August 30, 2012

QUIET ROOM 2012 -晩夏の鐘-
@ ル テアトル銀座 by PARCO

 「袖から舞台まで歩いてくる時吐きそうになった」(堕落安部さん)
 「この空気、あれを思い出しますね。お通夜」(尾崎さん)

 ということで今回も出演者にとってやりづらそうな、客がQUIETなイベント。うまくレスポンス返せなくて申し訳ない。どうしたらいいんだ。
 多くのアーティスト(今回は6組!)の弾き語りを見られるのは貴重で、本当に面白い。誰もが音と居て誠実だった。あんな風に生きたい。
 テアトル銀座、初めて行った。来年5月末でなくなるとのこと。舞台見やすいし席は座りやすいし、何より響き方がまあるいところが好きだと思った。立地も良い。なくなっても、今日のことはずっと覚えていられるといい。


■EG
 初見。カフェオレに追加する粉砂糖みたいなあまい声。高音もよく出るんだけど、話すのと同じかやや低いくらいの声がびっくりするくらいあまくて、こちらを推してほしい、と勝手なことを考えた。
 (更に勝手な感想)記号みたいな名前が面白い。exempli gratiaであり、JAAであり、カタカナ読みならeasyと同音。気になって公式サイトに行ったら「本名でないのも意味は特になし」とあった。名前と曲の印象がうまく一致しないのも面白い。


■堕落モーションFOLK2
 出演順のせいか、前回より少し大人しい印象。でもやっぱり気のいい兄ちゃん達。MCの人柄そのまま馴染みやすい曲、と思いきや引っ掛かるところが幾つもあって面白い。中でも「不潔なメロディー」という曲が引っ掛かっている。不潔を気にする潔癖さが際立って聴こえた。
 物販で「堕落」の二文字が刻まれたピンク色のTシャツ売ってて震えた。某16gの変態Tを思い出す。


■波多野裕文 (People In The Box)
 いつもの飄々とした空気で登場。曲目を即興で決めているからか、持ち時間を気にしてiPhoneのアラームをセット。そういえば前回は、時間が判らなくてスタッフに時計持ってきてもらっていた。進歩!
 4曲、どれも今まで披露したもの。王道的な曲が選ばれたように思う。

1. タイトル不詳《中国に行ってみたい》
壱日の孤独vol.2の一曲目。アカペラ。悠々とした、まあるい豊かな声。混じり気のない水の粒のよう。

2. タイトル不詳《ドレスリハーサルの途中》
《夏の都会にバグが発生する》
◇詞が夏仕様に着せ替えられていた! MC「最近本当に暑いですね。いつもは雨が降ってちょっと涼しくなったりするのに、全然降らない」から、さらりと《夏の都会に~》の歌い出し。リアルな時空間と曲がリンクするのはふしぎな感覚。同じ季節を、地平を、過ごしていることを実感するのもふしぎだ。

3. タナトス3号(仮)
《空を黒く塗り潰せ いつまでも同じではないと知った》
◇聴けば聴くほど好きになる。ぜひ音源化を!
 「時間がどんどんなくなる! 次の曲はBPMを上げます」との宣言で始まるも、いつも通りBPM70くらいのゆったり演奏。と思いきや終盤の《とんてんたんとん》で200超えるくらい爆上げして笑った。最後はゆっくりに戻って終了。

 チューニング中、びーん!と弦が切れるハプニング。ハタノさん「は……!」と動きが止まる。会場とりあえず笑う。笑うしかない。
 予備ギターを差し出すスタッフに「こういう状況の方が燃えるんです。あの、お気持ちは本当にありがとうございます」と断った後、「あーこれ、一本ないと結構狂いますね、調子」と言い出したので、どっちやねん!がんばれ!と念じる。
 そのまま「アラームが鳴るまで頑張ります」とスタート。そうだった時間が限られているんだった。

4. タイトル不詳《あなたは誰にも愛されないから 自分で愛してあげなさい ばーか》
◇壱日の孤独vol.2本編最後の、詞が印象深い曲。↑このくだりも勿論だけど、《5月の空は海の色》が堪らなく好きだ。メロディーと併せて、世界がぐわっと広がって解放されたような感覚になる。ハタノさんが歌う青空はいつも手を伸ばしたくなる。
 最後の「ばーかばーか」が終わってアウトロに入ろうとする時、ジリリリリリ!!!とiPhoneアラームが鳴り響く。演奏止み「お時間です、ありがとうございました」。ええー!?
 びっくりしつつ、会場笑って拍手。最大級の拍手。

 秒針のSEで始まるピープル("And I'm Singing" Jim O'Rourke)と対になるような終わり方。夢から覚めるような、世界が切り替わるような。もっと聴いていたかったし、あちらの世界に居たかった。そんな風に自分を変えればいいんだろうと思う。最近よく考える。じわじわ効いてくる。
 次のソロはいつだろう。帰ってこられなくなるくらいどっぷり浸りたい。病気か。


■斎藤宏介 (UNISON SQUARE GARDEN)
 サポートにドラマー海老原諒さん(今日はパーカッションでジャンベ、ウィンドチャイム、スプラッシュシンバル)を迎えての演奏。斎藤さんが海老原さんを「すごく好きなドラマー」と紹介していたのは納得。バランスの良い人で、相性の良い組合せ。
 「オリオンをなぞる」は知っていた! バンド形式よりも夜空に似合いそうなアレンジ、好きだった。


■Laika Came Back
 初見。今日の面子で唯一立っての演奏。一人で5重くらいにギターをサンプリングして重ねて、弾いて歌っていた。ギターって色んな音が出るんだなあ、というところから興味を惹かれる。そしてどの曲も質感が違って、奥深い音の世界を持っている人だと感じる。すごく面白く聴いていた。調べてベテランさんと知り納得!


■尾崎世界観(クリープハイプ)
 初見。ふしぎな惹かれ方をした。ゴッホのひまわりみたいな声だと思った。枯れたように掠れているのに、生命力に満ち満ちている。聴いている人に訴えかける力の強さを、耳だけでなく全身で感じた。演奏と同じくらい詞が気になることが多いのに、どちらも吹っ飛んで圧倒されていた。すごい。どうしてだか解らない。
 詞だけに集中すると、感受性の強い青年の日常、と括ってしまうのは失礼かもしれないけれど、特別だとは感じないのに、音とあの声に乗ると特別になる。
 クリープハイプ聴いてみようと思う。楽しみ!

August 18, 2012

People In The Box 空から降ってくる vol.4 ~劇場編~
@ 東京グローブ座 2日目

 劇場編ファイナル。昨日と同じグローブ座で、昨日より更に遠い席。名古屋から徐々に遠く、ミクロからマクロへ俯瞰していくように観てきた。
 MCで『Ave Materia』告知! タイトルで既に鳥肌。Ave Mariaとのあからさまなアナロジーに、Materia=物質世界(としていいだろうか)への肯定と祝福しか感じない。聴く前からピープルの叫びが頭の中を駆け巡っている。聴かなくてもいいんじゃないの。なんて戯言をうまくぶっ壊してくれるといい。
 テンションがくるったままライブの感想を書きます。

 セットリスト一部変えてきた。「レントゲン」始まりで「鍵盤のない、」終わりの初期曲挟みで、「笛吹き男」~「沈黙」だった名古屋、東京1日目と対照的。生が強く感じられるのは同じで、余韻はかなり違った。
 カメラが入っていたからCut Threeに収録されるかもしれない。演奏は名古屋や東京1日目の方が良く聴こえたのでちょっと惜しい。今日は波多野さんがややお疲れだったような。とはいえ圧倒される瞬間は沢山沢山あった。

 昨年の劇場編のと多分同じ、窓のシルエットがスクリーンに映されてスタート。「レントゲン」、あまり気に留めていなかった《ここは希望の国》にはっとする。今のピープルからは圧倒的な肯定ばかり感じる。冒頭、ゆったりした波多野さんの歌とギターに合わせて、ダイゴマンがふにゃんとした赤いパイプを頭上で振り回し始めた。何事かと思ったら風みたいな音が鳴り出す。メロディーパイプ? 面白い! 確かにこの曲、誰もいない大地を風が吹き抜ける感覚がある。
 ダイゴマンは「El Condor Pasa」でカズー昨日より息が続いてたのも良かった。波多野さんが支えるように体でリズム取っていたのが、いつもと役割逆で印象的。そして安定の福井さん。ダイゴマンによると「これタンバリンじゃなくてタンブリン(? 違うかも)っていうんだよ。タンバリンよりもじゃらじゃらが大きい」らしい。へええ。楽器も曲もいつもと違うから、音のコミュニケーションが浮き彫りになって面白かった。本当に状態の良いアンサンブル。それから「Virtual Insanity」の終盤、間奏で挟まれるハイハット、癖になってふと頭の中で鳴り出したりする。正確で美しくて、というだけではなくて、迫るものがあって。本当にこの人の音は何なんだろう。是非収録してほしいけれど、権利関係とかあるのかな。
 一部ラストは「子供たち」! 予想外でびっくり、嬉しかった。CD音源があれなので、優しい終わり方にほっとする。福井さんのコーラス柔らかくてよく合っていた。最後のららら~以降ダイゴマンも歌っていて、その不器用さがまた良いなあと思う。声はやっぱり特別な音だ。

 二部始まりは「ベルリン」! 久々の赤と緑の照明にテンション上がる。ギター格好良いな。ライブハウスだとあまり手元まで見えないから、あんなに弾き倒していることにびっくり。
 やっぱり新曲が印象深い。今日はどちらも等しく好きだと思った。少しずつ詞が入ってくる。新曲1こと「球体」(多分、AMの収録曲名より)はダイゴマン輪唱もびっくり。波多野さんからより遠い、個がはっきり区別される声を入れたかったんだろうか。この曲だともう少し安定すると良さそう。《僕らは誰も殺せはしない》自分も?
 新曲2こと「ダンス、ダンス、ダンス」本当にこの曲名みたい。珍しく直球。《超然としていたって 頭はからっぽさ》刺さる。
 「水曜日 / 密室」久々ですごく嬉しかった。聴く度に迷路に嵌っていく。
 ラストは期待通り「鍵盤のない、」。名古屋のエンドロールで、多分間違って、この曲名が表示されていたから、きっとやるんだろうと思っていた。バラバラになりたかったから、そうなって、あのアウトロを聴けて、すっきりした。

 エンドロールの音楽、何だろう。"Realize, Realize, You're here, You're here"って聞こえた。ゆったりした男女混声(波多野さんではない)。名古屋も東京1日目も耳に入っていなかった。「気付いて、気付いて、ここにいるよ、ここにいるよ」。ファイナルでこれは、くる。ここにいていいんだと思った。これからもいられるといい。


■セットリスト
◆一部:アコースティック
01. レントゲン
02. ストックホルム
03. 火曜日 / 空室
04. はじまりの国
05. 木曜日 / 寝室
06. El Condor Pasa(Simon&Garfunkelカバー)
07. Virtual Insanity(Jamiroquaiカバー)
08. 土曜日 / 待合室
09. 天使の胃袋
10. 子供たち
◆転換ムービー:ダイゴマンが行く! ~韓国編~
◆二部:エレクトリック
11. ベルリン
12. 親愛なるニュートン街の
13. 犬猫芝居
14. The King of Rock 'N' Roll(Prefab Sproutカバー)
15. ユリイカ
16. 新曲1 球体
17. 新曲2 ダンス、ダンス、ダンス
18. 水曜日 / 密室
19. ニムロッド
20. 旧市街
21. 鍵盤のない、


■MC備忘
・齢
ダ「なかなかアダルティでしょ? アダルト(一部)とヤング(二部)ですからね」
ハ「でも、そんなアダルティって感じもしないかもしれないね。僕ら」
ダ「ああー。ま、ロリ顔ですからね!」(会場笑)
ダ「何歳くらいに見られてんだろ? 健太年上に見られる?」
フ「見られますね。上に」
ダ「波多野ちゃんは?」
ハ「僕、解んない」
ダ「俺は年相応に、まあ」
ハ「いいなあ年相応。何かね、すっごい上か、すっごい下かに見られる」
ダ「すっごい上っていうのは」
ハ「38とか」
ダ「38!?」(会場笑)
ハ「って言われる。それか18」
ダ「18!? それはない、18はないよ!」(会場笑)
フ「精神年齢は18(笑)」 ←!

・好きなこと
ハ「今日は本当に、来てくれてありがとうございます」
(会場拍手)
ハ「あのー、本当に。本当にねえ……こんな風に、好きなことをできるっていうのは、簡単なことだと思ってないんですよ。僕は。……その象徴みたいな曲をやります。これも僕がプレゼンして、これやりたい!って言って、やってるっていう。ふふっ」 →Prefab Sproutカバー演奏




(すごく個人的な感想。
 新譜発表はものすごく嬉しかったんだけど、タイトルを聞いて何となく不安になった。肯定と祝福だけでは生きていけない。ポジティブな方向に進むだけなのかと思うとぞっとした。生きていけない。
 だから「鍵盤のない、」が聴きたかった。初期の、死の匂いのする曲。
 CSツアーで音と血が繋がったような気さえして、もしかしたらそこがピークで、後は離れていくだけなのかもしれない。だけどこの劇場編で聴いた二曲はすごく良かったから、ただの杞憂かもしれない。
 好きになり過ぎたかもしれない。ばかだなあ。
 タイトル発表されただけでここまで考えるのも、ばかだなあ。)

August 17, 2012

People In The Box 空から降ってくる vol.4 ~劇場編~
@ 東京グローブ座 1日目

 前回の名古屋から5日後、再びの劇場編。自分に戸惑うくらい名古屋とは全然違う見方をした。二度目かつ席が遠くなったからか。すごく楽しかったけれど、どこか一歩引いて眺めていた。観る位置は重要なんだと今更。

 セットリストは名古屋と全く同じ。いつもちょこちょこ変えてくるピープルにしては珍しい。確かにすごく良いセトリ。
 照明の配置のせいか、舞台背景や舞台脇に映るメンバーのシルエットが格好良い。後方でも充分見やすく、音も良い。何よりシェイクスピアと繋がりのある場で聴けて、個人的にテンション上がる! 16世紀に英国民が集ったように、21世紀の今ピープルを観に集う。26世紀にも同じように人は集うはずだ。余談。

 アコースティックパート、テンポゆっくりな演奏、特に「技法」が難易度高そう。ひとつひとつの音の解像度が高くないと、引き伸ばされた時に耐えられない。だからこの曲名なのか。客としてはじっくり味わえてとても面白い。
 カバーは、二部のもそうで、慣れが出てくると面白さが薄れてしまう。けれども福井さんのマルチさと輝きっぷりは今夜も素晴らしかった。「Virtual Insanity」の格好良さったらない! そして波多野さんが危機感をストレートに - it's a crazy world we're living in - ぶつけるのは英詞だからか。1996年の発表から10年以上経って一層危機感が強くなってしまった今、この曲を再発見したセンスに震える。
 「汽笛」名古屋よりは落ち着いて聴けた。本当に汽車が進んでいくようなエレクトリックに対して、アコースティックは人が手と手を取り合って踊ったり、歩いたりしながら進むイメージ。3拍子パートのワルツみたいな軽快さが最後に戻ってくるところで、ちょっと置いていかれそうになりつつ、また踊り出すような。解き放ってくれるアレンジ。体が軽くなった感覚。ありがとう。

 韓国へ行ったダイゴマン、ファンにお土産くれるサプライズ素敵だ(書かなかったけれど名古屋でもあった)。場内の一名様の座席に仕掛けてあることがライブ終盤明かされ、各々探ってみるという趣向。今回はなかなか見つからず、終演後に皆で探したね。席近かったから一緒にごそごそしてた。無事見つかると、会場全体から拍手!!
 ピープルのお客さんあたたかいなあと思う。なんであんなにあたたかい人達がピープルを聴いているのか、とつらつら考えて、ピープルがあたたかいからだ、と単純な答えが出た。そこを共有しているから皆集ったんだ。きっと。

 二部、「し」みん→「し」んしがい→「し」んあいなるニュートン街の、の連なりで幕開け。
 名古屋では新曲2、今日は新曲1が好きだった。そんなこともある。新曲1《球体に護られて 体は痣だらけ》《声を返せ》《僕らは誰も殺せはしない》《空を返せ》。奪われたものを取り戻そうとする強い叫び、CSの基調を継いで進んでいる。出だしがかなり格好良い。福井さんがダイゴマンの方に身を乗り出して2人でタイミング図り、爆発的なスタート。曲も前はあまりぴんと来なかったのが、今日はするする入ってきてメロディー覚えた。これと新曲2が入る次のアルバム、一体どうなってしまうんだろう? 間違いなくまた好きになる。
 新曲2の哲学者は《とても厳しかった》人で、歌い手は《許してもらえなかった》らしい。後半《ついていい嘘なんてあるはずない》と聴こえて、今日はこのフレーズがぐるぐるしている。そんなことないよVSそうだろうか。
 「金曜日 / 集中治療室」も前よりは落ち着いて聴いて、でも楽しくて仕方ない。《翌朝~消えていくよ》でテンポがぐっと落ちた後、走り出すようなスネアに導かれて戻っていく緩急好きだ。曲の深み。

 ラスト「沈黙」。名古屋で受けたものすごい衝撃は和らいでしまった。代わりに噛み含めるように聴こうとしたけれど、やっぱり名古屋ほどは打たれなかった。帰結が判っているから予定調和みたいに感じてしまったのだと思う。二度目は難しい。
 冒頭、ダイゴマンのアレンジは初? 名古屋ではあんな粋な音に気付かなかったんだろうか。波多野さんのギターリフのあちこちに、多分即興で、色んな音を散らす。特に印象的なのがフロアタム。張り詰めた氷の下、地中深くのマグマのような熱に、CSツアー「冷血と作法」を思い出す。怒りだと感じた。数倍の緊迫感でスタートしたからいつも以上に引き込まれ、アウトロの音のまとまりにほっとして力が抜けた。

 明日はどうなるんだろう。大体雰囲気も曲も判っているのに、どんな受け止め方をするか予想できない。劇場編ツアーファイナル、こわさ半分で楽しみにしている。


■セットリスト
◆一部:アコースティック
01. 笛吹き男
02. 技法
03. 火曜日 / 空室
04. はじまりの国
05. 木曜日 / 寝室
06. El Condor Pasa(Simon&Garfunkelカバー)
07. Virtual Insanity(Jamiroquaiカバー)
08. 土曜日 / 待合室
09. 天使の胃袋
10. 汽笛
◆転換ムービー:ダイゴマンが行く! ~韓国編~
◆二部:エレクトリック
11. 市民
12. 親愛なるニュートン街の
13. 新市街
14. The King of Rock 'N' Roll(Prefab Sproutカバー)
15. 見えない警察のための
16. 新曲1 球体
17. 新曲2 哲学者、ダンスダンスダンス
18. 金曜日 / 集中治療室
19. ニムロッド
20. 旧市街
21. 沈黙


■MC備忘
・B'z
ダ「ギターどれくらいやってるの?」
フ「僕、ギターから始めました」
ダ「ああー! ベーシスト多いよね!」
フ「B'zとか弾いてた。Pleasure/Treasureとか」
ハ「えっ? 全然知らんかった」
ダ「ああ、あの金と銀のやつね! (客に)皆知ってる? えっ知らない? 波多野ちゃん知ってる?」
ハ「B'zを?」(会場笑)
ダ「いやいや、B'zのPleasure/Treasure、金銀のやつ」
ハ「あー、そういうのが、あるのね(笑)。でも僕、B'zは結構知ってますよ。有名なのは結構。B'zで古今東西とかやったら絶対楽しい!」
フ「やったことある」
ダ「まじで?! 何やった? 俺全く覚えてない」
フ「一番上手かったのはね、波多野ちゃん」
ハ「(笑)」
ダ「この話これ以上やめよう! 誰かがやらなきゃいけない流れになる(笑)」

・麻薬
(ダイゴマン英国で薬を売りつけられそうになった話から)
ダ「初海外でマリファナだぜ? ぞっとしたね!」
ハ「あっちじゃ煙草感覚らしいよ」
ダ「って言うよね」
ハ「でも、そういうの要る?って思うよね」
ダ「?」
ハ「脳内麻薬でさ、こう、うわあああ~ってさ。なろうと思えばなれるじゃん、俺達」
ダ「はい!?」(会場笑)
ダ「(客に)あのー、110番はしないでくださいね」(会場笑)

August 12, 2012

People In The Box 空から降ってくる vol.4 ~劇場編~
@ セントレアホール

 成田から空路、セントレアへ! 昨年に続いての劇場編。
 会場は、MCでも話題になったように、普段は講演や説明会をしていそうな事務的なホール。そこにピープル。さすがに照明は制限されたようだけど(水中みたいな青色、使えなかったんだろうか)音は良かった。良席だったこともある。

 良席で、更に舞台と距離が近いこと、あとセットリストが多分に影響したと思う。今までで一番効くライブだった。「生」を強く強く感じた。だから、どちらかといえばしにたくなった。その意味で、いつか波多野さんがライブを毒だと自称していたことに初めて頷けた。
 詞に肯定が多いことに今更気付く。生の肯定と言い換えていい。今日の曲から拾ってみると《いいんだよ》《光り溢れ》《世界は美しい》《大丈夫さ》《いいよ》とか。ひとつひとつが効いた。ピープルはいつだって生を鳴らしているんだと思った。その希望を見守っているつもりで、でもずっと支えられてきたんだった。本当に今更だ。
 というのはCSツアーでもぼんやり考えていて、今日ピントが合った。
 好きでいるうちは好きなだけ好きでいようと思う。

 昨年と同じ二部構成。一部アコースティック、転換でダイゴマンムービーを挟み、二部はエレクトリック。ゆるいトークとカバー曲、そして新曲! 構成要素は昨年と似ている。だけど驚くくらい前に進んだ。夏の気配がいっぱいに詰まったCSの曲を多く聴けて嬉しい。まだまだアルバムの世界が広がっていくのは本当に楽しい。

 一部は座ってじっくり聴くスタイル。冒頭「笛吹き男」で呑まれる。《今夜、最高の嘘が本当になる》に、やれるものならやってみせろ!と一応抗ってみるが、いつもピープルの勝率100%なのは解ってる。抗いはたちまち消えて、楽しさに転化。
 ずっと傍らで出番を窺っていたバンジョーに波多野さん何気なく持ち替えて「木曜日 / 寝室」、合い過ぎ。そのままSimon&Garfunkelのカバーで「コンドルは飛んでいく」! 福井さんタンバリン、ダイゴマンボンゴ+カズー?みたいな笛。曲調や楽器や国が変わっても、アンサンブルは完全にピープルなのが嬉しい。更にカバーで、いつもの楽器に戻ってJamiroquai「Virtual Insanity」、めちゃめちゃ格好良い! それぞれの音が渦のようにまとまって、舞台が客を巻き込む磁場みたいになっていた。ピープルでこんな風に感じたのは昨年の「1000 Knives」以来かも。カバーいいね。なんて柔軟な人達。そして「天使の胃袋」から、何と「汽笛」! 嬉し過ぎてあまり覚えていないパターン。アコースティックだと詞が余計に沁みる。

 転換でダイゴマンムービーまさかの韓国編、羽田から仁川へ。「ダイゴマンが行く!」というより「ダイゴマンが行かされる!」なノリが程良くクレイジー。昨年に続いての寝起きドッキリもあるよ☆ ずっと笑ってたらいつの間にか転換終わってた。

 二部はエレクトリックでスタンディング。「市民」始まりでがらっと空気が切り替わる。波多野さん「僕のエゴをやります」からのPrefab Sproutカバー「The King of Rock 'N' Roll」が印象的。何がって福井ベースの格好良さ! 今夜、特にカバー3曲の福井さんの輝きっぷりったらなかった。バランスを取るのがすごく上手なんだろうと思う。「アールバーカーキ♪」で締めた波多野さん、楽しさが溢れたみたいに笑ってた。音楽って本当にすごい。
 新曲2曲! その1は「市民」に近い攻撃的な印象。その2がすごく好きだった。引っ掛かる音が沢山あるのに一聴ですっと入ってくる、ピープルらしい曲。詞の冒頭で《哲学者》が出てきてはっとする。哲学者は嘘を許さないから、みたいなフレーズがずっと頭の中をぐるぐるしている。ガムテープでぐるぐる巻きになったり、銃殺刑になったりする君、最近はいかがお過ごしだろうか。ダンス! ダンス! ダンス!ってキー概念が叫ばれていたのも印象深い。《いっそ踊ろうかな》のレベルじゃなくなっている。安直に春樹を連想した。
 そして久々の「金曜日 / 集中治療室」! この辺りも楽し過ぎて覚えていないくらい。手拍子楽しかった! ダイゴマンのホイッスルでテンション振り切れる。「ニムロッド」「旧市街」は最早定番。「旧市街」アウトロの最後で福井さんのストラップ切れるトラブル、初めて見たびっくり。こんなところで定番を覆すか。本人はどうしよ!って風に笑ってスタッフに合図を送りつつそのまま、ベース替えて最後の曲へ。

 予想外の「沈黙」。始まって「沈黙」だと解り、その重みがずんとのしかかって、衝撃で半分放心しながら聴いていた。生きろ、生きろ、生きろ、と叫んでいる曲だと気付いたら泣きたくなった。不意打ちだった。CSツアーで終わりじゃなかったんだね。
 タイトルがすごく好きです。沈黙。一番好きかもしれない。
 バスドラのリズムがようやく解った。単純なパターンの繰り返しで、ずっと解らなかったのが今となっては謎。油断すると泣きそうなので、気を紛らすようにバスドラを追っていた。けれどどの音も生命を鳴らしているから同じことだった。逃げ場がない。
 そういえばダイゴマンのセットびっくりした。シンバル小さいの含めて10枚くらいあった気がする。要所要所で気を引く父性的な音と、しなやかで繊細な母性寄りの音と、併せ持つアンドロジナスさが、あれほど生命を感じさせるのかもしれない。

世界との絆を断たずに、わたしたちのうちに自由を生み出すことができる方法を理解するのは、わたしたちのつとめである。
(モーリス・メルロ=ポンティ『意味と無意味』所収「セザンヌの疑い」より)

 ピープルは一体どこまでいくんだろう。

 最後の方でいつもの挨拶「今日は来てくれてありがとうございます」に大きな拍手を受けた後、ほとんどオフマイクで「ほんとうに、ありがとう」と呟いた波多野さんの柔らかい声音が忘れられない。こちらこそ、ほんとうに、ほんとうにありがとう。もう少し考えてみることにするよ。


■セットリスト
◆一部:アコースティック
01. 笛吹き男
02. 技法
03. 火曜日 / 空室
04. はじまりの国
05. 木曜日 / 寝室
06. El Condor Pasa(Simon&Garfunkelカバー)
07. Virtual Insanity(Jamiroquaiカバー)
08. 土曜日 / 待合室
09. 天使の胃袋
10. 汽笛
◆転換ムービー:ダイゴマンが行く! ~韓国編~
◆二部:エレクトリック
11. 市民
12. 親愛なるニュートン街の
13. 新市街
14. The King of Rock 'N' Roll(Prefab Sproutカバー)
15. 見えない警察のための
16. 新曲1 球体
17. 新曲2 哲学者、ダンスダンスダンス
18. 金曜日 / 集中治療室
19. ニムロッド
20. 旧市街
21. 沈黙


■MC備忘
・Jamiroquai
ダ「(客に)えっ、Jamiroquai知らない? カップラーメンのCMとか」
ハ「あれは、ファンの間では賛否両論だったよね」
ダ「へー、そうなんだ?」
ハ「僕は複雑でしたねー。……美味しいけどねー」
ダ「カップラーメンね(笑)」

・演奏歴
(「火曜日 / 空室」後)
ダ「ギター上手いね!」
フ「いやいや」
ダ「いつからやってんの?」
フ「……?」
ダ「(客に)2歳だそうですよ! 2歳からギター持ってる」(会場笑)
フ「もっと上手い上手い(笑)」
ダ「ああ、2歳からやってたらね。もっと上手い(笑)。波多野ちゃんは? いつからギター始めたの?」
ハ「僕、弾いたことありません」
ダ「? あ、初心者の気持ちってこと?」
ハ「いや、ギターを持ったことがありません」(会場笑)
ダ「こうやってね、会話が成り立たない(笑)」
ハ「日常風景だね(笑)。大吾は? いつからドラムやってんの?」
ダ「ドラム叩いたことない!」(会場笑)

August 11, 2012

ハイスイノナサ @ SHIBUYA O-nest

 初ワンマンソールドアウトおめでとう! 特に最後の方、すごい盛り上がり! 前よりもずっとエネルギーの大きなライブ。終演後「やばい」「すごい」「やばい」って声があちこちから聴こえてきた。まだまだ行けそう。
 単純に人数が多くて(4人+ヘルプ1人+ゲスト)迫力あるのは勿論、勢いのある演奏だった。行けるところまで行ってやる!みたいな若さ。新譜割とミニマルな響き方をしているのに対して、ライブはロック感が強い。言ってしまえば残響ぽい。ハイスイに限らずライブってそうなるものだなと思う。どちらにも良さがある。
 前聴いた時は都市の醒めた空気に満ちていたけれど、今日は都市に溢れるざわめきの方を強く感じた。ロック寄りになっていくんだろうか。とはいえ観たの二度目でまだまだ掴みきれていないし、残響ぽいのも好きだ。

 ざっくりと流れ:序盤は多分2ndまでの曲(知らなかった)、静かな曲ゾーンを挟み、中盤から「地下鉄の動態」ほか3rdの曲を沢山やって、本編最後が「動物の身体」。この帰結すごくいいね。アンコールで「ある夜の呼吸」、Wアンコール「ハッピーエンド」で締め。途中「モビール」聴けて嬉しい。
 ゲスト豪華! 途中Aureoleのフルートさんやthe cabsのドラマーさん(よく見えなかった、トライアングルで参加?)。texas pandaa出川さんのコーラス、鎌野さんによく合ったやさしさで素敵だ。

 SEがライヒ「Three Tales」! 納得と歓喜。とりわけピアノの奏でる奇妙なうつくしさにシンパシー。ライヒは不安や混沌、ハイスイは醒めた都市の、それぞれざわめきのなかピアノが声を上げているところにすごく惹かれる。
 追いかけたいバンドが増えて嬉しい。また、ぜひ。

August 1, 2012

maskz presents U-NITE @ 代官山UNIT

 脱原発派がUNITでUNITEしようぜ的なイベント。
 ミュージシャンもトークセッションの先生方も何とも豪華。仕事帰りに5時間立ちっ放し、しかも終電、だけどたまにはこういうのも楽しいよね!!ってスキップしながら帰途に着いた。楽しかった。

 音楽の感想を書きます。

■小林武史×Salyu
 同じ舞台にいる2人を見るのが何年ぶりだかで、それだけで来て良かったなんて考えるくらいには思い入れがある。小林さんのピアノも久しぶりで、やっぱりとても好きだと思った。迷ったところで背を押してくれる打鍵の頼もしさとめいっぱいの優しさ、そんな疑わしいはずのものが、心をダイレクトに揺さぶってくる。何だろうな。抑えきれない自己主張は欠点と呼ばれるのかもしれないが、ふと垣間見えるこの人のそれはいとしい。どうしようもない。恋(仮)か。
 芯の通った濃密な選曲で、2人の今がよく伝わった。またね。
●1. VALON-1 2. 悲しみを越えていく色 3. to U

■細野晴臣 with 高田漣 & Salyu
 細野さんも数年ぶり。声の渋みと甘みに呑まれてどろどろに溶ける感覚、に身を任せていられる安心感。掠れる声も手探りみたいなギターも、全てが音楽の旨みになる。すごく余裕がある。ほんとこんな老年になりたい。
 さすがのSalyuにも緊張の色あり、控えめなコーラスワーク。張らない声を思わぬところで聴けてしんみり。Smileを低いキーにした理由「この曲はお話するくらいのキーで歌いたかったの」。うん、とても良かった。
●1. Smile (Nat King Coleカバー) 2. I Love How You Love Me (The Paris Sistersカバー) 3. 悲しみのラッキースター

■青葉市子 guest 小山田圭吾 + U-zhaan & Salyu
 この心躍るラインナップ! 期待を超えてすばらしかった。
 青葉さんソロの「ひかりのふるさと」でスタート。アンコール定番曲、冒頭に来たのは珍しい、と思っていたらここからだった。小山田さんギターで入って「日時計」、U-zhaanタブラで加わり、青葉さん「この場にふさわしいか判らないですが、原子力発電所が主人公の歌です」との紹介で「IMPERIAL SMOKE TOWN」! 特にIMPERIAL、エネルギーが倍加していてすごい。2人の音にやや押され気味な序盤から、逆に後押しされるようにして声が、音が、大きく広がって前に出てくる過程に鳥肌。遂には複数の音のうねりをまとめあげる統率者のように見えて、怒りに似た激しさを感じた。まだまだいけると思う。今後に期待。
 更にSalyuが登場してsalyu×salyuの「Sailing Days」! IMPERIALとは打って変わって、ファンタジックな船に乗って本当に航海しているような爽やかさ。やわらかな風みたいなSalyuのコーラスをまとって主旋律を担う青葉さんの声は、涼やかに白波の上を滑っていく。そんな声を擁する船を造る楽器達のリズムの気持ち良さったらない。すごく良かった! 締めは「続きを」。本当に、続きをもっと見ていたかった。是非このカルテットでまた。
●1. ひかりのふるさと 2. 日時計 3. IMPERIAL SMOKE TOWN 4. Sailing Days (salyu×salyuカバー) 5. 続きを (salyu×salyuカバー)

■100%ユザーンとラダーン195
 ラダーン195=原田郁子さん。外見もユザーンとコラボしたような、ふわふわアフロのウィッグが似合う。初見で、舌っ足らずな歌い方は苦手かなと思ったけれど、タブラとのマリアージュが新鮮で面白く聴いていた。

■toe
 この面子だとちょっと浮いている気はする。誰繋がりだろう。
 実は45分押しで、始まったのが23:45。山嵜さん第一声「もう終電ないっしょ?」。客が結構帰ってしまっていて、UNIT1/3くらいの埋まり方。前方でゆったりtoeを観られるなんて、思わぬ贅沢。
 toeも数年ぶり。彼らの音に巻き込まれていくような感覚。大抵、音に圧倒されたり、音から一歩離れたところから眺めていたりという関わり方を音楽としているのだけど、toeには自分が巻き込まれていく。ふしぎ。柏倉さんを中心に聴くことが多かったけれど、今日はtoeの総体を楽しんだ。
 MCで山嵜さん(散々な下ネタの後)「まあ、原発にはグッドバイってことですよ」からの、期待通り「グッドバイ」! ボーカル郁子さん、幼さがこの曲の葛藤によく合っている。日付も変わって00:35、テンション最高潮に上がって無敵な気持ちになった! 久しぶりの感覚を抱えて、楽しく終電にダッシュ。間に合った良かった。


 トークセッションがUSTアーカイブ化されているのでメモ。原発に限らず持続可能な社会について語られていた。しかし音声が聞こえないのは自分の環境のせいか……。
 中沢新一×小林武史×宮台真司 http://www.ustream.tv/recorded/24394204
 中沢新一×高橋源一郎 http://www.ustream.tv/recorded/24395631

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Maira Gall