November 25, 2012

青葉市子独奏会 @ 自由学園 明日館 講堂

 西池袋、ホテルメトロポリタンの裏手は住宅街。その一角に佇む建物は、時の流れから独立して呼吸しているような静けさと存在感をまとう。今日の歌い手によく似合うと思った。
 独奏会ひと区切り。ソールドアウトしており満員の講堂。長椅子に腰掛けて聴くのでパーソナルスペースは充分。目線が同じだったVACANTと違って、高い舞台から見下ろされる。会場の緊張感が濃かったのは高低差のせいもあった気がする。
 青葉さん、何だか貫禄が出たなあ、というのがざっくりと全体の印象。服装、安定感、ギター上達、だけでなく。それがMCで話していた、全国で出会って連れてきた沢山の仲間たち(「ポケモンみたいに」笑)の影響なんだろう。
 だけどMCがいつもより緩かったのは、直前に遊びに来たらしいおとぎ話というバンドに緊張を解されたからかな。22歳らしさを初めて見た気がしたり。

 いつも通りの二部構成。初期の曲中心の一部は、神父さま並にゆったりだぼっとしたベージュの服。最近の曲中心の二部で衣装替え、袖口がふんわりギャザーになった甘めの白ブラウスに紺の膝丈スカート、オフホワイトのタイツにぺたんこの靴。
 ストレートの髪、ほんのり青緑がかった黒に染めている? 右耳に揺れる大きめの黒いピアスと相俟って、ちょっと背伸びした印象。これまでの不思議で繊細な少女風から、少しアーティスティックな見せ方に変えてきた。

 最近三部作にすることを決めたという「IMPERIAL SMOKE TOWN」→「だれかの世界」→「MARS 2027」がすごい。ものすごい。15分くらいで展開される物語の大きさの、果てが見えなくて唖然とする。後者ふたつは音源化されていないので、次のアルバムが本当に楽しみ。
 この巨編の前に「イソフラ区ボンソワール物語」を持ってくるとは。セットリスト悩む、という話をしていたが、まさかのイソフラボンボンがここで。市子……恐ろしい子!(ガラスの仮面風に) 会場の緊張感に正直馴染みきってはいなかった。けれど是非とも捨てられないでほしい曲。コミカルで奇妙で、どこか不安定なバランスが癖になる。アンコールでやると良さそう。
 「機械仕掛乃宇宙」はさすが。何度か聴いて慣れてきて、物語の細部に胸を突かれたりする。あの祈りのような呪文、耳を澄ますと「メルクリウス、ウェヌス、テル(ス)マル(ス)ユピテルサトゥルヌス、ウラヌス、ネプトゥヌス」と聞こえた。ラテン語で水星から海王星まで順番に。
 アンコール、おとぎ話にエッセンスをもらってできたという「エスケープ」は確かにバンドサウンドでもいけそうなアップテンポ(青葉さん比)な曲。《月に梯子を掛けたなら後は登るだけさ》ってひたむきさが可愛らしくもあり、切実でもあり。新境地、素敵だった。最後は待っていた「ひかりのふるさと」で締め。きらきら、今日もとてもきれいだった。音だけでなく、世界をきれいに見せてくれる。ありがとう。

 来年は制作に入るので「邪魔しないでください。笑」と言われ、繭をつくる蚕を見送るような気持ちになる。その前に、12/23の現美! 展示もライブもすごく楽しみだ。

■セットリストとMCメモ
01. 不和リン
02. 腸髪のサーカス
03. ココロノセカイ
 「弾き語りを始めた最初の頃、まだ曲が4、5曲しかなかった頃は、いつもこの3曲で始めていました。初心を忘れないようにと思って、今日はこの3曲から始めました」
04. 光蜥蜴
05. 日時計
06. 遠いあこがれ(白鳥英美子カバー)
07. 繙く風
---
08. レースのむこう
 「次は、訳ありな曲をやります。一度ボツにした曲です。今日はやるつもりはなかったんですけど、おとぎ話のドラムの人にやれやれって言われて。苦情は彼にお願いします。笑」
09. イソフラ区ボンソワール物語
 「やらなきゃ良かった。笑」
10. IMPERIAL SMOKE TOWN
11. だれかの世界
12. MARS 2027
13. 私の盗人 「22歳が精一杯背伸びした曲です」
14. 機械仕掛乃宇宙(山田庵巳カバー)
 「楽譜がないので、あってもわたしも読めないので、口伝えで覚えました。わたしはこの曲をコピーしたいがために、ギターを始めたようなものです。原点、ですね」
15. 奇跡はいつでも
 「レイ・ハラカミさんが亡くなった時にできた曲です」
---
EN.
01. エスケープ
02. ひかりのふるさと

No comments

Post a Comment

© nmnmdr blog.
Maira Gall