November 4, 2012

『陋劣の残滓を啜り聖を排出する正義という呪縛。狂躁する資本主義の末期衝動。罪は通奏低音の如く聖に平衡し、赫奕たる旋律を奏でる。』
@ 郡山#9

 鈍行列車を乗り継いで、ゆるゆると北へ。
 東北本線、ドアが「車内温度維持のため」ボタン式の手動。乗り換えた列車は二両編成で、発車の合図は時折掠れる笛の音。車内に2歳くらいの男の子とお母さんがいて、周りの人がにこにこ話しかける。
 時々東京を出ないとだめだと思った。何かが致命的に麻痺している、気がする。


■波多野裕文
 どれも曲名が判らないので、詞の一部を。

1. 中国に行ってみたい
2. ドレスリハーサルの途中(ミニチュアのデパート)
3. 君が人を殺した
4. 8つの卵
5. あなたは誰にも愛されないから

 #3初めて聴いた。
 最初しばらく「今日彼女は来なかった、仕事かなあ」なんて小さな恋の物語かと思いきや、その流れのまま《君が人を殺した》。空気にノイズのような異物がざあっと混じって、うわあ来た、と思う。あの違和感と困惑。と、少しの愉快な気持ち。
 冷静なギターは異物が聴衆の体に沈むのを見届ける。そこからもう一度《君が人を殺した》。そして《でも、僕は君の味方だよ》と続く。2つのフレーズが何度も繰り返され、後者の伝え方がどんどん濃くなる。はっきりと一音ずつ、確かめるように。

 ……とりあえず聴いてほしい!(これ、ずっと言いたかった!)

 一度だけ《君が誤って人を殺した》と歌っていた。誤って。今更効いてくる。

 言葉が触覚に作用する。皮膚に、身体に、内蔵の隙間に、否応なしに触れてくる。堪らない違和感の陰で、あるべきものが戻ってきた安堵がこっそりと息をつく。そのことがおかしくて笑う。ほんの少し愉快でもある。そんなめちゃめちゃな状態で聴いていることもある。ただ心地良さに浸っているだけのこともある。
 結局どうしてなのか全然解っていない。ふらりと200km移動してくるくらいに引かれているのは確からしい。

 iPhoneのアラームが鳴って、魔法が終わる。今年もありがとう。良いお年を。


■the cabs
 この日の客入りは半分くらいで、舞台がクリアに見渡せた。下北沢は満員電車並の混雑でほぼ見えなかったから、彼らを「見た」のは初めてに近い。上手からギターボーカル(絶叫)、ベースボーカル(メロディー)、ドラムス(爆撃機)の配置。
 爆撃機、本当に爆撃機だった。決してパワーで押すマシンガンタイプではないのに、手数がどうなっているんだろうあれ? あの音の連鎖のどこで息継ぎして、どうやって呼吸しているんだろう。最初に爆撃機と評した人のセンスすごい。
 そのドラムスに乗るメロディーと、乗らずにひた走るような印象のギター。まとまっているようで、まとまりがない気もして、何が展開されているのか解らないままとりあえず突き進んでいる様が面白い。これからどうなっていくのかさっぱり見えないバンド。年明けのアルバムが相当楽しみ。

■te'
 こちらもやはりドラムス。残響と書いて「ドラムス」と読んでもいいと思った。冷静に考えるとだめだけど、それくらい気になるドラマーが多い。何だろう。
 人とぶつからずに見たのは初めてで、何だか違和感があった。モッシュしろってことでは全然なく、誰かと/何かと衝突するところで生まれている音なんだと思った。あらゆる音がそうだと言えばそうだけど、何だか「衝突」がひとつのキーワードのような気がする。ツアータイトルだってそうだ。画数多く読みづらい漢字からして衝突しまくっている。内容もそう。
 見る度にそんなことを考える。まだまだ未知数のバンド。いつかまた。

ノート:
【陋劣】ろうれつ。いやしく劣っている・こと(さま)。下劣。
【赫奕】かくやく。かくえき。光り輝くさま。 - 大辞林より

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Maira Gall