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May 31, 2014

空から降ってくる vol.7 ~空想する春のマシン~ @ 中野サンプラザ

 夏の気配に満ち満ちた5月最後の日、四度目の中野、ツアーファイナル。「ピープル中野」と書くと某ドラマーと字面が似ていて嬉しい。とかはどうでもいい。
 何度観ても、ああいいバンドだな、と思ってしまう。生命そのもののようにあたたかく、あやうく、奇跡的で、いとおしい。ステージの背景に白い布が巻かれた枝木のようなオブジェがあって、様々な色の照明を受けるそれはそのまま生命が寄り集まる木のようでもあり、本編最後の曲では白骨のようにも見えた。生と死の両方を抱えて鳴らされる音をただただあいしている。それは久しぶりに観ても変わらなくて、一度好きになったいのちからそうそう離れられるものではないなと思った。

 アンコールMCで波多野さん「中野はホームのつもりだけど、ライブハウスを回って積み上げてきたものとはまた別物になってしまう。ファイナルだけど、フレッシュな気持ち」みたいなことを言っていて頷く。今年は最早心構えができていたから、中野は中野として楽しんだ。個人的にはパッケージングされたパフォーマンスを外から眺めている感覚になる。from out of the boxといえば悪くなさそうなのだけど、到達地としてのファイナルとはちょっと違う。
 そしてそれよりも彼らは客に音楽と一体になってほしいのかなと思う。個々のテリトリーに配慮するように静かな見方をするピープルの客に、決して単純ではない曲構成、変拍子の攻勢の中で隙あらば手拍子を促すことが増えている。アートも絵画も小説も観客を作品の内へ取り込もうと散々試みているし、音楽だってそれは当然のことなんだろう。「完璧な庭」は好きなドラムのフレーズが手拍子の煽りで飛んでしまって勿体ないけれど、「金曜日 / 集中治療室」のホイッスル前は好きだ。
 そんなこんなのピープル中野、やはりというべきか、WR含めた新曲のエネルギーが強くなっていた。「潜水」の重たさは聴く毎に増していくし、ツアータイトルにもなった「気球」は今日が一番心を掴まれた。《それはただのながい幼年期みたい》の心地良さすごい。アンコールの「開拓地」もアウトロの盛り上がり含めてご機嫌で良かったし、WRの曲をもっと聴きたかった感は否めない。
 新曲3曲も堂々たるものだった(エンドロールで曲名が判ったのでセトリに)。3曲目のポップさがやっぱり好きだ。前衛の浸み込んだポップス、こんなところに辿り着いたんだな感。曲名「おいでよ」とか本当に音への一体化を誘っているとしか。
 それでも、何より本編最後が凄まじくて、全てはここに集束するんだと思った。「球体」アウトロの轟音の渦から現れる「鍵盤のない、」冒頭のハーモニクスはそれだけで涙腺とか境界線とか世界線とかを決壊させる。あるいは、決壊した後に鳴っているただひとつの音のような気がしてくる。そこにリズム隊が意を決したように入ってきて、ボーカルがゆっくりと立ち上がっていく様がもう。……何だろうかこの曲の密度、凄まじさ。《死を叫ぼう》本当に叫ぶように、高らかに歌い上げていたのが印象的。死を踏みしめながら生に飛び込む音の洪水のような「鍵盤のない、」アウトロ、から鍵盤が(!)加わっての「JFK空港」。《夢は見ない》からの《君はいま次の夢を見ようとしている》。
 キーボードが静かな悲鳴のように鳴る中で、安定した血流みたいなベースと落ち着いた心拍のようなドラムがボーカルというからだを支える。波多野ソロのJFKも大好きだけど、この安寧と、それゆえに際立つやるせなさはバンドならでは。巻き起こる音の渦に塗り潰されそうになりながら紡がれるポエトリーリーディング、どうしようもなく刺さる。《美しいものは巧妙にカモフラージュされている》! いつだって詞の底に切実さが流れている。中でもこの曲は特別に。
 金沢、中野と久しぶりに観て一番変化を感じたのはボーカルだった。サポートギターを入れたAMツアーを経て、着実に安定感が上がっていて驚く。ピープルの唯一の弱さが乗り越えられてしまったら無敵になりそうでおそろしい。楽しみなおそろしさなので、どんどん強くなればいいと思う。JFKの訴求力がFRツアーより格段に大きかったのも、空から降ってくる風景をいとおしいと思えたのも、強くなった証だろう。パフォーマンスの素晴らしさに加えて、進化を続ける彼らへの(ベースもドラムスも勿論!!)敬愛の気持ちも大きくなって、心からの拍手を送った。

 ファイナル恒例のエンドロールには音楽が乗っておらず、「ヨーロッパ」の余韻ばかりがあった。静かな静かな終幕……と思いきや、♪ピンポンパンポ~ンとかいうチャラい音と共に黄色い文字「People In The Boxからの重要なお知らせ」が現れたかと思えば「カメラ、動画の準備をしてください」みたいな指示が出て、客が一斉にカバンを探る事案発生。3、2、1、という映画みたいなカウントダウンに続けてダイゴマンの写真! とかいう小ボケをちょいちょい挟みつつ、新しいアルバムのリリース、同時リリースのシングルの初アニメタイアップが発表された。おめでとう。もっともっと広がって、世界に滲み渡っていけばいいよ。


▲「大吾3歳」の写真を捉える人々

 ダイゴマンのMC「今年のPeople In The Boxには期待していいよ」に、期待はかるく大気圏を突破しているけれどどうしたらいいのかと首を傾げつつ、とにかく彼らのやることなら見守っていればいいと考え直して拍手を送る。
 同じこの日SHIBUYA-AXが営業終了したと聞いて、真っ先に4年前にAXで聞いた波多野さんの「People In The Boxは君たちを裏切らないから」を思い出した。あの時の胸騒ぎは今も本当であり続けている。いつまで続くのか、という不安は最早なくて、ただ本当である今が堪らなく嬉しい。


「そこは、おまえがこれまでになんどもかすかに聞きつけていたあの音楽の出てくるところだ。でもこんどは、おまえもその音楽にくわわる。おまえじしんがひとつの音になるのだよ。」

- ミヒャエル・エンデ『モモ』大島かおり訳より



■セットリスト
01. ストックホルム
02. 時計回りの人々
03. 潜水
04. はじまりの国
05. 市民
06. 金曜日 / 集中治療室
07. 冷血と作法
08. もう大丈夫(新曲)
09. さまよう(新曲)
10. おいでよ(新曲)
11. ブリキの夜明け(キーボードアレンジ)
12. マルタ(キーボードアレンジ)
13. 気球
14. 八月
15. ニムロッド
16. 完璧な庭
17. 球体
18. 鍵盤のない、
19. JFK空港(キーボードアレンジ)

EN1
20. ダンス、ダンス、ダンス
21. 開拓地
22. 旧市街

EN2
23. ヨーロッパ

May 17, 2014

空から降ってくる vol.7 ~空想する春のマシン~ @ 金沢vanvanV4

 1月のワンマン以来久しぶりに、緑鮮やかな初夏の金沢で彼らの音を聴いた。今更少しくらい離れたところで、脳にも骨身にも染み渡った音への思いはそうそう変わるものではなかった。変わったところも変わらないところも全てが好きだと思った。まだまだ彼らを観ていたい。


▲ライブ前、タレルの部屋から

 解りやすい変化は、いくつかの曲で波多野さんがキーボードを担当したこと(またしても時雨との共通点が増えた)。既存曲では「ブリキの夜明け」「マルタ」、水分多めのミドルテンポさによく合っていた。ひとつどうしようもないことを言えば、あのキーボードの音自体に違和感があり続けた。諸々試した上での音なのだろうけれど、もう少しボーカルに寄せた透明感か、逆にメカニックな方向にずらすか、何かを加えればもっとバンドに調和しそうな気がする。
 ダイゴマン「金沢だけ特別に新曲をやります!」福井さん「うそうそ(笑)、他でもやってる。でも他は2曲だけど、金沢では3曲やります」ダイゴマン「いやいや、全会場3曲やってるんですけどね!」みたいなMCに弄ばれつつ、新曲群へ突入。1曲目はキーボードソロで《知っているよ、知っているよ、君は今大丈夫じゃない》みたいな始まり方をしつつ、リズム隊が徐々に加わりサビで《もう大丈夫》が繰り返される。そんな言葉に簡単に乗っかりたくはない天邪鬼さが、ゆるゆるとテンションを上げるボレロのような展開とジャジーなリズムに溶かされていく。好きです、はいはい好きです、となぜか切れ気味に聴いた。いつか素直に楽しめるのか。
 2曲目は何となくFQを思わせる。曲調もありつつ、少年少女が久々に詞に登場したからかもしれない。3曲の中では一番印象が薄い。
 3曲目が一番解りやすくて好きだったかな。アップテンポの明るいサビで波多野さんの《ぼくは幽霊 そばにいてよ》をリズム隊のコーラス《ぼくは幽霊 そばにいたいよ》(と聞こえた)が追い追われる。たまに顔を出す不穏なメロディーが堪らなくピープル。幽霊=GAを思わせる。ピープルの全体は、散りばめられた様々な時間軸の曲のピースから成り立つようになるのかもしれない、と時々思う。
 本編ラストにどうしても触れずにはいられないのだけど、「鍵盤のない、」からキーボードアレンジの「JFK空港」とか、客全員の顎が外れたんじゃないか。死が生に溶け込んで、生が死に昇華する、生々しいループがJFKラストのフレーズに回収される。生も死ものみこんだ救いだけがその場に残り、これまでの曲が走馬灯のように思えた。アンコールの拍手は産道かと。

 夢想はさておき、安定したアンコールにほっとする。好きになる一方の「開拓地」、聴けて嬉しい。ごきげんいかが、と問われる頃には楽しくリズムに乗れていた。ラスト「旧市街」には、またお前か!と思わないではなかったけれど、いざ始まると大好きだった。会場が一番乗っていたのがこの縦横無尽に展開する曲なのはさすがピープル。カオスでポップなメメント・モリ、最高に心地良かった。

■セットリスト
01. ベルリン
02. 完璧な庭
03. 潜水
04. はじまりの国
05. 市民
06. 金曜日 / 集中治療室
07. 冷血と作法
08. 新曲《もう大丈夫》
09. 新曲《少女は街をさまよう》
10. 新曲《ぼくは幽霊》
11. ブリキの夜明け(キーボードアレンジ)
12. マルタ(キーボードアレンジ)
13. 気球
14. 八月
15. ニムロッド
16. ストックホルム
17. 球体
18. 鍵盤のない、
19. JFK空港(キーボードアレンジ)

EN
20. ダンス、ダンス、ダンス
21. 開拓地
22. 旧市街

March 29, 2013

『Ave Materia』release tour @ 大阪BIG CAT

 7分咲きほどの桜を京都や大阪城で楽しんだり、たこ焼きつついたりグリコさんひやかしたりと、一泊二日の旅でベタな観光客と化す。地元やのに。
 地元で初めて観る好きなバンドのライブは、ほんまにすばらしかった! マイベストNGO劇場編を上回るくらい最高やった。色々な要素があってそう感じたんやけど、何よりも、ピープルの音楽は自分の根幹に絡み付いて、それをダイレクトに揺るがし得るものなんやって再認した。びっくりするわ。ありがとう!!!


▲右については後述

 東京言葉に戻してみる。

 一昨々日その素晴らしさに打ちのめされたダイゴマンを観たい!と思い上手側へ。今ツアー初めてドラムの近くで体験して、AMにまだまだ知らない表情があることを思い知る。今日は本当に楽しかった。前回の盛岡であれだけ落ちたのに。ピープルは聴く時々で受け止め方がすっかり変わってしまう。
 「みんな春を売った」さえ体が揺れるほど。今までのように怖くなかったのはドラムの音がすぐ近くにあったからだろうと思う。華奢な人だけど、放たれる音は寄り掛かれる大樹のように思えることがある。
 「さよならさ」って一緒に唇に乗せてみると、ふっと体が軽くなった。「さようなら、こんにちは」に繋がっているんだと今更思う。多分個人的にはトラウマ的な曲であり続けるけれど、今日初めて目を合わせることができた気がした。これからだ。
 ドラムに話を戻すと、「ストックホルム」こんなに格好良いパターン叩いてたんだ!とか、これも今更。ピープルの曲は何度聴いても新しい発見があって楽しい。

 ずっと楽しくて、本編でほとんど燃え尽きていたのに、アンコールの最後に「汽笛」が来た。照井さんも一緒に、AMを経ての汽笛! 歌詞の一言一句がダイレクトに入ってくる感覚、CSツアーを超えていた。波多野ソロくらい言葉が強かった。AMがあるからCSや過去作のメッセージも強くなったんだと感じる。ピープルの詞はすごく好きだけど、最初から最後まで言葉のひとつひとつに揺らされるなんて体験は初めてだ。こんなにも素晴らしいライブの最後に《欠けたこころにつかまって / わずかな君を取り留めたよ》とか、泣くしかない。
 そんなこんなで、詞に根底をぐらぐら揺らされていて、折角の照井さんとのツインギターにあまり耳が傾かなかった。それでもあの声だけになるパート、4人のコーラスが一層うつくしかったのは覚えている。色々な意味でまた聴きたい。
 何となくやってくれる気がしていたダブルアンコール、曲は「ヨーロッパ」、3人で演奏。汽笛で散々揺らされた後の《君の胸騒ぎが本当になるといいな》しんだ。少し大人びて変質しても、ヨーロッパの強度は変わらない。
 終演直後の自分のツイートが生々しい。120分の魔法だった。少しずつ薄れていくんだろうけれど、消えることはない気がする。傷跡みたいな残り方をしている。

 「気合い入っとるけん!」という波多野さんの宣言で始まったこの日、彼らにとっては昨年12月の胞子拡散祭@梅田のリベンジのようだった(後述)。自分にとっては、FRツアーBIG CAT公演のリベンジだった。震災の混乱に揉まれて中止になったあの日、2011年3月12日のことを思い出したりした。そんな諸々が重なった「ヨーロッパ」のアウトロがとどめになった。しんだり生きたいと思ったりいそがしい。


爆弾の音が聞こえたとき
きみはもうひとりではない

辺りにはもう誰もいないけれど
きみはもうひとりではない

『Ave Materia』の演奏旅行が街にやってくる
きみだけはもう、ひとりではない


- オープニングの詞より



■セットリスト
01. 時計回りの人々
02. 市場
03. 球体
04. 割礼
05. ダンス、ダンス、ダンス
06. みんな春を売った
07. 物質的胎児
08. ブリキの夜明け
09. 八月
10. 失業クイーン
11. ストックホルム
12. 旧市街
13. 序
14. 金曜日 / 集中治療室
15. ニムロッド
16. さようなら、こんにちは

EN.
01. 市民
02. 完璧な庭
03. 汽笛

EN-2.
ヨーロッパ


■MC
・序
だ「健太がスネアを練習しました!」
ふ(ドラムスティック掲げる)
(会場拍手!)
だ「この日のためと言っても過言ではございません!」
ふ「過言ではないですね~」
だ「『序』のため、いや大阪のためと言っても! 過言ではございません!」
ふ「過言ではないですね~!」
(客爆笑)
ふ「だから、皆さんもウォウウォウ言ってくださいね」
は「いけるかー!って(笑)」※9mm定番の煽り
だ「何か聞いたことあるなあ(笑)」
は「いけるのか大阪ー!」
客「「…………おおー!」」
は「この空気ね、嫌いじゃない(笑)」

・グッズ紹介
だ「さあ、このエコバッグに何を入れていますか?!」
は「あのー、名前が出てこない、眼鏡かけた人……」
だ「?」
は「太鼓持った、」
だ「俺ですかぁ?!」
(会場爆笑)
客「くいだおれ太郎?」
は「ああ、そう、くいだおれ!」
だ「ああー! 俺かと思いましたね! 眼鏡で太鼓持って。俺普段眼鏡だから(笑)」
(会場笑)
だ「(客に)あれくいだおれ太郎っていうの?」
(客頷く)
だ「ふうん。くいだおれ太郎か山口大吾か! みたいなね!」

・胞子拡散祭
ふ「大阪は、前回のライブが、ね。ちょっと」
は「そうだね……あの伝説のライブ(笑)。あの時来てた人、いますか?」
(フロア、7割ほど手が挙がる)
ふ&だ「おおー」
は「あ、良かったー。嬉しい。本当に嬉しいです、ありがとうございます!」
(客拍手)
は「来てなかった人のために説明すると、俺の声が出なかったんだよね。風邪で。……アノコハッ」※ニムロッド冒頭、ひそひそ声で再現
ふ「僕のコーラスがメインボーカルみたいな(笑)」
は「[対バンの]THE NOVEMBERSの小林くんがアンコールで『はじまりの国』を歌ってくれてね」
だ「あのライブは忘れられないね」
は「ほんとに。多分俺、大阪来る度に思い出すと思う(笑)」

March 26, 2013

J-WAVE「THE KINGS PLACE」LIVE vol.2 @ 新木場STUDIO COAST

 KPナビゲーターが集まってのライブ第二弾。COAST好きだ。

■androp
 初見。あくまでも個人的に、プラスチックみたいだと思った。予め用意された台本に則って進行する、額縁の向こうの劇のような。フロアで跳ねている人達にはきっと全然違う風に受け取られているんだろう。という意味で新鮮だった。


■People In The Box
 照井さんを加えたAM編成。4人では今までで一番大きなハコ? とはいえ、配置もメンバー間の距離も変わりなし。違ったのは、客層と、照明がより映えていたことと、ドラムセットが(多分転換の都合で)高さ50cmくらいの台に乗せられていたこと。
 何よりも、山口大吾のうつくしさ! これに尽きた。散々書いているし、ライブの度に思っているけれど、改めてはっとした。生命そのもの。しなやかさで躍動感溢れるドラミングに両性併せ持つ音。比類なきアーティスト。ピープル以外にも、もっと色々な人とシチュエーションで観てみたい。
 客層がいかにも邦楽ロック的で新鮮。一曲目「旧市街」のイントロから最前辺りの一部でいくつも腕が上がっていて、この人達はどうなるのかと眺めていたら、時々棒立ちになりつつも基本的にサビでは腕を上げて乗り続けていた。バンドへの親愛の意思表示なんだろうと思うといとおしい。《空をかえせ》デモのようだった。
 攻めの6曲。「ニムロッド」締めで波多野さんがドラムの台に乗って、一拍ブレイクの後にダイゴマンと音を放つ、その光景が本当にきれいだった。締め方にバリエーションがあると良いなといつも思うけれど、時々こういう瞬間が見られるのは嬉しい。
 ダイゴマンMC、客のノリの良さがうまく作用して、一際輝いていた。楽しかった!

●1. 旧市街 2. 球体 3. ダンス、ダンス、ダンス 4. 市民 5. 完璧な庭 6. ニムロッド


■クリープハイプ
 やっぱりボーカルが素晴らしい。生まれたばかりのみどり児のような、人に訴えて惹き寄せる声。苦しみにも悲しみにも喜びにも嘘がなくて、直球でぐさぐさ刺さる。かと思えば演じ方も巧い。演じる=嘘ではなく、本当を伝えるための演技なのだろうとこの人については思う。何かの曲の最後、音が徐々にディミニュエンドしていって遂に途切れた時、ちいさく「ありがと」と呟いたのには痺れた。やるな。
 バンドの演奏がそのボーカルから剥がれていないのはきっとすごいことなんだろう。巻き上がる風に自ら乗って音が舞い踊るイメージ。風が進み続けるのを後押ししたりもするし、時にボーカルを包む緩衝材のようでもある。
 結構好きなんだけど、どう聴くべきかまだ解っていない。ダイバー多いから前方は厳しいし、ワンマンもためらわれる。またいつかの対バンを楽しみにしていようかな。


■Nothing's Carved In Stone
 3度目のナッシングス、今日が一番楽しかった! こうして数組の対バンで聴くと彼らの音の重厚さが際立つ。ボーカルのMCが正直合わないと思っていたけど、今日は少しやさしく感じたり。耳馴染みのある曲が少しずつ増えてきたり。
 Everything's carved in our memory! と言い切るにはあまりにも記憶力が頼りないけれど、そう思いたいくらい楽しいライブだった。また、きっと。

March 20, 2013

『Ave Materia』release tour @ 盛岡Club Change

 ふらりと当日券で盛岡へ。去年も春分の日はこんなだった。
 岩手県美に「アートフェスタいわて2012」を観に行った。素朴な花の絵も、避難所の写真も、様々な海の表現も、ひとつひとつ体に響いた。アートから溢れる沢山の主張を取り込んで、余韻の渦に巻き込まれたまま、ぼんやり駅から40分歩いてハコに着く。


▲券面手書き!

 会場の形が何だか歪で面白い。フロアを上から見ると )) ←こんな?なのか、右上と左中程にスピーカーがあり、上がステージ、右下にドリンクカウンター。キャパ小さくてステージが近い上にスピーカーも近くて、音がいつもより傍にあった。

 照井さん加入してはどうか?くらいの感じになってきた。だけどそうなるとハイスイも聞きたいので困る。勝手なシミュレーションで困る。
 メンバーとはまた違うダイナミズム。彼のいない「物質的胎児」や「八月」などなど、を考える方が難しくなっている。AM以外でも「市民」とか「金曜日 / 集中治療室」とか、ツインギターいいな、と思うことも多い。MCを徐々に侵食してきている感じもとてもいい(後述)。
 そして、これほど変化してもピープルはピープルのままだ。雪の結晶を連想した。街のあちこちで溶け残った白を見たからかもしれない。




 個人の感想を連ねます。と、前置きして書きます。

 AMは半端なく重たいアルバムで、それは聴き始めた時からずっとそうだったけれど、どんどん度合いを増してきて、今日が一番重たかった。ほとんど苦行。なのに聴かずにはいられない。
 《空がおちてきたところで / 指くわえ みているだけさ》と言われたら、空に潰されるならいいなあと思い、《土足厳禁の庭で息をとめるのかい?》と問われたら、そうだよと答える。そういう反応をしたのが今日だった。
 「みんな春を売った」今までより更につらかった(つらい、という言葉をとても久しぶりに使う)。「物質的胎児」で生まれようとするいのちを前に、聴きに来てごめんなさい、と思う。このうつくしい空間に立ち会うことをひどく場違いだと感じた。
 「火曜日 / 空室」くらいから持ち直して、「序」の楽しさを通って、「ニムロッド」も重たい曲だと思うけれど、《あなたの絶望で空が晴れ渡るよ》に辿り着くと少しほっとした。バタイユ。

 AMで飛び抜けて再生回数の多い「物質的胎児」は、期待値が高いこともあってか、ライブだと一番難しい曲。それでも「みんな春を売った」という衝撃のクッションになり得る曲は他に浮かばない。
 《あんぜんなみどりむし》と並んで《いるか すべりこんだ》が好きだ。ドルフィン=デルフォイ→音楽の神アポロンの連想と、イルカは自殺する動物だという昔聞いた話とが、曲とないまぜになる。胎児に音楽と死がもたらされた一節。そこで生が始まる。生も物質だと個人的には思う。"Ave Materia"は、発売前の勝手な予想とは全然違ったけれど、変わらず祝福のように響く。
 AMは、ピープルは、「生きろ」とか「死ぬな」とかいう直球を投げない。そのすれすれのところを進んでいるんだろうとライブでは思う。選択を、あるいは選択のための熟考を、オーディエンスに促す。だから死を選ぶ余地も残されてはいる。その僅かなスペースで息をするように、観ていた。ステージのうつくしさが遠かった。



絶望のさなかにあってぼくは幸福だった。

- ジョルジュ・バタイユ『青空』天沢退二郎訳より



 混乱したまま書いたらひどいことになった気がする。正気に戻ったら消そうかな。
 彼らのパフォーマンスはいつもながらに素晴らしかったことを強調して、締めます。MCが冴えていたので下に。


■セットリスト
01. 時計回りの人々
02. 市場
03. 球体
04. 割礼
05. ダンス、ダンス、ダンス
06. みんな春を売った
07. 物質的胎児
08. ブリキの夜明け
09. 八月
10. 完璧な庭
11. 火曜日 / 空室
12. ストックホルム
13. 序
14. 金曜日 / 集中治療室
15. ニムロッド
16. さようなら、こんにちは

EN.
01. 市民
02. はじまりの国
03. 旧市街


■MC
・グレイ
だ「サポートギター、ハイスイノナサ照井順政!」
客(拍手!)
ふ(照井さんの左腕を高く掲げる)
客(拍手!)
は(照井さんの右腕を高く掲げる)
だ「ははは! グレイみたい、連れ去られた(笑)」

・UMA
だ「よっちゃんUMAとか詳しいんでしょ?」
て「UMAね、うん」
は「(客に)UMAっていうのは、未確認……生物」
て「(頷く)未確認生物。モンゴリアンデスワームってのがいて」
だ「ほう」
て「敵を見つけるとぴゅって毒を飛ばすの。で、毒が避けられると、電撃を出す」
だ「すげえな!(笑)」
客(笑)
て「こいつがね、一番いる可能性が高いって言われてる」
だ「はははは! えー、そんなモンゴリア……」
て「モンゴリアン、デスワーム」
だ「モンゴリアンデスワーム、を倒すために! 僕たち次の曲を作りました!!」
客(爆笑)
だ「モンゴリアンデスワームを倒すために、健太がスネアを練習しました!!」
客(笑&拍手!)
ふ「『序』のためじゃなく(笑)」
だ「『序』のためじゃなく! あくまでも、モンゴリアンデスワームを倒すために! 俺がスネアを教えました!!」
客(爆笑)

・アンコール
(拍手の中、メンバー再登場)
ふ「今日はやらないの」
は(福井さんの視線に少し応えて、俯いて、笑顔でフロアに向き直る)
は「……アンコールワット、ありがとうございます」
客(笑&拍手)
は「いつからかこうなったんですけど、なんかねー、ひっこみがつかなくて(笑)」
だ「バリエーションがあるといいね」
ふ「そうだね。バリエーション増やせば?」
は「バリエーション……」
だ「うん……」
は「っていっても、アンコール……ワットくらいしかないでしょう?! ははは!」

March 14, 2013

『Ave Materia』release tour @ 金沢AZ

 金沢、変わらずとても居心地の良い街だった。「金沢に来ると、戻ってきたような気持ちになります。ただいま」との波多野MCに、訪問2度目ながら共感を覚える。そのせいなのか、何なのか、和やかなライブだった。


▲AZボトル!(剥がした)

 4回聞いてもポエトリーリーディングの3番目と6番目の文が聞き取れず、もどかしい。波に消されていく砂浜の文字のよう。波に負けずくっきりと記憶に残るあの結句の後、いつものSE("And I'm Singing" by Jim O'Rourke)に繋がっていくの好きだ。何度体験しても、四方八方から色々な形の時計や音に囲まれる立体感堪らない。
 セットリスト、1~9曲目と13~16曲目がほぼ固定になったのかも。間の3曲とアンコールがシャッフル対象。「火曜日 / 空室」のアウトロ、轟音の中から立ち上がる「ストックホルム」が久々に聴けて嬉しい。こういう繋ぎもっと聞いてみたい。

 3曲目が終わった後、最初のMC。「『Ave Materia』というアルバムは……すごい名盤なんだよねー。ほんとこんな名盤ですみません(笑)」波多野さんが楽しそうに語り始める。「どうして名盤かっていうと、これは各地で何でだろう?ってMCしてて気付いたんですけど、すごく踊れるんですよ。踊るっていうのは、今皆さんの心臓がどくんどくんいってるでしょう? あー、この話やめとこうかな? ……皆さんの心臓がどくどく動いてる、それが、踊りです」CSツアーファイナルに通じるダンス話。こういう話が聞けるのはとても嬉しい。
 21世紀美術館で観たばかりのラファエル・ロサノ=ヘメル「パルス・ルーム」と結び付く。心拍が電球の明滅に変換されて、約300個がそれぞれのリズムで瞬く作品。明滅そのものも、壁に映るシルエットも、しゃらしゃら鳴っている音もうつくしく、不思議と居心地の良い部屋。金沢でこのMC聞けて良かった。ありがとう。

 個人的な鬼門「みんな春を売った」さえ、少し優しかった。最後の《いつか君も おとなになるよ》(余談だけどここだけ「君」が漢字なのは意図的なんだろうか)を歌う波多野さんがしゃがんで、それだけでフロアと距離が縮まる。客に言葉を突き刺すような前半の歌い方から変わって、舞台上手、遠くを見ながら歌うような姿も優しく感じた。
 「ブリキの夜明け」ではアンプに乗って歌い始めて驚く。高い。海の果てまで、空の彼方まで、どこでもないところまで、届くといい。《警笛がひとつ鳴り渡る》照井さんの警笛ギターの主張が強くなっていた。いいね。
 「八月」最後の繰り返しの何度目かで、テンポ急上昇。勿論仕掛け人はフレーズを先導するダイゴマンである。「シャン! シャン! シャン!」と速く鳴らされるシンバルを聞いた他のメンバーが、一斉に楽器構え直して姿勢正していて笑う。終わった後、波多野さんが「速え(笑)」と呟く。楽しかった!

 「序」冒頭の素敵なアレンジ、リズム隊がようやく見渡せた。ダイゴマン先導でワンフレーズ叩いた後、ドラムスティックでびしっと指された福井さんのスネア。昨夏劇場編のタンバリンを思い出す。器用で柔軟な人。ダイゴマンと福井さんのスネアダイアローグが何度か続く。びしっと決めて一拍ブレイクを挟み、波多野さんのボーカルとタンバリン、照井さんと客のボーカルと手拍子が加わる。
 盛り上がりが頂点に達したところで「金曜日 / 集中治療室」になだれ込むのいいね。照井ギターが加わって音の渦が更に大きくなっている。踊れ踊れと音が煽る。楽しく聴いていたら、間奏の途中、いつもホイッスルが鳴るところで不意に演奏が途切れた。

 ……
 ♪ パフ!(バラエティ番組のラッパの音)
 客「!?」
 ダ「この続き、いつやるのか……今でしょ!!!」
 客「!!!!!」
 ♪ Aは花を散らーしてー♪

 びっくりした! 最近流行ってるCMらしい。めちゃくちゃな集中治療室では何だって起きる。
 「ニムロッド」から「さようなら、こんにちは」へ繋いで、本編おしまい。"Ave Materia"の意味を、彩りを、何度も考える。
 アンコール、攻めの三曲もキレキレで良かった。「完璧な庭」何度聴いてもどこか新しい。今日は演奏の最後、一拍溜めてジャーンジャカジャカジャカ……ってなるところの溜めがぴしっと決まり、一瞬の残響が深い空洞に響いているようでぞわりとした。1秒にもみたない瞬間が忘れられないこともある。

 3週間ぶりくらいに観たピープルは、照井さんがすっかり馴染んでいた。MC含め(後述)。着実な変化の跡を辿ることができて面白い。
 CS以降のピープルを観ると、生きることは美しいのだと思う。AMが出てからその感覚が一層強くなった。雨も血液も夜の闇も、鳥も空も人の足跡も皆ひっくるめた美しさ。なので混乱する。どうしてそんなことが可能なんだろう。

 3月半ばの金沢は、もう積もってはいないけれど、時折雪のかけらがちらちら舞っていた。冬にさよならを告げて東京へ戻る。夏でもあまり晴れる日は多くないのだと聞いた。それでも、金沢にはまたきっと来たい。


■セットリスト
01. 時計回りの人々
02. 市場
03. 球体
04. 割礼
05. ダンス、ダンス、ダンス
06. みんな春を売った
07. 物質的胎児
08. ブリキの夜明け
09. 八月
10. 火曜日 / 空室
11. ストックホルム
12. ペーパートリップ
13. 序
14. 金曜日 / 集中治療室
15. ニムロッド
16. さようなら、こんにちは

EN.
01. 市民
02. 完璧な庭
03. 旧市街


■MC
・アンコール
は「アンコール……ありがとうございます」
客(拍手)
だ「あれ? 今日はないの」
は「……アンコールワット、ありがとうございます」
客(笑)
は「忘れてください。記憶を遠くの、カンボジアの遺跡に埋めてください(笑)」

・SANAA
は「どやった? 21世紀美術館」
て「素晴らしかったです! あんな場所が近くにある皆さんが羨ましいです」
だ「よっちゃん、建築とか好きなんやろ?」
て「そうだね。一番好きなSANAAって建築家が設計してて。本当に素晴らしい」
だ「俺こないだSANAAに会ったよ!」
て「ははははは! 会ったんだ?」
は「俺もよく会うよ。CD貸したり」
て「CD(笑)」
ふ「何のCD? B'zやろ(笑)」

・スネア
だ「すごいねさっき、こういうの(だらららら……とロール?実演)やってたね!」
ふ「うん」
は「それ結構難しいよね」
だ「難しいかなあ?」
 (だらららら! だだ! だらららららら!とさすがのスネア捌き)
 「ま、こんなもんですけどね!」
客(拍手)
ふ「折角褒めてくれたのに、だいなし(笑)」

・金沢
は「金沢マテーリア!」
だ「言いたいだけやろ!(笑)」

February 24, 2013

『Ave Materia』release tour @ 松江canova

 島根へ飛んだ。川と大きな湖と気分屋の空、ジャパニーズな様式美、気さくな人達。大阪と京都を混ぜて冷まして雲で覆って、すごくマイルドにしたような街。(わかりづらい) とにかく素敵だった! 足立美術館、また何度だって来たい。

 旅先で観るライブは不思議だった。非日常に入り込む日常。いつの間にかピープルは日常に組み込まれてしまったんだろうか。とか考える。
 水の街松江とピープル、親和性高い。「ブリキの夜明け」今日はより特別に聞こえた。canovaは国道9号線を隔ててすぐに、波多野さん曰く「海がある!と思ったら湖だった。ふふ」という宍道湖と接する。昼間体に取り込んだ空気とよく馴染んだ。
 どんなに満たされてもほとんどが薄れてしまう中で、強烈に記憶に焼き付く演奏というのがある。その時の気分に合うとそうなる。運みたいなものだ。丈夫なリズム隊と、やわらかい照井さんのギターと、そこに乗る風のようなファルセットのスキャット。が、ふっと途切れて、ブーンというアンプの小さなノイズが満ちる。幸せだった。

 セトリ大枠は変えず、一部入れ替えていた。さらっと「She Hates December」が聴けて、島根ありがとう!!と思う。来て良かった。照明が夕暮れみたいで、リリイ・シュシュ「飛べない翼」とリンクしてしまったり、した。リリイが生まれたのも青猫が死んだのも、そういえば12月だ。
 「みんな春を売った」→「物質的胎児」→「ブリキの夜明け」→「八月」の流れ、鳥肌。春を売って胎児がつくられ、夜が明けたら息をしていることを告げられる。最初の二曲で既に持っていかれたのに、「ブリキの夜明け」は先述の通り特別だったし、畳み掛けるように「八月」が来た。
 「八月」の後も本編ずっと照井さんがいて、波多野さんとツインギター。高崎では途中抜けていたと思ったけれど、もう自分の記憶に自信がない。SHD間奏のギターソロは波多野さんがいつものように穏やかに弾いていて、いつものように寄せては返す波をぼんやり眺める気持ちになったのを覚えている。

 AMは途方もなく重たいアルバムだと、改めて思う。死に臨み、生を歩む。
 重たい原因の筆頭、個人的な超トラウマソング(笑)(開き直った)「みんな春を売った」は、AMに不可欠だと思うようになった。少し受け入れられるようになったんだろうか。ファイナルまでに向き合えるかな。今のところイントロが流れると体が固まる。鏡を見たメデューサのごとく。

 MCの話。ダイゴマンの“ばーちゃん”が島根の方で、自身も昔喘息だった頃に1年ほど滞在したらしく、「島根は無条件で好きだね!」と言っていた。松江を歩いていたら覚えている風景にも出会ったそうだ。思い入れのある、やさしい話し方だった。
 後は、波多野さんと福井さんが時間差でそれぞれ松江城に行っていたという話、ピープルらしいなあと思う。個々に独立していても芯が似ているような印象。

 ツアー全21公演中、6公演目の松江。まだ半分にも達していないのにこれだけ変化して、これから一体どうなってしまうのか。おそろしく楽しみだ。


■セットリスト
01. 時計回りの人々
02. 市場
03. 球体
04. 割礼
05. ダンス、ダンス、ダンス
06. みんな春を売った
07. 物質的胎児
08. ブリキの夜明け
09. 八月
10. 沈黙
11. はじまりの国
12. She Hates December
13. 序
14. 金曜日 / 集中治療室
15. ニムロッド
16. さようなら、こんにちは

EN.
01. スルツェイ
02. 市民
03. 完璧な庭
04. 旧市街

February 15, 2013

『Ave Materia』release tour @ 高崎club FLEEZ

 雨の降った跡を空気と地面に残しつつ、着いた高崎は晴れていた。
 ライブ前の冴えた三日月、撮っておけば良かったな。

 代わりに、ということでもないけれど、ツアーグッズ!
 今までで一番好きだ。みどりむし! 多分あんぜん。


▲緑:Tシャツ、青:コットンバッグ

 街、時計、太陽、地球儀、ダンス! AMのモチーフが沢山。
 Tシャツとバッグで原画のアレンジが違うところにこだわりを見る。色が、AMジャケと合わせると光の三原色のよう。
 バッグ、マチはないものの、しっかりしたキャンバス地。A4の薄いファイルなら幾つか余裕をもって納めてくれる。実用性◎
 物販混み合っていたのに、残響の某さんがにっこり応対してくださり和む。

 ライブとても楽しかった。照井ギターが振り切れ始めた! 丁寧な演奏は変わらず、出るところは出るよう腹を決めた感じ。馴染むまでもう少し。成長途中の今のバランス、見事に毎回変化があって楽しい。
 割と序盤で波多野さんの「やべー、すげえ楽しい!」が聞けた。と思ったら、後半「楽しいだけじゃ物足りない」という名言が出て笑った。その通りだ。
 曲目は初日とほぼ同じで、順番を変えてきた。初日は初日でとても良かったけれど、AMの曲が本編に収まる今日のセトリ好きだ。
 波多野さんは10曲目「八月」の歌詞終わりまでボーカルのみ。アウトロでこの日初めてギターを手にした時、またひとつ何かが動き出すような気がした。戻ってきた気もした。その構造自体がAMの主張をなぞっているようでもある。11から13曲目まで3人になり、14曲目「序」で照井さん再ジョイン。アンコールは3人。





 言葉でこのライブのこころに触れようとすると、やっぱりいつも以上に個人的なことを書きそうで、ストッパーがかかる。
 確かだと思うのは、ライブが楽しいこと。居心地が良いこと。ピープルが目の前で演奏していること。シンプルなひとつひとつを確かめて積み上げていく。
 アンコール最後の「Alice」、あの本編の後だと、まっさかさまでも大丈夫だなあと思った。《「君は誰の子だい?」》を振り切るように落ちる。心地良くさえある。そうして変わっていくこともある。変わらないこともある。
 魔法みたいだった、というとほうきに乗って空飛びそうだけどそうではないし、薬のようだった、というと何だか怪しげである。どう言おうか。気付かず欲していたものを与えてくれる感じ。……やっぱり魔法かもしれない。

 センス良い開場時BGMは福井氏セレクトだろう説を唱えて、今日はここまでにします。Fleet Foxes"Ragged Wood"、Sam Prekop"C + F"嬉しかった!


■セットリスト
01. 時計回りの人々
02. 市場
03. 球体
04. 割礼
05. ダンス、ダンス、ダンス
06. みんな春を売った
07. ブリキの夜明け
08. ニコラとテスラ
09. 物質的胎児
10. 八月
11. 市民
12. 完璧な庭
13. 旧市街
14. 序
15. 金曜日 / 集中治療室
16. ニムロッド
17. さようなら、こんにちは

EN.
01. ベルリン
02. 笛吹き男
03. Alice

February 14, 2013

VALENTINE ROCK Vol.6 —愛のロックを鳴らそう— @ LIQUIDROOM

 雑誌MUSICA企画。ごみ箱に大量のみかんの皮を見て何事かと思ったら、主催者が配っていたらしい。なぜみかん。芥川の「蜜柑」ならロック。「私はこの時始めて、云ひやうのない疲労と倦怠とを、さうして又不可解な、下等な、退屈な人生を僅に忘れる事が出来たのである」!


■クガツハズカム
 初見。きのこ帝国ボーカルのギター弾き語り、途中から観た。
 初期Salyuに霞をかけたようなアンビエントな歌声の中から、小谷美紗子みたいな真っ直ぐな主張が立ち上がる。やわらかな耳触りでありつつ、芯が強く凛としている。
 跳ねのけたくなるような重たさだった。あの重みが好きな人はきっとすごく好きなんだろう。9月、夏が闘って戦って殺されていく感覚を確かに思い出した。


■People In The Box
 アコースティックセット! 3人編成。劇場編みたいにゆるいMC挟みつつの全5曲。
 MUSICA有泉さんの紹介「魂持っていかれる系のバンド」を、ダイゴマンがネタっぽく連呼していたの笑った。個人的には最近は「魂取り戻してくれる系のバンド」みたいな気がしている。どちらにしたって魂に働きかけるのだからとんでもない。

1. 土曜日 / 待合室
 しばらく聴けないと思っていたから嬉しい。一音一音が心地良い雨粒のよう。
 ひとつひとつ地に沈んで染みていくようなアウトロが好き過ぎる。
2. 天使の胃袋
 LosTバージョン。ボーカルの高音がしっかり伸びて、リキッドいっぱいに満ちた。
 《電池が切れてしまった僕ら / だから次の世界で息をするよ》沁みる。
3. 木曜日 / 寝室
 出たー! バンジョーだ!(心の叫び)
 今日は木曜日。5曲の中でピープルの振れ幅が存分に表れていて楽しい。
4. ダンス、ダンス、ダンス
 「『Ave Materia』は僕らにとって大切な1枚」というMCに続いてこの曲。
 ひとつの生命がみえた。生まれたばかりの小さな生きものの、血流や脈拍や呼吸のようなアンサンブル。みんなが自由に踊るエレクトリックに対して、アコースティックは演奏のいのちを見守るような。ピープルを貴いと思うのはこういうところだ。
5. 球体
 最後に伏兵がいた! まさかのアコースティック球体。
 冒頭、雲か煙に一面覆われていくような不穏なアレンジに乗せての《球体に守られて だれもが痣だらけ》ぞわりとする。何度も繰り返されて徐々に浸透してくる。エレクトリック版よりじわじわ攻める様はほとんど老獪。逃げ出したくなるところで《空を返せ》の澄んだ主張ときれいな福井コーラスに救われる。巧いなあ。

 曲と彼ら自身のしっかりした骨格と柔軟さ、アンサンブルの妙、そしてダイゴマン曰くエレガントなMC(笑)の楽しさが存分に溢れるライブだった。またいつでもぜひ、アコースティックで。


 転換中は鹿野さんのDJタイム。Syrup16g"My Song"が流れた。何の確信もないまま並々ならぬ期待をしていたら本当にかけてくれて、嬉しくなる。Syrupの音が、五十嵐の声がリキッドに広がっていく。来て良かった。ありがとう。


■日高央
 初見。一昨日twitterのDMで依頼、昨日追加発表、今日演奏となったらしい。前半がソロ、後半は彼の今のバンドらしいTHE STARBEMSのメンバーと演奏。この面子だと浮くかと勝手に思っていたら、ベテランの風情はありつつ、音の楽しさは同じだった。


■川上洋平&庄村聡泰
 初見。有泉さんによるとユニット名は「座パンプキンズ」で「ザがTHEじゃなく座るの座なのがポイントらしい」。[champagne]のギタボとドラムに、サポートキーボードの3人編成。要所要所キーボードが素敵な仕事してた。
 一曲目に痺れる。Waitress, Waitress!という曲だと教えてもらった。"Absalom, Absalom!"にウェイトレス出てきたっけ?と思ったが多分関係ない。ともかく格好良かった! シャンパーニュだと思ってて申し訳ない、シャンペイン覚えた!

February 11, 2013

『Ave Materia』release tour @ 宇都宮HEAVEN'S ROCK VJ-2

 いよいよツアー初日。当日券出してるのが謎なくらい、箱の中は満員。やあみんなどこから(略)。
 舞台あまり見えなくて、レポらしいことは書けそうにない。時々福井さんが見えたのは嬉しかった。何度でも言っておこう、最近どんどんアグレッシブになるベースプレイ観るのが楽しくて仕方ない!
 ピープルで一番体が動いたライブだった。周りもかなり自由に揺れたり踊ったり。宇都宮の人がノリ良いのか、これまでほど変拍子の嵐じゃないからか、バンドの自由さのリフレクションか。曲間の沈黙との対比が面白い(時雨と似てる)。

 オープニングのポエトリーリーディング、CSツアーに近い音。不穏な電子音に揺さぶられ、柔らかいギターに宥められ、の繰り返し。最後の台詞はもったいなくて、まだ書けない。あの言葉にあれだけの強度を持たせられる人、他にいるだろうか?
 開始から数分と経たず心の根っこを掴まれてしまって、来たことを少し後悔した。生きるつもりじゃなかった。
 けれど水中みたいな青い照明の中、いつもの時計の音 - Jim O'Rourke "And I'm Singing"(今を見越していたかのようなタイトル!) - が空間いっぱいに満ちると、帰ってきたような気持ちになる。居心地の良い場所。
 冒頭、波多野さんの「『Ave Materia』ツアーへようこそ」にはっとする。CSの時は録音された声にそう告げられたところ、今回は目の前で。また前に出て距離を詰めてきた。WWWでの「またツアーで会いましょう」とひと続きになってもいた。

 ……この調子で本編行くと余計なことばかり書きそうなので、切り上げる。

 ざっくり言うと、意外だったり(アンコール)、やられた!と思ったり(本編ラストの衝撃!)、感慨深かったり(笛吹き男とAlice、新しい意味を与えられて成長していくようでとても嬉しかった)。
 アンコール終わっても、ダブルを求める拍手が止まなかった。個人的にはあの後だと何を聴いても余分になる気がして(実際聴けたら違うのかもしれない)、ひと足早く会場を出た。あの後どうなったんだろう?

 あと何箇所か行くつもりだけど、怖い。でもやっぱり見てみたい。どないやねん。
 つらつらとiPhoneに打ち込んでいたら、東京に着いた。鉛筆でざかざか下描きしたみたいな文の連なり、たまにはそのまま上げてみます。


●セットリスト(多分)
01. 時計回りの人々
02. 市場
03. 球体
04. 割礼
05. ダンス、ダンス、ダンス
06. みんな春を売った
07. ベルリン
08. 笛吹き男
09. Alice
10. ニコラとテスラ
11. 物質的胎児
12. 八月
13. ブリキの夜明け
14. 市民
15. 完璧な庭
16. 旧市街
17. バースデイ

EN.
01. 序
02. 金曜日 / 集中治療室
03. ニムロッド
04. さようなら、こんにちは

January 28, 2013

QUIET ROOM 2013 WINTER @ 渋谷WWW

 リキッドしかりWWWしかり、好きなハコにはレモネードがある。飲んでる間は夏になる。ダウン着てても夏である。スタンディングかつライブ編成ありでQUIETではなかったから、WINTERじゃなくたって大丈夫だろう。
 VINTAGE ROCK主催、不定期開催の素敵なイベント。また是非WWWで。


■KUDANZ
 初見。なのにずっと前から知っているような、気がした。懐かしさと慕わしさ。舞台の上の人がここにいるのか過去にいるのか曖昧になる。足元から溶けて音になる。
 遅れて行って、聴けたのは数曲。最後、夕陽みたいな照明の中「燃えたい」って繰り返し歌われていた。指先に炎が迫ってきた感覚を覚えている。燃やしたいでも灰になりたいでもなく燃えたいってすごいなあ、と思ったりする。好きな違和感。
 ギターの音も懐かしかった。何だろう。探るには少し時間がかかりそう。


■peridots
 稀にいる歌うために生まれてきたような人のひとりだと思った。前のQUIET ROOMで見た時と印象が違ったのは、フロアの空気のせいだろうか。フラジャイルではないけれど繊細で芯のある声、WWWいっぱいに広がるととても心地良かった。


■People In The Box
 サポートギターとしてハイスイノナサの照井よっちゃんさんが加わり、4人で初ライブ。上手から、横向きのドラム、中央奥にベースの配置までは変わらず。そしてサポートギターを挟み、従来よりやや下手寄りにハンドボーカル。
 ……ハンド! ボーカル!! 装備はマイクと歌声と言葉。
 「Ave Materiaバージョンです」と簡単な紹介がなされたその編成で、本編全て演奏。ボーカリストがギターを手にしたのは3人に戻ったアンコールの一曲のみ。
 ボーカルに専念するのは必然だった。サポートが入ると聞いた時は、ギターが2台になると思い込んでうまく想像できずにいたけれど、始まってすぐに、なるほど! いいね!と思う。CS以降増す一方だったボーカルの力を、ギターを置くことで極大化させていた。時に客ひとりひとりの目の奥まで覗き込み、痕を残すように歌う。「言いたいことが沢山あるんです」そうして生まれたAMのライブでの、必然の変化と映る。

 照井さんのギターはハイスイらしく端整。盛り上がっても冷静な眼差しが残る。とても好きだけど、ピープルに入ると曲によっては引っ込み気味。波多野さんとの違いが面白く、ツアーを経てどうなっていくのか楽しみ。
 気になるMCは軽く「どうも、照井です」くらい。ダイゴマンと化学反応起こして爆発するんじゃないか?と心配していたら杞憂だった。振り切れる方向が違うから大丈夫、だといい。

 「ダンス、ダンス、ダンス」4人で演奏している空気がよく似合う。より解放感があって、体が自由に動く感じ。《森を突き抜けて~》最初から遠慮ないフォルテになっていた。ようやくしっくり来る。
 「物質的胎児」(初演?)音源では間奏のシンバルワークが大好きだけど、今日は黙していて驚き。なぜだ。胎児から「みんな春を売った」の流れ、個人的にテンションの落差半端ない。前者はAMで一番安心する曲、後者はトラウマ級に恐ろしい曲。闇夜のよう。《おかしくなってしまった》ボーカルが強いと一層怖い。しかしベースが格好良い。そして「割礼」(これも初演?)現物が見えなかったけれど、ダイゴマンの右手元でカウベルらしい音が鳴っていた。丁寧で主張を抑えた良いアクセント。
 本編最後「時計回りの人々」は圧巻。イントロ、強い白金の逆光に4人のシルエットが浮かんだ時の、これはやばい!感が最後まで続いた。演奏のディテールを聴く余裕などなく、圧倒されるだけされて終わる。生まれてきて、ピープルを知って、ここまで満たされて、もう充分だなあと思う。さらりと言われた「Ave Materiaツアーでまた会いましょう」が沁みる。

 帰り道、見上げた月は異様なくらいまるく冴えていた。2013年がようやく始まった。

●セットリスト
1. ダンス、ダンス、ダンス 2. 市場 3. 物質的胎児 4. みんな春を売った 5. 割礼 6. 球体 7. 時計回りの人々 EN. ニムロッド

December 13, 2012

実施中!!!第一回胞子拡散祭 @ 渋谷CLUB QUATTRO

 胞子まみれの体のレントゲン図 2/2!!!

■松本素生とOKEGAWA'S(GOING UNDER GROUND)
 初見。懐の広い、優しいバンド。俯いた顔を覗き込んで前を向かせてくれるような。むしろgoing over the rainbowなテンション。松本さん登場した時点で安心できる人だなって直観があり、その通りの場になった。ライブで、しかも初見では珍しい感覚。
 ピープル好きだって話が嬉しい。元々松本さんソロで出演予定→メンバーに話す→メンバー「ピープル好きだから観に行く!」「俺も!」→だったらバンドで出演しよう!となったとか。素敵。
 長いキャリアの賜物か、安定感ある演奏。メロディーをシンガロングさせて客を巻き込んでいく手並みは鮮やか。そこに嫌味や外連味が少しもないから寄り掛かれる。新鮮な出会いが嬉しく、とても楽しいひと時だった。

■People In The Box
 何度も言ってる気がするけれど、広い舞台で大勢の観客を前に演奏するピープルが好きだ。かけがえのない、とても美しい光景。何だろう。沢山の人に受け入れられていることが実感できて嬉しいのかな。他にはない感覚。
 対バンツアーセミファイナル、すばらしかった。特にボーカル。「時計回りの人々」「サイレン」「月曜日消失」今日心を掴まれた曲はみんな、ボーカルの訴えが強く響いた。体調は万全ではなさそうだったけれど、気力で高音を出しているように感じた。その気迫に打たれる。ニムロッド辺りから(ということは多分3.11以後)、「透明感のある少年声」に明らかな気迫が加わり出した気がしていて、それはベースのアグレッシブさと互いに呼応しているようで、バンドの面白い変化のひとつだと感じる。
 ギターはジャガーさんに戻って若い音が鳴っていた。今日は初期曲が多いからよく嵌っていた。《不服だ 死を叫ぼう》から《メメント モリ》を経て《きみの孤独が 世界を救うかもしれない》、同じ日に全部聴けて感慨深い。予定外で急遽演奏してくれたダブルアンコール「ダンス、ダンス、ダンス」これ以上ない選曲だったと思う。そして今後のピープルが本当に楽しみ。

 GOING松本さん「ピープルを聴きに来るお客さんは素晴らしい」を受けて波多野さん「あれを聞いて一番嬉しかったのは僕です」、客としてはこれがまた嬉しかった。
 対バンだとピープルが「何でないか」をよく考える。ワンマンが材料を重ねていく加点式だとしたら、対バンは彫刻みたいに削って浮き彫りになっていくのが面白い。胞子拡散くん、また気が向いたら街にパンデミック起こしに来てね!
 そんな2012年ピープル納め。今年も本当に本当にありがとう。

もともと本人も不確か曖昧な内実だからなのか、音符やリズムという入れ物に入れて、それは外気から守るためなのか、はたまた鮮度を保つためなのか理由は解らないとしても、とにかく胞子のようなそれらをもってして他者に届ける。すると受け取ったその人の中で胞子が開く。開き方はその人なりの解釈によって様々。そんなイメージだ。People In The Boxの音楽によく似ていると個人的には思っています。
- MMMatsumoto「愛すべき開かれない音楽家たちへ」(MARQUEE Vol. 88, 9 Dec 2011)より


●セットリスト
01. ニムロッド
02. アメリカ
03. 火曜日 / 空室
04. みんな春を売った
05. 時計回りの人々
06. 球体
07. サイレン
08. 月曜日消失
09. 市民
10. スルツェイ
11. 鍵盤のない、

EN.
01. 東京
02. 旧市街

EN-2.
ダンス、ダンス、ダンス

December 6, 2012

実施中!!!第一回胞子拡散祭 @ 高崎 club FLEEZ

 胞子まみれの体のレントゲン図 1/2!!!

■a flood of circle
 初見。社会に反逆するスタンス取りつつ一体感大事にして盛り上がる、J-ROCKスタンダードな印象。チョモに近い気がした。それより少し泥くさく、最後ボーカルの「ロックンロオオオオル!!!」って叫びに巻き込まれて「YEEEEEEEAH!!!」と返したくなるfloodingness。バンド名大文字の方が似合いそう。
 MC「選ばれし胞子、A flood of circleです!」笑った。aを強調するんだね。

■People In The Box
 2ヵ月ぶり。半分は知っているピープル、もう半分は知らないピープルで目を見張る。代謝の良いバンド。健康だ。メンバーも健康であれ!
 最近「強いメッセージを持ったバンド」と自己紹介しているようで、今日のライブはまさにそうだった。聴き手に響かせるよう、音のひとつひとつに魂が込められていた。変わったなと、たかだか2年前と比べてだけど、思う。以前は彼らの箱の中に入れてもらってそこで展開される物語を眺めていた。今は彼らの方からこちらに向かってきて同じ地平で訴える。言葉だけでなく楽器もそうだ。声もベースもドラムスもギターも、全ての音が強いメッセージだった。ひたむきな胞子たち。
 変わらないのは何だろうと考えてみると、音の楽しさであり必要であり信頼であり、その諸々が同じ場に在る確かさに繋がることであり。つまりは好きってことだ!

 ハタノMC、afocは拳で顔を殴る、ピープルは内側からウイルスのように攻める、との喩えが言い得て妙。「ウイルスのように攻撃を続けさせていただきます」からの「木曜日 / 寝室」は本日(木曜日!)の白眉。
 攻撃の仕方が違えば受け止め方も違う。よくJ-ROCKのライブでは一体感が命!な空気を感じるけれど、ピープルを観に来る人はむしろ自分なりの受容を大切にしている気がする(そして個々の差異を尊重する)。人によってこんなに受容の違うポップスそうそうない。久しぶりに観るせいか、そんなことを考えたり。
 不思議だったのは、今日諦めるか迷うくらい体調良くなかったのに、彼らの演奏中は何ともなかったこと。脳に作用するウイルスこわい。あるいは胞子パワーか。

 以下セットリストとメモ。

01. アメリカ
 意外な幕開け。FRと今は断絶している訳ではないと主張するような。
02. 完璧な庭
 ライブ定番曲なのに初めて出会う気がした。ドラムの一打一打に込められた魂にふるえる。こんなバンドだったっけ?→新しいピープルだ!と思う。とても良い意味で。
03. 市民
 相変わらず激烈に格好良い。観た位置のせいか、今日全体的にボーカルの音量が強い気はした。
04. ダンス、ダンス、ダンス
 《森を突き抜けて~》の後、じわじわクレッシェンド。珍しく作為的に感じる。
05. 時計回りの人々
 《きみは壊れていないのに》語尾少し高いキーにアレンジしていた。AMでいちばん解りやすくがつんと来た一節。堪らない気持ちになる。
06. 球体
 ベースのアグレッシブさがどんどん増していく。大歓迎。
07. 木曜日 / 寝室
 ギターのふわりとしたディストーション、夢の重たさに呑まれる。
08. 月曜日消失
 スネアのロールで始まってギターが静かに忍び込むじわじわ感、「月曜日 / 無菌室」?と思いきや消失で、とても久しぶりで、二重にびっくり。いつも端々のイントロの遊びが楽しい人たち。アウトロのバリエーションも増えたらきっともっと楽しい。
09. スルツェイ
 何もかも生命に溢れていて逃げ場がない。3人のバランスが黄金比な曲のひとつ。
10. 天使の胃袋
 LosT以降、エレクトリック版もぐんと好きになった。疾走感!
11. 旧市街
 CSツアーファイナル以後、いつも加藤さんのアニメーションを思い出しながら聴いている。《青空少しだけおかしくなったよ》でミラーボールが不穏な水玉模様をそこら中に散らして踊っていた。これも黄金比の曲。

EN.
01. 東京
 久しぶり! FRツアー以来? 《恋に堕ちた》の後、音が弾けて世界にぶわっと色が付いて活動を始める感覚に鳥肌。アンコールでこんな、こんな……!
02. ニムロッド
 ベースの熱量! みんなすばらしいけれど、最近特にベースが熱い。年明けのツアーが本当に楽しみだ。

October 15, 2012

J-WAVE「THE KINGS PLACE」LIVE vol.1 @ LIQUIDROOM

 ラジオ番組「THE KINGS PLACE」をナビゲートするバンドが集結してのライブ。
 LIQUID良いハコ。音良いし照明映えるし後方段差があるのは優しい。レモネードあって嬉しいし、立地も良い。開演前の寿司詰め待機さえ乗り切れば素敵な空間。


▲フライヤ、ハロウィン仕様!


■People In The Box
 昨日に続いてピープル。対バンだと格好良さ3割増。演奏キレあり、LIQUID自体の良さも相俟って素晴らしかった! 「市民」半端ない! 「天使の胃袋」ボーカル入る前のピィー!!!って容赦ないギターの音で飛ぶ。あれ大好き。エレクトリックで聴いたのは久々で嬉しい。
 新曲とんでもない。手の付けられない魔物のよう。真っ赤な照明が映える。ウィスパー(ピープル初?)で《水の音がしてる 耳を澄ませ》からの忍び寄るベース、水面が足元から盛り上がってきてぞくぞく。どうしたらあんな曲が、演奏ができるんだろう。最後《清潔な流し台を血液が走る》ボーカルだけで終わると、場内1000人ほどが水を打ったように静まり返る。堪らない空気。訳が解らないけれど圧倒的な何かを観た後の、言葉も行動も奪われた感。キンプレブログによると「市場」らしい。しじょう? いちば? 何を取り引きしているんだろう? 愛すべき魔物。新譜が益々楽しみ。
 続く「ダンス、ダンス、ダンス」の4拍子に安堵。したのも束の間、詞が迫る。ラジオで音源流れてからライブは初めてなのに、もうすっかり好きになってることに気付く。福井さんのコーラスが映える。終盤《森を突き抜けて》で3人同じリズムで音出すところ(わかりづらい……シンバルだとジャーン、ジャン、ジャーン!てところ)が好きなんだけど、割と抑え目の出し方。最後《荒れ果てた庭でひとり仲良く踊りましょう》ずんと来る。いつか軽やかに踊りながら受け止められるようになるだろうか。
 PA卓付近の段差上にいて、遠目だけど遮るものなくステージを見渡せた。久しぶりに見えた福井さん、縁の下の力持ちタイプだと思っていたら、全然クリエイティブかつパフォーマティブでびっくり。今更。特に新曲2つ、目を奪われる。
 恒例のMC、アウェイ気味の場でこそ本来の持ち味を発揮。照明を乱反射するドラム要塞に守られつつ、斜め75度上向いて声にエコーかけまくるダイゴマン・オン・ステージ。極めつけに「今日も全力でぶっ殺していくんで、マジでよろしく!!(ビシッと指差し!!)」堪らない。指から何か飛んできたマジで。PA卓までマジで。

……じっと座ってものを考えているだけじゃ駄目なんだ。そんなことしてたって何処にもいけないんだ。わかるかい?」
「わかるよ」と僕は言った。「それで僕はいったいどうすればいいんだろう?」
「踊るんだよ」羊男は言った。「音楽の鳴っている間はとにかく踊り続けるんだ。おいらの言ってることはわかるかい? 踊るんだ踊り続けるんだ。……
 - 村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス』より
 ※下線部、原文では傍点

 3人が演奏していることを変わりなく貴く感じる。かけがえのない、生の溢れる景色。あの場をつくってくれて、そこにいさせてくれて、本当にありがとう。

●セットリスト
1. 親愛なるニュートン街の 2. 市民 3. ニムロッド 4. 市場 5. ダンス、ダンス、ダンス 6. 天使の胃袋 7. 旧市街


 転換中、今回はツアーで来られなかったらしいandropからのメッセージとライブ映像が流れる。誠実な演出。LIQUID下手側の壁がスクリーンになるのを初めて見た。
 つくりものみたいにきれいなイメージを持っていたら、ライブ映像で一面客の腕が上がっていて壮観。思い込みよりずっとインタラクティブな音楽なんだなと思う。

■Nothing's Carved In Stone
 2010年のクリスマスにピープルと、同じLIQUIDで対バンして以来。ボーカルが金髪になって、それと関係あるのかないのか、記憶していたより一層攻めの色が強いステージだった。久しぶりに見る変化は嬉しい。

■クリープハイプ
 初見。割と楽しみにしていて、割と好きだと思った。曲も詞も演奏も。ストレートに向かってくる音を嫌いになれるはずもない。トリとは予想していなかったけれど、盛り上げまくって締めていた。肩車連立→ダイブの波を久々に見る。同じ音楽好きでも本当に色んな人達がいる。

October 14, 2012

ART-SCHOOL「BABY ACID BABY」TOUR 2012 @ 金沢AZ

 ARTの新譜ツアーにピープルがジョイント。
 ずっと来たかった金沢、観光して(21世紀美術館! 泉鏡花記念館!)ライブ観られてすごく楽しかった。昼間遊び過ぎてART終盤で体力が尽きかける始末。きっとまた。


▲ペットボトル、AZの粋な計らい!

■People In The Box
 波多野さんのギターが変わっていた! きっとこれなんだろう。素人が開き直って勝手なことを書くと、栗の渋皮煮みたいだと思った。ブランデーの深く染みてる渋さを基調にしつつ、全体に甘みが残っていて豊か(秋のせいにしておく。とても好きな甘味)。今の位置から少し先にある、けれどそのことで進む道を示してくれそうな、良い予感のする音。しばらくはギターが楽しみになりそう。バンドに馴染む過程を見ていたい。
 「球体」聴けば聴くほど良い曲! 暗めの黄緑色の照明。輪唱がダイゴマンから福井さんにチェンジ。人が密集するライブハウスで聴いていると球充填問題を連想する。ピープルの音が充填された球体達の隙間に満ちていくイメージ。
 ギターばかり気になっていたけれど、久々に近くで見たダイゴマンの演奏はやっぱりしなやかで力強くてうつくしい。「金曜日 / 集中治療室」嬉しかった! ホイッスル! 残響祭とは違って、テンション上がる曲に戻っていた。全曲演奏は特別。
 もうひとつ新曲、初めて聴いた。《ある日君は動くのをやめた》で始まる物語調の詞。新譜は物語が主張に消されていくのかと勝手に危惧していたから安心する。ボーカルに挟まるシンバルの音が妙にツボ。また好きな音が増えてしまった。しかも間奏3人ともやたら格好良い。新譜好きかもしれない、どうしよう。
 ラジオで声にエコーかけることを学んだダイゴマン、いつものMCがレベルアップ。「『Cut Two』買った人手挙げてー、少なっ!(なっ!(なっ!(なっ!)」普通にウケていた。エコーの魔力!
 「ニムロッド」→「旧市街」、最早定番の流れで締め。終盤はギターとドラムお疲れ気味だった気はする。福井さんの安定感はさすが。今更だけど旧市街の《メメント・モリ》コーラス他の音に負け気味で勿体ない。もう少し大きくても良さそう。
 ピープル久しぶりに観たという人が「球体格好良かった!」って言ってくれて嬉しかった。そうそう、すごく格好良いアンサンブルなんだ。対バンで見ると改めてそう思う。金沢で観られて本当に良かった。楽しい時間をありがとう。

●セットリスト
1. 沈黙 2. 笛吹き男 3. レテビーチ 4. 球体 5. 新曲(ある日君は) 6. 金曜日 / 集中治療室 7. ニムロッド 8. 旧市街


■ART-SCHOOL
 初見。ロック然としていた。演奏格好良かった。一方で、真面目にロックしている様は不器用に映る。後ろに向かって全力疾走しているような。心配になる突き進み方。
 有名どころで「左ききのキキ」「MISS WORLD」は知っていて、さすが格好良かった。だけど本編最後の曲がとても気になった。繰り返される《光のほうへ》は祈りにも叫びにも似ていた。多分引きずられてはいけないのに覗き込みたくなる、その感覚を久々に思い出す。曲名は「We're So Beautiful」というのだと教えてもらって鳥肌。
 そんな不安定な心持ちにさせる曲や詞に中尾さんの逞しいベースはアンバランスで、逆に似合う。珍しく俯瞰的なギタリストを見たと思った戸高さんは、途中束ねていた髪を解いた途端に主張が強くなって唖然。あの髪ゴム何か封印してたんだろうか。
 ARTにはARTの色があるんだって当たり前のことを感じた。それでも、戸高さんのギターは五十嵐みたいだって時々思ったり、犬が吠えるの光とはまた違うとか、五十嵐何してるんだろうとか、散々に勝手なことを考えていた。もう少し距離を置きたい。

 木下さんがちょうど誕生日らしく、MCでアピールしていた。祝われたい人なのか。
 アンコールで、戸高さんのギターに誘われて会場が歌う。ハッピバースデーディアリッキー、ハッピバースデートゥユー♪
 歌い終わったタイミングでピープルの3人登場。波多野さんがケーキ渡してハグした、らしい。なぜか見逃した。気付いたら皆すごい笑顔だった。おめでとう、ほんとハッピーであればいい。光のなかにいられるといい。

September 16, 2012

残響祭 8th ANNIVERSARY
@ Shibuya O-EAST & duo MUSIC EXCHANGE

 昨年に続いて参加。この1年で沢山の残響バンドを知って、ライブを観て、ずっと好きになったなあとしみじみ。
 タイムテーブルは当日現地で発表するスタンス。選り好みせず観てほしいのだろうけれど、事前に発表されると予定組みやすくて助かる。私用こなしてからの参加だったので余計にそう思った。omni観られなくて残念。
 お祭騒ぎはとても楽しかった。最後に河野さんが「来年もやりましょう!」って言ってくれて嬉しい。きっと!


■SPANK PAGE
 初見。どこかで和製シガロスと紹介されていた。ああいう宇宙見える系ではなくて、自分の前に立ちはだかる壁を壊すくらいのシューゲ寄りな音、という印象。もっとぶっ壊してくれ、と思ったけれど、あの繊細さが彼らの味で魅力なのかも。


■ハイスイノナサ
 すごく良かった。この日一番のめり込んだアクト。
 初めてドラムの手元が見えた。それでも何が起きているのか解らないけれど、確かに秩序があるからあんなに美しいんだと思った。数学のよう。あの音はドラムの人が出しているんだ!って驚きも沢山あった。仕組みの氷山の一角が解って嬉しい。ともすれば機械みたいになりかねない精確さが、他の音との関わりの中で温度を持つところに人間を見る。もう少し考えたいところでもある。
 初めて一緒に手拍子できたのも嬉しかった。次のライブでCD買おうかな。「ハッピーエンド」のうわあああ感(としか今のところ言いようがない)も健在。最後「動物の身体」で澱みが全部流されたような気がした。ピアノと電子音の組合せだけでも堪らないのに、ギタードラムベースに人の声、皆混ざり合っても濁らず清冽な音に触れられる幸せといったら。
 あまりに良くて、26日のイベントのチケット予約した。とても楽しみ。


 ハイスイ(duo)早めに切り上げて移動しようと思っていたのに最後まで釘付け。ピープル(EAST)間に合いはしたものの、着いたら大混雑でステージ見えず。


■People In The Box
 MCなしで『Ghost Apple』全曲演奏。再現とか反復ではなく、今の彼らの声だった。ガートルード・スタインの言葉を思い出した - 「繰り返しなんてものはない。あるのは声(insistance)だけ」。
 思い入れのあり過ぎるGAの、初めて出会う面が幾つもあって高揚する。「金曜日 / 集中治療室」の痛みが際立って聴こえたのはびっくり。駆け抜けるようなリズムにホイッスルも登場して、ライブではテンション上がるばかりの曲だったはずが。モナリザのくだりは愉快だと思っていたらかなしかったし、《翌朝 報いの雨に濡れて》以降のくるしさは何なのか。「僕」と「君」の双生児のような近さVS結局は他者であるという絶対の溝の、どうしようもない抗いがいっぱいに詰まったGAのひとつの頂点だと思った。ここで幕を引けば崩壊して終わりだったのに、一週間はまだ続く。
 月曜日から土曜日の重みが伸し掛かった「日曜日 / 浴室」は鳥肌。あの帰結《わたしのいのちを、君にあげる / パンケーキみたいに切り分けて、あげる》のために一週間があって、あの帰結があるからまた一週間が始まる。初めて「再生」の曲だと思った。終わらない抗いの中で生き続けるために鳴らされている音楽だった。
 同時に弔いのようでもあった。記憶をなぞって大勢の前で解放するプロセスに立ち会っている気がしていた。古い日記を取り出して、順に読み上げては炎にくべて、ひと山の灰を積もらせる。彼らが去った後、燃え残った林檎の赤が目に染みた。

●セットリスト
1. 月曜日 / 無菌室 2. 火曜日 / 空室 3. 水曜日 / 密室 4. 木曜日 / 寝室 5. 金曜日 / 集中治療室 6. 土曜日 / 待合室 7. 日曜日 / 浴室


■9mm Parabellum Ballet
 照明の赤がGAの赤だなあとか、前の人達の余韻でぼんやりしていた。そんな中でも二度目の9mmはやはり圧倒的。2階も踊る人いっぱいでフロア揺れていた。「Black Market Blues」「The Revolutionary」「Vampire Girl」「新しい光」とか知っている曲沢山聴けて楽しい。いつの間に曲名と曲が一致するようになったのか。
 ボーカルの人柄通りなのだろう詞の真っ直ぐさを、まだうまく受け止められずにいる。ちょっと違うけれどBJCに近い。嵌まると癖になるんだろうな。なりつつある。


■te'
 te'も二度目。リハから凄かった。パフォーマンスさながらのドラムソロ。そんなに長時間やって大丈夫?と心配になるほど叩いていたけれど、杞憂に過ぎなかったことは本番で思い知らされた。他メンバーが入ってからも凄かった。
 9mmと血が繋がっているんだと思った。躊躇いなく向かってくる音が体に届いた瞬間の皮膚感覚(みたいなもの)が同じ。何もかも吹き飛ばす、気持ちの良い暴風のよう。


 te'のアンコールに出演者が十数人割って入ってのエンディング! 一度ハーメルンの行列みたいにぞろぞろと一列で通り過ぎて肩透かしを食らっていたら、二度目はまあひっちゃかめっちゃかな乱入になった。ダイゴマン、ホイッスル咥えて交通整理みたいな動きしつつ客をアジってたの笑った。ある意味笛吹き男。
 来年はどんなお祭りになるだろう。今から楽しみにしている。


August 18, 2012

People In The Box 空から降ってくる vol.4 ~劇場編~
@ 東京グローブ座 2日目

 劇場編ファイナル。昨日と同じグローブ座で、昨日より更に遠い席。名古屋から徐々に遠く、ミクロからマクロへ俯瞰していくように観てきた。
 MCで『Ave Materia』告知! タイトルで既に鳥肌。Ave Mariaとのあからさまなアナロジーに、Materia=物質世界(としていいだろうか)への肯定と祝福しか感じない。聴く前からピープルの叫びが頭の中を駆け巡っている。聴かなくてもいいんじゃないの。なんて戯言をうまくぶっ壊してくれるといい。
 テンションがくるったままライブの感想を書きます。

 セットリスト一部変えてきた。「レントゲン」始まりで「鍵盤のない、」終わりの初期曲挟みで、「笛吹き男」~「沈黙」だった名古屋、東京1日目と対照的。生が強く感じられるのは同じで、余韻はかなり違った。
 カメラが入っていたからCut Threeに収録されるかもしれない。演奏は名古屋や東京1日目の方が良く聴こえたのでちょっと惜しい。今日は波多野さんがややお疲れだったような。とはいえ圧倒される瞬間は沢山沢山あった。

 昨年の劇場編のと多分同じ、窓のシルエットがスクリーンに映されてスタート。「レントゲン」、あまり気に留めていなかった《ここは希望の国》にはっとする。今のピープルからは圧倒的な肯定ばかり感じる。冒頭、ゆったりした波多野さんの歌とギターに合わせて、ダイゴマンがふにゃんとした赤いパイプを頭上で振り回し始めた。何事かと思ったら風みたいな音が鳴り出す。メロディーパイプ? 面白い! 確かにこの曲、誰もいない大地を風が吹き抜ける感覚がある。
 ダイゴマンは「El Condor Pasa」でカズー昨日より息が続いてたのも良かった。波多野さんが支えるように体でリズム取っていたのが、いつもと役割逆で印象的。そして安定の福井さん。ダイゴマンによると「これタンバリンじゃなくてタンブリン(? 違うかも)っていうんだよ。タンバリンよりもじゃらじゃらが大きい」らしい。へええ。楽器も曲もいつもと違うから、音のコミュニケーションが浮き彫りになって面白かった。本当に状態の良いアンサンブル。それから「Virtual Insanity」の終盤、間奏で挟まれるハイハット、癖になってふと頭の中で鳴り出したりする。正確で美しくて、というだけではなくて、迫るものがあって。本当にこの人の音は何なんだろう。是非収録してほしいけれど、権利関係とかあるのかな。
 一部ラストは「子供たち」! 予想外でびっくり、嬉しかった。CD音源があれなので、優しい終わり方にほっとする。福井さんのコーラス柔らかくてよく合っていた。最後のららら~以降ダイゴマンも歌っていて、その不器用さがまた良いなあと思う。声はやっぱり特別な音だ。

 二部始まりは「ベルリン」! 久々の赤と緑の照明にテンション上がる。ギター格好良いな。ライブハウスだとあまり手元まで見えないから、あんなに弾き倒していることにびっくり。
 やっぱり新曲が印象深い。今日はどちらも等しく好きだと思った。少しずつ詞が入ってくる。新曲1こと「球体」(多分、AMの収録曲名より)はダイゴマン輪唱もびっくり。波多野さんからより遠い、個がはっきり区別される声を入れたかったんだろうか。この曲だともう少し安定すると良さそう。《僕らは誰も殺せはしない》自分も?
 新曲2こと「ダンス、ダンス、ダンス」本当にこの曲名みたい。珍しく直球。《超然としていたって 頭はからっぽさ》刺さる。
 「水曜日 / 密室」久々ですごく嬉しかった。聴く度に迷路に嵌っていく。
 ラストは期待通り「鍵盤のない、」。名古屋のエンドロールで、多分間違って、この曲名が表示されていたから、きっとやるんだろうと思っていた。バラバラになりたかったから、そうなって、あのアウトロを聴けて、すっきりした。

 エンドロールの音楽、何だろう。"Realize, Realize, You're here, You're here"って聞こえた。ゆったりした男女混声(波多野さんではない)。名古屋も東京1日目も耳に入っていなかった。「気付いて、気付いて、ここにいるよ、ここにいるよ」。ファイナルでこれは、くる。ここにいていいんだと思った。これからもいられるといい。


■セットリスト
◆一部:アコースティック
01. レントゲン
02. ストックホルム
03. 火曜日 / 空室
04. はじまりの国
05. 木曜日 / 寝室
06. El Condor Pasa(Simon&Garfunkelカバー)
07. Virtual Insanity(Jamiroquaiカバー)
08. 土曜日 / 待合室
09. 天使の胃袋
10. 子供たち
◆転換ムービー:ダイゴマンが行く! ~韓国編~
◆二部:エレクトリック
11. ベルリン
12. 親愛なるニュートン街の
13. 犬猫芝居
14. The King of Rock 'N' Roll(Prefab Sproutカバー)
15. ユリイカ
16. 新曲1 球体
17. 新曲2 ダンス、ダンス、ダンス
18. 水曜日 / 密室
19. ニムロッド
20. 旧市街
21. 鍵盤のない、


■MC備忘
・齢
ダ「なかなかアダルティでしょ? アダルト(一部)とヤング(二部)ですからね」
ハ「でも、そんなアダルティって感じもしないかもしれないね。僕ら」
ダ「ああー。ま、ロリ顔ですからね!」(会場笑)
ダ「何歳くらいに見られてんだろ? 健太年上に見られる?」
フ「見られますね。上に」
ダ「波多野ちゃんは?」
ハ「僕、解んない」
ダ「俺は年相応に、まあ」
ハ「いいなあ年相応。何かね、すっごい上か、すっごい下かに見られる」
ダ「すっごい上っていうのは」
ハ「38とか」
ダ「38!?」(会場笑)
ハ「って言われる。それか18」
ダ「18!? それはない、18はないよ!」(会場笑)
フ「精神年齢は18(笑)」 ←!

・好きなこと
ハ「今日は本当に、来てくれてありがとうございます」
(会場拍手)
ハ「あのー、本当に。本当にねえ……こんな風に、好きなことをできるっていうのは、簡単なことだと思ってないんですよ。僕は。……その象徴みたいな曲をやります。これも僕がプレゼンして、これやりたい!って言って、やってるっていう。ふふっ」 →Prefab Sproutカバー演奏




(すごく個人的な感想。
 新譜発表はものすごく嬉しかったんだけど、タイトルを聞いて何となく不安になった。肯定と祝福だけでは生きていけない。ポジティブな方向に進むだけなのかと思うとぞっとした。生きていけない。
 だから「鍵盤のない、」が聴きたかった。初期の、死の匂いのする曲。
 CSツアーで音と血が繋がったような気さえして、もしかしたらそこがピークで、後は離れていくだけなのかもしれない。だけどこの劇場編で聴いた二曲はすごく良かったから、ただの杞憂かもしれない。
 好きになり過ぎたかもしれない。ばかだなあ。
 タイトル発表されただけでここまで考えるのも、ばかだなあ。)

August 17, 2012

People In The Box 空から降ってくる vol.4 ~劇場編~
@ 東京グローブ座 1日目

 前回の名古屋から5日後、再びの劇場編。自分に戸惑うくらい名古屋とは全然違う見方をした。二度目かつ席が遠くなったからか。すごく楽しかったけれど、どこか一歩引いて眺めていた。観る位置は重要なんだと今更。

 セットリストは名古屋と全く同じ。いつもちょこちょこ変えてくるピープルにしては珍しい。確かにすごく良いセトリ。
 照明の配置のせいか、舞台背景や舞台脇に映るメンバーのシルエットが格好良い。後方でも充分見やすく、音も良い。何よりシェイクスピアと繋がりのある場で聴けて、個人的にテンション上がる! 16世紀に英国民が集ったように、21世紀の今ピープルを観に集う。26世紀にも同じように人は集うはずだ。余談。

 アコースティックパート、テンポゆっくりな演奏、特に「技法」が難易度高そう。ひとつひとつの音の解像度が高くないと、引き伸ばされた時に耐えられない。だからこの曲名なのか。客としてはじっくり味わえてとても面白い。
 カバーは、二部のもそうで、慣れが出てくると面白さが薄れてしまう。けれども福井さんのマルチさと輝きっぷりは今夜も素晴らしかった。「Virtual Insanity」の格好良さったらない! そして波多野さんが危機感をストレートに - it's a crazy world we're living in - ぶつけるのは英詞だからか。1996年の発表から10年以上経って一層危機感が強くなってしまった今、この曲を再発見したセンスに震える。
 「汽笛」名古屋よりは落ち着いて聴けた。本当に汽車が進んでいくようなエレクトリックに対して、アコースティックは人が手と手を取り合って踊ったり、歩いたりしながら進むイメージ。3拍子パートのワルツみたいな軽快さが最後に戻ってくるところで、ちょっと置いていかれそうになりつつ、また踊り出すような。解き放ってくれるアレンジ。体が軽くなった感覚。ありがとう。

 韓国へ行ったダイゴマン、ファンにお土産くれるサプライズ素敵だ(書かなかったけれど名古屋でもあった)。場内の一名様の座席に仕掛けてあることがライブ終盤明かされ、各々探ってみるという趣向。今回はなかなか見つからず、終演後に皆で探したね。席近かったから一緒にごそごそしてた。無事見つかると、会場全体から拍手!!
 ピープルのお客さんあたたかいなあと思う。なんであんなにあたたかい人達がピープルを聴いているのか、とつらつら考えて、ピープルがあたたかいからだ、と単純な答えが出た。そこを共有しているから皆集ったんだ。きっと。

 二部、「し」みん→「し」んしがい→「し」んあいなるニュートン街の、の連なりで幕開け。
 名古屋では新曲2、今日は新曲1が好きだった。そんなこともある。新曲1《球体に護られて 体は痣だらけ》《声を返せ》《僕らは誰も殺せはしない》《空を返せ》。奪われたものを取り戻そうとする強い叫び、CSの基調を継いで進んでいる。出だしがかなり格好良い。福井さんがダイゴマンの方に身を乗り出して2人でタイミング図り、爆発的なスタート。曲も前はあまりぴんと来なかったのが、今日はするする入ってきてメロディー覚えた。これと新曲2が入る次のアルバム、一体どうなってしまうんだろう? 間違いなくまた好きになる。
 新曲2の哲学者は《とても厳しかった》人で、歌い手は《許してもらえなかった》らしい。後半《ついていい嘘なんてあるはずない》と聴こえて、今日はこのフレーズがぐるぐるしている。そんなことないよVSそうだろうか。
 「金曜日 / 集中治療室」も前よりは落ち着いて聴いて、でも楽しくて仕方ない。《翌朝~消えていくよ》でテンポがぐっと落ちた後、走り出すようなスネアに導かれて戻っていく緩急好きだ。曲の深み。

 ラスト「沈黙」。名古屋で受けたものすごい衝撃は和らいでしまった。代わりに噛み含めるように聴こうとしたけれど、やっぱり名古屋ほどは打たれなかった。帰結が判っているから予定調和みたいに感じてしまったのだと思う。二度目は難しい。
 冒頭、ダイゴマンのアレンジは初? 名古屋ではあんな粋な音に気付かなかったんだろうか。波多野さんのギターリフのあちこちに、多分即興で、色んな音を散らす。特に印象的なのがフロアタム。張り詰めた氷の下、地中深くのマグマのような熱に、CSツアー「冷血と作法」を思い出す。怒りだと感じた。数倍の緊迫感でスタートしたからいつも以上に引き込まれ、アウトロの音のまとまりにほっとして力が抜けた。

 明日はどうなるんだろう。大体雰囲気も曲も判っているのに、どんな受け止め方をするか予想できない。劇場編ツアーファイナル、こわさ半分で楽しみにしている。


■セットリスト
◆一部:アコースティック
01. 笛吹き男
02. 技法
03. 火曜日 / 空室
04. はじまりの国
05. 木曜日 / 寝室
06. El Condor Pasa(Simon&Garfunkelカバー)
07. Virtual Insanity(Jamiroquaiカバー)
08. 土曜日 / 待合室
09. 天使の胃袋
10. 汽笛
◆転換ムービー:ダイゴマンが行く! ~韓国編~
◆二部:エレクトリック
11. 市民
12. 親愛なるニュートン街の
13. 新市街
14. The King of Rock 'N' Roll(Prefab Sproutカバー)
15. 見えない警察のための
16. 新曲1 球体
17. 新曲2 哲学者、ダンスダンスダンス
18. 金曜日 / 集中治療室
19. ニムロッド
20. 旧市街
21. 沈黙


■MC備忘
・B'z
ダ「ギターどれくらいやってるの?」
フ「僕、ギターから始めました」
ダ「ああー! ベーシスト多いよね!」
フ「B'zとか弾いてた。Pleasure/Treasureとか」
ハ「えっ? 全然知らんかった」
ダ「ああ、あの金と銀のやつね! (客に)皆知ってる? えっ知らない? 波多野ちゃん知ってる?」
ハ「B'zを?」(会場笑)
ダ「いやいや、B'zのPleasure/Treasure、金銀のやつ」
ハ「あー、そういうのが、あるのね(笑)。でも僕、B'zは結構知ってますよ。有名なのは結構。B'zで古今東西とかやったら絶対楽しい!」
フ「やったことある」
ダ「まじで?! 何やった? 俺全く覚えてない」
フ「一番上手かったのはね、波多野ちゃん」
ハ「(笑)」
ダ「この話これ以上やめよう! 誰かがやらなきゃいけない流れになる(笑)」

・麻薬
(ダイゴマン英国で薬を売りつけられそうになった話から)
ダ「初海外でマリファナだぜ? ぞっとしたね!」
ハ「あっちじゃ煙草感覚らしいよ」
ダ「って言うよね」
ハ「でも、そういうの要る?って思うよね」
ダ「?」
ハ「脳内麻薬でさ、こう、うわあああ~ってさ。なろうと思えばなれるじゃん、俺達」
ダ「はい!?」(会場笑)
ダ「(客に)あのー、110番はしないでくださいね」(会場笑)

August 12, 2012

People In The Box 空から降ってくる vol.4 ~劇場編~
@ セントレアホール

 成田から空路、セントレアへ! 昨年に続いての劇場編。
 会場は、MCでも話題になったように、普段は講演や説明会をしていそうな事務的なホール。そこにピープル。さすがに照明は制限されたようだけど(水中みたいな青色、使えなかったんだろうか)音は良かった。良席だったこともある。

 良席で、更に舞台と距離が近いこと、あとセットリストが多分に影響したと思う。今までで一番効くライブだった。「生」を強く強く感じた。だから、どちらかといえばしにたくなった。その意味で、いつか波多野さんがライブを毒だと自称していたことに初めて頷けた。
 詞に肯定が多いことに今更気付く。生の肯定と言い換えていい。今日の曲から拾ってみると《いいんだよ》《光り溢れ》《世界は美しい》《大丈夫さ》《いいよ》とか。ひとつひとつが効いた。ピープルはいつだって生を鳴らしているんだと思った。その希望を見守っているつもりで、でもずっと支えられてきたんだった。本当に今更だ。
 というのはCSツアーでもぼんやり考えていて、今日ピントが合った。
 好きでいるうちは好きなだけ好きでいようと思う。

 昨年と同じ二部構成。一部アコースティック、転換でダイゴマンムービーを挟み、二部はエレクトリック。ゆるいトークとカバー曲、そして新曲! 構成要素は昨年と似ている。だけど驚くくらい前に進んだ。夏の気配がいっぱいに詰まったCSの曲を多く聴けて嬉しい。まだまだアルバムの世界が広がっていくのは本当に楽しい。

 一部は座ってじっくり聴くスタイル。冒頭「笛吹き男」で呑まれる。《今夜、最高の嘘が本当になる》に、やれるものならやってみせろ!と一応抗ってみるが、いつもピープルの勝率100%なのは解ってる。抗いはたちまち消えて、楽しさに転化。
 ずっと傍らで出番を窺っていたバンジョーに波多野さん何気なく持ち替えて「木曜日 / 寝室」、合い過ぎ。そのままSimon&Garfunkelのカバーで「コンドルは飛んでいく」! 福井さんタンバリン、ダイゴマンボンゴ+カズー?みたいな笛。曲調や楽器や国が変わっても、アンサンブルは完全にピープルなのが嬉しい。更にカバーで、いつもの楽器に戻ってJamiroquai「Virtual Insanity」、めちゃめちゃ格好良い! それぞれの音が渦のようにまとまって、舞台が客を巻き込む磁場みたいになっていた。ピープルでこんな風に感じたのは昨年の「1000 Knives」以来かも。カバーいいね。なんて柔軟な人達。そして「天使の胃袋」から、何と「汽笛」! 嬉し過ぎてあまり覚えていないパターン。アコースティックだと詞が余計に沁みる。

 転換でダイゴマンムービーまさかの韓国編、羽田から仁川へ。「ダイゴマンが行く!」というより「ダイゴマンが行かされる!」なノリが程良くクレイジー。昨年に続いての寝起きドッキリもあるよ☆ ずっと笑ってたらいつの間にか転換終わってた。

 二部はエレクトリックでスタンディング。「市民」始まりでがらっと空気が切り替わる。波多野さん「僕のエゴをやります」からのPrefab Sproutカバー「The King of Rock 'N' Roll」が印象的。何がって福井ベースの格好良さ! 今夜、特にカバー3曲の福井さんの輝きっぷりったらなかった。バランスを取るのがすごく上手なんだろうと思う。「アールバーカーキ♪」で締めた波多野さん、楽しさが溢れたみたいに笑ってた。音楽って本当にすごい。
 新曲2曲! その1は「市民」に近い攻撃的な印象。その2がすごく好きだった。引っ掛かる音が沢山あるのに一聴ですっと入ってくる、ピープルらしい曲。詞の冒頭で《哲学者》が出てきてはっとする。哲学者は嘘を許さないから、みたいなフレーズがずっと頭の中をぐるぐるしている。ガムテープでぐるぐる巻きになったり、銃殺刑になったりする君、最近はいかがお過ごしだろうか。ダンス! ダンス! ダンス!ってキー概念が叫ばれていたのも印象深い。《いっそ踊ろうかな》のレベルじゃなくなっている。安直に春樹を連想した。
 そして久々の「金曜日 / 集中治療室」! この辺りも楽し過ぎて覚えていないくらい。手拍子楽しかった! ダイゴマンのホイッスルでテンション振り切れる。「ニムロッド」「旧市街」は最早定番。「旧市街」アウトロの最後で福井さんのストラップ切れるトラブル、初めて見たびっくり。こんなところで定番を覆すか。本人はどうしよ!って風に笑ってスタッフに合図を送りつつそのまま、ベース替えて最後の曲へ。

 予想外の「沈黙」。始まって「沈黙」だと解り、その重みがずんとのしかかって、衝撃で半分放心しながら聴いていた。生きろ、生きろ、生きろ、と叫んでいる曲だと気付いたら泣きたくなった。不意打ちだった。CSツアーで終わりじゃなかったんだね。
 タイトルがすごく好きです。沈黙。一番好きかもしれない。
 バスドラのリズムがようやく解った。単純なパターンの繰り返しで、ずっと解らなかったのが今となっては謎。油断すると泣きそうなので、気を紛らすようにバスドラを追っていた。けれどどの音も生命を鳴らしているから同じことだった。逃げ場がない。
 そういえばダイゴマンのセットびっくりした。シンバル小さいの含めて10枚くらいあった気がする。要所要所で気を引く父性的な音と、しなやかで繊細な母性寄りの音と、併せ持つアンドロジナスさが、あれほど生命を感じさせるのかもしれない。

世界との絆を断たずに、わたしたちのうちに自由を生み出すことができる方法を理解するのは、わたしたちのつとめである。
(モーリス・メルロ=ポンティ『意味と無意味』所収「セザンヌの疑い」より)

 ピープルは一体どこまでいくんだろう。

 最後の方でいつもの挨拶「今日は来てくれてありがとうございます」に大きな拍手を受けた後、ほとんどオフマイクで「ほんとうに、ありがとう」と呟いた波多野さんの柔らかい声音が忘れられない。こちらこそ、ほんとうに、ほんとうにありがとう。もう少し考えてみることにするよ。


■セットリスト
◆一部:アコースティック
01. 笛吹き男
02. 技法
03. 火曜日 / 空室
04. はじまりの国
05. 木曜日 / 寝室
06. El Condor Pasa(Simon&Garfunkelカバー)
07. Virtual Insanity(Jamiroquaiカバー)
08. 土曜日 / 待合室
09. 天使の胃袋
10. 汽笛
◆転換ムービー:ダイゴマンが行く! ~韓国編~
◆二部:エレクトリック
11. 市民
12. 親愛なるニュートン街の
13. 新市街
14. The King of Rock 'N' Roll(Prefab Sproutカバー)
15. 見えない警察のための
16. 新曲1 球体
17. 新曲2 哲学者、ダンスダンスダンス
18. 金曜日 / 集中治療室
19. ニムロッド
20. 旧市街
21. 沈黙


■MC備忘
・Jamiroquai
ダ「(客に)えっ、Jamiroquai知らない? カップラーメンのCMとか」
ハ「あれは、ファンの間では賛否両論だったよね」
ダ「へー、そうなんだ?」
ハ「僕は複雑でしたねー。……美味しいけどねー」
ダ「カップラーメンね(笑)」

・演奏歴
(「火曜日 / 空室」後)
ダ「ギター上手いね!」
フ「いやいや」
ダ「いつからやってんの?」
フ「……?」
ダ「(客に)2歳だそうですよ! 2歳からギター持ってる」(会場笑)
フ「もっと上手い上手い(笑)」
ダ「ああ、2歳からやってたらね。もっと上手い(笑)。波多野ちゃんは? いつからギター始めたの?」
ハ「僕、弾いたことありません」
ダ「? あ、初心者の気持ちってこと?」
ハ「いや、ギターを持ったことがありません」(会場笑)
ダ「こうやってね、会話が成り立たない(笑)」
ハ「日常風景だね(笑)。大吾は? いつからドラムやってんの?」
ダ「ドラム叩いたことない!」(会場笑)

June 30, 2012

理性は秩序を紡ぐが、混沌はこれを誘惑する。涅槃原則の衝動が理性を越境し、集合的無意識を惹起する時、秩序は分断から解放され全一となる。恍惚の源泉は混沌に有り、万物は混沌に帰する。
@ 下北沢GARDEN

 どう見てもte'の企画です。イベント名でそれと解るってすごいな。独自の言語。

■People In The Box
 間に英国フェスや弾き語りがあったとはいえ、エイプリルフールぶりの3人の音。とにかく嬉しかった! そして、やっぱり特別に好きだと思った。余計な思考が入らず音に集中できる。集中できるのは幸せなことだ。
 最近のピープルの色んな面が詰め込まれたバランス良いセトリ。故意か偶然か「ニ」ムロッド→「し」みん→「に」ちようびよくしつ→「し」んあいなる「ニ」ュートン街の、って言葉遊びみたいで面白い。
 久しぶりだからか、湧き出るエネルギーよりも出来上がる形を大事にした演奏に聴こえた。やや固め。「日曜日 / 浴室」が3曲目に来ると思っていなくて(終盤で登場する大物のイメージ)、「市民」からの攻めの感じが新鮮で、とても良かった。いよいよ「親愛なるニュートン街の」を夏に聴けるのが嬉しい。夏の匂いの濃い『Citizen Soul』が1月に出てからずっと待ち望んでいた。他の曲も8月の劇場編で聴けるといい。「レテビーチ」の突き破って溢れてくるような快感もすごく良かった。
 ダイゴマンMCでラジオの告知、劇場編の告知、そして『Lost Tapes』告知! Candle Lightで披露されたアコースティックドーベルマンの音源化歓迎! 更に気になったのがこれ:「『天使の胃袋』アコースティックバージョンが収録されます! あと、悪魔の……あ、これはいいや」。何だ! 悪魔の、何なんだ! 新曲に期待。

●セットリスト
1. ニムロッド 2. 市民 3. 日曜日 / 浴室 4. 親愛なるニュートン街の 5. レテビーチ 6. ユリイカ 7. 旧市街

●MC備忘
は「どもども、ピープルインザボッk?s%&#」
客「?(拍手)」「しっかり!」「しっかりー!」
は「っせえ(笑)」


■クリプトシティ
 事前情報なく初見。オルタナ? ハードロック?というのか、低音が重厚なスリーピースの演奏+デモニッシュなボーカルの4人。開始後数分と経たずピープルのイノセンスが彼らの色に塗り替えられて圧倒された。ベースが凄かった。思いも寄らないフレーズが次から次へと展開されて釘付け。気になって調べたら、ナンバーガールのベーシストなのか。伝説の一端を目の当たりにしていたみたいだ。
 ボーカルは西洋の人? たぶん全英詩。あまり聞き取れず、でも「お前の大事な冷蔵庫の中身を全部食っちまうぞ」とか言ってそうな気迫(違ったらすみません)。客席を巻き込むパフォーマンスが上手い。MCではヘヴィなオルタナ色から一転、「クリプトシティと申しますー」「タノシイナ!」ってかわいい感じ。そんなギャップずるい。
 こういう音はライブで時々聴くとすごく楽しい。頭の中が嵐の去った後の街みたいになる。諸々吹き飛んで、残骸はぽつりぽつりあるんだけど、すっきりした気持ち。晴天のすっきりとは違っている。また聴けるといい。


■te'
 初見。バタイユの語る戦争のような演奏。つまり?と思い、訳書を引っ張り出す。

 戦争は組織化された暴力なのである。禁止の侵犯は動物的な暴力ではない。たしかに暴力ではあるのだが、理性を行使しうる存在(場合によっては暴力のために知恵を使う存在)によって実施された暴力なのである。
 - ジョルジュ・バタイユ『エロティシズム』より

 そんな演奏だった。要はドラムス。少しもよろめいたり迷ったりしない理性で、暴力的なくらいに大きなエネルギーを行使しているのが不思議。ギターやベースは割と思うがままに暴れているんだけど、全体としてはドラムスに組織されていて理性的。このバランスが成立し得るんだなあ、というのを思い知らされていた。イベント名は混沌寄りだけど、どちらかといえば理性が勝っている印象。何だか頭を使って聴いてしまったが、そんなことは放っておいてもすごく楽しかった。
 あの長い曲名、イベント名のペダンティックな雰囲気に気後れしてあまり聴いていなかったのに、感想を書いたらそれこそペダンティック? 付けられた名前と音は実は結構一致しているのかもしれない。
 アンコールでダイゴマン乱入! 「乱入」って言葉がぴったり。やりたい放題ドラム叩きまくって締めの音まで鳴らして去っていった。te'のドラマーはハンドマイクで客席に身を乗り出してアジテーターと化し、こちらもすごく楽しそうだった!

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Maira Gall