すごく良かった! 締めは「続きを」。本当に、続きをもっと見ていたかった。是非このカルテットでまた。
●1. ひかりのふるさと 2. 日時計 3. IMPERIAL SMOKE TOWN 4. Sailing Days (salyu×salyuカバー) 5. 続きを (salyu×salyuカバー)
■100%ユザーンとラダーン195
ラダーン195=原田郁子さん。外見もユザーンとコラボしたような、ふわふわアフロのウィッグが似合う。初見で、舌っ足らずな歌い方は苦手かなと思ったけれど、タブラとのマリアージュが新鮮で面白く聴いていた。
■toe
この面子だとちょっと浮いている気はする。誰繋がりだろう。
実は45分押しで、始まったのが23:45。山嵜さん第一声「もう終電ないっしょ?」。客が結構帰ってしまっていて、UNIT1/3くらいの埋まり方。前方でゆったりtoeを観られるなんて、思わぬ贅沢。
toeも数年ぶり。彼らの音に巻き込まれていくような感覚。大抵、音に圧倒されたり、音から一歩離れたところから眺めていたりという関わり方を音楽としているのだけど、toeには自分が巻き込まれていく。ふしぎ。柏倉さんを中心に聴くことが多かったけれど、今日はtoeの総体を楽しんだ。
MCで山嵜さん(散々な下ネタの後)「まあ、原発にはグッドバイってことですよ」からの、期待通り「グッドバイ」! ボーカル郁子さん、幼さがこの曲の葛藤によく合っている。日付も変わって00:35、テンション最高潮に上がって無敵な気持ちになった! 久しぶりの感覚を抱えて、楽しく終電にダッシュ。間に合った良かった。
トークセッションがUSTアーカイブ化されているのでメモ。原発に限らず持続可能な社会について語られていた。しかし音声が聞こえないのは自分の環境のせいか……。
中沢新一×小林武史×宮台真司 http://www.ustream.tv/recorded/24394204
中沢新一×高橋源一郎 http://www.ustream.tv/recorded/24395631
June 17, 2012
MAGNE4 @ 下北沢ERA
初見のバンドツーマン。WOZNIAKの企画。初ERA、煙草の匂いがきつかった。
■ハイスイノナサ
ピアノ(キーボード)の絡み方、鳴り方が好きなバンド。それはライブでも変わらなかった。むしろ更に好きになった! 今年2月にキーボード担当が脱退したそうでヘルプを入れての演奏だったけれど、初見だからか気にならず。あとは、音源よりもずっと残響ぽい、エモいな、とか。照井弟さんのコーラスワークはすごくきれいだとか。
それより何より印象深いのは、都市と、海と、雲の動きの音がして、それを鳴らしているのが人だということ。基本は人が、休日のオフィス街みたいながらんとしたフィクションを滑っていくような都市感。そこに穏やかな海をたゆたうような気持ち良さがあったり、見上げた雲の動きに自分の意思が一切関係しない次元をみる冷静さがあったりする。聴覚だけではなくて、感覚全体を揺り動かされるライブ。そんなところはフランス印象派のピアノと似ているかもしれない。けれど都市の醒めた空気をまざまざと感じるライブは初めてで、戸惑いすら覚える。
まだよく知らなくてセットリストは解らない。「ハッピーエンド」と紹介された曲、途中で手拍子の入る曲(覚えたい!)、新譜から「ある夜の呼吸」「波の始まり」はやったかな。音源集めよう。8月のワンマンがすごく楽しみ!
■WOZNIAK
アルコールと共にゆらゆらくねくねしたくなるクラブミュージック。こういう、反復と少しの変化を繰り返していく系の脳内麻薬出そうな音は久々で楽しかった。けれど1時間以上切れ目なく、ひたすら立ちっ放しなのはちょっと辛い。ソファで休憩しながら、好きなフレーズが来たら踊ったりしたい。
最後のMCが印象に残っている。音楽性の変化(以前はロックバンド寄りだったらしい)、これからも変化していくということ。とても純粋だと思った。ゆえに、この先どうなるんだろうかとも思った。
●セットリスト
6/17WOZNIAKセットリスト1.ATTACK2.BEAMS3.SEVEN4.ASURA5.ACID6.元7.ハウシー8.ドラム叩く(ゲスト:照井順政/鎌野愛fromハイスイノナサ)続く。
— WOZNIAK_BAND (@WOZNIAKBAND) June 18, 2012
6/17WOZNIAKセットリスト9.地下鉄の動態(ハイスイノナサのカバー)10.TTT 111.LIQUID12.BANANA13.密林14.CITYでした。
— WOZNIAK_BAND (@WOZNIAKBAND) June 18, 2012
March 23, 2012
the cabs 2nd mini album release tour 「rasen no hotori」
@ 下北沢SHELTER
霧雨の下北沢、ソールドアウトしておりぎゅうぎゅう詰めのシェルター。音源をひとつも持っていない3バンドのライブ、全て初見。小さなハコのためもあってか、どのバンドもエネルギッシュで音が迫ってくる感覚が強く、良いテンション。だからか共通して若い印象。どう若いのかはそれぞれ少しずつ違っていた。
■dry as dust
dryでもdustでもなかった、何だろう……young as yacht。適当でしたすみません。ドライというにはエネルギーに溢れていたし、ダストというならスターダスト。Dという音のこもった暗い感じは全然なく、明るい若さを感じた。最後の曲のアウトロが会場をどこかへ引っ張っていくような力強さを放っていて良かった。
■Qomolangma Tomato
3バンドの中で一番攻撃的でありつつ演奏が安定していて完成度高い。ボーカルが台詞言い続けながら次の曲に移る繋ぎ方の息をつかせない感が良かったり、ベースが面白いフレーズ弾いてたり、とても楽しめた。ボーカルの決壊した堤防みたいに溢れて止まらない怒涛の言葉攻めが若い。
ボーカルは大人しめの会場に「金払ってこんな地下に集まってさー、楽しまないと意味ねえぞ」みたいに何度も呼び掛けていた。楽しかった、けれど個人的には共感して暴れようとは思えなかった。
■the cabs
気になっていた彼らをみたくて、今夜足を運んだ。出会って以来耳から離れない「二月の兵隊」が聴けて嬉しかったし、Wアンコールの「チャールズ・ブロンソンのために」ものすごく格好良かった! 一曲目終わったところで機材トラブル(弦切れた?)がありつつも、テンション高く駆け抜けていた印象。勢いあって若い。
勢いがあり過ぎるのか演奏がまとまっていないように聞こえる。まとまりのなさが一周回って「チャールズ・ブロンソンのために」では逆に功を奏したような。凝っていて面白いドラム、YouTubeで聴くとクリアなスネアがとても好きなのだが、ライブではうまく生きていないような。観た位置のせいか。
きれいに伸びる若い声、秋の始まりのような、繊細で少し影があるのも心地良い。もっと大きな会場でも大丈夫。個人的に好き嫌いがはっきり分かれる絶叫、キャブスのは好きだ。きれいな曲に割り込んでくる暴力性堪らない。
ライブが終わってからずっと「二月の兵隊」の絶叫が頭の中に住み着いている。詞も気になるのでアルバムを買ってみることにした(同じ残響歌もののピープルの詞が日常から少し遊離しているのとはまた違って、キャブスは想像上の別世界を描いている印象)。時間を開けてまた観に行きたい。
●セットリスト(twitterより拝借)
1. skor 2. 二月の兵隊 3. カッコーの巣の上で 4. アンシェルス 5. 僕たちに明日はない 6. 解毒される樹海 7. camn aven 8. 第八病棟 9. キェルツェの螺旋 EN. 1. すべて叫んだ 2. チャールズ・ブロンソンのために
March 3, 2012
ent "Entish TOUR" @ 代官山UNIT
超満員のUNIT。開演ぎりぎりに入ったらステージほとんど見えず。生音を楽しみながらモニター観たり、時々舞台に目をやったり。
何より、照明と映像のビジュアルエフェクトが素晴らしかった。個人的にはこれまで観たライブで一番。照明がすごい凝りようで、一曲一曲、フレーズ、音毎に丁寧に考えられていた。映像はストライプ模様が下から上へ動き続けたり、空と雲をイメージしたような抽象的な形が流れていったり、シンプルかつセンス良い。
ソロプロジェクトent、どういう構成でライブするのかと思ったら、こんな。
ギター&ボーカル:ent、ギター:大山純、ドラムス&マニピュレーター:菅井正剛(、映像:小嶋貴之)
音とても良かった。打ち込みや既成の音が多く使われつつ、そこに乗る生きたギターと声は時に温かく時にエモーショナル。違和感ないバランスはさすがレコーディングエンジニア菅井さんの技か。そこにあの照明と映像! ビジュアルはサウンドを引き立て、サウンドはビジュアルを引き立てていた。完璧。完璧である。後はステージが見えれば、言うことは、ない……。
『Entish』を基調に、『Welcome Stranger』からも沢山聴けて嬉しい。基本はentの穏やかかつ冷静なあの音源の空気そのままなんだけど、それらが立体的に広がる快感といったらない。脳に直接作用してくる音達。
Do Not Adjust Your Set飛び抜けてエモくなっていた。ライブ映えすごい。
「言葉で何かを伝えることはとても難しい。人によって言葉の指す意味が違うし。なんてことを思っちゃいます。笑 けど、それでもありがとうとか、好きだよとか、言葉で伝えるってことは必要なんじゃないかなあと思って。それを日本語で詞にした曲をやります」という、ソシュールもウィトゲンシュタインもとりあえずどうでもいい、みたいなMCの後にLens。きっとやってくれると思っていたし、聴きたかった曲。音源よりもっとやさしく、ずっと力強く鳴っていた。ありがとうありがとう好きです。
アンコールにサプライズゲスト、野田洋次郎。音源Lensのドラムスは彼だという(クレジットには Drums"Lens" by DARMAN とある)。ツアーには間に合わなかったので、とent、OJ、DARMANのセッションが5分ほど。ちょっと不器用な、けれども同じ場所を目指していくような、温かい音だった。
DARMAN退場、菅井さんが戻って最後の曲、Sleeping Ghost! 最後に来るとは。《We'll fly again / Stars all remain》(と聞こえる)の繰り返し気持ち良い。ふわあっと軽くゴーストになっていく。半分夢のように終演。そして熱が上がり直帰して爆睡。
また何度でも観たい、ずっと包まれていたい空間だった。次はゆったり聴きたいけど、あの映像と照明がありつつ余裕あるハコってどこだ。ううん。や、でも、同じハコでもステージ見えなくてもきっと行くだろう。それくらい心地良い夜でした。
■セットリスト
(入場SE: No Tone)
01. 9646
02. Farewell Dear Stranger
03. pure river
04. Zoe
05. Water Screen
06. Do Not Adjust Your Set
07. Frozen Flowers
08. Airwalker
09. Dragon Fruit
10. Silver Moment
11. Lens
12. At The End Of The Blue Sky
EN.
01. セッション w/野田洋次郎
02. Sleeping Ghost