June 28, 2012

青葉市子 独奏会 @ 原宿VACANT

 VACANTで半年続けてきた独奏会はこれで一区切りだそうで、満員御礼。
 会場の使い方が縦長→横長となり、青葉さんとの距離が全体的に近くなる。友達の家に来たような、それでいてふしぎな集会に参加しているような雰囲気は変わらず。
 夏の少女的な出で立ちで登場。チャコールグレイのワンピースに足元はショートブーツ、ギターの栗色がよく映える。腰に水色花柄のスカーフがおしゃれさん。ストローハット(と呼ぶべきおしゃれ感)を脱いで傍らの机にディスプレイ。机には青いラインの入った白のテーブルクロスが掛けられ、ガラスの瓶に向日葵が数本飾られている。

 忙しない東京での毎日で、置き忘れたものをひとつひとつ手繰るように耳を澄ましていた。そんな感覚をくれる稀有な人。東京で歌っていてくれて本当にありがとう。

 始まりは「不和リン」「腸髪のサーカス」、salyu×salyuのイベントで一気に引き込まれた曲達が立て続けに。「日時計」の相変わらずのぐるぐる感や大貫妙子「夏色の服」のカバーもすごく良い。大貫さんと青葉さんが合わないはずもなく。そして季節を大切にした諸々の演出のお陰でとても居心地良い。
 15分くらいの休憩を挟み、二部開始。これがすごかった。
 「おもいでカフェ」はもう大好きな曲。小さなグラスの水面がひたひたになるくらいの幸せ感。
 続く「ソウル」がすごい。「小池アミイゴさんの個展に行ったんです。アミイゴさんのお子さんの、ソウルくんって子がいて。色々喋りかけてくれるんですね。でも、ソウルくんはまだ2歳なんです。だからまだ言葉になっていない、音の粒たち。それを、なになに?って聞いて、メモして、持って帰って、曲を付けました」。詞と音の絡み方が面白い。「パーパ、マーマ」「いやいや」なんて聞こえるところもありつつ、基本は意味を持たない音の繋がりで、だけど音に乗るとめまぐるしく一瞬一瞬生きているこどもの様子が見えてきてすごく楽しい。最後「ダッ!」で終わり、ギターかき鳴らして締めた後「ふふっ」て思わず笑みを零した青葉さん可愛い。何て自由に曲をつくる人なんだろうかと改めて思い、次に生まれる曲がまた楽しみになった。
 1年と3ヵ月過ぎても予断を許さない状況下、「原子力発電所が主人公の歌です」との紹介で演奏される「IMPERIAL SMOKE TOWN」は何も終わっていないと訴えているようで、会場が緊張に満ちる。本当なら、いつかこの曲が歌われなくなる日が来ると良い。けれどそれは途方もなく先だろうから、やっぱりずっと歌っていてほしいと思う。
 その緊張感からの次がもの凄かった。「ちょっと封印していた曲をやります。『機械仕掛乃宇宙』という曲です。わたしが弾き語りを始めるきっかけになった曲で、またやろうって思わせてくれたのは、この独奏会です。この曲をつくられた山田庵巳さんに、尊敬と、感謝を」。太陽のない街というディストピアで生きる「僕」の、ひとつの物語。10分くらいであれだけ物語る曲自体の凄さ。その独特な世界観を持つ曲を取り込んで演奏し切る青葉さんの凄さ。堪らなく濃密な時間で、客の拍手も一際大きく、長く続いた。これは封印もするだろうってくらい大きな曲。凄いひと時に立ち会った。やっぱり青葉さんの歌を聴くと、ひとつの物語を読み終えたような気持ちになる。
 本編終わりは「奇跡はいつでも」、アンコールで「ひかりのふるさと」。きらきらとひかりを残して幕を閉じた。

 MCで「独奏会を続けてきて、打ちのめされたことも、褒められたこともありました。……何だか、卒業式みたいだな。ふふ」と話していた。迷いなく進んでいるように見える彼女にも打ちのめされるようなことがあるんだなと思う。満員のVACANTで皆が聴き入っている、あのあたたかさを信じてみてほしいと願う。見守るよ。
 終演後、11月の独奏会ファイナル@自由学園のチケットがいち早く販売されていて、長蛇の列に思わず笑った。5ヵ月も先なのに脅威のリピート率。またこの日になくしたものは取り返せるから、それまで生きてみてもいいんじゃないか、なんてチケットを手にしておもった。ありがとう。


■セットリスト
01. 不和リン
02. 腸髪のサーカス
03. レースのむこう
04. 日時計
05. 夏色の服(大貫妙子カバー)
06. 路標
---
07. おもいでカフェ
08. ソウル
09. パッチワーク
10. IMPERIAL SMOKE TOWN
11. 機械仕掛乃宇宙(山田庵巳カバー)
12. 奇跡はいつでも
---
EN. ひかりのふるさと

♪「レースのむこう」

No comments

Post a Comment

© nmnmdr blog.
Maira Gall