March 20, 2013

『Ave Materia』release tour @ 盛岡Club Change

 ふらりと当日券で盛岡へ。去年も春分の日はこんなだった。
 岩手県美に「アートフェスタいわて2012」を観に行った。素朴な花の絵も、避難所の写真も、様々な海の表現も、ひとつひとつ体に響いた。アートから溢れる沢山の主張を取り込んで、余韻の渦に巻き込まれたまま、ぼんやり駅から40分歩いてハコに着く。


▲券面手書き!

 会場の形が何だか歪で面白い。フロアを上から見ると )) ←こんな?なのか、右上と左中程にスピーカーがあり、上がステージ、右下にドリンクカウンター。キャパ小さくてステージが近い上にスピーカーも近くて、音がいつもより傍にあった。

 照井さん加入してはどうか?くらいの感じになってきた。だけどそうなるとハイスイも聞きたいので困る。勝手なシミュレーションで困る。
 メンバーとはまた違うダイナミズム。彼のいない「物質的胎児」や「八月」などなど、を考える方が難しくなっている。AM以外でも「市民」とか「金曜日 / 集中治療室」とか、ツインギターいいな、と思うことも多い。MCを徐々に侵食してきている感じもとてもいい(後述)。
 そして、これほど変化してもピープルはピープルのままだ。雪の結晶を連想した。街のあちこちで溶け残った白を見たからかもしれない。




 個人の感想を連ねます。と、前置きして書きます。

 AMは半端なく重たいアルバムで、それは聴き始めた時からずっとそうだったけれど、どんどん度合いを増してきて、今日が一番重たかった。ほとんど苦行。なのに聴かずにはいられない。
 《空がおちてきたところで / 指くわえ みているだけさ》と言われたら、空に潰されるならいいなあと思い、《土足厳禁の庭で息をとめるのかい?》と問われたら、そうだよと答える。そういう反応をしたのが今日だった。
 「みんな春を売った」今までより更につらかった(つらい、という言葉をとても久しぶりに使う)。「物質的胎児」で生まれようとするいのちを前に、聴きに来てごめんなさい、と思う。このうつくしい空間に立ち会うことをひどく場違いだと感じた。
 「火曜日 / 空室」くらいから持ち直して、「序」の楽しさを通って、「ニムロッド」も重たい曲だと思うけれど、《あなたの絶望で空が晴れ渡るよ》に辿り着くと少しほっとした。バタイユ。

 AMで飛び抜けて再生回数の多い「物質的胎児」は、期待値が高いこともあってか、ライブだと一番難しい曲。それでも「みんな春を売った」という衝撃のクッションになり得る曲は他に浮かばない。
 《あんぜんなみどりむし》と並んで《いるか すべりこんだ》が好きだ。ドルフィン=デルフォイ→音楽の神アポロンの連想と、イルカは自殺する動物だという昔聞いた話とが、曲とないまぜになる。胎児に音楽と死がもたらされた一節。そこで生が始まる。生も物質だと個人的には思う。"Ave Materia"は、発売前の勝手な予想とは全然違ったけれど、変わらず祝福のように響く。
 AMは、ピープルは、「生きろ」とか「死ぬな」とかいう直球を投げない。そのすれすれのところを進んでいるんだろうとライブでは思う。選択を、あるいは選択のための熟考を、オーディエンスに促す。だから死を選ぶ余地も残されてはいる。その僅かなスペースで息をするように、観ていた。ステージのうつくしさが遠かった。



絶望のさなかにあってぼくは幸福だった。

- ジョルジュ・バタイユ『青空』天沢退二郎訳より



 混乱したまま書いたらひどいことになった気がする。正気に戻ったら消そうかな。
 彼らのパフォーマンスはいつもながらに素晴らしかったことを強調して、締めます。MCが冴えていたので下に。


■セットリスト
01. 時計回りの人々
02. 市場
03. 球体
04. 割礼
05. ダンス、ダンス、ダンス
06. みんな春を売った
07. 物質的胎児
08. ブリキの夜明け
09. 八月
10. 完璧な庭
11. 火曜日 / 空室
12. ストックホルム
13. 序
14. 金曜日 / 集中治療室
15. ニムロッド
16. さようなら、こんにちは

EN.
01. 市民
02. はじまりの国
03. 旧市街


■MC
・グレイ
だ「サポートギター、ハイスイノナサ照井順政!」
客(拍手!)
ふ(照井さんの左腕を高く掲げる)
客(拍手!)
は(照井さんの右腕を高く掲げる)
だ「ははは! グレイみたい、連れ去られた(笑)」

・UMA
だ「よっちゃんUMAとか詳しいんでしょ?」
て「UMAね、うん」
は「(客に)UMAっていうのは、未確認……生物」
て「(頷く)未確認生物。モンゴリアンデスワームってのがいて」
だ「ほう」
て「敵を見つけるとぴゅって毒を飛ばすの。で、毒が避けられると、電撃を出す」
だ「すげえな!(笑)」
客(笑)
て「こいつがね、一番いる可能性が高いって言われてる」
だ「はははは! えー、そんなモンゴリア……」
て「モンゴリアン、デスワーム」
だ「モンゴリアンデスワーム、を倒すために! 僕たち次の曲を作りました!!」
客(爆笑)
だ「モンゴリアンデスワームを倒すために、健太がスネアを練習しました!!」
客(笑&拍手!)
ふ「『序』のためじゃなく(笑)」
だ「『序』のためじゃなく! あくまでも、モンゴリアンデスワームを倒すために! 俺がスネアを教えました!!」
客(爆笑)

・アンコール
(拍手の中、メンバー再登場)
ふ「今日はやらないの」
は(福井さんの視線に少し応えて、俯いて、笑顔でフロアに向き直る)
は「……アンコールワット、ありがとうございます」
客(笑&拍手)
は「いつからかこうなったんですけど、なんかねー、ひっこみがつかなくて(笑)」
だ「バリエーションがあるといいね」
ふ「そうだね。バリエーション増やせば?」
は「バリエーション……」
だ「うん……」
は「っていっても、アンコール……ワットくらいしかないでしょう?! ははは!」

No comments

Post a Comment

© nmnmdr blog.
Maira Gall