January 21, 2012

HIMEHAZIME @ 赤坂BLITZ

 冷たい雨の夜。仕事を終え、だめだ間に合わない……と諦めつつタクシーで直行。
 老年の運転手に「ロックって何です? 忌野清志郎さんなんかそうでしょ? でも若い人で化粧して髪がわあっとなったようなのも、そうなんでしょ?」と問われ、「ギターとドラムとベースが鳴ってたらそうなんですかね? 今日行くのは、見た目はその辺の若者ですよ」と答えた。正しいのか、どれほど伝わったのか、某ギタボの外見を「その辺の若者」と評して良かったのかは、解らない。

 ともあれ、彼のおかげで一曲目の終わりに滑り込めた。残響歌ものバンドツーマン。


■People In The Box
 大きな舞台で観るピープルが好きだ。群衆を音楽で従えた煽動者のよう。
 入ったら「旧市街」終盤。第一印象は、あれ、こんなに格好良かった?だった。場の空気も音もやたら格好良い。昨日の一言「ピープルのライブに来て下さい。これ(ソロ)より何倍も格好良いからね」に洗脳された?(まさか) 残響祭以来の感覚。対バンの空気のせいか。
 見よこれがピープルだ!と9mmファンに訴えるような直球セトリ。旧市街初聴の人は唖然としただろうし、続くのが「市民」と来た。終盤「完璧な庭」→「天使の胃袋」→「ペーパートリップ」の盛り上げ感すごい。その中で新譜から二曲初披露されたり「木曜日 / 寝室」(feat. ミラーボールの照明)が良いスパイスになっていたり。
 「沈黙」説得力がすごかった。ピープルでそう感じたのは初めてかもしれない。音源はどうしてもアーティストと距離があるけれど、目の前であの帰結を歌われるとずんと心に入ってくる。「技法」もそう。『Citizen Soul』がリアルに、立体的に迫ってくる感覚が楽しい。ツアーに期待が高まる。
 毎回書いているがやっぱり「笛吹き男」は特別好き。波多野MCで「結構……いい曲なんです。だから、皆もきっと気に入ってくれると思うんですけど」と紹介されたのがまた、嬉しかった。本当にいい曲。
 「天使の胃袋」、《ふたりはいつでも泣かない子供》→《僕らはいつでも泣かない子供》になっていた。多分。あまり歌詞変えてこないと思っていたので新鮮。
 久々の「ヨーロッパ」締め。以前の衝動がやや失われた代わりに、観客に届ける感が強まっていたように感じた。正に毒のようにじわじわ効いてくる演奏。
 今年のピープルはシティズンの後に何が来るのか。本当に楽しみにしている。

●セットリスト
01. 旧市街
02. 市民
03. レントゲン
04. 沈黙
05. 技法
06. ニムロッド
07. 木曜日 / 寝室
08. レテビーチ
09. 笛吹き男
10. 完璧な庭
11. 天使の胃袋
12. ペーパートリップ
13. ヨーロッパ


■9mm Parabellum Bullet
 初見。圧倒的。考える隙を与えず、音で攻める攻める攻める。最早非現実的なほど音に嘘がなくて、そりゃ愛されるわ、と思った。でもマシンガンの権威的な暴力じゃなく、独立した個々が闘っている感はやはりパラベラム弾。わかりづらい。個人の感想です!
 評判のドラムス(素人目にも解るくらいセットがすごかった)に注目したかったけれど、後方にいたせいかギターに埋もれてしまいよく聴けず。そのギターは音も動きも大変なことに。楔のようにマイクに固定されたギタボの周りで、楽器隊がリミッターなしで好き勝手やっている様が面白い。それでいて同じゴールに向かっているから、個でありながらまとまって爆発的なエネルギーになる。
 ギタボの人、MCの度にピープルピープル言ってくれた。直感的で面白い。「ピープルの迷宮のような美しい演奏のトンネルを抜けると……そこにいたのは俺達でした」「ピープルみたいなプログレッシブな、本当の意味でプログレッシブなバンド」「People In The Boxは箱の中の人々、つまり、皆さんのことです。9mm Parabellum Bulletは……よく解りません(会場笑)」。最後の、さらっと言われてびっくり。

 (9mmについては波多野さん「僕は9mm Parabellum Bulletが大好きです。同じ事務所だけど、そういうこと一切関係なく、好きです」と。あと「(銀色のアンプが)卓郎君のお下がりなんです。だから上に“9mm Parabellum Bullet”って書いてある」!)


 ピープル《あの太陽が偽物だってどうして誰も気付かないんだろう》と9mm《生まれたばかりの太陽の下に 君を連れて行くのさ》が同じ夜に聴けて嬉しかった。客の楽しませ方は全然違うけれど、音を鳴らす理由は両者よく似ているのかもしれない。是非また。

2 comments

  1. アズさん、
     返信が遅くなってしまってすみません。
     ご縁がありとても嬉しいです。コメントありがとうございます!
     そして、9mmのファンの方がピープルに衝撃を受けたと知って、同じく嬉しく思います。
     >CD音源だけでは伝わらない生の良さというのがライブという舞台にはあって
     本当にそうですね。どんなミュージシャンも勿論そうだとは思いますが、最近のピープルは特にCDとライブの違いに自覚的な気がします。ご覧の通り演奏の質は安定して高いので、いつどの楽器に注目しても楽しめます。ドラムスも、かみじょうさんやピエールとは違ったタイプで、個人的には大好きなんです。3人それぞれに良さがあって、ライブに行く度に新しい魅力が見つかるのが楽しくて仕方ありません。ふふ。
     >餌の時間になると帰ってくる犬
     それこそ的確ですね。笑
     巷では妖精さんだそうですが、あの日は音楽に飼い慣らされた狩猟犬に見えました。何かものすごいことになっている!というのは解ったのですが、圧倒されて半ば呆然と観ていたので、次は個々の音をもっと楽しみたいなと思います。
     時雨や残響のライブでまたご一緒するかもしれませんね。
     こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。

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  2. 川崎クラブチッタの時雨ライブのレポートにコメントさせて頂いた者です。
    HIMEHAZIME、私も見に行きました。
    まさかまたご一緒することになるとは思っていなくて、びっくりです。
    >見よこれがピープルだ!と9mmファンに訴えるような
    私は9mmファンとしてこのライブを見に行ったのですが、まさに仰るとおりで、ピープルの演奏にはただただ圧倒されるばかりでした。
    CD音源だけでは伝わらない生の良さというのがライブという舞台にはあって、それを肌で感じさせられた一夜でした。
    『旧市街』の攻めのベースフレーズは非常にかっこよかったです。
    波多野さんの鬼気迫るようなトレモロのかき鳴らし方も、刺激的でした。
    >楔のようにマイクに固定されたギタボの周りで、楽器隊がリミッターなしで好き勝手やっている様が面白い
    的確な表現ですね(笑)
    私としては、ギタリストの滝さんが、暴れ回りつつもコーラスの際には律儀にマイク前に戻ってくる、餌の時間になると帰ってくる犬のような様が好きです。
    ピープルのライブを初めて目にして、強い衝撃を受けましたが、ピープルのファンの方が9mmのライブを目にして、同じように衝撃を受けたという意見が聞けたことを、一ファンとして嬉しく思います。
    またどこかでご一緒する機会があれば、よろしくお願いします。

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Maira Gall