October 6, 2012

MEGA☆ROCKS 2012

 気付いたら仙台にいた。そんなはずはないのだけど、そう表すのがしっくりくる。ちょうど何かのお祭りだったらしい。はっぴ姿の人達と、首にタオルをかけたお馴染みフェススタイルの人達が混ざって、二度目の仙台はとても賑わっていた。
 何組か観たんだけど、ひとまずひとつだけ書きます。後で追加するかもしれない。書き過ぎたから削るかもしれない。


▲遅くに行ったら逆に1DayPassをいただいた


■波多野裕文(People In The Box) @ retro Back Page
 会場、雰囲気の良いダイニングバー。キャパ100くらい。弾き語る氏の奥にはモダンな壁掛け絵、傍らに1959年製のスタインウェイ。よくあるピアノブラックではなく、ウォルナット艶消しでやわらかな印象。小さなカフェバーで聴きたいって願いが早くも叶うことになった上、素敵なピアノのある空間! それはそれはやさしいひと時だった。
 音が浸透圧ゼロで流れ込んでくる。音と聴き手には多少なりとも距離があるはずなのに、ゼロだと感じるくらい傍に在る。という魔法がかかっていた。あるいは30分間の夢をみていた。あれほどやさしい侵犯を他に知らない。

 「放っておくといつまででもやるから、アラームをセットしました。時間になると、電話のベルの音が鳴ります(笑)」と譜面台にiPhoneを置いてスタート。

1. タイトル不詳《中国に行ってみたい》
(冒頭ワンフレーズ歌って)「という歌があるんですけど。あんなことになって。島を巡って争うことになって、違う意味が付けられてしまう……まあそれも面白いかなと」→歌再開
◇右足を左膝に乗っけてリラックスした風に、けれどとても丁寧に、音を繋いでいた。
 元々の意味を消してしまわないように聴きたいと構えつつ、始まってみればあの胡蝶の夢感にただ呑まれるのみ。

2. タイトル不詳《ドレスリハーサルの途中》
《昼と夜をやり過ごし》
◇街を眺める視線があまりにもやさしい。《眠る都会に毛布を掛ける》とか。ギターの音のやさしさに揺さぶられたのは初めてだった。ひとつひとつ弦がはじかれる度、ダイレクトに胸にきた。何度か聴いてきた中でも、今日は特別良かった。
 また詞が着せ替えられていた。終わらないドレリハの次を楽しみにしている。
 固定のフレーズ《街は未だにドレスリハーサルの途中》が繰り返され、最後「♪街はー未だーにードレスリ、ありがとうございました」でおしまい。客ぽかん。突然スイッチをOFFにされたような。一瞬の間の後、拍手。じわじわ広がる拍手。

3. タイトル不詳(初披露?)
《戦場だよ》《メランコリー》《おやすみ》《まばたきの間に星を見ろよ》
◇《戦場だよ》という歌い出しのようなシビアさと、メランコリー、メランコリー♪のゆらゆら感が交互にやって来る。「平坦な戦場で僕らが生き延びること」を思い出す。《星を見ろよ》命令形、珍しい。見えたものが星だったのか、まだ判らない。

4. タイトル不詳(ニコラとテスラと卵)
◇卵が食べられようとしていることにようやく慣れてきた。
 最後に登場する男の丸く膨らんだポケットには、残ったひとつの卵が入っているんだろうか。割れてしまわないだろうか。やっぱり食べるのはやめて育ててみるんじゃないだろうか。とか、考え始めるときりがない楽しい。

5. タナトス3号(仮)
《暗い光に今日も誘惑されてる》《ヤコブ片隅に閉じ込めてくれないか》
◇時間がない!ということで、QUIET ROOM 2012に続き最後の《とんてんたんとんてんたんとん》BPM爆上げで終了。小人たちが大急ぎで建設作業しているみたいな。「旧市街」の塔を建てているんだって空想すると楽しい。欠陥工事にならないことを祈る。
 冒頭《目を凝らすと》だと思っていたら、今日は《目を逸らすと》に聞こえた。意味真逆じゃないか。どっちだろう。
 ひとりごと。全くそういう意図ではないだろうけど、ヤコブと大工が出てくると某宗教を連想する。ヤコブ閉じ込める=反イスラエル的。《大工はみんな知っている》=ナザレのヨセフは全知=神とか。こわい。何とか結び付けないで楽しみたい……。

6. タイトル不詳(あなたは誰にも愛されないから)
《いつも いつでも いつも 頭の中の空洞には誰もいないのさ》
◇始めて少しして「もう一回やっていい? アラームを止めます」と中断。アラームのタイミング難しそうだ。夢が終わらなくて済むことに安堵する。「2分押します!」との宣言でリスタート。自己パロディとはさすがである。
 せつない声。初めて聞いたと思う。取り残されたインナーチャイルド。海を目の前に、大きな分岐点に立っているような絵が浮かぶ。掠れ気味の「ばーかばーか」、片想いしてる思春期の子かと。
 ざっくり曲構成を【Aメロ→Bメロ→Cサビ→A'→B'→C'→C''】とすると、A~Cまでギター、A'~C'がピアノ(!)、C''でギターに戻る。
 即興のピアノ、ラジオの弾き語りコーナーみたいにコードを探しながら弾いていた。探り当ててアルペジオ。その器用でない紡ぎ方が曲に似合う。このまま、うまくならなくていいんじゃないかな。
 1959年製のスタインウェイ、現在と距離を空けるようにどこか俯瞰的な、けれど透明な音色。インナーチャイルドを包んでいくような、堪らなくやさしい響きだった。


 即興で決められる曲目、今回実はQUIET ROOM 2012に「戦場だよ」と「ニコラとテスラと卵」が追加された他は同じ。響き方は全然違ったけれど。何となく流れができている。この調子で音源化されるといい。
 会場を出ると、ぽつりぽつり雨粒が皮膚に当たった。波多野さんのライブはどうも雨に恵まれる。夜風に冬の気配が滲んで、どうして音楽を聴きに来ているのか解らなくなる。からだの半分に魔法が残り、もう半分が冬になる。それでも来月また東北に来るだろうと思った。なぜだか解らないまま、もっと冷たい風が吹くだろう11月に。

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Maira Gall